2021-03-07

海外City Pop / Japanese Fusionの受容に関して

 間違いや広く知られていることもあるが、思うところがあったので書き殴っておく。

 ここ最近YouTubeSoundCloudにおいて70~90年代city popJapanese jazz/fusionは一部の人たちに再発見?されてアップロードされた結果、それらのジャンル他国で(少なくとも以前と比べれば)人気が高まっているよう見受けられる。多くのアルバムが丸々アップロードされているが、例えば間宮貴子の『LOVE TRIP』は254万回再生されているが、(少し古いけれど)Thundercatの『Drunk』は211万回再生である。他にも大貫妙子アルバムも同程度に再生されているし、福井良に至っては1000万回以上再生されている。

 ただ人気が出てきて静かなブームになっているのなら、わざわざこんなことは書かない。次のページを見て欲しい:(https://www.youtube.com/post/UgyolPz5qn-J05oe5wB4AaABCQ) このコメント欄では'Its a shame this happened at all. Youtube is one of the only ways for this sort of music to be listened to here in america'

'I love Momoko Kikuchi music, but her agency really does not understand how her name is much more valuable now than in the 80's. Meme power is the new key to success in the internet marketing'といった傲慢かつ自分勝手コメントが非常に目立つが、ここのコメント欄を見ていて既視感はないだろうか。最近だと漫画村を利用して自分たち無料で読むことを、少し時代を下るとマジコン使用PSPWiiクラックを、さらに下るとMicrosoft officeなどのソフトウェアを貸し借りすることを当然のことと主張する/良心の一切傷まない/自己利益追求に熱心である人たちを私は想起してしまう。

 これらのコメントに対して何かを述べる前に前置きしておく。楽曲制作には金も時間もかかるし、関係者にとっては生活の糧であるアルバム売り上げだけが収入源という訳ではないが、違法アップロード利益が一切もたらされないのならば、関係者生活基盤に負の影響がもたらされるは自明である著作権保護期間がどうして長期に渡るのかとということとも関連づけておいて欲しい。それから改めてコメントを見てみる。まず前者のコメントであるが、ちゃんちゃらおかしいと言わざるをえない。こういった楽曲はDiscogsで買うなり日本レコード店から輸入するなり聴く方法はいくらでもある。聞く前に情報を集めるということを考えても、SNSで他の人に訊ねたり、本やレビューを調べたりするといったように、いくらでもあるのは言うまでもない。ただ自分正当化したいだけのコメントと断言して良い。次に後者コメントを読んでみると、評論家気取りの無銭厄介ファンであることが窺える。まず菊池桃子楽曲を愛しているのならまず違法アップロード違反申告するのが筋であり、違法アップロード他人収益を得うる状況なんてどうしたって擁護できない。そもそも金は落とさず非公式な場でのみ姿を表す者を人はファンと呼ばないのに、どうして口を挟むことができようか。まさか違法アップロードを削除したら自称ファンから非難されてマーケティングにまで口を出されるとは予想もしなかっただろう。

 さらに状況を複雑にしているのは、違法アップロードという名の布教活動を行う無駄に熱心な人たち、利益を掠めようとしてあの手この手を尽くす輩などの全く無関係な人だけで構成されたエコシステムが完成しうる状況だ。YouTubeでは権利者の利益を守るために色々と仕組みが作られているのは分かるが、それが完璧機能しているとは言い難い。例えば先述した間宮貴子の『LOVE TRIP』のYouTube動画には広告が付いているのだが、その収益を得るのは「CΘNSUMΞ フローラルマンガ」という間宮貴子サンプリングしたどこぞのアーティストである。これはSoundCloud傘下でアーティスト収益を守るはずのRepostNetworkが、間宮貴子とある曲をほぼ丸パクリ(私サンプリングRemixとはかけ離れているといっても良い)したものを「CΘNSUMΞ フローラルマンガ」のオリジナル曲認識してしまったため、パクられた側の曲のLicense HolderとしてなぜかRepostNetworkが登録されてしまっている。一応概要欄には'This video has been claimed by the rightful copyright holders, Kitty Records, and all revenue is now going to them.'とは書いてあるが、実際は分からない。概要欄に書いてあることを偽と判定するならば、このように全く関係のない人たちだけが利益を得る最も不毛な状況が一部で出来上がってしまっている。

 このような人たちが昨今の人気を支えているのなら、人気や知名度の割に儲けがない、という悲しい状況下にCity PopJapanese Fusionはあるということだ。儲けのない産業/ジャンルに人が集まっていくはずもなく、改善されない限り先細りが予想される。金を出さなファンはどれほど数が多くとも0と同義であるさら違法アップロードに関するコストを考えると、違法アップロードされた楽曲布教活動を行っている自称ファンは、0以下の赤字をもたらす存在/癌なのかもしれない。海外PCゲーム業界とか似たような状況から抜け出していったものは確かにあるにあるが、色々と条件が業界側にとって有利であったというのは大きかったし、未だに傷跡は残ったままで完全に抜け出したとは言えない。

 国産漫画/アニメなどの業界デジタル時代海外でしてしまった失敗を音楽業界も再びしてしまうのだとしたら、日本の主要な文化全体でどれほどの損失を出してきたことになるのだろう。

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