2020-10-27

anond:20201026221324

さっき映画を見てきたいちファンだけれども、同調できる部分は多々ある。

同時に、増田分析はかなり正確だが、結論がズレている(悪い意味ではない)理由もわかる…ような気がする。気がするだけ。

 

鬼滅は元増田感情移入しきれていない部分が刺さる人たちに刺さっている、今までの人気少年漫画世界観(没入するところ)が違う作品だと思う。

思うに、雑誌という枠を超えた大ヒットを飛ばせる作者というのはおそらくだ自分の中で確固たる哲学を持っている。

ヒットしない作家だって持っていると思うけど。

その哲学の毛色は、今までのジャンプ発ヒット作はかなり似通っていたと思う。鬼滅はかなり違う。

 

語弊を恐れず言えば、今までのヒット作で人気を博した要素はかなり男性ウケする価値観ではないだろうか。

戦って勝つ、その紆余曲折で高められる勝利快感、高度な戦術戦にハラハラわくわくする、頭脳戦に感心する、

ひらたくいうと「強いオスに心酔する、感情移入するときにはその強いオス、苦戦しても最後に「俺は勝つ!」自分ツエー感+おまけでほぼ必ず自分より戦闘能力で劣る仲間との絆でちゃんぼっち描写回避の群れのボス感を出す」である

こういう作品面白さには物語の複雑さ(よく練られたプロットや上手に張られた伏線が知性を刺激する面白さ)も含まれる。

作品を読んでいて動く感情ある意味即物的で単純だ。

増田も言っている

>強くなりたい理由なんて「この星で一等賞になりてーの!オレは!」

>カッコいい戦闘とか頭脳戦とか印象的なセリフ

の通りだ。

 

既存のヒット作品の多くは強くなることが目的であり、鬼滅では「強くなる過程」は主題ではない。

 

これは私の極めて個人的な、つまり根拠のない感覚だが、「鬼滅の刃、あれ自分には何が面白いのかさっぱりなんだよね。」という人間は、おそらく男性のほうが多いと思う。

作品を読んだときに「この要素に感情が動く」という要素にはおそらく性差がある。

男女では女性のほうが鬼滅に入れ込む率が高いように思われるが、これらはおそらく「強いオスが闘って勝ちました」以外にも心が動く人間に刺さる物語なのだ

 

鬼滅が動かしてくるのはもっとウェットな感情だ。

主人公は最強ではない。(ある意味最強クラス活躍はしてるけど…)

繰り返し、主人公が敵(人間を食料としか思っていない害獣)に対しても優しさや思いやりを投げかけ、家族をどれだけ大切に思っているかが描かれる。

そこで謳われているのは人間美徳への信頼だろう。

人間普遍的に(本当に古今東西人類なら同じように感じるかは知らん)きれいな感情と大切にしたがる感情を恥ずかしげもなく臆面もなく描いてくる。

   

たとえば作中最強の登場人物は神の域に到達している。

いや本当に。物理法則…以外のありとあらゆる法則無視してくるからね。

人間の神経の伝達速度は速くても0.1秒、あなたその間に何回数キロの鉄の塊である刀を振れますか?1回?2回振れたら十分に居合伝説存在になれるよね多分。

 

鬼滅の刃のこの最強人物は1500回振れる…おかしいでしょ!!人間はモリハナシャコガイではない!!しかも「標的は1800個あった」って視認してるのおかしいでしょ!!

 

このキャラ人外っぷりを語るエピソードは事欠かない。

さて、これが既存の「最強オスであるオレ」作品ならこの最強キャラ世界征服済みの魔王=倒すべき強大な敵として思うがまま暴虐を振るっているはずだが、

鬼滅の世界ではこの人物が望んだのは「家族平穏に暮らす幸せである。強さ関係ない。

鬼滅の世界には強さ比べがない。鬼退治ものというバトル漫画だけど、ある意味バトル漫画ではない。強いオスの価値観が入り込む隙間がない。

  

・回想多すぎ

かに回想が多い、とファンでも思う。

常に「敵を倒しました→こんな過去を持っていました…」が語られるのを、ファンですら多いよねと言っている人が一定数いるのを知っている。

 

ただ、回想はキャラクターそれぞれ違うところがこの鬼滅の大事なところなんだと思う。

典型的男性物語キャラクターをそこまで掘り下げない。キャラクターに役割を振れるほど識別性があればそれで「キャラが立っている」範疇である

心情が語られるとしても多くの場合、戦いに参加する心構えに終始する。

他人感情にそこまで頓着しない人間なら、鬼滅の繰り返し語られる個人的な話はうっとうしいだけだろう。

 

ただ、鬼滅ではこの「実はこんな人間でした」を繰り返し語ることで、人間それぞれの尊さ、愛おしさを描いている。

ヒトという形でだけ見るなら何十億もいる存在の、それぞれを内面で深く知って抱く愛情のような気持ち

これなんて言えば伝わるのかな。

その共感愛着を、せりふ回しが生み出す非常に強い没入感をもって読ませるのがヒットした要因の一つだと思う。

 

 

3行まとめ:私が思うに、増田は鬼滅世界が訴えかける感情を受け取る必要性を感じていない人。だから分析は正確なのに「こういうのが最近は求められているのかな」と着地点がズレるのだと思う。昔からコレを求めていた人はいたはず。鬼滅の人を引き付ける要素は、既存の人気作品とかなり違うのだと思う。

 

ネウロ犯人の中に、「他人の脳を揺らす」スキル世界的な人気を博したキャラがいる。

大多数ではない。でも、そのスキルを使うと確実にスキルで脳が揺れる人々がいる。少数でも世界中で見ると何億なので…といった説明があったと思う。

鬼滅のヒットはいつもこのキャラ連想する。

 

  • モリハナシャコガイじゃなくて、アンボイナガイだったわ…たぶん 0.00000001秒で毒針を打ち出すとかいう小さな貝。

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