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2022-10-22

艦これ舞鶴市知財市長選挙のまあまあヤバい話(前編)

2022年9月中旬に注目を集めた、艦これ舞鶴市来年2023年に予定されている市長選挙に関わるお話をまとめました。

艦これユーザー視点なので、その点承知おき下さい。

事情をよく知らない人にも分かるように書いているため長いのと、当時深掘りした人にはあまり新しい情報はないと思うのでその点もよろしくお願いします。

舞鶴市長選にわりととんでもない人が出馬予定ですよ

京都府舞鶴市2023年2月現市長任期が終わり、市長選があります

それに関わり、既に立候補を表明している松本隆さんという人がいます

こういう話に個人名を出すのはあれかなとは思ったのですが、公人になろうという人ですし公開情報なのでいいかなと思い直しました。

選挙ドットコムにも掲載されていますしね。

さて、この松本さん、「やばい舞鶴 森本たかしならこう変える!」というYouTubeチャンネルを開設していまして、日々動画投稿されています

このチャンネル9月中頃に投稿した動画が軽く炎上したことで、にわかに一部界隈で注目されました。

いわく、舞鶴市には古くから海軍文化があり、KADOKAWAは「艦隊これくしょん -艦これ-」というコンテンツ文化盗用をしていると。

にも関わらず、森本さんの尊敬する「Aさん」に対し、知財侵害をやめるよう警告書を送りつけたと。

私は森本さんの動画に「それはKADOKAWAの方が正しいのではないか」という趣旨コメントをしていたのですが、この度ブロックされ、コメントができなくなりました(正確に言うとできることはできるのですが、YouTube仕様自分以外は森本さん含め誰も読めないのです)。

そこで、備忘録がてら今回のことをまとめておこうと思いました。

なにぶん市長候補とその周辺の不祥事なので、公共性があるものと考えています

特定個人や団体を批判的に扱っていますが、憎悪を煽る目的は一切ありませんのでよろしくお願いします。

*固有名詞がたくさん出てきますが、見やすさを優先し、初出の場合やおおむね5文字以上の長いものにだけかぎかっこを付けています

とても長いので1行でまとめると、舞鶴には艦これIP勝手に使って地域振興を目論む人たちがいて、そのお仲間の森本さんが市長選出馬しますよ、というお話です。

背景について

まず基本的な事項から

Aさんに警告書を送ったKADOKAWA(厳密にはグループ会社の角川アーキテクチャ)ですが、2013年から艦隊これくしょん -艦これ-」(以下、艦これ)というゲームをEXNOA(旧DMM GAMES)のプラットフォームで展開しています

ゲームアニメファンであれば、触れたことはなくても名前くらいは知っているでしょう。

そして「砲雷撃戦!よーい!」という、艦これオンリー同人イベントがありました。

さまざまな地域で開催されたイベントで、舞鶴も会場の1つだったのですが、2021年3月イベント最後現在廃止となっています

廃止理由は公開されていませんが、舞鶴市内で別の同人イベントは開催されており、別の地域艦これ同人イベントは開催されており、「砲雷撃戦!よーい!」運営の別のイベントも開催されていることから、「砲雷撃戦!よーい!」だけの事情があったと推測されています

要するに、KADOKAWAから怒られたのではないかと。

ただ、当時は誰も事情を知らなかったのではないかと思います

同人イベントって何?という人のために

同人イベントとは、主に個人制作した作品一般流通では販売しない(できない)ものを会場限定販売するというイベントです。

扱う作品が本だけの場合同人誌即売会とも呼ばれます

原作なしのオリジナル作品だけを扱う同人イベントもありますが、現在どちらかと言うと主流なのは二次創作、つまり既存作品モチーフにした作品を扱ったものでしょう。

オンリーイベントは、参加者が全員同じモチーフを使うというルールを設けたイベントです。

イベントではコスプレのように本やグッズ制作以外で参加できる場合もあります

既存作品モチーフにする以上当然なのですが、二次創作原則として著作権侵害します。

しかし、同人イベント販売される二次創作作品は見逃される傾向にあります

こうしたイベントクリエイティブ人材養成する場になっている面があり、多くの版元がそれを尊重しているからです。

権利者側がガイドラインを示し、その範囲二次創作を認めると宣言している場合もあります

ガイドラインがない場合は目安すらありませんが、版元が問題視すれば著作権侵害等を問われることになります

そのためOKNG境界あいまいで、二次創作活動は「版元に怒られないようにしよう」が大原則になります

常に議論のある部分ではあるものの、建前として「ファン活動であって営利目的ではない」というものがあり、二次創作では作品の「販売」ではなく「頒布」という言葉を使うことが多いようです。

