2024-08-10

SNSフェミニズムを語る女性たちが、男にも女にも嫌われる決定的理由

なぜ女性差別をめぐる論争はたびたび炎上するのか。性問題解決に取り組んでいるホワイトハンズ代表理事の坂爪真吾氏は、「多くの問題は、原因をジェンダー還元するだけでは解けない。しかし『ツイフェミ』と呼ばれる動きは、すべてをジェンダー還元するため、『被害者加害者』という二元論に陥っている」

ここ最近、「ツイッターフェミニズム」(ツイフェミ)と呼ばれる動きが一部で広がっている。一見すると、ツイフェミミサンドリー男性嫌悪)によって突き動かされているように思える。だが、ツイフェミミサンドリストという理解は、決して正確ではない。

ツイフェミ言動過激化する背景には、「男が許せない」という怒りに加えて、もう一つの大きな怒りが存在する。

ツイフェミ攻撃するのは、女性嫌悪に満ちた男性だけではない。女性嫌悪に染まっておらず、フェミニズムに対して理解を示すリベラル男性たちもまた、彼女たちの攻撃対象になる。女性への性暴力に反対するデモイベントに来た男性に対して、主催者が「男性の方もこんなに来てくださった」「賛同してくださる素敵な男性もいらっしゃった」と感謝の意を述べると、「少しでもまともな男出会った時に感謝する癖は見直すべき」「被災者ボランティア接待をさせられているのと一緒だ」といった批判が飛び交う。

フェミニズムから派生した学問であり、男性に対して「男らしさの呪縛を解き、女性とお互いを尊重する対等な関係を築こう」という視点から啓発活動を行っている男性学も、一部のツイフェミからは「男性フェミニズムの言葉簒奪して自己弁護をしているだけ」と、親の仇かたきのごとく敵視されている。

なぜ彼女たちは、女性搾取するヤクザホストDV夫といった「明らかな敵」ではなく、「明らかな味方」=自分の身近にいる、フェミニズムに理解を示すリベラル男子たちを執拗に叩くのだろうか。

最大の理由は「自分たちの攻撃が最も通じる相手からである。「何でも斬れる刀」としてのフェミニズムは、基本的に近距離戦でしか使えない。フェミニズムの理論は独特の言い回し専門用語に満ちているので、使い道を間違えると、同じ文脈や言説空間を共有している人(=フェミニスト!)にしか届かなくなる。

そのため、フェミニズムに親和的リベラル男子は、ツイフェミ言葉理解・共有できてしまうがゆえに、最もツイフェミから被害に遭いやすい。

2020年4月22日馳浩文部科学大臣を含めた国会議員らが、一般社団法人Colaboが虐待や性暴力で居場所を失った少女たちのために運営しているカフェを視察した際、10代の少女に対するセクハラ行為があったとして、同法代表の仁藤夢乃(@colabo_yumeno)は、参加した議員ら全員に文書謝罪することを求めた。

この事件はツイフェミの間で大規模な炎上を巻き起こし、安倍晋三首相は同月29日の参院予算委員会で、馳元文部科学相厳重注意する意向を示した。

女性支援に取り組んでいる男性政治家社会起業家ジェンダー平等を目指した政策提言署名キャンペーンを行う男性社会活動家やジャーナリストは、ツイフェミにとって格好のターゲットだ。

彼らの言動事業の一部を恣意的に切り取って、「差別無自覚」「儲け主義」「自己顕示欲を満たすために、女性を利用している」といったレッテルを貼って炎上させる。

燃え盛るタイムラインを眺めながら、「コスト優先で人権感覚のない人たちの運動って、やはりこういうことだよね」「化けの皮が剥がれたよね」とうなずき合うことが、彼女たちにとって至福の時間になる。

実はフェミニズムそのものが最も許せない

しかし、ツイフェミが最も激しく攻撃するのは、女性差別無自覚男性でもなければ、リベラル男子でもない。フェミニズムそのものである

ツイフェミが抱く「フェミニズムが許せない」という怒りは、「男が許せない」という怒りと同様、あるいはそれ以上に激しく燃え上がる傾向がある。

著名なフェミニストによる記事ウェブ上でアップされると、待ってましたとばかりに、すぐに発言の一部を切り取ってSNS上で拡散させ、「この発言は、○○への明らかな差別だ!」「こんな人がフェミニストと名乗るなんて、絶対に許せない」と一気に怒りをヒートアップさせる。

普段は「女性はこうあるべき」という性規範否定的に捉えているにもかかわらず、「フェミニストはこうあるべき」という規範にがんじがらめになってしまい、その規範から1ミリでもはみ出した言動をする人が許せなくなる。

ポルノや性産業批判しない者は、フェミニストではない。女性の客体化を批判しない者は、フェミニストではない。男性性的まなざし迎合する者は、フェミニストではない。性暴力被害者の声に共感しない者は、フェミニストではない……などなど。

そして、「誰が本当のフェミニストか」という問い=「何でも斬れる刀」の正当な使用権相続権をめぐって、フェミニスト同士で壮絶な斬り合いを演じるようになる。

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