http://anond.hatelabo.jp/20130223090512
三行でまとめると
PSのビジネスモデルを振り返ってみるのだが、この切り口から行くとPSはSONYの半導体戦略、そしてSONYは製造業と言う性質とと切っても切れない関係がある。
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SONYがゲーム機を一緒につくろうと言って任天堂に近づいたものの交渉が決裂してできあがったのがPSであったわけだがこれが大ヒット。
さらにPSでは、内部で使われている半導体を自社設計・自社かそれに近いFabで作る事によって
など副次的な効果もあり、さらに「SONYの旗艦」といったイメージを作り上げることができた。この他に、CD-ROMを手がける部門や、SONYのCDプレス工場部門等々、PS景気により、直接的なPSによって生み出される効果以外に、PSという揺るぎない需要が存在する事で、設備投資などに積極的になれたといった効果がうまれた。
初代は始めどこまで意図されいたかは不明だが2台目ではそれらの経験が生かされる事となりより強化された。まず一番は半導体工場で有り、旺盛なその需要と、それによって得られた利益を投資に回し新プロセスを開発、シュリンクすることによって最終的な黒字を目指すことで赤字で販売をスタートすることとなる。
ゲームハードは赤字でも、ソフトが売れれば黒字。こんなの当たり前だろ、と言う話であるが、総合情報機器メーカであるSONYでは少し事情が異なる。これは、ソフトウエアライセンス事業による利益によって、間接的に半導体生産の設備投資を補填すると言う形を意味する。もちろんそれ以外にもSONYの製造部門にもPS2が赤字でも販売すると言う行為によってもたらされる間接的な利益が流れた。
ご存じの通り、PSは我が愛する芸術品たる至高のゲーム機Dreamcastを完膚なきまで叩きのめし世界最高の企業セガをプラットフォーム業から引きずり卸しパチンコ屋に買われる所まで追い込む等大成功をとげた。そしてゲーム機生産により、SONYの製造業部門を引っ張っていくという当初の見込みは大成功した。
PS3の時代になると、パソコンの旺盛な需要の元、急速に進化した集積回路は、プロセッサの新規開発コスト、さらに半導体のプロセス開発に必要な資金が膨大に膨らむという現実に、様々な企業が立ち向かうよう時代が来ていた。世界の巨人たるIntelと、それ以外という構図が生まれ、世界中でFabの統廃合が進んでいた。
その中で目をつけられたのがゲーム機という存在である。パソコンに対抗できるほどの膨大な需要を生むゲーム機は、薄利という性質を持ちながらも数が出るため、生産設備を拡大しやすくプロセス開発の資金を捻出する事に有利であった。さらにSONYは、ゲームハードウエアが、当時のパソコンなどに比べて圧倒的に高い性能を持っていなければ存在価値が無い、と言う観念を持っていた。これはかつて任天堂がもっていた思想であった。
さらにIBMなどの思惑とも一致、開発がされたのがCell B.E.であり、この存在がPS3を生んだ。そう、ここまで来てSONYは、半導体のためにゲーム機をデザインしたのである。
もちろんこの説にはいろいろな異論はある。しかし俺は順序としては、ソニーグループ全体の長期的な戦略にPSが生む半導体工場の増設という戦略が大規模に組み込まれていたのは間違いないのでは無いかとみている。そこで完成したマシンは、化け物であった。現在まで続く潮流であるGPGPU的な動作もこなすCell B.Eがもたらす高性能と、高い拡張性を備え、既にゲーム機では無いとまで言わしめるものができた。この性能は当時の最新鋭コンピュータを大幅に上回るものであった。
しかし……。GPGPUの概念は早すぎた。性能を引き出すことが、当人であるSONYでも難しかったのである。そしてこれはミドルウエアや開発ツールの乏しさにも繋がる。そのためスタートアップに失敗した。この失敗は、PSがゲーム機として優れていなかった、あるいは、他者装置に負けた、と言う意味で失敗では無い。製造業としてのSONYが、自社の思惑通りに事を運べなかったと言う事での失敗である。
結果SONYは、PS3の需要を当て込んだ生産設備をリストラ・売却するなどの対処をを迫られる。さらに韓国勢などの追い上げ、AV市場の急速な変化、SONY本体の体力の低下、パソコンの高速化などにも影響を受けることになる。
PS3そのものは、OSの改良、ミドルウエアや開発ツールの向上などにゆっくりではあるが立ち上がってきたが、製造業としてのSONYがPS3に期待した効果は得られず、ハードウエア屋、製造業がみた夢はここに破れた。
