2011-12-31

http://anond.hatelabo.jp/20111231154455

はじめに

別に独裁」を連呼はしてないけど、橋下も、その支持者も嫌いなので一言。前出の動画を見て簡単に要点をまとめるけど、

橋下「僕は民主主義ルールを守った上で、自分意見を実現するための方法を行っている」

橋下「少数意見を尊重していたら、実行ができない。少数意見尊重は理想だが、今はそれをやっている場合ではない」

まあ、おおむねそういうことを言ってる。ここまではOK?

でも、この上段と下段は矛盾してる。そこが理解できているのだろうか。これをなぜ矛盾というか、順に説明したい。(これが矛盾だと理解できる方は、一気に下の「矛盾について」までジャンプしていただいて構わない。)

民主主義とは何か

多数決は糞だ

まず、橋下や多くの橋下支持者の言う「民主主義」とは何か。本当に理解しているのか? たとえばそういう人に、民主主義って何?って聞いてみると、それは多数決のことだとか言う。馬鹿!としかいいようがない。少しはググれ。多数決というのは、民主主義の本体ではなく、言ってみれば糞のようなものだ。生きていれば必ず出る。それが糞。だが、それはもの本質ではない。やむを得ず出す余剰や排泄物本質だと言ってみるのは、スカトロプレイ人間真実がある、というSM愛好家の口吻と同じ程度の説得力しかない。要するに一種の自己弁護詐欺である

なぜ「糞」というか。民主主義本質とは何か。説明する。

意思を決定する方法

政治とは意思決定だ。その意思決定の主体を、どこにおくか。大昔は神に預託された巫女が、あるいは神権をもった王がもった。しかし、徐々に一人の意見の過誤を防ぐ意味から、多くの頭脳による方法が用いられるようになり、君主制一定の中からトップを選ぶ)、寡頭制(複数で決める)、貴族制(階級全体で決める)、あるいはそれらを組み合わせることで意思決定がなされるようになった。古代に一度行われていた民主主義は、近代に入り、社会経済成熟と歩を並べ、自由主義資本主義社会の進展とともに、「みんなの意見を合わせると、おおむね正しい結果になる」という知見の下、選挙による間接民主制という形で、多くの国で採用されることとなった。(余談だが、間接民主制をとる場合大前提として、投票する大衆は、現下に起きている事態について、必要かつ十分な知識をもつ必要がある。そこで、間接民主制をとる集団では情報を適切に配分する方法が必要となる。多くの近代国家では、そのために民主制とセットで、権力から自由なメディアを発達させてきた。自由なメディアの無い国に、民主制は成立しない。)

で、「みんなの意見」をまとめるために、民主主義はどのような方法を取るか。それは「話し合い」である(というより、それ『しか方法はない)。集団での意思決定であるから、理でもって他者と交渉し、協調精神で話し合いをすすめながら、最終的に合意を得て決定する。その際、たとえ少数であっても、その少数意見を尊重すること無しには、集団で合意の形成などできない。特に、間接民主制の下では、たとえ一人の意見であっても、その一人の背後には膨大な人間存在しているため、軽視することは許されない。少数意見を採らない場合、反対を主張する多数派には「採らない理由を合理的に説明する」義務があるのは当然だ。

最終手段としての「多数決

ただ、もちろん政治現実ものであり、現実人間は不完全なので思想・信条見解の相違がある。時代の要求する文化によっても、物の価値は変動する。その変化の前後で人の価値観は異なるだろうし、そうなると、どれだけ理を尽くしても最終的に対立が解消しない、という事態は起こり得る。だがそれでも、もちろん政治決断をくださなければならない。だから、理を尽くして越えられない壁がはっきりしたときには、それを越えるため万やむを得ない解決手段として、『多数決』が用いられることになっているのである

本来、とにかくひたすら話し合うのが民主主義である。だから、決定を多数決に持ち込むような事態は、民主主義が敗北するときと言ってもよい。だが、民主主義が敗北しても我々は民主制を放棄するわけにはいかない(それよりマシな方法存在すると知られていない)から、その場合に意思決定を行う最終手段として『多数決』は許容されているに過ぎない。多数決とは民主主義の糞だというのは、つまりそういう意味だ。現代日本民主制は、理と協調精神による話し合いを通して多くの素晴らしい意思決定を行っているが(与野党ケンカばかりしていると思っているお子様は、日本の色々な法律がどのように成立しているかちゃんと確認すべき)、不完全な決定のいくらかを多数決という糞としてひり出してもいる。それだけを見て、多数決は素晴らしいなあ、とか思ってる人間は、スカトロジスト(糞尿愛好家)と呼ばれても仕方ない。そう呼ばれることに誇りを覚えていて、一緒にするなと怒る人もいるかもしれないな。すまん。

矛盾について

民主主義についての初歩的な知識

さて、以上を踏まえ、比喩として、もう一度言う。多数決は糞だ。少数意見を最終的に「採らない・採れない」ことはもちろんある。それでも、一定合意を得るための様々な譲歩や協調のための配慮は必要なのであって、それは民主主義コストなのではなく、民主主義による意思決定を可能な限り正しいものにするために絶対必要な手続きだ。だから多数決をタテにして少数意見を圧殺する人間は、そもそも民主主義者ではない。数の暴力を振りかざして権力を握る人間は、端的に言って独裁者である

最初に【矛盾】と言ったのは、「少数意見を尊重する」ことこそが民主主義ルールそのものであり、少数意見を尊重しないのは単なる独裁(あるいは数の暴力であるにも関わらず、「民主主義ルールを守る」と言ったその口で彼が「少数意見を尊重しない」と述べているからだ。少数意見を尊重しないなら、それは民主主義ではない。彼は法律家であり政治家であるのだから、そんな初歩の初歩をしらないわけがない。

あるいは、彼は「ここで民主主義ルールとは選挙のことを言ってるのだ」と言い逃れるかもしれない。だが、「選挙」とはあくまで「間接民主制」を成立させる手続きの一つに過ぎず、民主主義における意思決定システム本質とは無関係であることもまた、言うまでもないくらい当たり前のことだ(首長選挙で通ったからといって、その主張が議会の全体合意もなく自動的に「承認」されるような詐術が成り立つなら、最初から議会は必要ない)…これもまた、政治の初歩の初歩であり、法律家であり政治家である彼が絶対に知らないはずはない前提だ。ではなぜ、彼は平気でこういうことを言うのか?

ヒトラー尻尾

それは、選挙民のほとんどが「民主主義とは多数決のこと」であり「多数決選挙のこと」である、と二重に勘違いしていることを知っていてそれを都合良く利用するためだ、としか解釈できない。その二つの勘違いを利用することで、「選挙に通ってしまえば独裁してもよい」という思い込みを形成し、支持者がそれを支持する「空気」を作りだして、反対する良識派(というか当然起こる反対)を封じ込め、本来通るはずのない法案を作成議会を通過させようとしている…それが、目下彼がせっせとやっていることではないか。そして、そういうところがヒトラーの手口と酷似していると指摘されているところであり、彼に警察権や軍事力立法権あるかないか、ということが問題なのではない。まあ、個人的には彼は、ヒトラー尻尾というより劣化矮小版のコイズミジュンイチローだと思っているけれど。

最後

以上を踏まえて、彼の言っていることはシンプル嘘だと私は考えている。嘘から発生する利益を享受する人間をなんというか。その呼称は各自に判断に任せるが、いずれにせよ、民主主義破壊者が、口先だけ民主主義を唱えながら権力の位置にあるという現状を、どのように見るか、これは呼称なんかよりも重大な問題だと考えている。

これは、彼個人が善意の人であるか悪意の人であるかという問題ではない。民主主義システムそれ自体にそもそも脆弱性があって、その脆弱性がまさに攻撃されており、ウィルスチェッカーメディア)も、そのウィルスがまさに自己の中からメディアが創りあげたスターとして)誕生したために有効に機能していない、という状況をどう見るかという問題である

以上、簡明に反論してみたつもりだが、随分長くなった。反論があれば伺う。

記事への反応 -
  • だいぶ昔の動画ですが、ご本人が違いを説明していました。 http://www.youtube.com/watch?v=1yrkzdVGd5E 追記: 明快な反論を希望します >独裁連呼してた方々

    • はじめに 別に「独裁」を連呼はしてないけど、橋下も、その支持者も嫌いなので一言。前出の動画を見て簡単に要点をまとめるけど、 橋下「僕は民主主義のルールを守った上で、自分...

      • 実際彼はある種独裁的で、現状の問題に対して民主主義的解決をする気は(あまり)ないというのを理解した上で 「民主主義のルール」に抵触しない形でやっていると自分は評価している...

        • wikipediaからの引用お疲れ様。しかしそれは、「ある国が民主主義を僭称する独裁体制であるか否か」を調べる基準と書いてあるとおりで、「民主主義のルール」と決めつけるのはいかが...

      • そういう糞の塊みたいな理屈はどうでもいいから、お前がどういう利益を欲しいと思ってるのか3行くらいで書いてよ。

        • お前がどういう利益を欲しいと思ってるのか3行くらいで書いてよ。 自分は大阪と利害関係にないので、間違った意見がまかり通っていることに関する個人的な違和感の解消が主たる目...

      • 元増田です。 丁寧なご説明ありがとうございます。 また、少し煽り気味な追記を書いたことをお詫び致します。 自分としてはあなたの説明で十分納得できました。 ありがとうございま...

