ここ数年、ネットのアマチュア作家の間では「本格ファンタジー」というジャンル・概念が断続的に話題に上っている。
「RPGをベースにした軽薄な『なろう系』のせいで『本格ファンタジー』が衰退した」
と強硬に主張するいわゆる「本格ファンタジー派」と、それ以外の人間との間で激しい議論が交わされている状態だ。
だが、この本格ファンタジー論には、本格ファンタジー派の攻撃性の強さを抜きにしても、そもそもの基礎に複数の大きな問題が存在するように思う。
本格ファンタジー論の抱える根本的な問題を、同じく「本格」を冠するジャンルでありながら似て非なる歴史をたどった「本格ミステリ」と比較することで、明らかにしたい。
本格ミステリというジャンルは、ミステリ(推理小説)のうち、謎とその論理的な解決を重視するもの、と定義されている。
本格ミステリには、名探偵や不可能犯罪など非現実的な要素があるものも多い。そのため、社会問題を中心に扱う社会派ミステリが台頭した一時期には、幼稚で時代遅れのものとされた(もちろん、冬の時代にも本格を書き継いでいた作家は存在した)
だが、島田荘司のデビューと、島田の推薦による京大ミス研出身者を中心とした作家群を「新本格」として売り出す講談社の販売戦略が(「人間が書けていない」といった批判もありつつ)大成功。これにより本格ミステリが復権することになった。
以降は、エンタメ小説の定番ジャンルとして、現在に至るまで根強い人気を保っている。
本格ミステリにも、容疑者X論争など定義に関する議論は多い。だがその多くは境界線上の具体的な事例を発端にした話(〇〇は本格か?)であって、中心となる定義(「謎とその論理的な解決」)そのものに対しては大きな異論はあまり出ていない。
一方本格ファンタジーには、今のところ言語化された定義自体がほぼ存在しない。一般的に使われる「本格ファンタジー」という言葉は、単なる誉め言葉・宣伝文句以上のものではない。
「本格ファンタジー」派にしたところで統一的な見解があるわけでもなく、個々人が様々な主張をしている。その声を最大公約数的にすくい上げたとしても、せいぜい「よくできたシリアスなハイファンタジー」という程度の話になるだろう(実際には、ハイファンタジーに限らずローファンタジー、エブリデイマジック、幻想小説なども含むという主張すらある)
そこには「謎とその論理的な解決」レベルの具体性もない。何が「本格ファンタジー」なのかもはっきりしないまま、本格ファンタジーの復権だけを訴えても無益ではないだろうか。
本格ミステリは、ミステリ内の具体的なサブジャンルの名称であるが故に、一時期は「本格」=幼稚という転倒した評価を受けることにもなった。だが「本格ファンタジー」の場合、そのような価値の凋落は本当に存在したのだろうか。
仮に、コミカルな内容・文体であったり、T・CRPG的な要素・感覚を含んだりするファンタジーは全て「本格ファンタジー」ではないとしよう。そうしてみると、たしかにここ数十年の国内小説では非本格ファンタジーの方が、商業面でははるかに優勢だったように見える。
だが一方で、なろう系にせよそれ以前のラノベファンタジーにせよ、それらが本来の「ファンタジー」とは良くも悪くも異なるものであるという認識は、市場の問題とは無関係に(ラノベ・なろう読者を含む)社会全体で強固に共有され続けてきた。大きなシェアを誇りながら依然として激烈に続いているなろう系叩きも、そのような思想を背景にしているものと思われる。
ここで重要なのは、なろう系やラノベファンタジーを「偽物のファンタジー」として指弾する人々が、必ずしも「本格ファンタジー」の愛読者とは限らないということだ。自分は実物を一度も読んだことはないが低俗ななろう系・ラノベファンタジーとは全く異なる素晴らしい「本物のファンタジー」がどこかに存在するはず、という来歴否認めいた頑なな本格ファンタジー幻想が、彼らの言動を強く支えている。
結局のところ、過去から現在に至るまで「本格ファンタジー」という概念自体の価値はほとんど毀損されていない。である以上、逆に新本格ミステリのような華々しい復活劇も演出しようがないということになる。むしろ、実態から離れて高まり過ぎた本格ファンタジーの権威こそが、現実の作品としての本格ファンタジーが読まれることを妨げているのではないか。
上で挙げたような問題を踏まえた上で、では現在の「本格ファンタジー」というジャンル、あるいは文学運動はどうあるべきなのか。
それを考えるのは、本格ファンタジー派ならぬ増田の仕事ではない。だがひとつ言えるのは、自分たちが本当は何を望んでいるのかを再確認すべきだろうということだ。
なろう系のシェアを切り崩せればそれでいいのか。
それとも、特定の種類のファンタジーが読まれるようにならなければいけないのか(自分の作品は本当にそこに含まれるのか)
webだけの話ではなく、市場にも具体的な影響を与えたいのか。
好きなもん書いて好きなもん読みゃあええやんけ
ファンタジーとは本来児童文学のものであるから「本格ファンタジー」も恐らくハリーポッター等を指すのではなかろうか
ファンタジーとは本来児童文学のものであるから 八犬伝とか普通に大人が読んでたんちゃうの
指輪物語から直引きするか孫引き曾孫引きするかという違いにしか思えないのだが
これだよなあ
最近、ゴブリンスレイヤーとか最果てのパラディン、ダンジョン飯とかのD&DやWizardryの世界観を丁寧に敷衍してる作品が揃ってきた印象はある。 ああいう、元々の設定を丁寧に広げて...