さらに時代は動き、集積回路は、Intelがプロセスで1世代以上先を行き、それ以外はすべて後から追うという構図が完全に定着してしまった。SONYも、SONYの半導体と言えば、集積回路ではなく画像素子、と言う時代が来て久しい。世界中で半導体製造業者の統廃合は進み、国内半導体産業は衰退した。新プロセス開発の難易度や、集積回路の大規模化から来る開発コストの上昇はいかんともしがたくなっていた。
ゲームが必要とするスペックはもはや飽和している。少しでもリアルに、少しでも高性能にと言う方面はすでにマニアのものだけになってしまい、それら需要だけで、そのとき販売されているパソコンを上回る高性能チップを開発、載せるコストを満たすことはできなくなっていた。具体的に言えば、ウルトラハイスペックの、GeForece GTX SLIクラスにも勝ちうるGPUを、専用設計でオーバーヘッドを極力少なくすることができるとはいえ新規設計することが難しくなっていたのである。さらにはゲーム機業界ではスペック競争を離れた任天堂がWii、あるいはDSを生み出し、ケータイ、そしてスマフォとと言う存在がカジュアルゲーム市場をかっさらうようになった。特に日本では据え置きゲーム機がリビングルームに置かれ、パーソナルな空間に置いてゲーム機は携帯ゲーム機になったのである。
そして決定的だったのが、ゲームエンジンの躍進と越境であろう。従来はゲームエンジンや製作環境はゲーム会社の門外不出のものであった。しかしそれらが会社を通じて流通し始め、さらには専門業者も現れるようになったのである。
家庭用ゲーム機と言えば、ゲーム機の性能を引き出すためにソフトごとにアセンブラで最適化チューニングを施す。それを行っても常に動作が一定になることがメリットとして、パソコンに比べてゲームは常に一定の動作をすることが担保できるためにゲーム製作に専念することができた。しかし、パソコンは十分に高性能になった。家庭用ゲーム機も十分に高性能になった。その結果、チューニングを行わなくてもそこそこの画面が作れるようになってきたのである。そこで余った能力はゲームエンジンのオーバーヘッドを許容するようになり、ゲームエンジンの躍進に繋がった。さらにゲームエンジンはプラットフォーム間の差異すら吸収し始めた。あるゲームエンジンを採用すれば、あまり手間をかけること無く、パソコン版、PS版、XBOX版、Wii版と複数プラットフォームで出せるようになったのである。これは、ゲームエンジンが新たなるゲーミングプラットフォームとして君臨する可能性を示唆していた。
しかし、チューニングなどといった、ユーザとは直接関係の無い部分に手間をかける必要が無く、作ったゲームがどこでも動く。これはクリエイタとしては非常にありがたい事なのでは無いか?
ビジネス書に出てくる例えがある。ユーザはねじ回しが欲しいのでは無い。ねじを回したいのである。同じように、客はゲームがしたい、もっといえば楽しいことがしたいのであって、別にゲーム機が欲しいわけでは無いのである。クリエイタはゲームを作りたいのであって、ゲームハードウエアを使いたいわけでは無いのである。ここに合致したのがクロスプラットフォームなゲームエンジンであり、そしてこれらはクリエイタに作りやすい環境を提供し始めた。さらにゲームエンジンは新たに現れたライバルである、タブレット/スマートフォンにも対応している。
しかしゲームエンジンの躍進は、プラットフォームビジネスの崩壊を意味したし、PS3は性能を引き出すには高いレベルの専門的チューニングが必要であった。しかしゲームエンジンはそこにコストを払う事を選択せず、PS3は高い性能を持ちながらも、それ以外のあまり高性能ではないプラットフォームとほぼ同等、せいぜい高解像度のテクスチャーに入れ替えられた程度のゲームしか提供されない、と言った事が発生するようになっていた。
そしてPS4が出た。
PS4は有り体に言って、x86-64アーキテクチャのコンピュータに、OpenGL/CL対応のGPUを搭載した、本質的にはそこらのパソコンと変わらない構成である。
さらに言えば、最新のCorei7+GeForce GTX…と行かなくとも、そこらのパソコンに較べ、性能は高くない。しかし、根本的にゲーム専用機が持つ、汎用パソコンには無い特徴
を備えている。さらには、GPUを扱いにくくする要因の一つとして上げられる、GPUとCPUのメモリ転送をほぼ考えなくて良いと言う仕様を打ち出してきた。これはCellとCPUのプログラミングが分断され、非常に開発を困難にしていたPS3の反省をダイレクトに生かしてきたと考えられる。これはAMDが出していたコンセプトだ、と話題に上がるが、あくまでもパソコンの話であって、ゲーム機の分野では少なくとも、PS2がプログラミングが困難な部分を、高速なバスで繋ぐことで隠蔽するよな仕様であったように記憶している。
