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たまには「まとまらない考え」を書いてみるのも良いのかも知れない。
イスラエルでは、妊娠も出産も誰もが当たり前に通る人生の過程である。「子どもかキャリアか」という問いの立て方は確かにあるが、とにかく誰もが子どもを育てることの重要性を確信しているので、育児のために仕事に影響が出ても多少は仕方がないという暗黙の前提が社会全体に共有されているのだ。例えば私は、博士課程を修了させるために夫と上の子と共に日本に四年滞在した後イスラエルに戻ってきたとき、妊娠していた。しかし夫は、すぐに大学での就職活動を始めろと言う。大きなお腹を抱えて面接に行って果たして職が見つかるのかと思ったが、夫は「妊娠期間がいずれ終わるのはだれもが知っている自明の事実である。明日から働きたいと言っているわけではないし、今妊娠しているということは仕事を始めてすぐにまた産休を取ることはないとの判断材料になる」と言うのだ。
確かに一理はあるが、半信半疑のままハイファ大学とテルアビブ大学に直接電話をかけて関係する学科の責任者たちとアポイントを取って会った。どこでも出産後いつから働き始められるのかを聞かれ、適当に答えているうちにテルアビブ大学での職が見つかってしまった。また働き始めたら、バギーに乗せて赤ちゃんを大学に連れてきている学生がけっこういる。大学と幼稚園や小学校では休みが微妙に違うので、ベビーシッターの見つからなかった教員が自分の子どもを授業に連れて来ることもある。私もずいぶん連れて行ってクラスの後ろに座らせておいた。
産休は三ヶ月なので、生まれたら早急に預ける所を見つけなければならない。公立や私立の保育園、保育者が自宅で数人の子どもを預かるミシュパハトン、個人のベビーシッターなどがその選択肢である。親も保育者も、とにかく子どもに「温かさ」を感じさせるということをその基本方針としている。「冷たい」とか「乾いている」というのは、イスラエル人にとって徳性とは最も相容れない要素であり、逆に「温かい(直訳は「熱い」)というのは最優先事項である。抱き上げ、頬ずりし、キスをするという身体接触を重視するだけでなく、絶えず話しかけたり歌を歌ったりする。少し大きくなると、分かっていてもいなくても本を読み聞かせる。その一方で、哺乳びんやおしゃぶりからの卒業はそれほど重視されない。日本の保育園でよく聞く「自分のことは自分で」という衣服の着脱等に関する自立教育もあまりない。イスラエルでは四歳になってもおしゃぶりを離せない子も珍しくないが、大人たちは「二〇歳になる頃には大丈夫」と言ってさほど気にしない。確かに日本とイスラエルの二〇歳の若者を見比べた際に、日本の「自立教育」がさほど効果をあげているようにも思えない。
(山森 みか. 「乳と蜜の流れる地」から 非日常の国イスラエルの日常生活 (スマートブックス))
陰謀論ね~、と思わないでもないが、イスラエルはアメリカの黒幕の一つとされている訳だが、トランプも含めた保守も、ハリウッドやシリコンバレーにも多大な影響を持っているからかリベラルも頭が上がらないように見える。
それはともかく、上の文章の前提として、イスラエルはユダヤ人の民族主義の国だ、という点はあると思う。
(ユダヤ人というと、金融やITに強いというリベラル的なイメージもあるが)
それ故に、「産めよ増えよ地に満ちよ」と妊婦や小さな子供を抱えた母親に対して寛容なのだろうと思う。
少なくとも、「女性の権利」の主張の延長上にある、ということではないし、セクハラ問題に厳しい人達も、シングルマザー問題に対しては冷淡だよな、とは思っていたが、「思想的に反対」と考えると色々腑に落ちるものもあった。
「では、(妊婦が肩身の狭い思いをしている)日本でも民族主義を勃興させるか!」という話でも無く、何かうまい落とし所があれば良いね、という話なのだが。
反面教師と言ったら良いのかは不明だが、北朝鮮があれだけしぶといのも、民族主義が根底にあるからだろうし。
ちなみに日本だと、チラッと聞いた感じだと、自衛隊内でも「民族主義派」というのはほとんどいないらしいし、安倍首相にしても、その経済政策が左気味であるように、思想にしても世界基準で考えると左の人だと思う(逆に、日本から不自然なほど「民族主義」の匂いが除去されている、とも言えるし、その結果としての個人主義、個々の分断、同胞意識の希薄化、他人への冷淡さ、みたいなことにも繋がっているのかも知れない)。
ちなみにアメリカでは、「子供を沢山育てることは国への貢献である」という価値観がキリスト教の影響の強い保守の一部では残っているが、白人のマイノリティ化が進む現在、その美徳がどこまで残るかはやや疑問が残る。
イスラエルの場合、周囲の国が全部敵性国家である故にそれが国民の団結に繋がっている部分もあるのだろう。
繰り返すが、別に「民族主義」を推奨している訳ではないし、合わない服を着ても死ぬ確率が上がるだけなので、日本は日本なりのサバイバル方法を見つけ出せればいいのかな、とは思う。