2015-02-25

艦これ東方に取って代わった理由」が意味不明すぎる件について

 どうもTwitter上では、『「ポスト東方」の時代 ~艦これ東方に取って代わった理由~』(http://anond.hatelabo.jp/20150222201638)という記事話題らしい。内容はタイトルの通り、長年のあい同人ジャンルの頂点に君臨してきた『東方Project』を退けて『艦隊これくしょん』がその地位を奪い取ったというものだ。

 まあ、実に扇情的タイトルだし内容だと思う。『艦これ』の破竹の勢いはオタク世界に足を突っ込んでいるものなら誰でも聞いたことはあるだろうし、『東方Project』がもう最盛期ではないということは、当の東方同人活動をしている人々が一番良く実感している事実だろう。時代は流れた、もはや同人ジャンルは『東方project』一強の時代ではない。それは確かにその通りだと思う。

 だが、たとえそれが事実であったとしても、件の記事の内容には僕は首を傾げざるを得なかった。というのは、あの記事を書いた人物は自身がのめり込んでいる『艦これ』というジャンル独自性について、全く主張できていないように感じたからだ。

疑問、それらは本当に『艦これ独自の魅力なのか?

 僕がもっとも疑問を感じたのは、件の記事の後半部分に書かれていた「なぜ艦これ東方に取って代わることができたのか」、その理由についてである

 まず、真っ先に挙げられた「艦これという作品の魅力」について。

 件の記事の筆者は「総勢100名を越えるキャラがそれぞれに個性を持つという丁寧な作りになっている」という点を挙げて、『艦これ』というジャンル独自の魅力を持つことを主張していた。各々のキャラにボイスが着いていることも個性をより把握し易くし、それが創作意欲をかき立てる一助となっているとも。確かにそれは『艦これ』の魅力には違いないだろうが、しかし、果たしてそれが「『艦これ独自の魅力」(それこそ、「『東方Project』を同人ジャンルの頂点から蹴落とす」ほどの魅力)なのかと言われれば、多くの人が疑問を感じるのではないだろうか。

 例えば、まさしく件の記事の人物がこき下ろしていた『東方Project』を見てみよう。「総勢100名を越えるキャラがそれぞれに個性を持つ」という点に関して言えば、『東方Projectだってそう変わらない。『東方』の情報に詳しいサイトとして「幻想情報局 -イザヨイネット-」(http://izayoinet.info/index.html)というサイトが挙げられるが、ここでザッと見れば『東方』も同じように「総勢100名を越えるキャラがそれぞれに個性を持つ」作りになっていることが分かる。特に個性」については、各々のキャラクターに詳細な設定が付与されていることから疑いようがないだろう。事実として、同人イベントでのサークルの配置の仕方が「描いているキャラクターで分けられる」程度には『東方』のキャラだって個性」があるのだ。従って、「総勢100名を越えるキャラがそれぞれに個性を持つという丁寧な作りになっている」という点を「『艦これ独自の魅力」と言い切るのはさすがに無理があるだろう。まさか「近い将来完全消滅する」『東方』が持っている要素と同じものが「流行最先端を行く」「『艦これ独自の魅力」のわけがないからだ。

 次に、「『艦これ』を取り巻く自由さ」について。

 件の記事の人物は『艦これ』について「他の作品とは異なり、運営が明確に「同人活動を許可する」宣言していることで、グレーゾーンというもの存在しない」と述べていた。それが『艦これ』の同人ジャンルの発展の助けとなっているのはその通りだろうが、しかし、ここでもやはりそれが「『艦これ独自の魅力」なのかと言われれば多くの人々が疑問を持つはずだ。

 例えば、件の記事の人物が「完全に逆方向の作品」として挙げた『東方Project』を見てみよう。『東方』の版権を持っているのは「ZUN」というペンネームの個人であるが、彼は『東方』への二次創作にとても寛容だ。「個人の二次創作基本的には制限しない」という彼のスタンスは『東方ジャンル活動しているものなら誰でも知っている話だし、具体的に言えば「二次創作ガイドラインが設定されている」くらいには『東方だって運営が明確に同人活動に指針を示していたりはするのである。よって、この点も「『艦これ独自の魅力」と言ってしまうのはいささか語弊があると言わざるを得ない。「斜陽著しい東方」と同じ要素をもって「快進撃の艦これ」の理由を説明するというのはなかなか不自然な話だ。

矛盾している「発展した理由

 また、件の記事の人物は「分かりにくい上にほとんど意味のないような薄っぺらい設定で雁字搦めになっている東方と違って、艦これには大きな枠組みこそあれどストーリーになるような設定はほとんど設けられていない」という点を挙げて『艦これ』の独自創作のしやすさを主張していたが、この発言にも首を傾げざるを得ない。というのは、ちょっと考えればこの発言は本人の前述の主張と矛盾していることが分かるからだ。

