2015-05-26

バター不足について調べたこと

はじめに、私は酪農のことも乳製品業界の事も、何も知らない。

そのくせ少し調べただけに過ぎないが、僅かに得た物を披露したい。

正しい知識のある人は補記(訂正)して欲しい。

バター、年7100トン不足も 15年度末で在庫4割減 - 離農者多く生乳足りず

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDJ25H2B_V20C15A5QM8000/

まず生乳についてだが、最初ナマモノである飲用に供される。

ついで生クリームヨーグルトチーズに振り向けられる。元々調整弁の役割果たしていた日持ちのするバター最後

バターには12円の補助金がついていた。新たに、チーズに15円の補助金がついた。

酪農家は乳価が最も高い飲用で買い取られることを望んでいる。余剰はせめて加工乳バター)で買い取られないと経営が苦しいと思っている。

が、現実は最も安いチーズ用にされてしまっている(後述する)。

さて、日本酪農コストが高い。経営努力が足りないのだろうか。

ほんのちょっと調べてみたところ、ニュージーランドは牧草地は北海道の約20倍、夏涼しく冬温かく、牧草も年中生える。

北海道から見たら桃源郷のようだ、と言われているらしい。

要するに、北海道戦略SLGやまもといちろうプレイレビューするような大地だ。資源の差は圧倒的だ。

牛は暑さに弱いので、夏は飲用の需要が増えて供給が減る。

冬は逆に、需要が減って供給が増える。結果、生乳が余る。

通常、生乳の余剰はバター脱脂粉乳に回される。が、バターを作り続けるにも限度がある。

在庫過剰となって限界を迎えた2006年3月末、生乳900トンが廃棄された。

これが大きく取り上げられて社会問題となり、袋叩きに遭ったため、重くみた農水省生産制限をすることにした。

牛乳の消費も年々下がり続けており、当時は余剰廃棄は必至の情勢であった。

そこでホクレンは、乳業各社に呼びかける。

乳製品で唯一消費が伸びているチーズ工場を作りませんか?」

ナチュラルチーズは2ケタ成長の市場であり、廃棄乳の問題もあり、メーカー各社は応じた。

これが現在ホクレンが最も乳価の安いチーズ用に生乳を供さざるを得なくなっている事情である

これを背景に、2008年バター不足が起こる。

ロシア中国などの需要が急速に増え、豪州干ばつにより供給が激減、EUも輸出を絞り、国際相場は跳ね上がった($2000/t(H18), $4000/t(H19))。

乳製品の国際価格http://www.j-milk.jp/gyokai/kokusai/berohe000000357n.html

……本当にバターの輸入規制撤廃したら解決するのだろうか?

平時は生乳の生産コストが25~50%である海外からバターが入ってくるかもしれない。

が、世界の需給に変動があった場合バターが入ってくる保証はない。

そのとき国内バターとその副産物である脱脂粉乳は、既に海外勢に駆逐されて誰も作ってはいないかもしれない。

市場の縮小、飼料の高騰(http://www.milkland-hokkaido.com/special/page1.html)、更新できない設備高齢化……酪農の現状は厳しい。

参考:

http://lin.alic.go.jp/alic/month/dome/2008/feb/wadai1.htm

http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=25787

http://lin.alic.go.jp/alic/month/domefore/2014/mar/spe-02.htm

http://www.nyukyou.jp/update/20140717_4.html

http://toyokeizai.net/articles/-/1328

http://daskek.hatenablog.com/entry/2015/05/26/083026

http://www.milkland-hokkaido.com/special/page1.html

http://www.tokachi.co.jp/feature/special.php?k=1691ログインしなくても1~4は読める)

※追記

補助金が乳業メーカーに入るからチーズが作られるのではない。

乳価が生産コストを割っているバターや(特に乳価が低い)チーズ用に補助金が出ている。要するに生産者に出ている。

なお、生産者には配乳権がない。

バター利益率が低く、メーカー生産者も作りたくない。

縮小市場なので利益率の高いものが優先される。真っ先に切られるのがバター

> 輸入を一手に担っている独法がいったい何をしているか

生産者保護

バターの独占業務の利益は、酪農農家の加工原料乳生産者補給金に回る。

国家貿易機関として、国際約束数量(カレントアクセス)の指定乳製品等の輸入・売渡しと国内需給に応じた

指定乳製品等の追加輸入・売渡しを行っており、その輸入乳製品売渡収入平成24 年度13,358百万円)がある。

> ウ 加工原料乳生産者補給交付金交付業務

> 加工原料乳生産者補給交付金交付業務については、指定生乳生産者団体から

> 請求のあった175 万トンに21,291 百万円を支出した。

※追記2

バターの小売販売重量を確認した。

https://www.alic.go.jp/content/000115897.pdf

バターが不足した2014年2013年比較して、10月から12月末までの間の各集計で販売量が400~500トン多い。

供給に大きな問題があったというより、不安による買い込みの方が影響が大きかったのかもしれない。

※追記3

> 完全自由化して夏と冬で牛乳価格差2倍とかになる未来

バター自由化すると、価格差から国産死ぬのは皆の予想通りだと思う。

すると、酪農家廃業で「冬でも多くはダブつかない供給量」(本州のように、9割近くが飲用となる生産量)に落ち着くというパターンが考えられる。

ということは、夏には供給が完全に不足し、不足分は輸入ロングライフで補う。2倍というのは十分に考えられる。

当然ヨーグルトチーズアイスクリームも影響を受けるだろう。

※追記4

>(よく見る理屈

その通りだから放置していたが、やはり書いておく必要があると思い、既に誰も見ていないだろうが追記する。

国際価格の乱高下は、需給の不安定さによるものだ。

今も1万トンを輸入すると報じられているが、日本需要はおよそ7万トン強である

国内生産が壊滅した後、現状で既に需給の乱高下を繰り返している市場からの安定供給に疑問を思わないのは、あまりに楽観的すぎる。

乳業メーカー自身不安を抱いている(http://www.snowseed.co.jp/yukitane_news/news_hokkaido/nh2014_09/nh2014_0903.pdf)。

バターだけでも見通しが不透明だが、自由化によって追記3のように全乳製品まで怪しくなる可能性がある。

農業ジャーナリストは手放しで問題ない、自由化で解決するのだというが、成算の根拠がなく、賛同できない。

※追記5

参考資料って調べたもの全てを載せてるワケではないけど、概要だけならNHKのこれ一つで良いかも。

バター不足でモ〜大変!? どうなる 私たち食卓  http://www1.nhk.or.jp/fukayomi/maru/2014/141220.html

  • pepper君やドローン、ルンバが「ご飯食べるためにおうちに帰る知能」くらい搭載している昨今。酪農などのヘビーかつ割と定常的な作業系に於いてはロボット的な自動化が行われていく...

  • 生産者の保護をしてますっていいながらその生産者がどんどん離農してるわけだが、それって保護してるというのか?というな。飼料の高騰の影響を価格転嫁させてもらえなかったり、...

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