はてなキーワード: エルヴィン団長とは
進撃の巨人が好きだった。
高校デビューを機にもう同人誌を買い漁るのはやめようと決意を固めたはずの私を、また腐女子の沼に突き落として来たのが進撃の巨人だった。
難しい考察記事からネタ動画に感想スレ、BL小説にエロ漫画。最新話が公開されるたびに1週間ぐらい噛み締めて、残りの3週間はネットに転がるいろんなものを夢中で見ていた気がする。
小学生の頃からルーズリーフに色々書いてたはいたが、とても人に見せられるクオリティではなかった。
そんな私がB5ノートに20ページ。それを推敲しながらタイピングし、一応読めるだけの話に仕上げた。
国語力が死んでるのでちゃんとしたものを一本書き上げるのは大変な苦労だった。
高校で、初めて告白してくれた男の子を「私にはエルヴィン団長がいれば十分なのであなたとお付き合いはできません」と振った。
結局半年粘られて根負けして付き合ったけど、最終的にエルヴィン団長が死んで撃沈してる間に浮気されて振られた。
あの2年間はなんだったんだろう。
寂しさを埋めるために好きでもない男と付き合った。
束縛の強い彼は私がBL小説を書いていると構えと言って邪魔をした。
結局耐えられなくなって別れた。
もう彼氏はいいやと思いながら、でも、もう前ほどの情熱で進撃を読む元気もなくて、学業に励んだ。
あんなに夢中だった進撃の巨人も毎月最新話を読むだけになった。
2期が終わった頃は待ち遠しくてたまらなかった筈のアニメの3期も、なんとなく見る気にならなかった。全部完結したら見るんだ、それまでとっとくんだって言い訳した。
夢中で追わなくなってから、話の筋がだんだんわからなくなっていった。
前はどの部隊がどこにいて、誰がどこで何をしたか。台詞の隅々まで覚えてたのに。
そのまま私は大学院生になり、大学院生あるあるだが病んで不登校になり、しかしまあこれもあるあるだがそれなりに立ち直り、それなりに就活した。
エントリーシートを粗方出し終えた4月9日。進撃の巨人が完結した。
読んだ。読んだけど、私はそれを噛みしめる元気がなかった。高校生の頃の私ならもっと泣いたはずだ。
就活のせいで元気がないだけで、内定が貰えればまあ気持ちは上を向くだろうと切り替えて、面接に挑んだ。
特に嬉しいとも思わなかった。
6月、続々と内定承諾書が届いても私はベッドから起きる気にもなれなくて、内定者面談は寝転がって受けた。「すみません、カメラの調子が悪くて。」って適当に嘘ついた。
SNSのタイムラインは最終巻の加筆、Endingの話題で盛り上がっていた。
私も読みたいと思った。本屋に足を運んで買いたかった。でも外に出られない。出る気にもならない。
仕方ないから通販にしようって思ったけど、Amazonのページを開くと、なんのためにAmazonを開いたのか忘れてしまう。びびる。馬鹿か。
しばらくして思い出すけど、その頃には注文したい気持ちが消えている。
そういうことばかり繰り返しているうちに、一週間が過ぎた。
今まで欠かさず発売日に買ってたのに。
ずっと待っていたはずの最終巻なのに、何もする気にならない。
なんかもう10年弱待ってた漫画の最終巻出たのに買えないの、マジでどうしようもない。
夢中で読んでいたあの頃は、まさかこんな自分が状態で完結を見ることになるなんて思いもしなかった。
悲しいし、情けないし、とても残念だけど、まあ、しょうがないとしか言いようがない。