2015-05-26

コンテンツに金払う奴はそれ以外の人間を殺してもいい理論について

 日本人という生きもの今日主語)は神の愛を知らないものですから基本的に愛だの幸せだの権利だのセックスだのはすべて金で買えると考えています

 というか、金でもって費やした額でしか、ある対象についての愛情定量的に推し量るすべはないわけです。ないと考えられているわけです。

 それはまあ、しょうがないです。

 問題は、日本人という生きもの(以下、私たち)が暴力行使する権利までも手放したコインの重量で決定されると思い込んでいることで、この手の信仰倫理的にただしくないよと活字上では言えたとしても、現実生活意識するのはなかなかにむずかしい。

 たとえばファミレスバイト店員のサービスが悪い。マックの店員の笑顔に嘲りが含まれている。デパ地下で購入したおかきにひびが入っていた。

 これらはすべて担当者をゲザらせるに足る理由となりえるように私たちには思えます。むしろ、膝をついて頭に床につけて誠心誠意詫びを尽くし、その上でこちらの懐に「どうかこれでお納めを……」と年間無料パス的なサムシングを忍ばせる以外にどんな解決法がありうるというのか。私たちにはそうした謝罪を受ける権利があるのではないか。だって金を払ったんだから

 そうですね、その主張はただしい。

 圧倒的に正しい。

お客様は神様です」という慣用句三波春夫本来どんな意味文脈で用いたとしても、RT大炎上時代を生きる我々の目には「お客様GOD」という極めて自明論理的な構文にしか映りません。

 それでいいんです。

 販売者に手落ちがあったら徹底的に責めればよろしい。土下座でも営業停止でもなんでものませればいい。

 だってお金を払ったんだから私たち神様はいないんだから

 

 で、本題に戻ります

 金を払えば製造者販売者暴力をふるっていいのはわかった。

 では、同じコンテンツを嗜んでいる他のユーザーまで殴っていいのか?

 試食コーナーに提供されたおかきをポリポリ食って訳知り顔で「やっぱ関西人はおかきの作り方を知らんわ。赤坂柿山の爪の垢を煎じて飲めよ」とコメントしたおばあちゃんにカチンときたからといって、ひざげりを食らわす権利私たちにあるのか?

 あまつさえ、そのばばあがくるりとこちらをむいて、「あんたみたいな嫁き遅れにおかきの味がわかるんかい?」とからまれ、その時に、相手のしわくちゃ面が先日見合いしたアンパンマンみたいな顔をした地方公務員母親酷似しているのに気づいて大変に不愉快な思いをしたとしても、手をあげてはいけないのか?

 だってこちらはお金を払っているんだよ?

 

 汝が隣人を愛せよ。

「オタ仲間同士は性別やこじらせ具合を越えて仲良くせよ」というゴッドの教えです。

 神の教えです。

 私たちに神はいません。

 神がいないので倫理がありません。

 倫理がないので格律が、基準がありません。

 だから殴ってもいいんです。本当のところ、私たち暴力理由なんていらないのです。

 理由なんてものは二千字のレポート要求された大学生にとっての最後の二百字にすぎません。

 埋草なのです。冗言なのです。意味なんてないんです。

「私はコンテンツに対して人一倍金を払っているので、忠誠心に劣る他のユーザーを殴る権利がある」?

「私はコンテンツに対して人一番時間を費やしているので、理解に劣る他のユーザーを貶す権利がある」?

 単なる文字列です。

 熟読しようが音読しようが、そこに意味なんて発生しない。

 なぜ私たち他人を殴れるかといったら、殴っているから、殴ったから、殴るであろうから、それだけでしかないんです。

 オタク世界はすべてアクション構成されています言葉はなんの力もありません。言葉はなにも生み出しません。

 ここはすでにファイトクラブです。人は人にすぎず、出来事出来事にすぎない。インターネット以前からtwitter以前から

 私事ですが、最近サブ垢を、twitterのサブ垢を消しました。

 Facebookアカウントなんて最初から持っていません。LINEもやってません、といいたいところですが、極めて遺憾なことに現代社会必須ツールです。

 私たちしなもんの荒れ狂う胆管です。

 私たちは夜毎夜ごとにあなたたちのブックマーク一覧を巡回する死せるオフィーリアです。

 永遠の命が欲しいならまず死ぬことです。おまえはタイラー・ダーデンと知り合いか、ちかごろ私たちはよくそう聞かれます

 大丈夫私たちはすべての感情を金で買えます

 怒りはコンサートチケットS席の値段です。

 喜びは本編BD一巻分の値段です。

 蔑みは作っている本人たちすらももうなんのためにどういう理由があって作ろうとしたのかわからないサブキャラネタフィギュアの値段です。

 私たちはあるとき、突然、悟ります

 いつものように難癖をつけて泣き土下座させているガストバイトこそ、輝ける運命の人なのだといつか突然気づきます

 その人は、ひとしきり泣いたあと、はれぼったいまぶたをごしごしとこすりながらきっとこう言います

理解して」

あなた理解しさえすれば脱出できる」

「逃れられる」

「墜落を回避できる」

「そのために、話して」

あなたがこれまでの人生を話せるようになって、しかも忘れることができたら」

「そうしたら、一緒に新しい人生をはじめましょう。末永く幸せ暮らしましょう」

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