2024-04-17

任天堂アクセシビリティレビュー

日本ではあまり知られていないかもしれないが、英語圏では任天堂アクセシビリティの欠如を非難する記事コメントは珍しいものではなくなってきた。

特にNintendo Lifeのこの記事はかなり強烈だ。(https://www.nintendolife.com/features/soapbox-zelda-tears-of-the-kingdom-straight-up-fails-in-just-one-respect-accessibility記事の本文だけでなくコメント欄もぜひ読んでほしい。

C5/C6麻痺を持っているゲーマーの男がゼルダについて書いた記事だが、彼はTears of the KingdomがBreath of the Wildと比べてアクセシビリティの面でどれほど進化しているか期待していた。しかし期待しても無駄だったようだ。彼は2019年6月Kotaku青沼英二にしたインタビュー引用して青沼非難する。

青沼ボタンを配置する時は、プレイヤーに感じてもらいたい特定方法があるので、非常によく考えて配置していますキーの割り当てなどのカスタマイズプレイヤー自由にさせてしまうと、ある意味開発者としての責任をすべてユーザーに丸投げしているような気がします。私たちゲームプレイするとき、すべての人に楽しんでもらうことを考えているので、プレイヤーにもそれを体験してもらいたいと思っていますしかし、プレイヤー自由カスタマイズを望んでいることも理解しています

シュライアー:また、身体障害のあるプレイヤーは、開発者意図した方法プレイできない可能性があります

青沼:確かにそれは非常に良い指摘で、今後も意識して考えていきたいと思います

彼は上記インタビュー引用した上で「青沼はそれを認めながらも、その指摘をはぐらかし、結局何もしなかった。青沼さん、同業他社(your peers)が何をやってるか見てみろよ。」と青沼非難している。ここでいう同業他社とはソニーマイクロソフトなどの大手プラットフォーマーだけでなく、EAやUbiなどのソフトウェア会社も含まれるだろう。彼は身体障害者専用のゲームをわざわざ作ってほしいと言ってるのではない。ただ単に、他社のゲームでは普遍的実装されているキーコンフィグを設定メニューに追加してほしいだけなのだ任天堂ディレクタープログラマーUIデザイナー2023年になってもキーコンフィグすら満足に実装することができない。5,000億円もの利益を稼いでいながらそのためのプログラマーすら雇えないのか?一部の人Switch本体設定キーコンフィグをいじればいいと言うかもしれないが、それだとゲームを切り替えるたびに設定も変えなければならないし(一応、本体ではボタンプリセットを5個まで保存できるが)、QTEなどの状況に本体設定は反映されない。ゲームソフトの内部にキーコンフィグ実装するか、あるいはSwitch本体設定によるキーコンフィグソフト1本1本に対して保存できるようにすれば解決するだろう。

だが同業他社と比べた時の任天堂の劣後はそれだけではない。たとえば、ソニーマイクロソフト障害者用のコントローラーを開発、販売している。(ソニーAccess コントローラーマイクロソフトXbox Adaptive Controller)

任天堂は?任天堂は何もしていない。厳密には周辺機器メーカーのHoriがSwitchで使える同様のコントローラー販売しているが、任天堂本体は何もしていない。歴史を遡ると、任天堂はこの分野で業界の先頭を走っていたことがある。Nintendo of America(つまり京都本社ではない)は過去NESで使える障害者用のコントローラーを開発していた。(https://ablegamers.org/history-of-accessibility-in-gaming/)だが今の任天堂は、再三繰り返しになるが、何もしていない。The Game Awardsという大きなゲーム賞がある。この賞では2020年から「Innovation in Accessibility」という項目が新設され、ゲームにどんなアクセシビリティ設定が実装されているか評価される。それ以降、ソニーマイクロソフトゲームはこの賞を受賞したりノミネートされたりしているが、任天堂ノミネートすらされたことがない。この分野で任天堂ゲームは誰にも推薦されないのだ。

ちなみに、任天堂のこうした姿勢は他にも奇妙な事例を生み出している。ファイアーエムブレム 風花雪月では、Switch携帯モードで遊ぶと文字が小さすぎて文章を読むことすらできないと指摘されている。(https://kotaku.com/the-text-in-fire-emblem-three-houses-is-too-damn-small-1836822715)別のメディアもこの問題を取り上げていて、そこではなんと3DSファイアーエムブレムよりも字が小さくなっていることがわかる。(https://www.thegamer.com/fire-emblem-three-houses-accessibility-problem/

これはかなり滑稽だ。テレビモード携帯モードを切り替えられることはSwitchの最大の特徴の1つであるにもかかわらず、任天堂自身がその特徴を侮辱的に扱い、結果的携帯モード無意味にしているのだから任天堂経営者は「ハードソフト一体型のビジネスモデル」が云々とよく発言しているが、実際のところハードソフトは大して統合されておらず、Switchの特徴は機能不全に陥っている。むしろPCゲームの方がハードウェアのことをよく考慮しているだろう。PC場合、さまざまなハードウェアの組み合わせに対応する必要があるため、設定メニューで画質やUIなどを自由に変えることは当然の機能からだ。

最後に、一番上で紹介したNintendo Life記事最後文章引用しよう。

「私は以前、任天堂ゲームアクセシブルにすることをただ思いつかなかっただけだと思っていが、それは間違いだった。真実は、私たち提案と嘆願は認識されているだけで、現時点では、開発者積極的障害のあるゲーマー排除することを選択している。Tears of the Kingdomは、これまでで最も見え透いた嘘の例だ。」

任天堂経営者は「任天堂に関わるすべての人を笑顔にする」などと表明しているが、彼らが実際にやっていることはかなり軽薄なのだ

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