はてなキーワード: くるりとは
前日よりも人の出が少ないようだった。広場にあったワンタッチテントの数も前日の半数以下だ。だが、駐車場の空きは少なかった。隣接のサッカー場で子供のサッカーチームが試合をしていたので、公園の駐車場がその関係者達に占拠されてしまい、他所から公園に遊びに来た人達は、駐車出来ずに諦めて帰ったのかもしれない。
前日は公園に着いたらまずは敷地内をぐるりと一周散歩したが、この日は真っ直ぐ管理事務所に入った。「鯉とカモの餌」を三つ買う。300円なり。上の子と下の子のぶん、そして私のぶんだ。
池の周りでカモに餌やりをする人々やザリガニ釣りをしている人々も、少なめ。連休最後の日はインドアに過ごしたい人が多いのだろうか?
前日にはいくらか居た鯉の姿があまり見えない。カモは前日と同数くらいいるが、同一カモかどうかは不明。
私と子供達がカモに餌をやっている間、夫が池の周りをぐるりと回って鯉の様子を見て来た。夫によれば、鯉は燕子花の間により集まっていたそう。鯉は、産卵に忙しくて餌どころじゃないらしい。
産卵があろうがなかろうが、この池の鯉は何故か人に餌をねだることを全くせず、人影に向かって寄ってくることもない。昔からそうなのだ。「鯉とカモの餌」は実質「カモの餌」である。
連休中、人々の投げ寄越す餌にカモは飽きてしまったのか、前日よりも食い付きが悪い。食い付きが悪いと、子供達はむきになって餌を次から次へ、なんなら鷲掴みで一度に投げつける。面倒臭そうな仕草で、カモは泳いで行ってしまう。
前日に学んだ通り、カモは真正面に落ちて来た餌にはあまり反応しないので、横か、なんなら背後めがけて投げるのがよい。一粒ずつ投げて、食べたらより手前の方に投げて、少しずつカモをこちらの方に誘き寄せる。……と、言い聞かせても、子供達の逸る気持ちを宥めるのは無理なので、子供達がやたらめったら投げて全部外しているうちに、背後から私が投げて、カモ達をこちらに誘導する。
公園のカモは人慣れしているが、それでも野鳥なので、決まったセーフティーゾーンを越えて近づいてくることはない。一番寄って来て、岸から1.5mくらいの所。だが、それだけ近づいてくれれば、子供の手で投げた餌でもカモはもれなく拾ってくれる。
カモを岸に寄せたら、私の役目は終わりだ。早くも手持ちの餌を投げきってしまった下の子に残りの餌を手渡し、子供達の隣にしゃがんでカモを眺めていた。
やがて二羽いたカモのうちの一羽が、人間の相手をするのに飽きたらしく、水面に浮いた水草の根で遊び始めた。猫がねこじゃらしにじゃれつく時のように、根っこの切れっぱしを仮想敵とみなしてつつき回している。するともう一羽は反対方向へとすいすい泳いで行ってしまった。
よく、水辺の白鳥の姿は夕方だが、水面下では白鳥の足はジタバタと不恰好に水を掻いているという。だが、カルガモ達が水面をすいすい行く時の足の動きは優雅で無駄がない。茶色と緑の入り雑じった泥水の中でも、カモの足のオレンジ色は鮮やかに映えている。
子供達は橋を渡って池の向こう岸へ行き、別のカモのコンビに餌をやり始めた。私と夫は日陰に入り、また別の二羽を眺めた。なんと、二羽のうちの一羽がうたた寝をし始めた。私と夫の他にも人間がいくらかいる、その前で、自らの羽の合間に嘴を突っ込んで、うつらうつらと目を閉じたり開いたりしている。警戒心がだいぶ薄れているようで、風に吹かれるままに岸辺に流されて来て縁に敷かれた石にぶつかりそうになったところで目を覚まし、いそいそと池の中央に戻っていく。だが、しばらくするとまたこちらに流れてくる。カモ達の、ここに来る人間達への信頼度は半端ない。
あまり昼寝の邪魔になるのもなんなので、こちらから遠慮して岸を離れた。池の中央にかかった橋を通ると、水面に亀がひょっこり顔を出していた。種類はわからないが、外来種ではなさそうだ。どう見ても、こっちを意識している。子供達を呼び寄せて、亀がいるよと教えてやると、子供達は亀に餌を投げた。すると亀はカモよりも機敏に餌を追いかけて食べた。だが、カモほど食欲が底なしではないらしく、いくつか食べただけでくるりと身体の向きを変え、泥水の中へと姿を消した。
対岸で、子供達がカモに餌を投げるのを見守る。子供達はやはり闇雲に餌を投げるばかりで、大人のようにテクニックを駆使してカモを手懐けることは出来ないようだ。それでも、力技で遠投した餌をカモに拾われて喜んでいる。
二人の少し後ろに、三歳くらいくらいの男の子がとことことやって来た。手には餌の袋を持っている。だが、まだ小さいので餌を遠くに投げることができない。男の子は、うちの子供達が餌を投げているのを、恨めしそうにじっと見ているだけだ。そのまた背後に、父親が心配そうな顔で着いている。うちの子供達が邪魔で男の子がカモに餌をあげられないという構図になってしまっていた。なので、私は子供達に声をかけて、あっちのカモに餌をやりに行こうと促した。
池の周囲でカモに餌をあげようとしている子供の多くは、五歳以下に見える。自分の足元も覚束無い幼児もいる。彼らはどうしたらカモの気を惹けるか考えて餌を投げるということが出来ないので、節分の豆まきのように餌を投げまくった末にカモ達に完全無視を決め込まれる。ガッカリしている子もいれば、とりあえず好きに餌を投げただけで満足という様子の子もいる。
