P.A.WORKSが製作したアニメの『グラスリップ』見ましたよ。中々でした。
#
※以下ネタバラシ有
#
#
売上が良くないと言われたら「そうだね」としか言えません。
『グラスリップ』には「あざとい」もそこまでありません。
もっと金を巻き上げてよかったのでしょう。次の『SHIROBAKO』が人気だから、まあ、ほら。
#
内容に関しては「おや突拍子もないね」というシーンはありましたが言われている程は、
気になりませんでしたね。口下手な脚本さんなのでしょう。いいじゃありませんか。
だけど頻繁に家を訪ねるの、あれは気になりましたね。ジャスコ行きなよ、田舎学生なんだから。
#
#
ともかく舞台がP.A.WORKSらしいというか『true tears』っぽかったです。
主題歌、学園、ニワトリ、ちびキャラの走るエンディング、三角関係、とかとか。
その一方で止め絵とかアイコンとか、新しい要素もあって感心しましたね。
#
デフォルメアイコンを出してコミカルにやるのは慣れましたね、悪くなかったかも。
止め絵は基本的には「ここで止め絵かいな」とよく思いましたけど、
個人的には「いいな」ってシーンも一回二回ありました。難しいでしょうねアレ。
止め絵で映像は停止しているのに音声とか時間は自然に流れていくので、
真面目なシーンで止め絵が入ると「今どうなってるの! 早く!」って気になって、
止め絵が好きになっちゃう人もいるでしょうね、私みたいに。でも、不評でしょうね。うん。
#
あ、あとダビデくんの分身心の声。アレ、実写だとそこまで違和感ないでしょうし、
気にならなかったのですけど、ネットだと面白おかしく取り上げられてますね。
人間生きてれば分身ぐらいすることもあるでしょう、さもありなん。
#
やっぱりアングルはやや斬新でしたけど、そこまで感心するところはありませんでした。
改善を要求する。評価としては三角でしょうが挑戦したその心意気や良しという感じですね。
#
③恋愛要素
#
ダビデくんの父親が半分専業主夫みたいだったり(建築家らしい)、幸(薄幸目鏡文学少女)が新しい恋愛したり、
「私は女だけど透子ちゃんも祐くんも恋愛的に好き」って、二人を呼び出してさらっと殴った割に
「(透子にはダビデがいるし?)(祐と二股になるし?)透子ちゃんとはこれからも友達として」って、凄いですよね。
幸(薄幸)ちゃん新しい、素晴らしい。
ともかく世間を先取りした恋愛を提示するのは名作の役目ですね。『グラスリップ』が名作かどうかは、まあ。
#
恋愛全体に関しては、感情移入はしませんでしたが逆に悪くないような気もしました。
一話でニワトリをどうするか突然悩んで「相手の意見なんて自分はこれまで聞いてこなかったんだ」という、
当然の事実に主人公の透子は気づいて、そこから周りに目を向けていったら無神経な透子は裏目裏目で悪くなっていく、という。
#
改めて周りを見れば、透子を含めて相手と上手くコミュニケーションできない人間ばかりで、
不和も生まれるのだけど「そういう無神経なところ(不器用さ)が好き」という結論が採用されていく。
そういった「相手を許していく」作風なので、ネット的・自己責任論的・他罰的視点で見ると面白くないでしょうね。
#
#
キャラクターを見る際に例えば「透子を取られてしまうのではないか」という問題が作中ありますが、二通りに分けましょう。
ダビデの突然の登場に戸惑って喧嘩する雪哉に対して、やなぎはダビデと直に話す(怒る)ことで場を収める直接性を示す。
透子とダビデの仲を静かに壊そうと企んだ幸に対して、祐は静かに怒って山に登るというまるで口下手な間接性を示す。
#
こう「関係を壊す」際には直接性と間接性と分かれるのですけど「関係を築く」際には統一性があるかもしれませんね。
やなぎは独白のように一方的に雪哉に告白したり、雪哉は電話をかけて「お前と話すと落ち着く」と言ったり直接的で、
