はてなキーワード: Ice Bucket Challengeとは
Ice Bucket Challenge の問題点は、金があって有名で友達の多い人から始まって、金がなく、無名で友達の少ない人に向かっていくという点である。
もし君ところに君の唯一の友人からまわってきたらどうするか? あるいはそれが友人ではなく親や兄弟からだったら、そして親類一同の中で君が最後の一人だったらどうする? もちろん、君にとって一万円は大切だ。次の給料日まで、その一万円でなんとか生活しなければならないのだから。
友達の友達は友達だというのがSNSの基本である。君にIBCをまわしてきたそのつながりにあるひとはすべて君の友達だと考えていい。しかし、直前に戻したのではまたすぐに自分に戻ってきてしまう。だから5回以上以前の人を指名するようにしよう。そして、これでは多くの人に広めるという役割が果たせないので、3人ではなく5人指名しよう。
この改良ですべてがうまくいく。
すべてが本当にうまくいく。
2013年の暮れ頃から?アメリカで始まった「ALSアイスバケツチャレンジ」がついに日本にまで押し寄せて、ご覧の通り大流行になっている。
Ice Bucket Challenge - The ALS Association http://www.alsa.org/fight-als/ice-bucket-challenge.html
アイス・バケツ・チャレンジ http://ja.wikipedia.org/wiki/アイス・バケツ・チャレンジ
マー君も氷水かぶるチャリティー参加 次に「ももクロ全員」ら指名 http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2014/08/21/kiji/K20140821008788720.html
「氷水チャレンジ」大流行に冷ややかな声 「意味がわからん」「強制性が嫌な感じ」… http://www.j-cast.com/2014/08/21213686.html
氷水をかぶるALS支援運動にモヤモヤしている人が少しスッキリするための図 http://topisyu.hatenablog.com/entry/icebucketchallenge
ネットの記事を見ていると、有名企業家やスポーツ選手、タレントなんかが次々と参加して大盛り上がりな一方で、批判的な意見も結構目立っている。「売名だ」「氷水をかぶる意味が分からない」「強制的にやらせるのがおかしい」「悪ふざけしているだけでALSの理解は深まらない」というのが主なものだろうか。「飽きちゃった」というのもある。それに対しては、↑の4つ目のブログでも書かれているようにかなりの額の寄付金が集まったようで、「どんな形でも寄付金が集まったのはいいことだ」という反論がなされている。
ひとまず、仕掛けたALS Associationとしては大成功ということになるだろう。ALS、日本語で筋萎縮性側索硬化症のことを単に「体が動かなくなる病気」くらいにしか思っていない人も多いかもしれないが、少なくとも今回のキャンペーンで知名度が上がったことは確かだろう。
有名人の患者では↑のブログに挙げられたホーキング博士、日本人では徳州会病院の理事長の徳田虎雄氏が有名だろうか。簡単に説明すると、ALSは神経領域の疾患で、有病率は10人弱/10万人。患者の約90%は孤発性で残りは常染色体優性遺伝が指摘されている。症状は、まず指先を使う作業がしにくくなり、躓いたり物の重さを感じることが多くなってきて、発症から1〜2年で筋肉も落ちて腕や脚も使いづらくなり、さらに2年程度で嚥下障害、構音障害(うまく離せない)が出てくる。発症から3〜5年で呼吸筋も動かなくなり、人工呼吸器なしで生きられなくなる。根治療法は今のところ存在せず、進行を遅らせる薬物がある程度で他はリハビリくらいしか手立てがない。人工呼吸器を付けずに死を選ぶ患者さんも多い。先に述べた徳田虎雄氏は、眼の筋肉を使ってだろうか、文字盤を使ってコミュニケーションをとりながら業務を遂行しているという。(Wikipedia「徳田虎雄」)
このような難病はもちろん研究に金がかかるわけで、ALS Association も日本ALS協会も寄付金集めに必死になっている。そこで今回の「アイス・バケツ・チャレンジ」を仕掛けて今のところ大成功を収めつつあるわけだが、ネットで言われているような批判もあるし、どうも周りを見てもすっきりしていない人が多いようだ。もやもやと思ったこと、この運動の問題点を挙げてみたいと思う。
まず断っておきたい。この記事は「アイス・バケツ・チャレンジ」に参加して氷水をかぶったり、少なくない額を寄付に回したりした個々人の善意を非難する意図は全くない。その寄付金は、ALS Association に寄付されようと日本ALS協会に寄付されようと、ALSの患者やALS研究に携わる医療者に役立てられるはずである。その勇気ある善意と善行に感謝の意を示しておきたい。ありがとうございます。
それを差し置いても、今回のキャンペーンにはシステムの上でも、関わった人の心情面でも、そして今後の募金活動に関わる点でも、問題があるように思えてならない。それを述べてみたい。
・チェーンメール性を帯びていること
インターネット上からこの運動を眺める人の持つ最大の違和感はこれではないだろうか? チェーンメールが(特にインターネット利用者の間で)忌み嫌われてきた歴史を考えると、「指名されたら氷水をかぶって3人を指名」という増殖のさせ方が、ネット民に歓迎されることは考えづらい。寄付や氷水といった内容に関係なく、このチェーンメール性だけで違和感を持つ人も少なくないのではないか。
「頭から氷水」は「飽きちゃったので」 「100ドル寄附」を選んだサイバーエージェント藤田社長 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1408/20/news117.html
サイバーエージェントの社長は上記のように「指名」をせずに寄附を選んでいるが、インターネットに関わる人間としてチェーンメールのようなものに荷担するのに抵抗があったのではないか、と個人的に感じている。
もとから募金活動や寄付活動に積極的に関わってきた人からすれば、この点は面白くないのではないか。指名された瞬間、その人は「寄附する」か「氷水をかぶった動画を公開する」ことを求められる。いくら強制的でないとはいえ、前の人に動画で指名された以上、何もアクションを起こさなければ「寄附をしない冷酷な人間」か「ギャグに乗れないツマラナイ人」というレッテルが貼られるかもしれない。そうした不安を感じない人はいないだろう。つまるところどちらかの選択肢に決めるしかないのだが、そこに「善意からの寄附」という自由意志ではないものが紛れ込んでしまうことは確かである。
また寄附というのは、特に日本では、パブリックに行うものではないという風潮があった。赤い羽根共同募金をはじめとした募金活動に、こっそりとお金を投じた経験を持つ人も少なくないだろうし、Wikipediaのジミー・ウェールズの熱意に押されて無名で1000円を払った人もいるだろう。これもあくまで心理的な問題だが、「寄附をして善行を積んでいます/運動の手助けとして氷水をかぶります」ということを自分から公開することに、そしてそういった人に抵抗を感じているのではないか。
最も大きな問題として考えられているのは、この「公開善行」キャンペーンは、関係者の善意を枯渇させるのではないか、ということである。氷水動画を公開して、少なくない金額を寄附に回せば「善行を積んだ」という気持ちは満たされるし、「善行を積んだ人間」という表示をすることができる。今回の運動で、世界中に「氷水をかぶって多額の寄附をした善人」が大量発生した。それはいいのだが、そう言う人は、そして「少しばかり強制性を感じながらも運動に乗って寄附をした」人は、次に善意からの寄附を求められた時、同じように寄附をするだろうか?私は、個人的には、しないのではないかと思う。「この前寄附したから」でもいいし、「強制的にやらされて不愉快だったから」でもいい、理由はどうあれ、今回の「公開寄附」に参加した人は、これまでのような匿名の募金には参加する見込みが下がるのではないか、と思うのである。↑のブログ記事で赤い羽根共同募金の募金額について触れられているが、今年度、これ以降の他の募金活動がどのような実績を出すか、かなり気になっている。もし今回の運動の結果、日本全体でのその他の活動も合わせた寄付金の額が変わらなかったら、そしてもしくは下がりでもしたら、今回の運動は成功だったと言えるだろうか。少なくともALS Association 関係者にとってはそうだろう。しかし、もし「善意の総量はかわらず、使いすぎれば枯渇する」のが正しいとすれば、今回の運動は限りあるパイの配分を変えただけで、無意味である。