うちの子供達がその年頃のころ、私は子供達にカモの餌やりはさせなかった。うっかり足を滑らせて池に落ちることを恐れてのことでもあり、こんな小さな子に失敗が運命付けられているような事をさせても可哀想なだけなのではないかと思った。それに、その当時は池の畔に集まる子供の多くが小学生で、幼児の方こそ場違いに見えた。
だが今は、頭の重みでいつ前のめりに転がり落ちるかわからない幼児が、器用に池の縁の石の上に立ち、池の中を覗いているのだ。
うちの上の子はもう五年生で、この歳までカモに餌をやって遊ぶことをしないで来たわけだが、もうじき自分から幼児に紛れてこんな風に遊びたいと言うような年頃ではなくなってしまうだろう。少々の危険を覚悟で、もっと小さいうちから好きに遊ばせておけば良かったのではないかという後悔を感じないでもない。だが、一人で池を覗き込んでいる年端のいかない幼児が池に転がり落ちないで済んでいるのは、単に運がいいだけにも思える。
餌を全部投げ終わると、子供達は手を繋いで、中央広場の遊具で遊んで来ると駆けていった。私が子供達の手助けをする必要はもうない。遊具で遊んでいるのも幼児とその保護者ばかりで、小学校高学年の子供達はマイナーだ。十年前は逆に大きな子供達ばかりが、少数の幼児を蹴散らすような勢いで遊具に飛び付いていて、危なっかしくひやひやしたものだ。
後で上の子に聞いたところ、遊具には小さい子が沢山いるから、小さい子に出会ったら危なくないように道や順番を譲ったとのことだった。
子供達が遊具で遊んでいる間、私と夫は木陰のベンチに腰掛けて待っていた。
蓮池のところでザリガニを捕っている親子連れがいた。事務所で売られている「ザリガニ釣りキット」ではなく虫捕り網を持っている。ザリガニは釣るより手掴みした方が早いのは確かだ。
母親が威勢よく小学校低学年くらいの息子に怒鳴っている。ここぞという時に息子が網を持ってふらふらとどこかに行こうとしたからのようだ。母親は、ザリガニ捕りどころか公園遊びにも向かないようなくるぶし丈のスカンツの裾を片手で引き上げ、もう片方の手を蓮池に突っ込んでザリガニを捕ろうとしている。根っからのお転婆ではなさそうだ。そんな妻の横に立つ夫は「男らしさ」とは縁の無さそうなおっとり系だ。私の観測範囲だと、自分の息子を「男の子でしょ!」と叱る人ほどお転婆そうではなく、配偶者も大人しそうな優男であることが多い。
振り返って広場の方を見ると、上から下までスポーティーな格好の母親と、やはり上から下までスポーティーな格好の小学校高学年か中学生くらいの娘がバドミントンに興じているのが見えた。楽しそうだ。子供が大きくなったら大きくなったなりの遊び方があるようだ。私の乏しい体力では、バドミントンは無理そうだが……。
OTODAMA'22 音泉魂 "〜BACK TO OFURO〜"1日目に行ってきました。
2019年のRSR振りの野外フェス。初めてOTODAMAに行くのでもっと都会(?)的なフェスかと思ってたけど、バスで会場に着いた時に「ああ、屋外フェスってこんな感じだったな」と思い起こさせる空気感にテンション上がった。入場する道を歩いてたらにフジファブのリハが聴こえてきて夜明けのBEATで更にテンション上がる。本編ではやってなかったので聴けてお得感あった。
とりあえず良さげな所にシートを敷いて羊文学を楽しむ。若いバンドにしては昔ながらの曲構成(ちゃんとイントロがあってアウトロも長い)だし歌上手いし初っ端から良い演奏が聴けて既に楽しい。隣に座ってた男性グループの人が「ガールズバンド?」って聞いてるのが聞こえてきてつい笑ってしまった。フグタさんは髪の毛長いけど男性です…(笑)途中で友達と合流の為に離脱。ご飯を食べようとしたがどこも長蛇の列でとりあえず一番早く買えそうな所で焼きラーメンを買った(笑)これ後で書くけど、飲食店のオペレーションの悪さやばかった…。ご飯を食べながらフジファブを聴いて懐かしい気持ちに浸る。総くんの祖父母?が銭湯やってて番台が僕の居場所でしたってMC良かった。
腹ごしらえ後はシートに戻ってクラムボンを見る。当たり前なのかもしれないけど演奏がめちゃくちゃ上手い…。スリーピースでこの完成度…これがスリーピースだよね…と友達に言ってしまった。(この発言の意図は言いたくないので汲んで欲しい)めちゃくちゃ天気が良い野外で上質な音楽を聴く幸せ…こんなに素敵な時間だったんだなって実感…。ミトさんが「こういう日常が早く普通になって欲しいね」って話ててお客さん側もアーティスト側も同じ気持ちなんだなぁ…としみじみする…。郁子ちゃんが今日のバックヤードが同窓会みたいになってるって話てて確かに…って思った。これだけドンピシャ世代が一日に集まってるフェスも珍しい。
バイン迄にトイレを済ませて飲み物を買おうとするも何処も行列がヤバくて、ちょっと熱中症になりそうな感じだったけど並んでたら間に合わなさそうなので我慢してバインに向かう。何で飲み物買うだけなのにあんなに並んでんの…??バインの待ち時間にひなっちが太ってた頃の話(?)とかして盛り上がってたらリハでメンバーが出てきて、アニキがサングラスしててめちゃくちゃカッコ良かった…!!アニキ、サングラス似合うな!!あとアニキのマスク姿を初めてみたかもしれん。皆リハでもマスクしてて偉い…。セッション的なリハをして、田中さんが「これ一回捌けんの??」って聞いて一旦ぞろぞろ捌けるメンバー。そして数分後にぞろぞろ出てくる(笑)とりあえずセトリはこんな感じ
