はてなキーワード: メトニミーとは
「同性愛者でもトランスでもないけど、異性装は好き」「仕草が異性的と言われると嬉しい」という人がいる。現代ではそれを"gender expression(=ふるまう性)"という概念で語るのだが、それには「そもそも"expression"とは何だろう?」という議論から始めなければならない。
それは自己実現であり、世間に対して決めるポーズであり、観客に見せる演技である。それはしばしば「ファッション」という言葉で(揶揄的に)語られる。「あいつはファッションで○○やってる(=本気でやってない。人生賭けてない)」という具合に。考えてみれば「fashion(=流行)」とはそういうものだろう。テレビでよく見る「オネエタレント」が昨今のLGBTブームに苦言を呈す、なんて記事も時々目にするが、「ガチ勢」が「エンジョイ勢」を恨みがましく睨みつけるのはいつの時代も変わらない。しかしまあ、排他的な業界が衰退するのも世の常で、結局のところ大きな流れには身を任せるしかない。受け入れるしかない。それはとっくにみんな気付いてるだろう。
ところで「ファッション」といえば服装のことを指す文脈も多い。このようなメトニミーは、多くの人にとっての(前述の意味での)「ファッション」を実現する最も主要な手段が服装設計であることに由来する。(語源の話をするならむしろ逆なのだろうが。)しかし、インターネットの普及とともに、匿名コミュニケーションが発達した現代では、それ以外の形で「ファッション」を実現することが要求されるようになったのではないか。
SNSのアイコンや、bioにズラッと並べたアニメのタイトルは、彼らにとっての「ファッション」なのだ。もちろん「絵を描く」こともそう。さらには気に入った表現をリツイートしたり、「いいね」したり、タイムラインや(公開の)お気に入り一覧を設計することも含めて、全てが彼らの「ファッション」なのだ。
「オタク」のハードルも随分下がったな、と思う。かつては「ファッションオタク」と揶揄されていた層が、いつの間にやら主流になった。私はそれでいいと思う。それでこそ正しい潮流だと思う。LGBTにしろ、「オタク」にしろ、「ガチ勢」はそれをアイデンティティの支えとしているからこそ「エンジョイ勢」を目の敵にするのだろう。その気持ちはわかるが、それ自体が「ガチ勢」も所詮は「ファッション」であることの証左でもあるのではないか。自己実現のハードルなんて低くていい。もっと肩の力を抜いて生きていこう。新しい仲間を受け入れていこう。難しいことは置いといて、みんなで楽しく笑えばそれでいいじゃん。