2023-02-09

復讐以外の原動力が欲しい

※以下の文章の中には精神疾患差別したように聞こえる発言があるが、精神疾患の人々を差別揶揄する意図は一切ない。むしろ彼らの在り方に敬意を示したうえで書いていることをここに明記する。

※また、一部生理についての過激描写がある。苦手な人は見ないことを推奨する。

2022年4月大学生になった。あまり他の大学では見られない学部で、演劇系のサークルに入った。6月になればバイトも始めた。サークルの先輩に薦められたバイト先だ。

その学部に辿り着いた経緯は成り行きではあったものの四年間勉強を続けるとしたらここがいいと思って選んだし、演劇系のサークルは前々から挑戦してみたかたから丁度良く、バイトも勤務時間が固定ではあるものの客がいない時間スマホを弄るとかでない限り色々なことをしてもいいという比較的懐が広いところであるし、未だ趣味で収まっているもののいずれそれで食べることが出来たらと思う小説息抜き兼たまの小遣い稼ぎとしては十分。これまでの人間関係で厄介そうなものはあらかた取り除いていたけどチャットアプリ友達欄にはそこそこ名前が残っている。

背伸びをしすぎていない、でも自分理想を少しずつ歩いている。最高の環境だ。

勉強自分の好きなものが多いか単位は今のところ落としていないし、サークルでは脚本採用されなかったけど学園祭ではその採用されなかった脚本原作として拾われて最初のうちだからと裏方仕事を楽しんでいる。バイトは繁忙期を終えて一通りのことは慣れた。趣味も、継続できている。友達は、この前学園祭に呼んだ。元気そうだった。

2月になって生活の基盤が固まって、人間関係や誰が誰にどういう扱いをするかもなんとなくわかってきた今の頃合いで、自分が思っているよりも無能だと理解して、皆が私のことをそこそこ雑に扱いだして、途端に人間不信が襲い掛かった。

この人間不信根本がどこかはわかっている。小学校5年生の時の学級崩壊だ。産休代理先生が皆と『そりが合わなかった』ことによって起きた、たった半年間の学級崩壊教育委員会も動いて、頼みの綱の隣のクラス担任は途中で元から抱えていた持病で倒れてしまった。親は、母親はともかく私がどんな漫画が好きなのかも知らないし服装制限ばかりしてくる父親は元々あてにできなかった。蕁麻疹が出来た。大人が信じられなくなった。同級生が信じられなくなった。別の自分の声が聞こえるようになった。クラスで皆が先生無視しておしゃべりしている声がやけに大きく聞こえた。宿泊行事いじめっ子と同じ班にさせられて『どうしようもなくて』そのままいじめっ子たちと同室で夜を過ごした。先生が生徒を羽交い絞めにした。生徒を体育倉庫に閉じ込めたまま委員会の集まりに戻ろうとした。私が「かんきんじゃないんですか」と言ってやっと開けた。そのころは誰彼もが病気じみていて、例の先生がいなくなって皆が落ち着いても私の病気じみた臆病と自罰は治らなかった。何もかもが憎くなった気持ち小説に換えた。なまじ同世代のなかで頭はよかったものから心理学の本を読んで『昇華』というものがあると知ってじゃあそうしようと思ったことだ。小説を、同級生に見せた。「よくわからいね」と言われて、私の気持ちは何も伝わっていなかったのだと知って、ネット以外で作品を乗せることをやめた。

大学生になったら、狂ってしまおうと思ったことを思い出した。

狂うとは、私の中では「これまで起きたことをなかったことにする」ことだ。

から私は適度に怠け者で適度に有能で人を信じることが出来て人に作品を見せることや自分感情小説じゃない方法でさらけ出すことを怖いと思わないようにした。

怠けることは怖くて無能で人は信じられなくて人に作品を見せることや自分感情小説じゃない方法でさらけ出すことは怖かったけど、なかったことにした。

なかったことにした感情たちが、今更ぷちぷちと熟したトマトみたいに裂けて落ちたのだと思った。

明確に思えたのに、もう一度狂おうと模索してしまっていて、いよいよ病気じみていると思った。

いつだって安定しない生理の剥がれ落ちた子宮内膜と一緒にこの気持ちが洗い流せたらと思って、ダメだった。

病院に行こうと何度も進言された。学校を巻き込んだちょっとした騒動も起こして、診断書も貰った。

でも、行けなかった。

もしこれで『今までの感情に全部説明がついて片付けられて』『自分は悪くないと明言されて』『復讐なんて気持ちが芽生えないようになって』しまえば、その先に何があるのか全く想像できなかったからだ。

普通になってしまった自分が、狂ってしまった自分と同じことになったらと思うと怖かった。何より、復讐の消化兼昇華趣味としてしまった私がどこにいってしまうのかわからなくなった。

後に残った小説みたいな言い回しレポートも、小学校の頃の友達なんて誰もいない連絡先も、ただ『善人でいると騙される』と思って剝き続けていた牙も、全部意味がないものになってしまうことが怖くて、病院に行けない。

片耳が聞こえない母より先に五体満足の私が病名を持つことの気が引ける。

偏見のないフリをして古風な祖父とよく似た父はなんていうだろうか。

成人式で会うかもしれないかつての同級生に『あの頃がきっかけでこうなった』ことを知られることを考えて、怖くなる。

中学生の頃からいる彼氏申し訳なくなる。

Wordファイルふたりぼっちの戦いは、小学校5年生から今日までずっと続いている。

復讐は、終わっていない。

復讐以外の感情は、ぼんやりとしたまま思い出せない。

復讐きっかけとなった思い出は、自己防衛がどんどん忘れさせてくる。

今度はもっとうまく狂わないといけない。

今度もっとうまく狂うための、復讐感情を探さないといけない。

経血を洗い流した風呂場には蒸気が立ち込めていて、曇ったガラスぼんやりした像を見て、私は復讐するための相手を見つけた。

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