1.Alright2.光について3.風待ち4.阿5.ねずみ浄土6.Gifted7.Fly
でした。光については最初のドラムの音ですぐ分かるようになってしまった…。これは個人的な感想なのだが、正直不完全燃焼でした…。セットリスト云々も少しはあるけど、何となくこう…上手く言えないんだけどもっとイケるてしょ!?って気持ちになってしまった…。うーん…まぁそう言う時もあるよね!って事で…。
本当はくるりが見たかったけど、熱中症になるかもしれないので友達にも付き合ってもらって飲み物を買おうために飲み物専門レーンがある店に並んだけど、めちゃくちゃに列が動かない…。くるりが演奏中、ほぼ飲み物の列に並んでいた…。ペットボトルのお茶買うだけなのに…これはちょっと酷いと思う…。お店の人も慣れてなくて?必死なのかもしれないけど飲み物買ったお店の店員さん感じ悪かったし…。他のお店もかなり並んだけど、対応は真摯で良かった。本当どこのお店もこう言う出店に慣れてないって感じがやばかったな…。
くるりもフェス仕様のセトリで、上海蟹とかバラの花、街、ハイウェイ、すけべな女の子等々私でも知ってる曲を沢山やってくれてた。サポートドラムの人すごく良いなと思ってスクリーン見たらあらきさん(多分)だった!そりゃ私好みだな〜。
Coccoを見る為にステージへ急ぐ。サポートメンバーに長田さん、根岸さん揃っててマジで豪華過ぎるしアッキー(多分)もいた!!(昔シロップのサーポート入ってくれてた方)全員がスタンバってたけど中々始まらなくて、根岸さんがステージ袖ずっとチラチラ見てるし、長田さんは「おいで」みたいな仕草してたからあっちゃん待ちかなと思ったら、全身黒のドレスに蛍光ピンクの靴下(?)を履いたCoccoが走って出てきて、それだけでもうオーラがすごかった。一曲目が強く儚い者たちで歌い出す前に何度も深く深呼吸して、ぎゅっと手を握ってから力を抜くように手を振ってるCoccoから目を離せなかった。ライジングで叶わなかった(ライジングではアーステントだった)野外でCoccoの歌を聴く夢を叶えられたし、本当に歌姫と言うか歌う為にここにいるって感じがするオーラを纏っていた…。そして、潮満ちぬからの花柄のセットリストね…!!熱すぎるでしょ…。この振り幅がCoccoの持つ魅力の一つでもあるし、何より力強い伸びのある透き通った歌声…素晴らしいステージで胸が一杯になった。
ナンバガに備えてバースデーからハナレグミ迄の間にご飯とトイレを済ませよう(飲食ブースが無茶苦茶並ぶから)と言う事でタコスの店に並んだけど列の進みは相変わらず遅い…。買う所まで来て思ったけど、やっぱめちゃくちゃオペレーション悪そうと言うか慣れてないメンツでやってる感すごかった…。今日でこれだった二日目と三日目ヤバそうだから空きの一日で改善される事を祈る…。味は美味しかったです。並んでる最中に聴いたバースデー、キュウちゃんのドラムが上手い!!って友達と褒めまくっていた…(笑)演奏自体上手いから知らない曲でも楽しいのよな〜。ステージ去る時にチバさんが「最後まで気をつけてな」(だったと思う)って言ってて友達と「チバ、カッコいい〜!!」ってテンション上がった(笑)チバさんが言うと何でこんなにカッコいいのか…。
トイレを挟んでちょっとシートで休憩してからナンバガへ移動。ハナレグミが当たり前に歌も演奏も上手くて「上手い…」って友達としみじみする。この日の出演者、皆演奏も歌も上手くてずっと上手い…って話てた(笑)
ナンバガもリハで出てきて、それだけで皆固唾を飲んで見守る…。一通りやった後に向井さんが「いつからやって良いか言ってくれんと分からんよ」って話てたの中々ピリついてる感あるなと思ったけど、、やって下さいって言われて始めるの面白かった(笑)
そして野外のステージでナンバガを見る夢がここで叶ったんだけどね、本当にヤバくてこんな時代でもなきゃめちゃくちゃに声出してたと思う…。もー、とにかく演奏がヤバい…(語彙力が皆無)アヒトのドラムも前にライブ見た時よりすごく良くなってて興奮し過ぎて発狂するかと思った(笑)セットリストがもうこれ!って感じのサービス精神満載の詰め込み具合いで…水色革命からの透明少女とか、TATOOありも好きだから嬉しかったし、何よりCIBBICCOさんのナカケンのベース…!!ヤバい!!アヒトのドラムも最高だし、ひさ子さんのギターもめちゃくちゃ鋭利だし、向井さん本当にギター上手いんだよなぁ…!omoide in my head、テンション上がりまくって頭ぶんぶんし過ぎて首もげるかと思った(笑)割と後ろの方で見てたからあんまりすると恥ずかしいなとか思ってたけど、そんなのどうでも良くなって死ぬ程ぶんぶんしてしまった。多分友達と私かなり浮いてたと思う…(笑)ライブ終わった後、すぐにマスク付けて去ってくメンバー可…偉い。向井さんのMCで「我々初入浴でございます…入浴!」