近年見るに耐えない退職エントリや退職報告が多いのですが、エンジニアって文字を書くことに関しては恐ろしく下手くそなのか、マニュアルや仕様がないと何も出来ないのかのどちらなんでしょうか。
前者だったらどうしようもないけど、後者だったら「これをやってはダメ」というのを教えてあげることで少しはマシになるかと思ってこのエントリを書きます。
著名なエンジニア以外、退職報告なんてしなくていいです。あなたの退職に興味を持っている人は、辞めたことを人づてで聞きます。わざわざブログやTwitterでの報告は不要です。あなたは著名じゃないですし、世の中のほとんどの人は、あなたが会社を辞めたことに興味を持っていません。あなたの退職を知らなくても、何の問題もありません。Facebookでステータスを変更して、そこにコメントをくれた人に返信するくらいで十分です。
退職というのはそこそこ一大事です。人生において結婚は大体1度前後ですが、退職も大体1度前後でしょう。何か書きたいと思う気持ちはわかります。そういう場合に、以下の点について気をつけて下さい。
これを守っていない人がたくさんいて軽いバカ発見器になっていますが、基本的に退職日以前に退職を発表する(退職エントリを書く)のはやめましょう。事前に会社に確認を取っているなら退職日以前に発表しても良いですが、1ヶ月前後したところで何も変わりません。退職エントリを急いで書く必要はまったくありません。最終出社日が終わった後であっても、法律上はまだ社員なので退職報告は控えましょう、きちんと書類上の退職日が過ぎ去った後で報告すべきです。はやる気持ちはわかりますが、ちゃんと退職を待ってから退職エントリを書きましょう。
理由についても一応説明しておきます。まず会社において人事関連の情報は大変重要な情報です。まともな会社なら、就業規則等で守秘義務で守られているのが一般的です。それが自分の進退であっても、当然その範疇に入ります。社会人として所属している組織の情報を無為に漏らすのは言語道断です。自分の情報だと皆さん気軽に共有しがちですが、ここはしっかり守りましょう。
また一般的に、会社を辞めるというのは「会社に不満があった、もしくはより良い待遇の会社を見つけた」ということがほとんどであり、前職に対して多かれ少なかれマイナスイメージをもたらすことが多いです。在職中に在籍している会社のイメージを下げるのは、コンプライアンスの観点からあまり優れた行動とは言いがたいでしょう。せめて会社の所属を離れてからにしましょう。
なお、特にスタートアップに転職した人の中で稀に見ることがあるのですが、まだ退職日が過ぎていないにも関わらず「すでに働いています!」みたいなことをブログやTwitterで報告しているアホがいます。絶句するほどにアホです。そこで働いた成果物は前職のもの、と主張されてもおかしくないですよ?スタートアップはリソースが足りないので即座に働く必要があるのかもしれませんし、それがバレなければとやかく言うつもりはないんですが、たとえば会議などにとどめてコードはコミットしない(後々買収されたりしてコードの履歴が明らかになる可能性がある)などの配慮をした方がいいでしょう。正式に辞める前に働いていることを公言するのはアホの極みです。
前の会社で嫌なことが積み重なって転職する場合、前職の悪口を書きたいと思う気持ちはよくわかります。そして世の中にそういう転職エントリはあふれており、読む分には面白いです。これに関しては本人の気持ちの表現方法の一つなので止めはしませんが、「できるだけやめたほうがいい」と助言をするにとどめておきます。
まず、あなたが著名なエンジニアだった場合、「悪口をネットで書くような人だ」と思われるのは大抵の場合大きなマイナスです。それが事実であろうとも、その人の将来の可能性を狭める行為であるのは間違いありません。まあ最も、著名なエンジニアは滅多にそんなエントリを書いたりしないので問題無いでしょう。
さて、あなたは「自分は著名なエンジニアでないから大丈夫」と思うかもしれません。確かにあなたの退職エントリは、あなたの関係者にしか読まれません。主に前の会社の人、次の会社の人、Twitterのフォロワー、です。そして一般的に業界は大変狭く、転職は同じ業界内で行われることがほとんどです。あなたの悪口エントリがうまくバズれば、前の会社に効率的にダメージを与えられるかもしれませんが、結局それは一瞬のことで長くは続かないものです。一方、あなたの関係者は「あなたがそういうエントリを書く人間だ」と認識され、その印象はずっと付きまとうことになります。結果として、あなたの評判はあなたの知らない所で傷ついていくのです。
直情的に行動してしまうエンジニアに何を言っても無駄ですが、「悪口を書かない」というのは理性的な人にも大事なことです。やはり前の会社に含む所があれば、ちょっと婉曲的に悪口を書いてしまったりするものですが、そういうのは一発で伝わります。特に前の会社の同僚などは一発でわかり、嫌な気分になるでしょう。人を嫌な気分にさせる文章は、書くのは自由ですが、公開しないほうがよいと思います。
はれて転職を果たし、新しい会社での生活がバラ色に見えているのはよくわかります。でもそれを書くのはやめましょう。痛々しいです。
今まで色々な転職者を見てきましたが、潜在的に自分の転職に不安を持っている人の方が、より積極的に「転職してよかった」「仕事にやりがいがある」「今の環境最高」みたいなことを書いています。書かないと不安なのか、それとも思い込もうとしているのでしょうか、そういう人たちは結果的にあまり幸せな転職をしていないことがほとんどで笑えます。皆さんもウォッチしてみるといいでしょう。
まあこれは、痛々しいだけなので、別に書いてもいいです。付き合い始めのカップルがTwitterとかで永遠の愛とかを語っているみたいなもんで、こちらとしては半笑いしながら眺めているだけなので。
まあ書かないのが一番だと思うんですが、はてブ数を稼ぐ千載一遇のチャンスであるとか、どうしてもウィッシュリスト乞食をしたいとか、理由は色々あれど「書きたい」という人は多いでしょう。退職日以降に書く、前職の悪いところは完全に忘れて書く、今の会社の良い所は書かない、というのを守った上で、何を書けばいいでしょうか。
やはり一番重要なのは、前の会社でお世話になった人への感謝などでしょう。もっとも部外者がこれを読んでもちっとも面白く無いのが難点ですが…。
また、新しい組織の中で挑戦したい夢を語るのもいいかもしれません。転職という手段をなぜ選んだのか、これから今までと違う形でどう社会に貢献するのか、みたいな話ですね。ま、大抵の人は「今の自分に足りない技術を求めて…」みたいな自分語りになるので、これも面白く無いのが難点なんですよね。
というわけで、真っ当な退職エントリを書いても面白くないので、書かないのが一番だと思うんです。だれもあなたの退職なんかに興味を持っていないのですから。
実際にはてブが付くんだから興味を持たれているということだし、 興味を持たれないとしても、人生の一つの転機として日記に残す価値はあるだろう。
どーーーーでもいい 社会なんてどうなろうと知るか! 大事なのは俺だけだ!