俺は若いころ自意識過剰で自分にはそれしか掛けるものがないと思い込んで3流美大に飛び込んだ。
結局打ちひしがれて今にいたるけれどそこで言われた言葉で印象に残ってるものが2つある。
一つは「君のこれは作品とは呼べない」。
どんなに持論をこねくり回したり拘りを突き詰めたりしようが、
マジョリティに拒絶され表現することを正当化するバックグラウンドを失ってしまえばただの変人として嘲笑されるしかない。
二つ目は「褒められたくてあえて奇抜なことをやってるんだろうけど〜」
本当にこれは衝撃的だった。当時僕は愚直にしていれば誠実でいられると思っていたからだ。
僕の誠実さは教授に一声で否定され証明するすべを失い、自分の個性が強みになるなんてことは幻想だと思い知った。
周りの評価も気にせず思ったように自由に振る舞っとしても、結局評価されなければそれが個性だと規定されることもない。
評価されないということは無価値であり、価値が見いだせないということは本能や感情に従った素直さも思想も見受けられないということではなかろうか。
万人にとって価値がないというのであれば当人の意思など外部からみても存在しないに等しい。
では他人は何を基に評価を下すのかということになるが、これは共感できるか否かという点によって判断しているのだと思う。
人間は結局己のレリジオンを補完するために、社会との交流のあり方を模索している。
もし自らの考えに反するものを受け入れてしまったとすればたちまち破錠してしまうのは目に見えている。
どれだけ自分の素晴らしさを説こうが、人々の共感が得られなければ各々の思考の中で無価値化され
「愚かで浅はかで見るに堪えない」というレッテルを貼られ黙殺されるということだ。
媚びたからといってそれが非難されるとは限らないのだ。それが観る側にとって心地よければどうでもいい問題であり、
逆に不快なものに対峙したときは、それを拒絶する正当性を欲し、表現者の人格までも批判し出す。
僕は結局その大学を辞めた。誰が悪いわけでもなく僕自身が愚かだったというだけだ。
しかしながら評価されることを意識しつつ創作活動を行うことが美大生活の意義だという観念にジレンマを抱いていた。
「自分を感性をさらけ出すという表現のあるべき姿を成り立たせる前提として、既に評価されているという事実が必要。」
「だが良い評価をもらうために制作したものは協調性しか持ちあわせておらず、理想的な表現者としての定義に矛盾が広がっていく。」
このように小賢しさを気取った馬鹿者にならず兎角無心で制作に励めばよかったと反省はしているし、
さっくりとウケのいいものを作り一定の評価を経てから作家性をささやかに出すような器用さにかけていたのも事実だ。
理想主義なんぞ田舎の3流大学生には無用の長物だと今では自分にあきれてしまう。
とはいえ未だに当時の自分が抱いていた鬱屈はもっともなんじゃないかと思う。
増田はA子や家族等が自分の美を確立している才能ある人物だとしているが、
「賞をとった」「選出された」「絵を描くことが生業として成立している」といった既成事実でしかない。
もしもA子じゃなくて増田が全国に選出されていれば、
高校時代に増田が自分には才能がないと思うこともなかったしA子は馬鹿にされたままだったはず。
A子より増田のほうがポテンシャルが高いということが紛れもない事実として誰も疑いはしなかっただろう。
要は結果論だ。増田よりA子のほうが評価された、増田の絵は酷評されたという事実を増田自身が受け入れるために「才能がなかった」という結論を用意しただけだ。
多分周囲の人々もあなたに才能がないとおもっている。才能がないということは自認ではどうすることもできないソーシャルでの自分の位置づけになっているのだ。
もう自分には才能がないというほかない状況にすっぽりはまって、自分自身が自分をどう認識しようがお構いなしの現状。
それを拒絶したところで何にもならないから、受容するのが一番マシだから「才能がない」というほかない。
僕は何も「才能がないなんて思い込みだ。可能性は無限大」みたいな自己啓発のなりぞこないを啓蒙したいわけじゃない。
お気に入りの納豆を外国人にPRするように、一見客観的にポテンシャルがあるように思えてもそんな物の影響力なんて全くなくて、
他人の認知を意のまま変えることなんざ真っ当には到底無理なのだから。
これはただただ勝手にあなたに共感し、踏まえて違和を感じたことを提示したいと思ったまでだ。
釣りにひっかかる有様になろうが稚拙な文章を晒すことになろうがなんでもいいから何かいってやりたいとおもわせた増田は素晴らしい。
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