って乾杯の変わりに言った後、お客さんの反応が皆無で「むむむ…」って言葉に詰まって素で困ってた向井さん本当面白かったし、画面にぬかれたひさ子さんも笑ってた…(笑)ライブ終わった後、友達と私の第一声が『…カッコいい〜!!』って同じだったの本当それ!!って感じだし、それしか出てこないぐらい最高だった。マジでめちゃくちゃナンバガだった。上手く言えないけど、本当にナンバガのライブを見た!!って思った。シートに戻ってからも興奮して友達と感想を言い合ってたけど、TESTSETが始まって演奏聴くまでMETAFIVEだって知らなかったから、めちゃくちゃいいやん!!LEO今井やん!!って思ってスマホで調べてしまった(笑)小山田さんの事があってから名前変えてたのか…。友達とはバスの時間の関係でここで解散。しかし、マジでどのバンドも演奏が上手すぎてこんなに満たされるフェスあるの…??って感動した…。
シート畳んでAJICOはスタンディングエリアで見る事にして移動。一曲目からペピンやってくれてひぇ~ってなる。やっぱベンジーカッコいい…。UAも抜群に上手いし、TOKIEさんのベースカッコいいし、ベンジーのギターはいつ聴いても最高だしでもうさ〜何て素晴しい締めのステージなの!?ってまた感動してた…。そしてUAの歌う水色!!水色めちゃくちゃ良い曲だから聴けて嬉しい〜!!最高に良かった…。美しいことも聴けたし何という満足感…。
こんなに見たい人が一日にまとまって出てるフェス、過去になかったしこんなに満足出来て8800円って破格過ぎでは!?!?音泉さんに感謝しかない…。こんな時代になってしまって、野外フェスなんて夢のまた夢…みたいに思ってた所からここまで戻って来れたんだなって感動したし、何より天気の良い野外で爆音で音楽を聴くって行為がこんなにも幸福で楽しい空間だったんだって改めて実感出来る一日だった。こんな日があるから頑張れてたんだな…。本当にちょっと泣きそうだったもん。
これからの時代、フェスを行う上で色々改善する事もあるとは感じたけど(前方エリアとか昔と変わらないぐらい近い距離でつめてたし歓声も結構上がってた)少しずつこういう時間を取り戻せたらなって思わずにはいられない時間だった。やっぱ音楽って良いね!!
「ボクにお礼をさせてほしいっポ!」
いつものように日の光からの隠れ蓑の土管の中で、ひとり昼の残りのパンを食べながら時間をつぶしているところに現れたイカのフォルムをしたソレは、最早残飯でしかないものを食らいつくしてからしゃべりだした。
「ボクの星のラッキーアイテムを使えば何でも夢がかなうんだ。お礼になんでも言ってよ!!」
白くきれいな流線型のソレは、地を這いつくばりながらラッキーアイテムなる便利道具ーーーどうみてもガラクタか子供のおもちゃにしか見えないがーーーを次々とほおり投げてくる。
なるほど。
タコは足をくるりと曲げた「ゆでだこ」フォルムならば地球侵略に来た際でも他の地球生物同等に歩行ができるが、すらりと足の伸びたイカではそれができない。できたとしてスミを吐きながら床平面の陣地を取り合う程度のことしかできないだろうよ、と謎の納得をしながらーーー
さて、このお誘いをどう断ろうか。
わたしは必ずしも裕福とは言えないが、貧しいわけでもない。友達は少ないがいじめられているわけでもない。むしろ一人を満喫し、他者と距離を取りたいがためにいわゆる「陰キャ」を演じているただの地球人A。欲望がないわけではないが、この地球外生命体を満足させるであろうどす黒い欲望ーーー例えば殺戮衝動とか?ーーーもしくは、地球のxx問題をどうにかしたい!といった救世主思想ーーーなんてものはとんと持ち合わせてはいない。
こんなお誘いが似合うのは、ずっといじめられ続けて苦しみ、いじめっこへの復讐を考える被害者Bか、地球の更なる発展を具体的な方法として落とし込める英雄Cだろう。発想が貧相で、教科書通りにまねっこをして良を貰っていた、ただの及第点ホルダーAには荷が重い。
「いや、せっかくだけど遠慮しておくよ。」
イカポーという舐めた名前のソレは、それでもなお、トビウオよろしく、わたしの琴線の外にあるガラクタをジャンプしながら投げつけてくる。
その胴体が強かに打ち付けると同時に舞い起こるしぶきは、夏の磯を思いおこさせる香りをばらまいた。
「そんなこと言わずに、なんでもできるっポ!本当だっポ!」
そんなどうでもいいことを考えながら、「じゃあ」と無難な、でも、どう答えてくれるんだろうと少し意地悪なお願いを投げてみた。
「わたし、一度でいいから賞賛されてみたかったんだ。何もとりえはないけど、何かを達成して、みんなから拍手喝采!みたいな。できる?」
「そんなの簡単だっポ!これを使えばいいっポ!」
イカで言えばひれ(耳というんだっけ?)の部分でぺしり、と私の目の前にたたきつけたガラクタは、星形の黄色いワッペンみたいなものだった。
「これは?」というや否や、ソレが解説をしてくる。
「これはすごいねスターって言うっポ!これをみんなに渡せばみんなからすごいねって賞賛のコメントがもらえるようになるっポ!何個でも渡せば渡すだけ賞賛されるっポ!ラッキー星ではみんなやってるっポ!みんなスターをいっぱい集めることに夢中っポ!」
