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はてなブックマーク - 自公、女性擁立の数値目標見送り 参院選、立民は4割で国民3割 | 共同通信
もちろん自民党が批判されるべきなのは当然だけれど、まるで自民党や日本政治が特殊だからであるかのように言われるとちょっと気の毒ではある。
似たようなことがフランスでもあった。フランスで候補者の男女比を均等にするような法律ができたとき、左右の大政党はちっとも守らず男性をより多く候補に立てた。
一番その法律を守って女性候補者を多く立てたのは極右の国民戦線だったというオチ。
なんでかといえば、これは共同通信の記事にも「新人候補が多い野党側では」って書いてあったように、その時点で多くの議席を持っている政党は「有力な男性候補者を下ろして新人の女性候補者にすげ替える」勇気がなかったからだ。
だって、その女性候補者が選挙で負けたら議会での勢力が減るんですよ。そんなバクチをするくらいなら現在議席を獲れているか議席を競り合える位置にいる既存の男性候補者という安牌を選んだほうがいいだろう。
なのでフランスでは、既に議席を持っている政党は軒並み法律を破った。ちっとも議席を持っていなかった国民戦線は、既存の男性候補者に配慮する必要性が乏しかったのと「うちらは女性にも優しい政党ですよ」アピールのために積極的に法律を守った。
同じことが日本でも起きているに過ぎない。
1つは、ペナルティだ。
フランスの場合、男女均等にする法律を破って科されるペナルティよりも、より多くの候補者が当選することによるメリットの方が大きかったので、法的には正しいが選挙には弱い女性候補者ではなく、法的に間違ってはいるが選挙には強い男性候補者を立てた。
ということは、逆にいえば、女性候補者を立てて得るデメリットより、法律を破って受けるペナルティの方が大きければ、諸政党は積極的に女性候補者を立てるだろうということだ。
女性候補者1人が足りない分、選挙後は5人分の政党助成金が差し引かれる、とかならどの政党も必死に女性候補者を立てようとするのではないか。
日本もフランスも小選挙区制をベースにした制度を持っている(今回は参議院なのでちょっと違うけど)。これはどういうことかといえば、候補者個人の才覚によって選挙区での勝利が左右されやすいシステムだ。
政党の選挙における目標は1つでも多くの議席を確保することである。その議席獲得が個々人の手腕に拠るところが大きいのなら、そりゃ個々人を切るのは難しくなる。
中選挙区制から小選挙区制になって候補者個人の才覚の重要度は減ったものの、やはり地盤を築いている政治家は強いし、与党であることに胡座をかいてどぶ板をやらなければ当然負ける。
であれば、比例代表制にすればよい。
候補者個人の力量ではなく、政党の政策に基づいて政党が選ばれる比例代表制であれば、「選挙に強い」男性政治家に配慮する必要は小さくなる。
現在の衆参両院にも比例代表部分はあるが、選ばれる人数が少なすぎて「冒険」ができる状況ではない。少なくとも衆議院では、議員全員が比例代表制で選ばれるようにするべきだ(※)。
これは、問題の構造としては、最近言われるようになった高校野球の球数問題と似ている。
甲子園で勝ち進んだ高校の中には、1人の投手に連投させ疲弊させるところが多くある。前途ある高校球児が故障するおそれがあまりに高いことから、改善を求める声は大きい。
しかし、なぜ1人の投手に連投させるのか。複数の投手を育てないのか。
人数ギリギリでやっていて投手候補がそんなにいない、という場合もあるだろうが、最大の理由は「負けたくない」からだ。
日本の高校スポーツの多くはトーナメント制で運営されている。トーナメント制の特徴とは何か。それは「1度負けたら敗退」ということだ(敗者復活戦などの例外はあるが)。
そのため、プロ野球などで使われる「今度の試合は消化試合もしくは負けてもいい試合だから、新人投手を試してみよう」のような手法が使えない。どの試合も全力で挑まなければそこで夏が終わってしまう。
こんな状況で、エース以外の投手を「試す」余裕など持てるはずがない。試してみて通用しなかったらそこでおしまいだ。
投手の健康を気遣った結果甲子園に行けないより、投手が故障のリスクを抱えながらも甲子園に行く方がマシだということなのだろう。
ならば根本的にリーグ制に作り変えれば、1試合や2試合負けるリスクよりも、複数の投手を試してみるメリットの方が大きくなるかもしれない。
あるシステムの内部で人権や平等があまり尊重されていない場合、当事者たちの人権意識を問うのも重要だが、そもそもシステムの方に「人権や平等を尊重しない方がメリットがある」というバグがあるかもしれない。
そのシステムを改善せずに、あいつらは意識が低い連中だ、とだけ言っていても問題はなくならないだろう。そのシステムが続いていく限り、「意識が低い」行動を採った方が合理的なのだから。
※ 男女均等の観点だけでなく、一票の格差や死票などの問題を考えても、小選挙区制より比例代表制の方が優れているのでは。究極的には、憲法を改正して参議院の権力を削った上で、衆議院を「国民の総意の代弁」として全国一区の比例代表制で、参議院を「地域や少数派の利害の代弁」として地域別に選ぶ方法に変えるのがいいと思う。