2024-10-27

インターネット時代の「新しいB層」が選挙明暗を左右する

 本日衆院選。今はまだ早朝なのでどんな結果が出るのかはわからない。が、これから出る結果を見た際に、インターネット時代の「新しいB層」を取りこめたか否かで各党の明暗が分かれたという分析に至る可能性が極めて高いだろうと予想している。

 「B層」という言葉小泉政権時代に生まれた。郵政民営化国民に支持してもらうに際し、広告代理店小泉政権の主な支持層として想定したのがB層である

 構造改革肯定的か否か、IQが高いかいか、この2つで縦横の軸にして国民を4つのグループ(A層~D層)に分け、構造改革肯定的(あるいは中立的)でIQが低いグループのことをB層と呼んだ。

 具体的な人物像としては、主婦子供シルバー世代など、具体的なことはよくわからないが小泉総理キャラクターを支持しているような、マスコミに流されやす人物B層として想定される。

 一方で、今自分話題にしている「新しいB層」はこの本来意味でのB層とは異なる。20年近くが経ち、インターネットは完全に普及し、状況は変化している。

 本来B層マスコミに流されやす人物のことだったが、自分の言う「新しいB層」とはインターネットに流されやす人物のことである

 彼らは主にSNS動画サイトを通じて情報を得る。

 もちろんインターネット上での政治的言説には多様性がある。そのため単にインターネットに流されやすいといってもなにか特定政治的傾向を示すことはなさそうにも思える。しかしそうではない。

 インターネットに流されやすい人に共通する特徴として、「インターネット情報を得ている自分」に対してアイデンティティのようなものを感じているというのがある。あるいは、インターネットに対して我々意識というか部族意識というか、そういうものがある。

 その結果として、インターネット対置される既存マスコミに対して不信感や敵意を持っているのがこの「新しいB層」の最大の特徴である

 『インターネット既存マスコミ』という対立軸はそのまま『現役世代シルバー世代』という対立軸スライドする。『インターネットを使いこなす若者既存マスコミに流される老人』というイメージだ。そのため、この「新しいB層」はシルバー民主主義批判世代対立的な言説を好む。

 本来意味での「B層」と、「新しいB層」は想定される人物像が大きく異なる。

 「B層」が「よくわかんないけど抵抗勢力と戦う小泉総理カッケー」というようないかにもアホっぽい人を想定していたのに対し、「新しいB層」はもっと自らの知性に自負がありそうなタイプを想定している。肌感覚として、実際に学歴社会的地位の高い人も多く含まれていると感じている。

 年齢層としても、「B層」が主婦子供・老人だったのに対し、「新しいB層」は若者・現役世代リタイア後の高齢者を想定している。ここにリタイア後の高齢者が含まれるのは意外かもしれないが、リタイアして自由に使える時間の増えた高齢者Youtube政治動画ばかり見るようになるというのはよくある話なのでこうなる。おそらく、リタイアした高齢者からすると政治動画の視聴は社会との繋がりを感じさせてくれて寂しさを癒す効果があるのだろう。

 本来の「B層」と全く違う人物像を想定しているのに何故わざわざ新しい「B層」と呼ぶのか疑問かもしれない。これは、この「新しいB層」こそが今最も狙ってアプローチやすい、操作やすタイプからだ。

 なにしろ「新しいB層」は既存マスコミに対して不信感を抱いている。つまり、いったんノせてしまえばその後マスコミ批判されても「またマスゴミ印象操作してるよ」「既得権益層にはよほど都合が悪いようだな」という具合に批判を無化するどころかより支持を強固にするブーストにすらなる。支持者の反マスコミ感情セルフ情報隔離として利用できるのだ。

 そして、上手くノせて支持者に取り込むのも、インターネットの味方でマスコミの敵という姿勢を見せることで比較的容易だ。「これを見ているあなたネット自立的情報を得ている。口を開けたままマスコミ洗脳される情報弱者とは違う」というメタメッセージを直接言葉にせずとも発して受け手プライドをくすぐるのが肝要だ。マスコミに流される人を馬鹿にしつつ自分インターネットに流される人は無数に存在するのだ。

 ちなみに話は変わるが、マスコミ不信をマスコミ側の努力払拭することはできない。マスコミに不信感を持つと自らが情報強者になったような幻想を得られて気持ちいいため、どうやっても反マスコミ言説は人気であり続けるだろう。

 ここまで読んで、「その新しいB層ってつまりネット右翼のことじゃないの?」と思った人もいるかもしれない。これに関しては、完全なイコールではないが重なる部分が非常に大きいというふうに考えている。

 一般ネット右翼というと嫌韓反中感情が強く差別的言動を取りがちな人がイメージされる。しかし、ここで「新しいB層」と呼んでいるのはあくまインターネットアイデンティティのようなものを感じていて既存マスコミへの不信感が強く、世代対立的言説を好む人のことであって、韓国中国になにかしらの大きな感情を抱いているとは限らないし、差別的言動を取るかどうかも人それぞれだ。

 ただし、何故ネット右翼が韓国を嫌っているのかというと、別に元々韓国に対して悪い感情を抱く経験があったわけではなく、インターネットを通じて「マスコミは報じないが実は韓国はこんなに酷い」という言説に触れたのがきっかけというケースが多いだろう。マスコミ在日支配されているという陰謀論ネット右翼に好まれていることからもこれは伺える。つまりネット右翼もベースにあるのは差別意識ではなく、反マスコミ感情とそれを通じて得られる情報強者幻想と言える。

 よって、ネット右翼と「新しいB層」はイコールではないが、ネット右翼は「新しいB層」の中に含まれているとみなすことは可能だろう。

 スマホを誰もが持つようになり、インターネットがほぼ完全に普及してからそう日が浅くはない。にも関わらず今このタイミングで「新しいB層」の話をするのは、やはり都知事選での石丸伸二氏の躍進の影響が大きい。

 「新しいB層」は決して新しい存在ではなく、以前より存在した。しかし、この層こそが狙うべき票田であると白日の下に晒したのは石丸氏の功績と言えるだろう。

 今日衆院選はその都知事選後初の国政選挙となる。自分は「新しいB層」の影響を強く感じられる選挙結果が出ると予想しているが、実際にどうなるのか注目だ。

 また、今後の日本政治の動きについても、「新しいB層」の影響に注目していきたい。

 例えば、ホッテントリ高市早苗総理誕生現実味を帯びてきたという記事が上がっていて、ブコメでの論調としては「裏金マイナスイメージがあり厳しいだろう」というものが目立ったが、高市氏は「新しいB層から熱烈に支持されるタイプ政治家なので、もしも実際に総理になった場合想像以上に高い支持率を得るかもしれない。その場合、岸田前総理、石破総理共通する失敗として「新しいB層」を取り込めなかったことが挙げられることになるだろう。

  • ネトウヨもだけどリベラルとかフェミニストかな?って思ったけど これ書いてるやつがそもそもリベラルとかフェミニストに被れてそうだしな B層とか主に言ってたのも↓のようなこと...

  • ミスターBean

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