ーーーなんて悪趣味な道具なんだろう。スターをお仕着せてスターを集める?そんなの誰が喜ぶ?こんなの流行るわけがない。
そもそも、みんながみんなスターを貰ったら価値なんてゼロだろう。喜んでスターを集めようなんて普通考える?ばかばかしい!ーーーという言葉をぐっと飲みこんで。
さっと立ち上がると、スターを地面に置いて足早に立ち去る。
残されたソレは「すごい!」「素敵!」とか「レッドすごいねスターもつけちゃうよ!」とかよくわからないことを言っているが、我関せず。興味を失ったわたしはその場を立ち去った。
以来、いつもの土管にはいつもの静けさだけがのこり、ぽーぽーうるさいソレとは二度と会うことはなかった。
もしかしたら今でもウラでわたしにスターをつけて賞賛しているのだろうかーーー想像してぞっとする。
なんて悪趣味なんだ。
仕事中の作業BGMとして "works." 24/7 stream : work music radio https://www.youtube.com/watch?v=6TKTCEcjP1s をずっと聴いている
もともと音ゲーが好きだったからたまにBlackYさんとかモリモリあつしさんの曲が流れてきてワクワクしつつ作業していた
いつもと同じように聴いていたらふと流れたこの曲が耳から離れない
https://www.youtube.com/watch?v=el1qfjfSglI&list=PLhI53mxVG3fMjiQtANeBUtJLCHJbmO6AF&index=21
なんだろう、懐かしいようなふんわりした気持ちになる
DiverseSystemさんのプレイリストを見ると他にも曲を提供しているみたいで
[Official] 寂しがり屋の凱旋(Long ver.) / b [AD:PIANO IV Monochrome]
https://www.youtube.com/watch?v=2yWIE8j-GJE&list=PLhI53mxVG3fNAIuQ3OP1oRIz_RjkvMoxR&index=4
とか
https://www.youtube.com/watch?v=6D1m9RnQDDs&list=RDMM&start_radio=1&rv=6TKTCEcjP1s
も、本当にいい曲ですっかりファンになっていた
でもアーティスト名が
b
bて
”b”で検索しようにもどうにも引っ掛からない!!!!!!!!!!!!
小さい頃から親がたまに買ってくるりぼんやなかよしを読んでは「全然面白い漫画ないな」と思ってギャグ漫画だけ読んでた
友達がちゃお読み出した時一時期一緒に買っていたけど動物漫画かギャグ漫画しかちゃんと読んでなかった
単純に自分は恋愛漫画に興味ないだけ、と思っていたし恋愛もそもそも興味ないかもなと思っていた。BLを読んでも合わないなとしか思わなかった。
しかし“女攻め”という女性向け女性優位のジャンルのことを知って「私が読みたかったのはこれだ!!」と思ったのだった
少女漫画でありがちな優しいだけで優柔不断な当て馬と意地悪だけど引っ張ってくれるイケメン……当然結ばれるのは壁ドンなどの攻撃技を持っているイケメンである
私はそういう二択の時前者がいつも好きだった
優しくて頼りない男の子をリードして照れさせたり喜ばせたりするヒロインになりたかった
しかし気が強い女の子でもここぞというところでは弱くなる……私はいつもそこで読むのを辞める
弱い男に嫌いにならないでと縋りつかれたかった
これを女攻めというのかと慧眼した
喜び勇んで“女攻め”で検索してみたところ、そのほとんどが「女攻めマジ地雷」か「女攻め展開はないので安心して下さい!」というフレーズばかり。
女性向けではまだかなりマイナーであり受け入れられない人も多いジャンルなのだった
男性向けMものもマイナーな方なジャンルではあるがジャンルとしてちゃんと存在していて羨ましい
女攻めと書いてあるのに最後に男が「今度は俺の番だな」と逆転して攻め出したり女にち○こ生えてて女じゃなかったりも非常に多く定義すら曖昧な始末
増えてください
・青の歌
アジカンの曲の中で一番エモいし聴き終わった後澄んだ気持ちになる
・電波塔
・羅針盤
これもめっちゃテンポが良い!ずっとたったったったっ!って感じ
こういう曲を聴いたことがなかったからかもしれないけど展開がかっこいい。歌ってても楽しい
・堂々巡りの夜
なんで好きなのかよくわからないけどめっちゃ好き。あっさりしてるのが良いのかも
・未だ見ぬ明日に
これは歌ってて楽しい。盛り上がりがすごくて良い
・ライカ
これも盛り上がりが良い。🐺 < ウオーーーン感がある
ザ・王道って感じはあるけど、完璧ではないのはわかってるけどどうにかしようとしてる感じも好き
低音がかっこいい
疲れたやめる
学生時代にくるりのコピーバンドを組んでいて、いい曲だよね、と話には挙がるけど結局コピーしなかった曲。
くるりって歌詞読んでそのまま理解できるなんてことはなくて、メロディが沁みてきて共感すると言うか。ふとした時に「あ、これ俺だわ」って思うこともしばしば。
当時メンバーに借りたベストアルバムを今買い直して、通勤中に聴いて何故だか涙ぐむ。歌詞の意味わからないのに。あの日の懐かしさ?