幸と祐とも一応告白という形を取ったり唐突に親にボーイフレンドだと紹介したり大胆で直接的に関係を築くと。
仲直りの際には、やなぎと幸は口下手なメールを相手に送って、相手がそれに応えるという静かな感じで。
仲直りは静かで、告白は激しくて、分かりやすくていいですね。古典的で。確かにもう少し斬新でも良かったかもしれない。
#
透子とダビデはいつも全力という感じで「コミュニケーション滅茶苦茶下手」って感じですね。言うまでもない。
#
#
ダビデの親夫婦の仲睦まじい感じや、透子の親夫婦のデコボコだけれど仲の良い感じ、
なんだか悪くなかったですね。イチャイチャとしていて、平和で、健やかで、落ち着いていて。
#
ガラス工房の娘の透子が未来を、ガラス等がきっかけとなって「見える」と言うのと、
ピアニストの母を持つダビデが未来が「聞こえる」というのは似た者同士というか、恵まれているというか。
#
こう似ている割に、誰からも好かれる透子と、侵入者として扱われて✝唐突で当たり前の孤独✝を抱えたダビデという、
無神経でコミュニケーション下手同士の癖に、まるで察せない透子と相手を知ってもまるでなってないダビデという、
なんとも対照的というかなんというか、という感じでしたね。なんというか、かんというか。
#
⑥青春;動揺と、そのあっけなさ
#
『グラスリップ』のネット上の感想をざっと見ると「展開動いて」という意見が、ちらほら。
例えば物語序盤に「未来のカケラ」という未来を見聞きする能力のせいで透子とダビデは知り合うのですが、
実際に透子とダビデが見聞きしていたのは未来でもなんでもなかったという、あっけない結論に落ち着きます。
この「未来のカケラ」は恐らく夢のようなもので、まぐれで「正夢」を見聞きしただけで結局は現実でもなんでもないと。
#
序盤に「未来のカケラ」として見えた、線路を歩く「スタンド・バイ・ミーごっこ」も起きなかったし、
ダビデが墜落していくこともなかった上に、幸が入院するのもまるで大したことないと。なんともないと。
#
なんじゃそりゃ。
#
ただ、そういったハリボテの幻覚に透子は悩まされていきますしハリボテの「未来のカケラ」のおかげで、
最後ダビデの気持ちが分かったようになった、と。なんだかハリボテに悩まされもしたけど、悪くなかったと。
#
透子は母親から「青春時代に未来を見てると勘違いしてたけど、なんでもなかった」と言われ、
母が同じく昔「未来のカケラ」を見ていたことを知りますが更に、これより以前に透子は母親から、
本当に未来のことが分かったとしても「一粒で二度おいしい」だけで、別になんてことはないと諭されています。
混乱しても全然なんてことはない、と。『グラスリップ』はあっけない感じに持って行くのですよね。
#
劇中あっけないシーンは割と多くて、例えば「てへぺろ」を連発するおちゃらけた祐の姉が、
珍しく泣いて病室から出てくると思ったら、どうやら病室にいるのは彼氏らしいと。一大事じゃないですか。
だけど時が経つと無事に退院してコーヒーを飲みに来ると。なんてことはなかったと。そうなの? 嫌いじゃないけど。
#
新しい恋愛体系とか「そういう無神経なところが好き」とか、なんだか『グラスリップ』ってとても、
許容的で包容力あるなって思うのですよね。「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。」って感じで。
あっけなくて拍子抜けでコケオドシだけれど『グラスリップ』は積極的に許していくスタンスで評価に値します。
#
⑦雑な総括
#
基本的に映像も美しいですし、終盤の空とかガラスとか月とか綺麗ですよね。
私は『グラスリップ』、とても綺麗な作品だなと思いましたね。別にそんな悪くなかったです。
「ヘイトスピーチ」とか「過激派組織IS」とか排外的な問題が取り巻く今に、