『スーパー戦隊データカードダス 快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』という、とんでもないゲームがキッズアーケードゲーム業界に降臨した。まだ遊んだことがないなら、ぜひ一度は遊ぶべし。そして、あなたはこう思うだろう「これってゲームなのか……?」と。
ゲーム史に残るトンデモないレベルのゲームだと思うが、おそらく大人が遊ぶことは少ないだろうから、ネット上には公式情報以外が残り続けるかどうか危うい。だから、どれだけ酷いゲームなのか、増田を使って記録を残させてもらう。
まずデータカードダスシリーズは、キッズ層をターゲットにしたカードを使用するアーケードゲーム。有名なところでは、何気にムシキング以上の売上を誇るキッズアーケードゲーム界の王者『ドラゴンボールヒーローズ』や、大きなお友達にも大人気の『アイカツ!』など。基本的には子供向けゲームなので、バランスは割と大味であり、レアカードがあれば無双できたりもするけども、大人も満足して遊べる内容が多い。それで、このスーパー戦隊のゲームもそんな内容だと思ってた。データカードダスシリーズは極端なハズレ作品は少ない。だからこそ、何であんな内容になっちゃったの、あれ……。
はっきりいうと、クソゲーという言葉は似合わない。なにせゲームとして全く成立してない。Wiiの『人生ゲーム』があまりにもの中身の無さから「ゲー無」「虚無ゲー」と呼ばれたりもしていたが、本作はそれに近い。ただし、中身の無さはこちらの方が遥かに上。とにかく一度遊んでみて欲しい。終始ポカーンとして顔で、筐体を眺めるだけになるから。
このゲームは簡単に言うと、ルパンレンジャーかパトレンジャーで敵を倒すゲーム。ただし、プレイヤーはそれぞれのレンジャーを操作するのではなく、応援というか形でバトルに介入することになる。応援は、ボタンの連打、レバーを回す、ボタンを押す、といった操作で行うことになる。本作がゲームとして成立していないのは、これらの介入要素がゲーム的な要素になっていないこと。ボタンの連打があれば、ボタンを連打するほど強くなる、またはスコアが伸びるというのが一般的なゲームだろう。しかしながら、本作は一定数連打をすればそれで終わり。連打を頑張っても、強くなることもなければ、スコアが伸びることもない。「おうえんポイント」というものがあるが、どれだけ押しても貰える量は変わらない(ちなみにおうえんポイントを集めると、ゲーム中でカードの排出候補が増える)。ボタンを押す、という動作についてもタイミングよくボタンを押させるなんて、普通のゲームに有りがちな要素もない。ボタンを押せ、と言われば、タイミングに関係なくとりあえず1度押せばそれでいい。あとは画面の中のレンジャーが勝手に戦ってくれる。それを見ているだけ。本当にただ見ているだけ。
ちなみにボタンを連打しないとレンジャーはピンチに陥ってしまう。どうなるんだとちょっとワクワクしていると、もう一方のレンジャーが助けに来てくれて勝手に倒してくれる(「おうえんポイント」はそれでも貰える)。レバーを回さないとどうなるか試してみると、勝手にレバーを回した扱いになって勝手にゲージが上がっていく。ボタンを押す行為も放っておくと、勝手にボタンを押した扱いになって戦闘が進んでいく。どうやら一切操作する必要すらないらしい。
レンジャーのバトルが終わると、次は敵がパワーアップしてくるので、こちらもロボットを繰り出して戦うことになる。そして唐突に100円の追加料金を要求される。あれ……? ボタン連打を2回、レバー回転、ボタンを押しを1回ずつしかやってないが、それでもう100円分のプレイは終わりのようだ。
なおロボットバトルも攻撃方法を選択したりするだけで、相性がどうとか攻撃力がどうとかゲーム的な要素は一切存在しない。
あと、いちばん大事なポイントだけど、本作にスコアの概念はない。もう一度言うぞ、スコアがない。ゲームとはなにか、ということを考えると、まずはコンピュータとの戦いだろう。スコアとはその戦いにおける指標だと俺は考える。もちろんスコアのないゲームはコンシューマーでならいくらでもあるだろうが、100円を入れて遊ぶアーケードゲームで、その概念がないということは一体何を目標に遊べば良いのか。
レンジャーを操って、気持ちよく戦えることか? ああでも、連打して応援することしかできないからな。ちなみに1プレイでできることは、前述の通りボタン連打が2回とレバー回転、ボタン押しが1回ずつだ。本当に見てるだけになるから。
もちろん「見てるだけ」という行為が楽しければそれでもいいかもしれない。例えば『プリパラ』は、ゲームとしては非常に単純な音ゲーであり、クリア目標を満たさないことの方が難しいレベルで簡単なゲームである。難易度選択もない。そんなゲームであっても、キャラの可愛らしさ、コーデの豊富さから、お気に入りのキャラにお気に入りの音楽でライブさせるのが楽しい、という点から絶大な支持を集めている。こういったゲームもありだろう。ちなみにそんなプリパラでもスコアの概念はあり、オンラインランキングでしのぎを削っている人もいるにはいるが。
話をスーパー戦隊に戻す。本作は見ていて楽しいかと言われると、それも難しい。もちろん自分がスーパー戦隊にあまり興味がないということもあるが、それ以前に戦いが黎明期のスマホゲーのように、静止画の一枚絵に向かって戦っているだけという恐ろしく手抜き内容になっている。レンジャー系は、他のデータカードダスと同じく3Dモデリングによる立体化がされているが(レンジャー側も1枚絵が多いが)、安っぽいCGでありこちらも手抜き感が酷い。
それと、データカードダスなので、当然カードが排出されたり、ゲーム内でスキャンして使えるが、ゲームの進行の説明が読み込ませたキャラに変わったり、前述の「おうえんポイント」がゲーム開始時にボーナスとして貰えるだけ。そんな効果しかないから1プレイに1枚しかスキャンできないし、カードを使用できる理由が恐ろしく乏しい。カード要素いらんだろ。
セーブ用のQRが印刷されたカードを作ることで、セーブもできるが、記録されるのは排出されたカードの種類のみ。セーブ要素もいらんわ。100円の無駄。
無駄、無駄と言い始めるとこんなゲー無を遊んでいる時間こそが本当に無駄だと思う。
しかしこんな酷いゲームがあったぞー!!と間違いなく話のネタになるのは間違いない。ぜひ1度遊んでみて欲しい。そしてこのゲームの酷さを実際に感じ取って欲しい。できれば友人と一緒に遊ぶか、酒が入った状態で、ゲラゲラ笑える状態で遊ぶのがベスト。1人で淡々と遊ぶとひたすら虚しいだけ。
個人的な感想ではあるが、おそらくこのゲームのヤバさに適うゲームは、それこそ『Big Rigs』レベルのアレなゲームくらいしかないと思う。『デスクリムゾン』のような伝説級クソゲーの方がまだ楽しめる。