2023-02-17

理解のある彼くん」だった

理解のある彼くん」話をいくつか聞いてふと思い出したので、書き込んでいく。

仕事大学訪問する機会があり、その中で学生との交流もあって、そこで知り合った。妙にウマが合って、出会ってから数か月で交際に発展した。俺自身別にモテるわけでもなくなんなら非モテの部類だと思うが、どういうわけかかわいい年下の彼女ができてしまい、正直有頂天になった。実際最初デートでも年下の感じを全面に出して甘えん坊で可愛い彼女だったし、俺も年齢差があることで少し焦りを感じこそしたが、徐々に慣れてきて「年下の彼女が胸を張れる彼氏であろう」と思い無頓着だった服装や外見にも気を遣うようになった。

異変が起きたのは付き合ってから数か月経った頃だった。自分で言うのもなんだが、俺は交友関係が広い。そのため女性の知り合いも多くいるし、同性・異性それぞれを交えた趣味もあった。そんなことを話していた時に、彼女の様子が明らかに変わった。「ごめん、何か気に障るようなことを言った?」「そういうわけじゃないけど…」という感じだったので詳しく話を聞くと、彼女は「以前に付き合った男も交友関係が広く、その中で浮気をすることが何度かあった。それ故に『異性の友人』という存在にあまりいい感覚を持てない」「そもそも私は男性が実はあまり好きではない。その中で増田君と出会って付き合うようになったからすごく特別さを感じている。だからそういう人間がもしかしたらいるかもしれないと考えると不安になる」とのことだった(俺は「男女の友情なし派かぁ」くらいに考えていたわけだが、考えが甘かったことを知るのはこれよりもう少し後だ)。とにかく彼女は「『可能な限り』女性との接触を控えてほしい」「お互いの居場所がわかるように位置情報アプリを入れたい」「同性の友人であっても、遊ぶ時には必ず報告してほしい」ということを要求してきた。正直言うと「めんどくせえなあ」と思ったのも事実ではあるが、そこは惚れた弱みというものである。「まあそれくらいでいいんなら、いいよ」と承諾することにした。

そこから地獄であった。少しずつ頻度を増す彼女の連絡。趣味で出かける、という度に機嫌を損ねる彼女彼女は俺のSNS監視し、自分SNS相互フォローさせ、俺のフォロワー(当時俺のSNSフォロワーは2000人以上いた)を1つ1つ丹念にチェックし「相互フォローでいいフォロワー」「リムってほしいフォロワー」「即時ブロックすべきフォロワー」を仕分けた。そして「彼女がいるので女性自分リムーブしろ」という投稿を繰り返せ、と言う。そうして彼女SNSで俺の友人を「売女」「害悪」と罵倒する言葉が並ぶたびに、それに同意するよう求められる。

今考えると不思議なのだが、俺はこれらの要求にかなりの範囲で従っていた。「そうすることで彼女と友人を傷つけること」を避けるためはもちろんあったが、それとは別に「俺が選んだ彼女なんだから彼女から言われたことはなるべく叶えなきゃいけない」という強迫観念もあったと思う。それに彼女は「俺と一緒にいるときは」優しく、可愛い彼女であった。それが彼女の本当の姿で、俺と会っていない時は不安故にそうした行動に出るんだ、と俺自身に言い聞かせることで、何とか心の安定を保っていたのかもしれない。