        • 丁寧な返信、痛み入る。煽り喧嘩は増田の華なので、謝罪には及ばない。お互いさま。むしろもっと粘って反論してくれ(笑)。 橋下氏個人よりも、自分の目下の関心は、先に書いた...

      • 僕は増田のような高潔な志をもつ人が嫌いじゃない、というか好きだけども、意思決定においてはスピード、期限が必要になると思ってる。 時間が無限で、議論している間に一円のお金...

        • 二大政党制が政治にスピードを与えてくれるとか、アメリカの現状見たうえで言ってんの?

          • 横だけど。 結局人類が知ってる政治形態では、最強に優れた独裁者が中央集権的に全部決める、というシステムだけがまともに機能して、あとのシステムは全部似たり寄ったりのうんこ...

            • そこで直接民主制ですよ。 今ならネットワークが存在するのですべての案件について多数決をとることが可能だ。

              • でも実際今国会に出されてる全法案理解して賛否決めれる有権者はほとんどいないと思う あとTPPとか外交のような交渉も多数決でできるわけない

              • IT技術の発展は確かに直接民主制での大きな欠点である 「大規模・複雑な社会での運用の困難さ」を緩和していますが、それは 直接民主制の運用上の問題点を解消しているだけです。 直...

              • そこで直接民主制ですよ。 今ならネットワークが存在するのですべての案件について多数決をとることが可能だ。 さて、その「すべての案件」とやらは何件くらいだと想定している...

              • TPPに関する議論を見ていると、大多数のネットワーク利用者は賢くも何とも無いんだって分かりますよ。 現締結国の条文自体はニュージーランドのサイトから英語で読めるし、日本の官...

      • 放っといても税収が増えて、増えた分の分配先を考えるのが政治だった時代なら「みんなの合意」も簡単に成り立つだろうけど、 税収が減って、どこから削るのか、どこからもっと税金...

        • そもそも財政再建が必要でないならいくら多くの人が賛成しようが無駄な犠牲を生むだけの無意味な暴力にしかならないよね 誰かの心臓を生贄に捧げないと太陽がなくなるとか思い込ん...

      • 判っていてあえて、とも思うのですが。 「意思決定の手法として対話を最善と考える」のは、あくまで「代議制民主主義」 での理念であって「民主主義」での共通理念ではありません。...

      • http://anond.hatelabo.jp/20111231173519 内容のわりに長い 情緒的な比ゆ表現や繰り返し表現が多すぎる   ・説明を理解しようと読む人間にとって、話の流れがわからなくなる原因   ・特に...

      • 「民主主義」を理解していない人のための覚え書き 具体例 ↓ 欠点1:民主的な組織は非効率 欠点2:民主的な組織は多数決 欠点3:民主的な組織の企画は丸くなる http://dennou-kurage.hatenablog...

        • イライラした気持ちと上から目線ばかりが充満して具体性に乏しく、 お前の文自体が全く「話し合いの苦手な奴」の特徴に満ち満ちている。 お前は自分が思ってるよりも数段低能だ...

        • 例えば俺が猟奇的な提案ばかりする少数派だとして、 どんな規模でもいいので民主的な議会に乗り込んで「俺の話を聞け」と頑張る、 で自分の意見が通らない限り「話し合いが尽くされ...

          • 根拠もなく「話し合いが尽くされてない」と喚いている時点で議論になってない。 例として出すなら「理を以って猟奇的な主張をしているのに聞き入れられない」といった場合だろ。 そ...

            • 「根拠も無く」って 根拠は提示するに決まってんだろw 問題文ぐらいまともに読みこめるようになりましょうね…

              • 根拠を提示した上で論破されて、それでも「話し合いが尽くされてない」と言えるなら、そこに根拠は無い。 根拠を提示した上で論破されて、そこで引き下がるなら、「自分の意見が通...

                • すごい勢いで頭の悪さがあらわになってるなあ そもそも”根拠”だの”論破”だのっていうのは何についておっしゃってんの? 例えば「学校の統廃合やめて」でもいいけど こんなも...

                  • 「議論なんて無理」と言って盲目的に相対主義を振りかざし、議論をしようという相手を馬鹿呼ばわりするんだから、そりゃ民主主義が根付かないわけだよな。

                  • 「学校の統廃合やめて」というのが、増田が言う「猟奇的な主張」ってやつなの?

        • 『民主主義への誤解例』 http://anond.hatelabo.jp/20130227085802 ここで述べられているのは理念としての民主主義であって、その一般的な本義だよ。その実践において民主主義がどの程度多数決に...

          • 『民主主義への誤解例』で述べられているのは理念としての民主主義であって、その一般的な本義だよ。 その実践において民主主義がどの程度多数決に頼らざるを得ないのかという現...

    • こういう禅問答のような反論にはウンザリ 「ひたすら話し合うのが民主主義」「多数決とは民主主義の糞」 増田のいう本来あるべき民主主義の形って結局人間には実行できない理想郷...

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