2024-07-05

呼ばれてないけどTT兄弟解説してみるよ

日本の笑いがすごい!って言ってるけど、それは半分合ってて半分間違ってる。

そこは素直に、「彼らの笑いがすごい」とちゃん評価しましょう。

お笑い解説をつけるのは、手品の種を教えるみたいで白けることだなって思うけど、やっぱり「日本お笑い」ではなくて「彼らのお笑い」がちゃんとすごかった解説はしたいなと思った。

・冒頭(つかみ)

いわゆる出落ち期待感を下げることが目的

見た目で笑っている感度が低い人も多いけど、「なんじゃこいつら。欧米人が見るアジア人っぽいステレオタイプで出てきて、結局出落ちだろ」というラインまで期待を下げることに成功している。

これが最近日本芸人が見せるような、少しスタイリッシュ感じではだめ。

それだとこれからやるネタの期待をいたずらに上げてしまうので笑いにならない。

面白そうだけど見た目だけだよね」という低めのラインが、これから始めるネタに対する裏切りになっている。

簡単に書いてるけど、この先面白くないと成立しないある意味自信に満ちあふれて無いとできない戦略

さらにそのうえで、「Tを探せ」という観客を巻き込む構成になっているのがポイント

馬鹿っぽいやつらにバカにされたくないという人間心理を巧みに付いてる。

・1ネタ目MorningのT

ルール説明TT兄弟とは何をする兄弟なのかの解説の部分。

ここで取れる笑いは小笑いでいい。勘がいい人は笑う。お笑い閾値が高い人は逆に笑わない。でもそれでいい。

小難しい顔をしながら、彼らが何をやりたいのかを全員が理解するための大切な時間

ウケを取るより大事

・2ネタBaseballのT

ここですでに「お約束」まで持っていっている。

お笑い気持ちいいのは裏切りの瞬間なのだけど、タイトルコールからTが出るまでの時間が1ネタ目より短く作られている。

Morning Tは、タイトルコールからTが現れるまで14秒だったのに対し、Baseball Tは、タイトルコールからわずか8秒でTが出現している。

ルール説明役割もつ1ネタ目を丁寧に説明するために時間を割いたということもあるが、2ネタ目は出現を早めることで、見ている側に対して「ちゃんと考えていれば予測できたお約束なのに舐めていたから見逃した」という悔しさを 植え付けることに成功している。

・3ネタ目TerryのT

舞台袖に立っているTerryを巻き込んだT。

ここでこれをもってきたのは正直すごい度胸だと思った。

ここまでに会場があったまってないとTerryのノリノリも寒いだけなので、もしかしたら会場のリアクション次第で順番を変えてたかもしれない。

登場からわずか1分15秒で、会場の熱気を察してアドリブ感(実際にはシナリオだとは思いつつ、そう感じさせない演技力は素直にスゴい)で笑いを取るのは正直相当に熟練の技と言わざるを得ない。

しかもTerryのダンスが、彼らよりスタイリッシュであることが更におもしろい。

これが計算だとは認めたくないのだけど、これが本当に計算だったとしたらチョコプラ自分が思っているより遥かに高いレベルお笑いをやってるかもしれない。

・4ネタ目。ShoppingのT

おそらくもう彼らはここで勝ちを確信していたと思う。

でも、そんな感じを一切見せてないのはこれも彼らの熟がなせる技だと言わざるをえない。

ここでのTは、今までのTと同じように見せて、実はちょっと違う。

今まではいつTが出てくるのかが笑いのポイントだったのに対し、ここでは試着のサイズが明らかに間違っているというコント的要素で笑いを取っている。

この部分だけを切り取れば最初のつかみとしても狙いにいける笑いだったはずなのに、ここまでコント的要素を用いなかったのはこれもある意味でTに対するミスディレクションになっていて、観客がTを探しているなかで唐突裏切られるような形でコントがぶち込まれる瞬間が相手の虚をつく笑いとして成功している。