 この発言を要約すれば、「東方には面倒くさい設定があるけれど艦これにはそれがない、だから創作やすい」ということになる。この発言は明らかに前述の「『艦これ』の魅力は100名以上のキャラがそれぞれ持つ個性」という主張と矛盾している。何をもってキャラクターの「個性」を決めるかと言われれば、多くの人は「設定」だと答えるのではないか。どういう生い立ちであるのかとか、どういう信条を持っているのかといった「設定」でキャラクターの「個性」を把握しているのが普通ではないか。

 件の記事の人物によれば、『艦これ』のキャラクターには「ストーリーになるような設定はほとんど設けられていない」という。その言葉を素直に読み取れば、「『艦これ』のキャラクターには「個性」が欠けている」ということにならないのだろうか。もちろん実際の『艦これ』のキャラクターたちに個性が欠けているなどとは僕は全く思わないが、しかし少なくとも件の記事の人物の発言の上ではそうなってしまっている。件の記事の人物が何を示して「個性」という言葉を使ったのかは全く分からないが、その設定に依拠しない「個性」というものはさぞ「壊滅的な衰退を迎えている」『東方Project』には見られない独自の魅力なのだろう。とても気になるところだ。

「それでも艦これ流行っている」とすれば

 このように見てみると、件の記事の人物が主張した「『艦これ』が東方に取って代わった理由」は、その「東方とは完全に逆方向の作品」という発言とは裏腹に多くの点が『東方Project』と共通してしまっていることが分かる。「総勢100名を越えるキャラがそれぞれに個性を持つという丁寧な作り」なのもそうだし、「同人活動について寛容」な点もそう、そしてもっと言えば「自由創作」という点に関しても同じである

 件の記事の人物は「薄っぺらい設定で雁字搦め」や「設定の解釈を巡る面倒な争い」などと非難していたが、実際の『東方Project』がそんな風に身動きが取れない状況かというと、決してそんなことはないだろう。例えば「東風谷早苗」というキャラ一人をとっても、描き手によって千差万別の描かれ方をする。その描き手によってあまりに違う個性の在り方の例としては、次の動画が分かり易いだろう。【第6回東方ニコ童祭】早苗奇跡東方MTG】(http://www.nicovideo.jp/watch/sm23887649 これは異なる早苗同士がMTGというカードゲームで対戦するという動画なのだが、同じ早苗なのにあまりキャラが違いすぎてとても面白い)。

 というわけで、件の記事の人物が「なぜ艦これ東方に取って代わることができたのか」として挙げた理由ほとんどはまったくの的外れである。そんなものは「オワコン」の『東方Project』がとっくの昔にやっていたことであって、「時代最先端を行く」『艦これ』に始まったことでは決してないのだ。これはまったくの僕の邪推だが、件の記事の人物は単にジャンル同士の対立を煽りたかっただけなのではないかとすら思う。そうでなければあまり理由けがキトー過ぎる。

 まあ、それでも現に『艦これ』のジャンルとしての勢いは物凄いし、『東方ジャンルにかつてほどの活気がないのは事実なのだろう。件の記事の人物の理由付けはほとんどデタラメだったが、事実だけは事実だ。僕自身はあまり興味がないけれど、礼儀として一応「それに代わる見解」を挙げておこうと思う。

 なぜ『艦これジャンルはこれほどの勢いで急成長し、『東方ジャンルが翳りを見せているのか。それは単に『艦これ』はここ二年で登場した「新鮮なもの」だからで、『東方』はもう十年は続いている「老舗のもの」だからだ。もっと詳しく言えば、上記に挙げたとおり「多くの部分が『東方Project』と共通している」作品で、且つ「新鮮なもの」だったから『艦これ』は流行った、ということになる。

 ごくごく一般的な話で、人は常に新しいものを欲しているが、同時に見慣れないものに抵抗感があるという矛盾した性質を抱えている。今までは『東方』と似たものがなかったので留まっていたけれど、「同じような」「新しいもの」が来たから飛び移った、それだけの話なのではないか。そこにあったのは『東方』を「蹴落とす」ほどの「独自性」ではなく、むしろ「同じような要素」だった気がしてならない。件の記事の人物の主張では「東方サークルの多くは艦これメインに移動している」らしいが、それこそむしろ「同じようなものであることを裏付け証左ではないかと思わなくもない。似たようなものだったからそうやって移れたのだろう。

