2022-05-30

「『映画秘宝』の記憶執筆者から皆様へ・2

 anond:20220530192850の続きになります

 (はてな社に問題記事削除依頼申請した結果、2022/05/31削除措置を済ませたとのご連絡をいただきました。対応して下さったはてな社の方々にご迷惑をおかけし、誠に申し訳ありませんでした。)

 私が、町山智浩の後輩男性(以下"X氏"と表記します)の元・妻の女性たち及びX氏に精神的苦痛を与えた記事を書いた当時の、動機心理を思い返すと、自身ハラスメント体験に重ねて情報を捉えていたのが大きな要因だと思います

 ハラスメント被害のものの苦しみだけではなく、私の身近にいる人間の中には、私の苦しみに対して理解共感を示してくれない人、被害回復の手助けをしてくれない人が存在し(もちろん、理解共感や手助けをしてくれた人も存在しましたが)、そのような心無い人たちの存在は、深い無力感孤立感を私に与えました。

 そうした無力感孤立感に苦悶していた時、私は町山智浩インタビュー記事情報に接しました。今となっては、そのインタビュー記事の中で語られたセクシャルハラスメント被害現実のものではなかったと判明していますが、その情報を知った当時は本当の話であるものと私は思っていました。私は、その記事の中のセクシャルハラスメント被害者を、私自身に、被害者を助けようともしないで町山智浩の側に付いている(という誤ったイメージを、町山智浩の虚言によって付与された)X氏を、私の助けになってくれなかった人たちに、それぞれ重ねていました。

 加害者町山智浩に苦しめられるだけではなく、家族・伴侶であるX氏すらも加害者の側に立っていて、セクシャルハラスメント被害である元・妻の方は、孤立無援で苦しんでいる。そのような(今となっては誤りと判明している)イメージが、私を強く捉えて離さなくなり、居ても立っても居られなくなりました。

 ハラスメント被害経験である自分には、加害者町山智浩と、町山の味方となって彼女たちを顧みない(と誤認していた)X氏を批判する義務権利が有るのだ。抗議の声を上げられない彼女たちのためにも自分だけは代わって抗議の声を上げるべきだ。たとえ他の人たちが彼女たちを顧みなくても、せめて私は彼女たちの何らかの助けにならなくては。そのような思いを私は抱きました。

 言論である町山智浩が、自発的意志によって、広く販売される雑誌の誌面に掲載されるインタビュー記事として公開した情報なのだから、それをピックアップして公の場で批判することには十分な道理が有ると考えたことも、私の行動に拍車をかけました。

 MeToo運動我が国へ波及する様子も見て、何かが変わるような、私でも変えられるような気もしました。

 しかし、私が町山智浩インタビュー記事ピックアップして情報を伝播したことは、実際にはX氏の元・妻の女性たちを助けるどころか、却って苦しめる結果にしかなりませんでした。

 X氏についても、もし私が冷静になれていれば「本当は、町山智浩インタビューに抗議などをしたいのに、権力勾配の存在マインドコントロールなど何らかの理由によって、町山に対する抗議の声を上げることが困難な状態に置かれているのかもしれない」という可能性も考慮して、仮に誤認情報に基づいてX氏に対する批判非難をするにしても、もう少し抑制の効いた、精神的苦痛を与えたり名誉を傷つけずに済むような書き方が出来たのではないかと思いますしかし実際には、既に明らかになったとおり、私はそれが出来ませんでした。

 私は、X氏を悪魔化していたのだと思います悪魔化することで、あのような筆致で記事を書くことも正当な行動なのだと、私は勝手に思いこんでいました。非常に身勝手独りよがり正義感であったと思います

 今でも、セクシャルハラスメントパワーハラスメント、それ以外にも人間としての尊厳を踏みにじるような行為について、それらを他人が行っているのを認知したならば批判するべきであるし、抗議の声を上げてそれらを止めさせるべきであるという考え自体には私も変わり有りません。しかし、たとえそうするべきであったとしても、やはり冷静さを欠いて感情的になったり、節度を失ってはならないのだと、今さら遅きに失することではありますが、改めて痛感しました。

 はてな匿名ダイアリーは、かつて「保育園落ちた、日本死ね」と題する記事によって、日本社会全体に議論空気改善の動きを促したことがあることを、私は知っていました。

 ハラスメントの苦しみについて理解共感を得ようとしたり、抗議の声を上げようとすると、個人情報を知られて二次被害を受ける可能性を考えて、被害者は躊躇するものです(これは、経験者の方々にならば共感してもらえると思います)。しかし、はてな匿名ダイアリーならば、二次被害可能性を回避することと、私のような弱い人間でも抗議の声を上げることの両立が可能かもしれないと考えました。

 ここ数ヶ月、日本実写映画業界の周辺では、監督俳優によるセクハラパワハラ性的暴力が露見して報道されることが増加しました。明らかに道理がないそれらの事案に対してですら、被害者の人たちに対して「自業自得だ」というような心無い声を浴びせる人たちが少なくありません。あるいは「それらの監督俳優は、才能の持ち主なのだから、少しばかりの過ちを犯しても寛大な処分で済ませよう」と言う人たちもいました。町山智浩インタビュー問題発言に対しても「町山さんのことだから」と言って、問題視せずに済ませる人たちが少なくありませんでした。

 こういった著名人立場の強さと非・著名人立場の弱さの差によって、押し潰されているハラスメント等の被害者は少なくありませんし、弱い人間に対する理解共感を示さない人たちから二次被害を受けることもあります。それらに負けずに抗議の声を上げることを弱者でも可能にする、はてな匿名ダイアリーのような場は貴重であると私は考えています

 しかし、私のように身勝手で誤った正義感に基づいた独りよがり断罪の振る舞いは、はてな匿名ダイアリーの価値を損ないかねないものであり、そのような意味でも私は罪深いことをしたと思います

 思いつくままに筆を進めてきたために論理性に欠ける文章となりましたが、X氏の元・妻の女性たちやX氏に対して私がしたことは、何ら正当化できないことだけは言うまでもありません。たとえ、私がハラスメント被害者であったとしてもです。

 こうして書き連ねたことも、結局は自己正当化に過ぎないのかもしれません。まだ私は本当の反省ができていないのだと思います

 いったん筆を置きます

記事への反応 -
  • あんまり気にする事ないよ。 #MeTooだってさんざん追い詰めた後で濡れ衣だった事もあるし、学者の集団が別の学者を告発するホームページで問題を起こした事もあるらしい。 告発社会に...

  •  一連の「雑誌『映画秘宝』の記憶」という記事を執筆した増田から、以下のとおりお伝え申し上げます。 1 謝罪  初めに、町山智浩の後輩男性(以下"X氏"と表記します)の元・妻であ...

    •  「雑誌『映画秘宝』の記憶」を執筆している者です。既にご存知の方もいらっしゃると思いますが、町山智浩が、過去に雑誌インタビューの記事で「後輩男性の元・妻の女性に対して...

    •  この文章は、セクハラ行為を批判し、根絶するために記しています。2022/05/30表現を一部修正しました。  昨今の日本の実写映画業界では、監督・プロデューサー・男優たちによる性的...

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