いつかは想像を超える日が待っているのだろうか。ほとんど想像通りかそれを下回る毎日で、けれどもいつかは、いつかは。
過ぎていく毎日の中で、味方でいてくれるひとはいるのだろうか。難解な性分で、敵ばかり使って。でも自分はいつでも誰かの味方でいたいな。とか。
ミーハーというか、俗な欲だとはわかってんだけど、俺は七里ヶ浜高校に通いたかったんだ
校舎から海が見えるようなところに通って、でもその景色の美しさをちゃんとアプリシエイトすることはせず、「こんな景色のどこがいいんだか!」みたいなナメた口をききながら灰色の青春を送ってさ
でもその後の人生で高校時代を思い出すとき、そこには必ず青い海があるんですよ 懐かしいものとして、海と青春が結びついている
実際に俺の行ってた高校のヘボさといったらないですよ
ビジュアル的な思い出、マジでなんもねー 台風の日に、教室から見えるところに植えられたヤシの木がすっげえしなってて、アレ折れるんじゃねえか?と思って注視していた その程度の思い出しか出てこないんだ
海からは遠く離れていたが、かといって山奥にあったわけでもなく、じゃあ都市部で便利かというとそんなことは全然ない 地方都市とすら呼べない規模の、「街」と「町」の間みたいな、なんとも言えない、イメージカラーとしては灰色みたいな、地味〜なところにあったんだ 俺の高校
灰色の場所で灰色の高校生活、ということになってくると、本当に全部灰色で、ダメなんすよ
そんなにいい色じゃないんだ本当は 茶色 厚揚げみたいな茶色ですよ
厚揚げみたいな色なんだ 俺の青春はよ 目に楽しい要素が一切ねえの だから、具体的に思い出すことが何もねえ
ネットでちょいちょい盛り上がってる、いわゆる「感傷マゾ」 あんなのも全然響かねー
足掛かりになるものが何もなく、ほんの少しの共感すらできないってワケです 入道雲すらパッとしない、本当につまらない街だった 町というべきか?
そういえば、くるりの『街』って歌を高校生のとき初めて聴いて、"この街は僕のもの"っていう感情入りまくった歌い出しに感銘を受けたことがあったな
その次の日の朝、登校するときに、駅の歩道橋から"街"を見渡してみたんだけど、見えたものはといえば、どこからどこが街なのかわかんねえ感じの、ただ道路沿いに民家がへばりついてるだけで、まとまりもなにもない、惨めな場所だけだった
街、ないやんけ〜ッ!と思いながら歩道橋を降りた思い出がありますね これはもしかすると比較的思い出らしい思い出かもしれない
七里ヶ浜高校の存在を知ったのが遅かったし、そもそも神奈川とは死ぬほど離れてて、どう考えても下宿なんかをしてまで七里ヶ浜まで行く理由はなかった
でも悔しい!悔しくないですか?
なぜ俺は、高校時代の思い出の景色として「踏切の向こうの海」とか「窓から見える水平線」、あるいは「冬のしけた海」みたいなのを持ってられないんだ
思い出の持ち駒がマジでなにもない 帰り道、通学路にあったGEOに入っては、「○○さん(好きだった人)が入ってきて、一緒にCD選ぶみたいな展開にならねえかな!」と思ってた というような、カスの思い出はある でも違うんだ
もうちょっとこう、ローカルで、固有な感じのある、原風景的なものが欲しいんだよなあ
何もねえ 何もねえよ
まあいいのかそれで いいのかもしれないが
Y:文章を書くのは好きな文系出身。うっかり第二新卒で大企業で働くことになった。
Mくん:Yの同期で工学系の院卒。国家資格を複数持つエリート。
Yと研修で同じグループになり、仲良くなった。基本的にヘラヘラしている。
ーーー
今日は部屋に同期のMくんがやってくる日だった。
*
(ボーナスも入るし、そろそろ家具を新調したいなぁ。在宅で残業するのに今の椅子だとちょっと辛いし…)
数日前、Yは在宅勤務での残業が辛くなってAmazonで新しい椅子を探していた。
「在宅勤務におすすめ」と書いてある特集ページを見ていると、今の部屋の雰囲気似合いそうなゲーミングチェアを見つけた。
(ゲーミングチェアって黒地に赤とか、やたら光るやつとか中二病のイメージがあったけど、レザー調のもあるんだ。
少々値段は張ったが、レビューの評価もよかったのでYはベージュのゲーミングチェアの購入ボタンを押した。
その恐ろしさも知らずに…。
*
届いたのは、予想を超える大きさのダンボールだった。
玄関に入れるのがやっとのことで、洗濯機でも入っていそうな大きさだった。
やっとの思いで出したパーツを床に並べ、手順書を開いて組み立てに着手する。
キャスターを土台に入れ、ガス圧調整レバーを差し込み、その上にカバーをかける…はずだった。
(あれ、キャスターが土台に入らない…)
色々な角度から嵌め込もうとするが駄目だった。
キャスターの根元についているリング状の金具が邪魔しているようにも見えたが、
手順書に書いていないことをしたら余計面倒なことになりそうだった。
(だめだ…)
その日は疲れてしまったので組み立てを諦め、同期のMくんに愚痴を言った。
「ゲーミングチェアを買ったのに組み立てれなくて詰んだ」、と。
ただの愚痴を言うはずが「じゃあ手伝おうか」と予想外の提案を受け、心臓が飛び跳ねた。
こんなことってあるのだろうか?