最後に、「東方艦これのこれから」への反論

 誤解のないように先に断っておくけれど、ここから先の文章は件の記事を書いた人物があまりに楽観的すぎて個人的イライラしているだけなので、決して『艦これ』という作品ジャンルディスる気持ちは全くない。全くというと語弊が在るかもしれないけど本当にほぼない。僕は『東方』も『艦これ』も同じくらいには愛好している。口調が攻撃なのは件の記事の人物のあまりに『東方』を見下した態度に反感を覚えているかである

 で、僕なりに「東方艦これのこれから」について語っておく。

 件の記事の人物は「艦これ未来は明るい」と楽観視していたけど、僕はこれに激しく疑問を覚える。本当にこれから「ファンは増え続ける一方」で「二次創作に流れる層も増え」、「アニメ二期、劇場版も予定されている」のだろうか? あくま個人的にだけど、僕には全くそうは思えない。逆に、油断すれば「斜陽著しい」『東方』と同じように衰退してしま危険性をいくつも抱えているように思えるのだ。順に理由を述べていこう。

 まず第一に、かつてあれだけ隆盛していた『東方Project』がこのように「衰退」したという事実がある。最盛期に東方活動ジャンルにしていた人々からしてみれば、まさか同人ジャンルの頂点を明け渡す日が来るなど想像もしていなかったはずだろう。なのに、『艦これ』が同じような運命をたどらないなどとどうして言えるのか。

 第二に、『艦これ』はシステム上、どうしても単調な作業になりやすい。『艦これ』は提督レベル艦娘レベルを上げてステージ攻略していくゲームだが、艦これユーザーの中には一定数この単調な作業の繰り返しに「飽きてしまう」層が存在する。提督レベルを100以上にするほどのめり込んでいても「やってること一緒じゃん・・・・・・」と言ってそれっきりという人間が、あくまで僕の周りにだが少なからず居た。今はまだ顕在化していないが、そのような「新鮮さを失う危険性」を『艦これ』のシステムが抱えていることは確かだろう。

 そして最後に、件の記事の人物は「元々の人気が高かったところにアニメ化というキャッチー戦略が功を奏し」などと言っていたが、もう反感を覚えられること覚悟で言ってしまうけれど、目が節穴なのだろう。どう「功を奏し」たのか説明してほしい。はっきり言ってアニメの出来はズタズタだ。日常ギャグなのかシリアスなのかはっきりしない中途半端構成、そのせいで掘り下げようにも掘り下げられない艦娘たちのキャラクター、疑問を覚える点はいくつでもある。『艦これ』を活動ジャンルにしている従来のファンからすら、いやファンだからこそ戸惑いを覚えている人が何人も居る。具体例を挙げるのは控えておくが、第4話の構成破綻ぶりを一文で要約したタグPixivに登録されているのがその証だ。あくま個人の感想だけれど、このままでは新規のファンを獲得するどころか、アニメきっかけに『艦これジャンル崩壊の序曲が始まっても全くおかしくはない。現にPixivではアニメが始まるまでは『艦これジャンル活動していたのに、いざアニメが始まってみればどういうわけか「キャラを量産するだけで個性に重きを置かなかった某アイドル育成ゲーム二次創作」とやらにメインの活動を移しているような人々が何人か居る。そうした現状を目の当たりにしてもなお件の記事の人物は「アニメで更にキャラ個性がはっきりしたことから、今後も創作はよりやりやすくなっていくだろう」だの「二次創作に流れる層も増えてくる」だの寝ぼけたことを言うのだろうか。さっさと目を覚ませと僕は言いたい。

 また、『東方』について言えば、実はまだ「オワコン」という結論を出すのは勇み足ではないかと僕は思っている。確かに最盛期を知っている人々の目からすれば現状は「斜陽著しい」のかもしれない。しかし、それでもまだジャンルとしての息の根は止まっていないし、何よりもこの十年のあい同人ジャンルの頂点に君臨し続けたのは他ならぬこの『東方なのだ。十年、最大ジャンルで在り続けた。その耐久性の高さはそのまま生きている年月が証明している。『艦これ』の隆盛は『東方』にとって過去最大の逆風かもしれないが、それでも、実際に十年間同人ジャンルで耐久してきた実績のある『東方』がこのまま終わるとは僕はどうしても思えないのだ。主観的な話で申し訳ないが、件の記事の人物が言うほどには『東方』は簡単に「完全消滅」したりはしない、そう僕は思う

 長々と述べてきたものの、ぶっちゃけこんな話は当の同人活動をしている人々にとってはどうでものだと思う。『東方』ファンも『艦これ』ファンも、そんな最大ジャンルだとか斜陽ジャンルだとかみみっちいことを考えて活動している人はそんなに多くないだろうからだ。楽しんでいる人々はいだって目の前のことに真剣で、そんなことを気にする奴は自尊心の欠落したさもしい人間だけだと僕は思いました。終わり

記事への反応 -
  • 長年にわたって二次創作活動や同人活動を牽引してきた「東方」ジャンルが、ここ1~2年という短期間に信じられないほどの壊滅的な衰退を迎えている。 それに代わるように破竹の勢い...

