東京都中野区某所にある東京電力のコールセンターで働いてた。引っ越しするから電気の契約したり解いたり、金払ってなくて電気止まった人の対応したり、フリーダイヤルにかけるとそこに繋がる。
東京電力の社員ではない。東京電力が電話業務を委託した会社、そこから更に派遣会社に委託、その派遣社員というかなり下の存在だった。
俺はそこで一年以上働いてて、ある程度上から評価もされてたし、CPHも高かった。
CPHとはCall Per Hour、時間当たりの処理数である。電話に出て、電話を終えて、PCで客からの用件にあった処理をする数。これが高ければ会社側も東電に顔がたてられるし、1社員として見ても月平均が高ければその人は仕事が出来ているということになる。
俺はそれが大体11.5とか高い月で13とか。7時間で100件取った時もあった。
毎月ランキングが出るのだが大体50人くらいいる職場内で毎月5位以内をキープしてた。それくらいには出来る奴だった。でも奴らのミスで辞める事になった。
俺が取った電話の内容はこうだった。
よくあることだ。実は引っ越し前の場所の解約だけしてて新契約は忘れていたり、日付を間違えていたり、単にブレーカーがついていなかったり。
俺はまず客の住所を聞いた。しかしその住所に新しい人が入ってくるという情報は残っていなかった。本来はマンションの一室だろうが一戸建てだろうが、電気メーターそれぞれに対して、どんなに些細な内容だろうと、最低二年間は「こんな電話がありました」というデータが残される事になっている。
しかし客は「たしかに電話した。電話したのは先週あたりだ」という。
俺は「当日お電話いただいたのは今お使いいただいているお電話からでよろしいですか?」と聞いた。そうだというので「では私がデータを遡って詳細を確認致します。30分以内にお掛け直し致しますので少々お待ちください。」そう言って電話を切った。
何故電話を切る必要があったのか。それは仕事用のPCにも関わらず低スペックのXPを使っているため、検索するだけでフリーズ、最悪どの番号から電話かかって来たかも見失って文字通り何も出来なくなるからだ。
その日から一週間の間に客の電話番号からかかってきた履歴を検索してみた。すると残っていた。
隣の部屋に契約してたんだからそりゃ客の部屋の電気がつくはずがない。
つまり その電話を受けたオペレーターが部屋番号を聞き間違えてしまったか 客がはじめに電話した時に申告ミスをしたか のどちらかになる。
俺は先ほどの客に折り返し電話をかけた。
「私で履歴を確認し、通話の録音を確認してみました。お客様からお隣のお部屋を申告されていたので…」とりあえず客の間違いであることを伝えないとクレームに発展したら目も当てられないので柔らかく伝える。
客は「えっ、そうでしたか!?ごめんなさい!」とあっさり飲み込んでくれた。
俺は「新しい部屋ですとよくあることなのでお気になさらずに。私の方で以前のお電話を元に正しいお部屋で処理し直しておくので、お客様のお部屋は30分以内に電気がつきます。」と返す。
客は「ありがとうございます」というので、最後に「電気は最新式のスマートメーターを使って遠隔で通電致しますので、ご不在でも電気がつきます。火災や電気機器の故障の恐れもございますので、もしも電気が通る前にご不在にされる場合、ヒーターやアイロン、電気コンロなど熱の出る機器は必ず電源のオフをご確認ください」と伝えて電話を切った。
そして引っ越し先の部屋の電気がつくように処理した。この処理すれば早くて5分で電気がつく。
この後客からの連絡はなかったので、この後は何も問題は起こらなかったのだろう。
以前処理された、間違って申告された部屋の処理をキャンセルしなくてはいけない。
もしこれが誰も住んでいない部屋だったら簡単だったが、もう別の人が住んでいる部屋だったのだ。
この場合の処理は廃再という。廃止(誰かの電気の契約を解除すること)と再点(誰かと電気の契約を結ぶこと)、この2つを略したものだ。
契約のある場所に新しい契約の話が来た場合、既存の契約者に電話をして確認をする。旧契約者が引っ越し等して契約を解除し忘れている場合と新契約者が間違えている場合があるからだ。