(そもそもMくんを部屋にあげてもいいのだろうか?
このまま組み立てられずにいるのも嫌だけど、わざわざMくんに来てもうのも悪い。
男性を部屋に入れるのって何年振りだっけ…?
でもせっかく提案してくれてるし断るのも変か…?)
「うーん、じゃあお言葉に甘えて…!」
ぐるぐると考えたが(考えても仕方がない)と思い切り、
Mくんに組み立てをお願いした。
*
そして冒頭部分に戻る。Mくんが部屋に来る当日だ。
(不用品は捨てたし、シンクも磨いたし、洗面所も隅まで磨いた…)
できる事は全部やったが、それでもYは不安だった。
プレゼン前よりも緊張していた。
Mくんに対して差し当たってできることは、自分の部屋に対するイメージを下げておくことだった。
あらかじめ部屋の綺麗さのイメージを下げておくことで、現実のギャップを減らす作戦だ。
「めっちゃ気にするじゃん」
「それもう、気が気じゃないよ…
家事できないのバレるし家具の組み立てもできないの恥ずかしいし」
緊張の中、部屋の鍵を回す。
ガチャリと音が鳴って扉を開ける。
Mくんに入ってもらうと、さっと靴を脱いで揃え、手前の洗面所に向かった。
(ここまで誘導の通りだ)
Mくんが手を洗う。
「汚部屋って言ってたけど、ここまで汚いとか特にないんだけど…?」
「いや、このスペースにある分だけ」
「確かに一人暮らしだとこれくらいでいいかも。今度引っ越すから参考になる〜」
そうして奥の部屋。
「え、別に汚部屋じゃないじゃん!カーテンとベッドカバーの色とか揃ってるし
とっさに大きな声を出してしまった。
(Mくんと密室ってだけで緊張するのに…自分のだらしない所まで見られたら死んでしまう!!)
「はいはい、これを組み立てればいいのね」床に散乱したパーツを見てMくんが言う。
渡した手順書をふむふむと読んで「え、ここで躓いてたの?」と少し驚かれる。
「すいやせん…」
Yがしみじみと謝っている間、Mくんはしれっと土台に4つのキャスター全てをはめ込んだ。
「え、早くない…?神?教祖って呼んでもいい?」
「教祖になるつもりはないな〜」ヘラヘラ笑いながら、Mくんはやすやすと組み立てていく。
またたく間に椅子らしい形が出来上がってきた。
「このパーツと背もたれを繋ぐ時、ちょっと床傷つけそうだからベッド借りてもいい?」
「え?う…うん」
ベッドを使うことに異存はないが、Mくんがベッドにいると思うと、ドキドキする。
変な緊張をしているYをよそに、Mくんは「作業者」として完璧だった。
手順書を読み上げ、パーツや作業内容に誤りがないか一点一点確認する。
可動域を調べ動作確認をするMくんの手つきが滑らかで、綺麗だった。
「はい先生!」Mくんの手つきに見とれていると、指示が飛んで来た。
背もたれの部分だけでも結構な大きさだったので、片手で支えながら座席部分と組み合わせるのはかなりしんどそうだった。
Yが背もたれの部分を持ち、応援する。
「あ、助かる」
「うん…」Mくんとの距離が近くなると当然ながらMくんの香りがする。なんとなく安心する香りだった。
(柔軟剤の香りかな?いい匂い。あと首筋きれいだなー)Yはぼんやり見とれてしまった。
「あー、来週の構築作業もこんな感じなんだろうなぁ」組み立て作業中のMくんが仕事の話を投げてきて、急に現実に引き戻された。
Mくんの「聖域」を邪魔できるはずもなく、ただ作業を見守っていた。
*
座席と背もたれを接合し、土台にはめ込む。
それにフットレスト、アームレスト、各種クッションをつけて、ゲーミングチェアが完成した。
できたてほやほやのゲーミングチェアに座ってYが「わーい」とはしゃいでいると、Mくんがぐるぐると回して来る。
「この椅子本当にいいな〜持って帰ってもいい?」
「じゃあ作業費3万もらうわ」
「そこを同期割でなんとか」
「1万5千円になりますね」
「いや高いわ!」冗談を一通り言うと「よし、じゃあ撤収する!」とMくんが言った。
「来週引越しだよね?荷造りとかお手伝いします…」とYは申し出た。
「うーん、来週はちょっとスケジュール的に難しいんだよね。夜勤だし」
「そっかあ。じゃあ今度なんか奢らせて!」とYはぼんやりした提案しかできなかった。
(こんなんじゃ社交辞令みたいじゃないか)いつものことながら、
YはMくんと会うと、いつも言いたいことを言いそびれる気がする。
*
Mくんと駅まで他愛のない話をしながら歩く。
「またなんか組み立て必要だったら呼んで」へらりと笑ってMくんは言う。
「まじか、本当に助かる…」
じゃあ、と言ってMくんは改札まで向かう。
じゃあね、と言ってYはくるりと方向を換える。
Yは少し歩いて振り返ると、Mくんが階段を降りようとしていた。
後ろ姿まで颯爽としている。
久しぶりに一人で電車に乗った
社会人になってからはずっと車移動だったので、電車に乗ると嫌でも学生の頃を思い出す。
友人が少ないながらもいたが、あまり良い思い出は残っていない。