大変盛り上がったけれども

往時の「砲雷撃戦!よーい!」は大変大きな盛り上がりを見せ、開催期間2日でのべ1万人以上を集めたこともあるようです。

最盛期には周辺のホテルが満室になり、地域を走る電車イベントのために増発するという事態にまでなりました。

ここまで盛り上がった要因の1つとして、地元商店街の協力がありました。

会場のすぐ近くで屋台村を形成し、地元の美味しいもの提供したのです。

好きな作品同人誌を買い、美味しいものを食べる。

最高じゃないですか。

ところが、ここで1つ問題が発生するのです。

普通同人イベント公式の許諾は出ません。

するとこの屋台村、艦これに便乗して商売している、法律用語で言うと「冒用」しているのではないか?という点です。

ごく初期は、これを誤魔化すために「同人イベントをやっていたら、たまたま近くに屋台村が出ていた」という体裁でいたと記憶しています

ところが、いつからか2つは一体化し、「砲雷撃戦!よーい!」は屋台村をイベントの売りの1つとして扱い始め、同じポスターで案内までするようになりました。

すると、次に気になるのは責任所在です。

屋台村は誰が主催しているのでしょうか?

MCAというNPO法人

ここで出てくるのが「舞鶴クリエイティブアソシエーションMCA)」というNPO法人です(マカと読むそうです)。

MCA2014年2月に開催された「砲雷撃戦!よーい!」のにぎわいを見たTさんMさんが発足した団体です(私人なので一応イニシャルにしておきますMCAを調べればすぐ出てきますが)。京都府への登録2015年7月になっています。一応、地域振興や文化振興を目的としたNPO法人ですが、ネット上に残っているインタビュー記事などを読む限り、発足のきっかけは「砲雷撃戦!よーい!」です。

このMCA地元事業者を誘い、「砲雷撃戦!よーい!」に併設する屋台村を作ったというのが実情のようです。

なかなか凄いな、と思ったのが、府に提出した活動報告書に堂々と「艦隊コレクションイベント」と記載していることです。

あれ、同人イベントなのでKADOKAWA許可は取ってないですよね?なんでNPO法人活動報告にゲームタイトルが出てくるんですか?しか表記が間違ってる?

というのが最初感想でした。

さらによく見ると「従事者の人数」という項目に「10人」とあり、MCAから人が派遣されていたことが分かります

ちなみに「砲雷撃戦!よーい!」の名前も出てくるので、「艦隊コレクション」であって「艦隊これくしょん」ではないという言い訳はできないですね。

また、「砲雷撃戦!よーい!」の前夜祭を委託事業として請け負って20万~30万円前後報酬を受け取っているので、完全に艦これ名前を使って商売をしてます

この時点でMCAによる知財侵害ほぼほぼ確定したと言ってよいかと思います

ゲームキャラクター第三者が描いていれば著作権のうち翻案権侵害になるでしょうし、艦これ名前を使って人を集めてイベントを行うのであれば不正競争防止法抵触するでしょう。

森本さんはTwitterで「私達の知識レベルでは一線を超える事は無いとは思います」と仰っていましたが、まあ嘘ですよね。

他社のIP勝手に使って商売していいなんて法理はありません。

スタート地点からアウトです。

余談ですが、IP知財知的財産)は著作権法や商標法不正競争防止法などいくつかの法律で守られるものをまとめた広い概念です。

今回の件は著作権だけでは語れないため、このワードがたくさん出てきます

もう1つ余談として、艦これ公式は「砲雷撃戦!よーい!」について発信したことほとんどありません。

会場でのトラブル逮捕者が出たという報道があった際に「これは…無許諾の非公式な催しですね。企業関係しているでしょうか。であれば、問題ですね。少し調べてみましょう。」とツイートしていただけです。