しかし前に電話を受けたオペレーターが旧契約者に電話をしたが電話は通じなかった。その場合は東電の作業員がその場所に出向き、なんらかの方法で現場を確認して、その結果に準じて処理をするという方法をとる。
新契約者はその日から使う予定だったので、東電の作業員もその日に確認に行っていた。しかもその作業が既に完了済み。どういう確認を行なっているのかまでは知らないが、なんと新契約者への契約切り替えを受理していたのだ。旧契約者はまだそこを使用しているのに。
この場合は作業員の所属する東電支社に連絡してこの結果をキャンセルしてもらう必要がある。
この仕事で一番地獄なのが東電の支社に連絡する事だ。クレーマー相手に一時間以上電話続けられたり、殺すぞなどの暴言を浴びた事もあるが、そんなの軽いものだ。
コールセンターは使いっぱしりとしか思われてないので、向こうの対応は本当に酷い。「知らねぇよ」とか「そっちで処理出来るだろ」とかそういう言葉遣いを平気でする。
まぁなんとか連絡して、お客様の申告ミスがあったのでと伝えてキャンセルはしてもらった。
その流れを全てメモに残してその日は処理を終えた。何の問題もなかったはずなんだ。
間違えていた部屋に元々住んでいた人から連絡があったのだ。
H2箋が入っている、と。H2箋とは、契約が入ってない部屋なのに電気の使用量が出ている、契約するの忘れてませんか?というお知らせの手紙である。
元々住んでた人は今まで電気代も払っていたので全く心当たりがない手紙である。
何故こんな事になってしまったのか。
それは俺が以前キャンセルを要請した廃止と再点の処理について、あろうことか東電支社は 再点だけ キャンセルしたのだ。
旧契約者に対しては以前のデータから契約を復帰するだけなので事情を説明するだけで終わるのだが、まだ社内の問題が残ってしまう。
発行額訂正である。これは文字の通り、発行する電気代の請求額に訂正を入れる事である。
発行額訂正自体は客のミスでも検針員のミスでもオペレーターのミスでも発生するのである程度は仕方ない事でもあるのだが、大手企業の帳簿に影響することなので極力件数を減らすように厳しく言われている。
そのため東電社員もその原因の究明をしなければならないのだが、その原因を全て俺に押し付けて来たのだ。曰く、キャンセルの電話なんて支社に入っていないとか。じゃあなんで再点はキャンセルしたんだよと思うが。
そしてコールセンターを運営する派遣先の会社も東電には頭が上がらないのでその責任転嫁を受け入れたのだ。
そこまではまだいい。しかし本来であれば、原因を究明する上で処理を行った本人である俺から何か話を聞くべきだ。それをせずに全てを俺のせいにした。
俺のせいになったことで特に罰を受けるわけでもないし、金額を補填しなきゃいけないわけでもない。
だがやはりその態度が気に入らない。
「でもそれが仕事だから。重要なのは君が不快に思うとかそういう事じゃないから。うちの会社は東電から仕事をもらって成立してる。それが気に入らないならこの仕事は向いてない」と。
終わり。
マジクソだな社会。
追伸
ま、こうやって文句書き連ねてると東電に悪い印象を持つ人もいるのかもしれないけど、正直東電以外の電力会社も相当酷い。
電力自由化でA●電気とか東●ガスの電力プランとか出て来て乗り換える客も相当数いる。
電力自由化に関する法律だかなんだかの関係である程度の情報があれば勝手に乗り換えられる。
それをいい事に、それなりに名前のある会社でも「うちに乗り換えればお安く出来ると思うんですけど、その試算してみるのでよかったら検針票見せてもらえますか?」と言って勝手に乗り換えるといったケースが頻発してる。
客は乗り換えた覚えがないから何か問い合わせを東電にしてきて、それで初めて今は東電との契約ではないということを知る。
やっぱりジジイババアにそういったのが多いし、そういう人をハメるのは詐欺師と同じだよね。
電力自由化は電力無法化だったよ。
ミスしたのは客としか読み取れないのだが俺読解力弱いのかな
客がミスをしたのをカバーしたのに、社員がそれをちゃんと処理してなかった っていう話でしょ
客の申告ミス→東電作業員の確認ミス→東電支社のキャンセルミス だけど、東電支社の処理ミスだったかどうかは分からないんじゃね? 東電支社への連絡ミスの可能性もあるわけで