🐟️「エラそうな視聴者様だな」
良い議論ですね。 ハイファンタジーとローファンタジーのコンテクストはもう議論ずみですかね。 ここのブログの良エントリをご参考に。 https://retrogameraiders.com/archives/7753400/
そこのエントリは永久に残すべき。FFとクリスタルの物語の解釈として珠玉。
これでも読んでおけ https://anond.hatelabo.jp/20160712170114#
本格っていう格はなんなの? そんな格付けがあるならそれに沿えばいいだけじゃないの?
お前は3流増田だからコメント出禁やで😁
ようするにヒロイックファンタジーじゃなくハイファンタジーが読みたいってこと? ちゃんとしたハイファンタジーは読むの疲れるから流行らないと思うけど
ハイファンタジー、ローファンタジー議論か
ミドルファンタジー
アホやなあ 本格ファンタジーっていうのは なろうやラノベみたいな低俗じゃないってことやで 定義なんてないんや ただし 作者と読者が高尚でなければならないんや だからはてなのゴ...
煽り文書いてる人の配慮不足なだけでは
そもそも本格ファンタジーって宣伝文句でしかないものをあるように扱うのが駄目だけど、本格本格言いたい人が指すのは指輪物語から始まるようなハイファンタジーだろ なろう系に...
異世界召喚はハイファンタジーだぞ
本格ファンタジー議論する奴には ドラゴンランス戦記とか、隣り合わせの灰と青春とかを読ませてみて 意見を聞いてみたりするのが良いと思うんだよね その人の本格成分を試す試金石 ...
フォーチュン・クエストが受け入れてもらえないのは冒険者カードだと思うわ あの設定が斬新ではあるけど、あれのせいでまるでゲームの世界にいるような話をファンタジーって呼ぶよ...
フォーチュンクエストあれ、今のなろう系の「ステータスオープン」だからな。 電子ゲームかテーブルトークRPGかの違いだけで。 っていうか、「本格ファンタジー」に関する議論が...
そういう自然発生的な用法やなくて、最近になって特定のアマチュア作家のコミュニティが「俺たちの作品は本格ファンタジーっていうジャンルなんや!」って主張して、現在進行形で...
別に同じだと思うが。 なんか新しく考えたつもりの奴が今暴れてるとしても、最大限好意的に見て車輪の再発明。 実際のところはもとからあった概念に聞きかじってひ孫引きして...
そら俯瞰したら相似性はあるけど、もっと狭いスパンの話をしとるんやっちゅうことよ。 目の前のピザをどうやって切り分けるか相談しとるときに「俺の実家には立派なピザカッターが...
フォーチュン・クエストは結構骨太のファンタジー世界が書かれてるけど そのガワにレベルとか冒険者カードとか出てくると 「だから」 本格じゃないって話になるわけでしょ? 詰まら...
お前の骨太って、ずいぶんリアリティレベル低いんやな、という感想だが まあリアリティレベルと「本格」かどうかに関係が無い、というなら一聴の価値はあるかも
その場合、本格ファンタジーの定義は どれだけ緻密に世界を描いているか に集約されるわけ? 意見が合わないねぇ
俺が思うに、リアリティレベルを上げようとする意志みたいなもんがあるのが「本格ファンタジー」かなあ ドラゴンっていう生き物は現実に居ないんだけど 仮に現実にいたとして、...
いやこの「本格ファンタジー」って元増田が書いているようにアマチュア作家の用語なんだよ。 「俺が書いたWeb小説の人気が出ないのは俺の作品が本格だから」 「いまの読者はふにゃふ...
??? 元増田と同じこと主張してない? それを語る人間の人格を保護する定義だろ
ぜんぜん違うよ
来歴否認とはなんですか?
本格ミステリってアンデッドガール・マーダーファルスを「令和のクイーン」とか持ち上げちゃうような連中やっけ? 推理小説をパズル本としてしか読み解けないからトリックの良し悪...