あの田母神さんが噛みついたNHKニュース。そんなにひどかったの?と見直すと、違う意味で「びっくり」!
http://bylines.news.yahoo.co.jp/mizushimahiroaki/20140118-00031681
突然ですが今最も読むべき漫画ってなんでしょう?
進撃の巨人、暗殺教室、マギ、銀の匙、キングダム、テラフォーマーズ、……人気漫画の名前を挙げだすとキリがないですね。ちなみに僕は目黒あむ先生のハニー推しです。奈緒ちゃんが可愛いから。しかし今回僕が選ぶ漫画はこれらの現在連載中の漫画の中にはありません。
これこそが今最も読むべきだと僕が選ぶ漫画はおよそ20年前の漫画、『ラストニュース』です。
作画を担当するのは弘兼憲史先生ですが、島耕作シリーズや黄昏流星群といった氏の他の漫画に比べると知名度では大きく劣るかもしれません。深夜のニュース番組『ラストニュース』の制作スタッフ達をプロデューサーの日野湧介を中心に描く報道をテーマにした漫画で、原作は前都知事猪瀬直樹氏です。
20年も昔の作品ですが、作中で語られる問題意識は現在でも通じるものばかりで全く古びていません。多くの人に一読することをオススメできる漫画です。
まあ、なんで今最も読むべきなのかというと作品の質が高いからではなくて猪瀬直樹があんなことになった今読むとこんなに下卑た楽しみを得られる漫画は他にないからなんですが。一話目から扱われる問題が政治とカネの問題でブーメラン突き刺さっててメシが美味い!
さて、そのラストニュースの中に『圧力』というエピソードがあります。
ラストニュースのスポンサー企業の社長が大手新聞社の社長や通産大臣らとゴルフに行っている。その席でラストニュースのことが話題に上がる。なぜお宅のような企業がラストニュースなどという偏向番組のスポンサーをしているのか、と。通産大臣に言わせればテレビ局は中立でなければいけないのにラストニュースは民自党(与党)の攻撃ばかりしていてけしからんし、大手新聞社の社長に言わせればああいう偏向番組がマスコミ不信を助長させるのだ、と。
そして直後その企業は番組の偏向を理由にラストニュースのスポンサーを降りてしまう。当然ラストニュースのプロデューサーである日野は民自党の圧力が背後にあることを察するが、なにはともあれ番組存続の危機だどうしよう。とまあそんな感じのエピソードです。
困った日野は局の専務に相談しに行くのですが、そこで放送法をきちんと読んでみるようアドバイスされます。そして放送法について調べた日野は番組スタッフ達の前でその成果を披露します。その箇所が素晴らしい。
まず日野はホワイトボードに放送法第一条第二項の条文を書き写します。
“放送の不偏不党真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること”
それから、「ちょっと読むとわかりにくいが……こっちの言いかただとどうだ?」と条文を別の文章に書き直します。
“放送を自由な表現の場としてその不偏不党真実及び自律を保障すること”
実はこちらの文面は昭和23年に国会に提出された放送法の原案なのです。
「あたまに、「放送を自由な表現の場として」とある。そのために、「不偏不党、真実及び自律を保障」してもらわないと困る、ということだ。」
「つまり「不偏不党」とは中立のことではなく、「権力の干渉があっても立場を歪められることがない」という意味に解していい。」
つまり、民自党は中立でないことを理由にラストニュースを攻撃するが、その圧力こそが放送の不偏不党を脅かしている、ということです。
僕もこの日野(=猪瀬)の解釈に同意します。中立か否かは問題ではありません。権力の干渉を受けない、そのことこそが大事でしょう。
何かを発信して、結果それが特定の立場にとって都合がよく、別のある立場にとって都合の悪いものになってしまったとしても、それが己の価値観、思想、理論など内なるものにのみ基づいているのであればそれで構わない。そのように思います。
だいたい、偏向だなんだと騒ぐ人は自分の都合の悪いものには騒ぐけれど自分に都合のいい偏向であれば偏向とみなさない、その程度の人ばかりですからね。
さて、ここで冒頭の記事に戻ります。NHKが政府広報みたいなメディアになっててびっくり! という記事でした。
もともとNHKといえばネットではサヨクの代表みたいな扱いをされることが多いメディアでした。それがウヨクの代表みたいな安倍総理の広報のようなメディアになっているというのだからその転向っぷりにびっくりです。
僕自身は普段テレビを見る習慣がなく、帰省したときだけテレビを見るのですが、年末年始に見た印象だとやはり「あれ、NHKってもっと左寄りじゃなかったっけ?」という感想を持ちました。具体的にはNHKは首相の靖国参拝には結構厳しい目を向ける印象があったのですが、実際の報道を見ると「そもそも参拝するなよ」というスタンスは全く感じられず、「理解を得るにはどうすべきか」「中国が日本包囲網を作ろうとしている」などという論調が目立ち「あれっ?」と思いましたね。
ただ、僕の中の「NHK=サヨク」というイメージがネットを見るうちに作り上げられた虚像で実は昔からこんなものだったのかもしれません。実際のところどうなのかは誰か暇な人に検証してもらいたいところです。
しかしまあここでは「NHKは変わった」という前提で話を進めます。
NHKが右傾化しているとして、果たしてこれは問題なのでしょうか。
僕の答えは、その変化が内部による自発的なものであれば問題ではない、です。マスコミは権力を監視するべきである、という話がありますが、制作サイドが現在の権力を支持しているのに無理に批判する必要もないでしょう。右翼的な考えを持つ人物が右翼的な番組を作るのは別に構わないことです。
しかし、もしもその変化が自発的なものではないなら。権力の干渉の結果であるなら。これは大問題と言わざるを得ません。
日野(=猪瀬)による放送法の解釈に戻ってみてください。「不偏不党」とは「権力の干渉によって立場が歪められることがない」ということ。つまり、権力の干渉によって立場が歪められているのだとしたら、法が保障する放送の不偏不党が破られているということになります。
実際のところ、NHKが変わったとしてその変化は自発的なものなのかそれとも権力の干渉の結果なのか。僕はNHKの人間ではないのでわかりません。
しかし、権力の干渉を疑わざるを得ない要素はいくつかあります。
ひとつにはNHKの経営委員が安倍総理に近しい人物で固められたという事実。2001年に安倍総理と故中川昭一氏がNHKに圧力をかけたのではないかという疑惑。そして昨年7月のTBSに対する取材拒否騒動。
これらから安倍総理のメディアに対して圧力をかけることをためらわない姿勢が見て取れますし、そうなるとNHKに対する干渉があるのでは? という疑惑を持つのは決して突飛な発想ではないでしょう。
特にTBSに対する取材拒否騒動は「報道は中立であるべきだ」という理由で圧力をかけるところが上記のラストニュースのエピソードに酷似しており、猪瀬直樹は安倍総理に「ラストニュースパクりやがって!」と訴訟を起こしていいレベルです(笑)
まあ実際のところ圧力があるのかないのか、あるとしたらどの程度なのか、それについてはよくわかりませんが、今後NHKや他のメディアを見る際は「ひょっとしたら安倍総理から圧力かけられてるかも」「露骨な介入はないにしても安部総理に目をつけられないように萎縮してるかも」くらいの意識は持ったほうがいいかもしれませんね。
そうだね、中立でなくても良いかもね。 であれば、だ。 番組冒頭で「原発を批判するために作った番組です」と言ってほしいね。 番組冒頭で「自民を批判するために作った番組です」...