「砲雷撃戦!よーい!」廃止情報が流れたのはその約9ヶ月後なので、公式もそれまで全く知らなかったということはないだろうと思いますが、この事件が介入の呼び水になった可能性はあるかと思います

当初メディアに「艦隊これくしょんのイベントで…」と報じられたので、いい迷惑だったのは間違いありません。

同人法人

MCAがアウトなら「砲雷撃戦!よーい!」もアウトなのでは?という素朴な疑問が生まれると思います

結論としてはそうなると思いますが、実はもう少し面倒な背景があります

個人法人の扱いの違いです。

艦これ運営2013年の頃から二次創作IP利用に関するガイドラインを出しています

正式文書にはなっていませんが、DMMプラットフォーム内や公式Twitterアカウントで発信したものなので、正式ものとして扱うのが正道でしょう。

このガイドラインでは、個人が楽しむ範囲同人活動)で、他人や他社、運営関係者に迷惑をかけなければ黙認するということになっています

一方、法人自治体団体が利用する際は必ず運営相談するように、としています

MCAと「砲雷撃戦!よーい!」は、片方は法人、もう片方は個人と両方の要素を持っています

まりMCA屋台村と「砲雷撃戦!よーい!」が一体になった場合、同じイベントでありながらガイドライン上は屋台村はアウト、「砲雷撃戦!よーい!」はセーフということになります

まあ、実際は半分だけアウトとはならず、アウトの要素を持っている時点で個人側のガイドラインの「迷惑をかけない」に抵触するわけで、結果的に「砲雷撃戦!よーい!」そのもの廃止となったのは当然と言えば当然のことでした。

冷静に考えればNPO法人が他社のIP勝手に使って活動をしていいはずがなく、どうしてKADOKAWAにお伺いを立てなかったのかという疑問は残るのですが、残念ながらそうなってしまったのです。

MCA知財関連の知識運用はあまりにお粗末で擁護のしようがないのですが、1つだけ気の毒に思うのは、最初に触れたのが「砲雷撃戦!よーい!」という同人イベントだったことです。

実際のところ、MCAが利用したかったのは艦これIPではなく、舞鶴市内に市外の人が集まっているという状況だったわけです。

実際に人を集めていたのは「砲雷撃戦!よーい!」だったので、手を組むならこちらだという発想を持ってしまったのは仕方がないことだと思います

艦これ公式と組んでも、人が来なければ意味がないのですから

問題は、艦これKADOKAWAIPであるということは当然分かっていたのに、冷静になってIP侵害であるということに向き合えなかったことです。

同人イベント隠れ蓑にしているか安全だと思ったのでしょうか。

一緒に盛り上げた以上「砲雷撃戦!よーい!」は仲間であり、仲間を裏切ることはできなかったということでしょうか。

それとも、ここまで大きく育てたのだから、版元と言えども奪うことはできないという奢りがあったのでしょうか。

結果、(おそらくKADOKAWAの介入により)全てを失ってしまったわけです。

ただ、MCAは「砲雷撃戦!よーい!がなくなっても同人イベントとの協業を諦めなかったようで、その後は2019年から始まった「舞鎮駆逐隊」というイベントに傾倒していたようです。

この「舞鎮駆逐隊」は後でまた出てきますが、今年9月に6回目の開催を目前にしてKADOKAWAから盛大に怒られて中止になり、主催者は今後艦これイベントを行わないと誓約させられました。

そしてこの中止になったイベントサークルスペースに、MCA内部組織である舞鶴鎮守府実行委員会」が割り当てられていました。

KADOKAWAと「舞鎮駆逐隊」の間でどんな交渉が行われたのかは分かりませんが、MCAが絡んでいたことを責められた可能性もないとは言えないのではないかと思います

もっとも、それ以前に「舞鎮駆逐隊」は主催によるイベント内外におけるグッズ販売問題視された可能性も高く、確かなことは分かりませんが。

イベント主催個人でやるには負担が大きいので、組織を作る、法人主催になるというパターンが多く、主催二次創作グッズを販売する=同人活動の枠を超えたと判定されるリスクが高くなります。)

中編に続く

https://anond.hatelabo.jp/20221022145225

 
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