要するに、この手前までのお膳立てで、観客はすでにT探しに夢中になっていた。

それなのに、彼らが持ってきた笑いのポイントはTではなく松尾お腹だったということ。

これは笑うのよ。だって、そこに笑いが来るだなんて予想してなかったのだから

そしてその後のTはものすごいベタだった。

シャツに片袖を通した時点で予測ができていて、少し手前で裏切られた分を帳消しにするような形で安心感あるTが来ることで、観客は「もう何も考えずに笑っていいんだ」というコンセンサスに包まれることになった。

難しい顔を維持しようとしていた審査員も、この時点で脱帽という感じで笑い始めていた。

そりゃそうだ。笑いを堪えるためにIQをフル回転して先を読んでいたのに、見事にすべて裏切られる形で、それでいてベタな笑いが突っ込まれてきたのだから、これを耐えられる人間エンタメ業界にいる事自体が許されないという構造になっている。

笑うしかない。

・5ネタ目。TitanicのT

最後最後で再び出落ちという構成

これもやはり、自信がないとできない。

ここまで来ると観客はすでにTを待っている状態になっている。

(なっている。だなんて軽率に書いているが、この短時間でそこまで観客を引っ張り上げたのはほかでもない彼らのお笑い的実力であって、日本お笑いなら毎回こうなるかと言われればそれはNoだと言わざるを得ない。)

そこをあえて裏切らずに素直にTを出すことで、観客の期待感ネタピークを一致させることに成功している。

これも、本当に一歩間違えるだけで全員が白けるだけの寒いネタしかならないので、ここまでのお膳立てが完璧であったと認めざるを得ない。

それができているから観客の大半が結末を予測して、ローズジャック名前が出ただけで面白くなってしまっている。

史上空前の大ヒット映画の、更に誰もが知っているようなシーンをネタ最後に持ってくることで、全員が安心してTを発見できているからこそ、あの一体感が生まれている。

さらもっと言えば、ここに来て彼らの怪しい風貌が実は裏切るかもしれないという絶妙不安演出していて、それでいて予想通りのTが出てきたからこそ、より一層強い安心感につながっているとも考えられる。

すごいのは、ここまでのたった2分40で、それらすべてをやってのけている点だ。

はじめに、ルールをしっかり説明して、想像より早くお約束を見せて、慣れ始めたころに裏切って、さら視点とは違う部分で笑いを取って、最後はしっかり予想の範囲で、それでいて予想以上の見た目の面白さで笑いを取る。

この一連の流れを、たった3分未満でやり遂げている。

これは、「日本お笑い」なんて乱暴な括りで語れることではなく、素直に彼らの実力がすごいとしか言いようがない現実である

増田自信は正直チョコプラのことは嫌いだったけど、このネタは笑ってしまった。

嫌いだからこそ斜に構えて結末を予想してしまたことが、返って彼らのネタで笑うしかない理由になっていた。

それはまるで現地にいた審査員と同じ視点であるように。

まさにゴットタレントステージが完全アウェーだということを理解していないと、こんな構成ができるとは思えない。そんなネタ構成だったのではないだろうか。

大谷選手活躍日本人として誇りに思う」という表現にいつも疑問を感じていたが、チョコプラの今回の活躍を「日本お笑いレベルの高さ」という論じ方をするのはどう考えても納得できない。

それはあくまで、「日本にも世界に誇れるハイレベルコメディアンがいる」という事実しかないだけで、大半の日本お笑い世界相手にここまでのことができるわけがないというのが個人的感想です。

安村さんもすごかったけど、正直今回のチョコプラはすごすぎた。

ポイントポイントで滑ったら別の案が用意されてたんじゃないかって思うくらいなるべくして結果を勝ち取ったとしか思えない。

それなのに「日本お笑いハイレベル」という評価しかできないのは、本当に雑すぎると思うよ。

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