その中で自分が大切に大切に取っておいて、定期的に懐かしがるのは全て通学の記憶だ。
寒い冬の朝。電車内の座席だけがヒーターで馬鹿みたいに熱くて、もうあと数分で学校の最寄り駅に着くのに、ここから立ち上がりたくないなと強く思う。寒さと学校への嫌悪感のせいだ。このまま乗り過ごしちゃおっかな。と思って実際にわざと乗り過ごしたのは1度だけ。あとはちゃんと立ち上がった。偉い。
電車から出ると寒い。とにかく寒いが学校に向かってミッシェルガンエレファントを聴きながら歩く。オトナになったらタバコとお酒をいっぱい摂取してこんなカッコいい声になりたいなと思っていた。結局大人になってからもお酒もタバコもしなかったし自分の声は甲高いままだ。
しばらく歩くと友人を見つける。話しかけたほうがいいだろうと思いつつ、もう少しミッシェルを聴いていたくて気づかないふりをする。が、すぐに友人が自分に気付き手を振って合図する。あぁ、めんどくさいな、の気持ちとこんな自分に話しかけてくれることへの嬉しさが混じる。ポケット中に手を突っ込みウォークマンの停止ボタンを押してイヤホンを耳から引っこ抜くと急に周りの学生の声がはっきりと聞こえ出す。
この自分の世界がパタンと終わって外の世界に飛び込まされる瞬間を今でも時々思い出してノスタルジックな気持ちになる。
あとは1限を受けただけでめんどくさくなっちゃって早退したときのこと。雨の中を駅までくるりを聴きながら歩いた。ぼーくがたびーに出る理由はーなんて一緒にひとりで歌いながら、遠くに行きたいなとボンヤリ思った。この思い出も思春期ぽくてお気に入り。
活字にほとんど触れない生活を送っている僕の知見によると、となりの市にある市営図書館ほど素晴らしい図書館はない。僕は、自分が住む市の図書館には行かず、時間をかけてわざわざその図書館に通っている。本を読むわけでもないのに。
有名なアルバムだったら大抵そろっているし、廃盤になった隠れた名作なんかも貸し出しされていることがある。新盤を除けばツタヤなんかよりずっと品揃えがいいし、廃盤になったアルバムを聴くために、定価の倍以上の金をメルカリ出品者に貢ぐ必要もない。
受験生だった頃は、受験勉強という名目で毎週末は図書館に通い、
土曜にCDを上限(5枚)まで借りる→家に帰ってPCに取り込み→日曜に返却してMAX枚数借りる→次の週に返す
というルーティーンを繰り返していた。CDがずらりと並んだ棚の前で、勉強をサボっている罪悪感を感じながら、何を借りるべきか吟味するのは、とても楽しかった。大学全落ちという後の結末を知っている今でもなお、後悔はしていない。
今日は4枚のCDを借りてきた。不朽の名作たちを、一つずつ紹介しよう。
YUKIソロ作として、初のオリコン1位を記録したアルバム。収録曲「JOY」を聴きたかったけどYoutubeでは曲の半分しか上っていなかったので借りてみた。「JOY」って、ちょっと寂しくて、懐かしい感じがいいよね。ジュディマリは高校時代によく聴いていたけど、ソロ作はほとんど聴いたことがなかったので、そこらへんも期待。
宇多田ヒカルの曲は「Automatic」くらいしか聴いたことなかったけど、エヴァ主題歌の新曲をYoutubeで偶然聴いたら良い感じがしたので借りてみた。当然新曲の貸出なんて無いので、エヴァ序の主題歌が収録されたこのアルバムを選択。打ち込みのリズムや、騒がしくないのに濃密なフィールが心地よい。90年台の宇多田ヒカルの曲より、あたらしめの曲のほうが好みかもしれない。
初めて聴いたくるりの曲は「琥珀色の街、上海蟹の朝」だけど、そのときは意識高い雰囲気しか感じられなくて好きになれなかった。しかし先日、増田で「ばらの花」の存在を知り、Youtubeで聴いてみたら気に入ったので借りた。フジファブリックの「若者のすべて」と漂うムードがどことなく似ている。さびしく懐かしいような、失われた青春感がすてき。こういう曲はとても好きなので、アーティストにかかわらず、他にもあれば、是非教えてほしい。
・たま - ろけっと
本日の目玉。廃盤であり、限定で再発されたこともあったけれど、中古価格はさりげなく高騰している。メルカリだと定価の六割増し程度の価格で取引されているが、たくさん金を払って手に入れたとしても、作った人には1円も入らないんだから、むなしいものである。ともあれ、今回はタダで聴けたんだからラッキーだった。
レアなアルバムだけど借りる人が少ないのか、歌詞カードは図書館で貸し出しされてるものとは思えないほど綺麗だった。ジャケットや歌詞カードの絵は、絵本「わにわにシリーズ」の絵を手がける山口マオ氏のもので、とてもかわいい。ろけっとにくくりつけられた石川浩司氏の腹が出ている。
一番のお気に入りは「あの娘は雨女」。Youtubeでも聴けるから是非聴いてほしい。「さよなら人類」を凌ぐほどの隠れた名作。この曲を聴いたら、『たまは一発屋』なんて愚かな発言は口が裂けても言えなくなる(はず)。