彼女不安定さはさらに加速した。深夜、早朝、仕事中、構わず電話がかかってくる。不安になったから、という度に俺は電話に出て「大丈夫だよ」「女の人とは一緒にいないよ」と言い続けた。会社飲み会は欠席するよう求められ、どうしても必要な時には写真を撮り送るように言われた。この辺りから俺は彼女に対し「何らかの精神的な疾患があるのではないだろうか」と思い始め、それとなく病院に行くように勧めた。そのたびに彼女は泣き喚き俺を罵倒したが、粘り強く話したことで何とか足を運んでくれるようになり、俺も何度か同席した。精神科医は彼女を「うつ病」「不安障害」などと言っていた。そして「優しい彼でよかった、ゆっくり頑張っていきましょう」と言ってくれた。彼女は泣いていたが、正直俺も泣きそうだった。概ね俺と意見同意見であった。すなわち「増田さんに過剰に依存しなくても良くなるよう、通院をしよう」という話である彼女もそれに同意していた。「増田君が心配しなくてもいいように、病院に通うね」俺はそれを全面的応援する、と言った。ところが、彼女は3か月ほどで病院に行かなくなった。「私は間違ってない」「私は悪くない、不安にさせる増田君が悪いんだ」と洗脳のように刷り込まれる日々。彼女SNSの中で俺も含め罵倒を繰り返すようになった。その度に俺は電話や直接会いに行き「大丈夫大丈夫」を繰り返し続けていた。今は精神状態が悪いんだから、今は本当の彼女ではないから、きっといつか最初幸せだった俺たちに戻れるから根拠のない理由で、俺は彼女を抱きしめたり、撫でたりし続けた。

俺に異変が起きたのは半年ほど経った時だった。俺がEDになった。彼女の求めに応じて、何回試してもうまくいかない。こうなると俺も自信がなくなったが、それどころではない。彼女絶望っぷりたるやすさまじかった。「私に魅力がないってこと?」「きっと他の奴でオナニーでもしてたんだろう」そんな罵倒が繰り返される。そして彼女の下に行く度、電車吐き気に襲われるようになった。家で一人でいるのに監視されているような気がする。それでもなお付き合い続けることを選んでいたあたりやっぱり好きではあったのだろう。俺と彼女は二人でゆっくり疲弊して、ゆっくり死に近づいていた。

終わりを迎えたのは去年の夏のことだ。趣味の集まりにも顔を出さなくなり、時々SNS彼女以外を拒絶するような言動をとっていた俺に不信感を抱き続けていた別の友達が、半ば無理やりに俺を遊びに連れ出してくれた。俺はぽろぽろ泣きながら、彼女が好きなこと、だけどどうしたらいいのかわからないこと、俺が間違っているのかもしれないと毎日不安なことを話していた。すると烈火の如く怒り狂った彼女から電話がかかってきた。「どこにいるの」「誰と」「何してるの」「女はいるの」いつも通り俺の詮索を繰り返す彼女の声を聴いているうちに、俺はぽろっと「限界だ」と言って電話を切った。次の日、彼女電話をした。彼女は「私の価値観と全く同じでなければ付き合っている意味がない」「彼女友達なら考えるまでもなく彼女を選ぶべき」「お前はそうやって私をずっと傷つけているんだ」と主張を繰り返していたが、もう俺は限界だった。別れを切り出し、結局それに同意した彼女が怒りのままに電話を切って、それっきりだ。

別れて1か月後、彼女SNSをふと見てみようと思った。彼女が「彼氏ができました!」と言い、彼女の考えに同意していたフォロワーに「よかった!」「お幸せに!」と言われているのを見て、俺の1年は無駄だったんだなあ、と死にたくなったが、まあなんとか生きている。

一生懸命彼女のことを考えて行動していたころ、彼女フォロワーに言われたのが「優しい彼氏」「いい彼氏」「理解ある彼氏」という言葉だった。そう言われるたびに嬉しくなったが、今考えるとそれは「彼女に都合よく、無条件で彼女のためだけに行動する彼氏」ということだったんだろうなあ、と思う。そして少しでもそれを違えると「理解のある彼氏」は「DV彼氏「バカ」その他もろもろの別称と共に敵扱いされる。相手のことは関係ない。まさに滅私奉公ができなければいけないわけだが、そんな風にできるやつなんてそういない。だから彼女たちは次々と男を掃いては捨て掃いては捨てを繰り返していくのだろう…まあ、それに1年も気づけなかった俺が、一番バカなのだけれど。

多分俺が人と付き合うことはもうないと思う。それが見る目がなくて、かつ誰も幸せにできなかったバカな俺の責任だと思うのだ。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん