はてなキーワード: 灯里とは
毎年数百冊の単行本を買う程度の漫画好きだけど、一番好きな漫画を上げろと言われたら「ARIA」を上げるくらいに好き。
何が好きかというと、まずメインキャラ3人がまず才能ありまくりの天才だということ。
シミュレーションだけで最初から上手く漕げる(逆漕ぎだったけど)灯里と、会社の跡取り娘の藍華、そして最年少にして最高の実力を持つアリスという3人で、言うなれば少年漫画の主人公にありがちな「持たざる者」の正反対。
その才能を持った者たちが何をするのかと言えば、とにかく「練習」「練習」「練習」だ。
見習いの彼女たちは誰一人として驕ることなく、暇さえあれば練習し、たまにある休みにも船を漕いで出かけてその腕を磨き続ける。
普通の漫画であれば「才能がありかつ己の限界に挑む存在」は悪役か孤高の天才、よくて主人公の友人だ。
しかもそういうやつらは性格に難があるか、トラウマがあるか、何かしらの弱点を持っている。
しかしARIAの彼女らはそうではなく、とても明るく、慈悲深い。
才能故に陰口を叩かれることはあれど、それすらも受け入れる。
一人きりで挑むのではなくチームワークを大切にする。
才能に恵まれた人が、努力し、結果を手にする、しかも周りを幸せにしながら、という、私にとっての理想の人物像が描かれている。
「そう、それで、男は出てくるのかい?」
君の答えを聞いた途端、僕は二十億光年の彼方に飛ばされる。
………
男が主人公の百合作品、というものを、僕はいくつか知っている。
『僕は友達が少ない』、『マクロスF』、『ロウきゅーぶ!』、『聖剣使いの禁呪詠唱』etc etc...
君がこれらを、百合だと認めないことも知っている。
けれど。
百合、と冠されたレーベル以外の作品を差し出すとき、僕は口ごもらざるを得ない。
「この漫画の1巻は全1023コマ、男が登場するのは74コマ。パーセンテージにして7.1%……」
君だってそんな答えを求めちゃいないだろう。
………
僕は、馬鹿だから、二十億光年の向こうから君に、弱々しく主張する。
「『神無月の巫女』は?」
「百合カップルが男に打ち勝つ唯一の百合作品。あそこまで強固な絆を持った百合はもうどこにもない。『わかばガール』『のんのんびより』『それが声優』……女どうしの恋愛がない作品に百合と呼ばれる資格はないというのに」
「『響け!ユーフォニアム』は?」
「久美子と麗奈の間の引力は、男との恋愛と違って永続するものだとスタッフが明言している!」
………
君はため息をつく。
「たとえば、『ARIA』。アリシアさんの結婚。未だに胸が痛む、手酷い裏切りだ」
僕は分からない。二十億光年の向こうで、僕は、ただ、灯里とアリシアとみんなとのすてきな時間を思い返す。アリシアが結婚したことで、その輝きは消えてしまったのか?
………
「本編が百合とかけ離れている作品の外伝にどう期待すればいい?」
「百合がはじまったとしても、最後まで百合で終わる作品のほうがめずらしい」
「ハーレムもののレズキャラはだいたいがツンデレの亜種であって、男嫌いからの逆転・主人公の特別さを描くだけのもの」
僕に反論する言葉はない。僕は、ただ、ここから一瞬の輝きを見上げる。男を好きになってしまった哀れな女が、百合キャラでなくなる様を。輝きを失うさまを。かつてそこにあった輝きはまだ僕の脳裏に残っているけれど。
けれど僕の喉はもうふさがれている。
君には届かない。
何も。