さらにx86-64アーキテクチャにしたことで、ゲームエンジンがPC向けエンジンの次に、素早くPSにも対応できる素地を整えた。Power向けに施す必要のあるチューニングを不要にしたのである。従来はパソコンで開発されたクロスプラットフォームのゲームは、パソコン向けと、家庭用ゲーム機向けの2種類作られた。そして家庭用ゲーム機向けは往々にして、ターゲットとなるハードウエアの中で一番性能の低いところに合わせたデータで作られた。平たく言えばPS3の方がXBOX360よりもはるかに映像表現は優れているのに(※ただし使いこなせれば) XBOX360との差異はテクスチャやムービーの解像度程度の違いだけになってしまう事を意味していた。しかしx86-64にしたことで、家庭用ゲーム機向けに統一してダウングレードされたデータからPS版を生成させるのではなく、パソコン向けのデータから生成させた方が早いと言う状況を作り出し、他の家庭用ゲーム機にくらべてアドバンテージを得ようとしているのでは無いだろうか。これはPS VitaがARMを採用したことも同じ事である。
さらに、SONYは、PSVitaから進めてきた戦略として、自社による強力にプラットフォーム感の差異を吸収するミドルウエア群…これはゲームエンジンと読んでも良いのかも知れないが…を提供してくるだろう。x86ならば従来の資産を生かすこともできるし、世の中に出ているコンピュータ向けのライブラリも利用できる。急速に開発しやすい環境を立ち上げているのではないだろうか。これはゲームエンジンにより脅かされる、プラットフォームビジネスへの対抗措置でもあるだろう。
これにより「雑事に捕らわれること無く、ゲームの楽しさ・表現そのものに専念する」と言うクリエイタの夢を叶えるハードウエア、それがPS4であろうと思う。
平たく行ってしまうと、自社の半導体商売が死んだことにより、その死絡みから解き放たれたPSは、クリエイタ主導でゲームを作ると言う根本に立ち返って作ったのがPS4だ、と言う話である。
しかしこれだとハードウエア、製造業の夢はどうなってしまうのだろうか?そしてユーザは別にクリエイタの夢などはどうでもいい。下手をすると高性能なハードウエアを所有していると言う欲を満たせなくなる分だけこちらの方がまずいかも知れない。それをどうカバーするのか?と言う話になる。
SONYは、次世代戦略として明らかにソフトウエア重視に舵を切っている。SONYは今、収支から見ると製造業では無く金融業であるが、その次に利益を生み出しているのは音楽・映像ソフト部門とゲーム部門である。
まずはここを潰してしまっては会社として立ち行かなくなる。それはまずい。ではどうするかというと、従来の「製造業としてのSONYを強くするために、PSの需要を利用する」のではなく「コンテンツ・製造複合体としてのSONYの核にPSを据え、関連商品を生み出す形で恩恵を得る」と言う形に舵を切ってくることになる。PS3でも一部行われているが、たとえばPSのリモートプレイを可能にするパソコンやタブレット、PSを再生装置としてコンテンツを供給できるメディアサーバといった具合である。
しかしこれらに対応させるために大切なPS本体の魅力を失わせては困ると言う事は強く意識されなければならないし、意識されていくだろうと思う。
ユーザの夢は、将来的には作りやすいゲームプラットフォームが生み出す新しいコンテンツという形で満たされることになるだろうが、直近では、ソーシャルへの展開という形で示されていると思う。将来的にはいかにコンテンツを集められるかと言う事にかかっている。が、ぶっちゃけていうとユーザから見たら、これほど夢の無い話は無いと言わざるをえない。
今回発表されたタイトルのデモなどは実際にはチャンピオンで有り、実際にプレイして得られるのはPS3とそれほど感覚的に、革新的に良くなったと感じる部分は薄いと思う。この点で、PS4は、PS3と実働コンテンツはそれほど変わらないと思っている。マイナーバージョンアップ程度。パソコンがWindows XPで評価が固まったようなものである。これはおそらく次に発表される新型Xboxでも同じだ。任天堂は少し別格の応えを出したが苦戦している。
かつてセガが出した芸術品とも言える至高のゲーム機、DreamcastはOSにWindows CEを搭載した。プロセッサこそ独自であったがそれは当時のWIndows CEではあたりまえであり、むしろそこにWindowsと言う汎用のソフトウエアを利用したことで非常にゲームが開発しやすく、PCゲームが移植しやすい環境を作り上げた。それらはアーケードのnaomiプラットフォームや、ワンチップで埋め込まれたパチンコなどで今でも生き続ける。
任天堂がWiiUでコントローラに画面をつけDreamcastに追いついたように、SONYは、PS4で作りやすいゲーム機という点で追いついたと言える。
またしてもセガは早すぎた。時代がセガに追いついていなかったのである。Dreamcastはその名の通り「夢を投げる」存在であったのだ。
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