    •  どうもTwitter上では、『「ポスト東方」の時代 ~艦これが東方に取って代わった理由~』(http://anond.hatelabo.jp/20150222201638)という記事が話題らしい。内容はタイトルの通り、長年のあい...

    • コミケでは、初登場依頼参加サークル数が1200→2300→2500と爆発的な成長を遂げており、去年の夏にはついに東方のサークル数を越えてしまった。  っかしーな、手元の資料だと、C87時点...

    • もうちょっと頑張って釣らないと駄目。 せめて「こんなに盛衰の激しかったジャンルは無い!」くらいの文言は入れておくべき。

      • いや、この場合結論部分で中立的な物言いにしつつ 東方ファンに同情的なまとめ方にした方がウエメセ感が出てさらなる釣果が見込めたのではないだろうか?

    • 15-24歳で60%しか占めてないなんて老人だらけだなあ(棒) http://thwiki.info/th/vote10/result_anq.html

    • ひとつだけ突っ込むと、アイマスは2の運営でニコマス界隈を始めとしたそれまでの支持層におもいっきりクソをぶっかけた経緯があるので、そこで例に出すのは適切ではないと思う。 あ...

    • ネタにマジレスだが、もともと艦これはゲームとして良く出来ていたわけでも、 キャラやストーリーが良く出来ていたわけでもなく、ただ何となく流行っていただけだったんだよな。 初...

    • 東方アンチと艦これアンチを患った人が共食いを狙って書いた文章にしか見えないな まじもんの艦これファンなら哀れとしか

    • 「ポスト東方」の時代 ~艦これが東方に取って代わった理由~ http://anond.hatelabo.jp/20150222201638 この記事でふと同じくニコニコ動画の人気者、初音ミクのことを思い出したので書いて...

    • スレ元が、DMMが資本だして作った一般ゲームと、ただのPC好きエリートが片手間で作った同人ゲーっていうのを完全スルーしているのが気になる。 製作体制や規模、複数人によるゲーム...

    • 冬コミの東方スペース http://i.imgur.com/r6Xrw97.jpg 2014年の艦これ全イベントのサークル数(コミケ三日目含む)と 東方のサークル数500未満とコミケ三日目と春例大祭の分は省かれたイベント...

    • 金剛の服が霊夢のパクリとか目玉機能してるのか疑うレベル。

    • カンコレにはゆっくりやクッキー☆みたいなアクの強いマスコットがいないから いまいち乗り切れないんだよね

    • 2014年の東方project ・上海アリス幻樂団が最新作『弾幕アマノジャク』を発売。 ・上海アリス幻樂団のZUN氏が海外版東方projectの制作を開始。 ・コミック『東方茨歌仙』の第5巻と、『東...

    • 別にジャンルが完全消滅しようがなんだろうが気にせず同人STGを出し続けそうな原作者の安定感。

    • 言うて東方が新作出したら今までお前らどこに隠れてたのってくらい、 あたかも地面から次々とゾンビがはい出てくるかのように色めきだつんだけどな

    • http://anond.hatelabo.jp/20150222201638 昨日TwitterのTLを賑わせた上記の日記とその反応には、多くの艦これファンならびに東方ファンが深く心を痛めたことだろう。 怒濤のように押し寄せるTLを眺...

      • http://anond.hatelabo.jp/20150224192454 さらに近年はコミティアやふたば学園祭のように東方作品を拒絶する即売会も増えつつある。(艦これは禁止されていない。またふたば学園祭は主催主導で...

      • ZUNは頼むからもうひろきとコラボしないでほしい

    • あれから4年..... 気づけばイベントで出てくるキャラはどんどん地味になり、飲食店コラボをすれば詐欺行為を平然と行い、ライブになんの関係もないちょっと有名な人を読んで悦に浸り....

      • アズールレーンに流れたのかな。 擬人化美少女ポケモンというジャンルで見れば個々の作品をローテしてるだけかもしれない。

      • それでいて東方は、手綱をしっかり自分が握れるメディアミックスだけだしな。 さらに、メディアミックスであちこち出ているのは東方の二次創作者たちだ。公式は僅かな書籍だけ。 ど...

      • でも艦これは新しい改二が出ればツイッターのトレンドに乗るけど、東方は乗ったことなんかないじゃん。 マジで東方ってどこで話題になってるの?って感じ。

        • 新キャラ名とか特徴的な異変とか普通にトレンドに出てますがな。 単に自分の関心ないトレンドは見えないだけでしょ。

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