2020-09-17

はてなスター研修2

前回 → anond:20200914214630

自宅に帰った新入社員の増村は、苦渋に満ちた表情で会社から貸与されたばかりのタブレット端末を見つめていた。

(この会社に入ってよかったのだろうか…)

大学ソフトウェア工学を専攻し卒業研究Webアプリケーションフレームワークテーマにした増村は、Webエンジニアになることを志望して入社したのである採用選考において、部署配属は研修後に決定するので志望するWebエンジニア部に配属されないかもしれないと面接官に言われたが、Webに関われるのなら何でもやりますと二つ返事で答えたのだ。入社してから気づいたことだが、Webエンジニア部は小規模な組織であり、会社としては広告事業に携わる営業マン企画マンになることを新入社員に望んでいるのだ。

(こんなことなら、WebにこだわらずSIシステムインテグレーター業界を志望すればよかったな…)

しかし、皮肉なことに増村には自信があった。はてなスター研修トップの成績を収める自信が。増村ははてなブックマーク(以下、「はてブ」と略す)とはてな匿名ダイアリー(以下、「増田」と略す)のヘビーユーザーであった。自宅ではてブ増田に熱中するのはもちろんのこと、大学講義の空き時間にもスターの通知や増田ユーザー数の伸びに目を光らせているほどであった。そんな増村にとって、羽手部長説明は退屈で的外れものだった。俺が代わりに壇上に立ってスター獲得のノウハウを伝えてやるよと言いたいほどであった。

羽手部長はてな会社経営事業内容については同業他社としての見識を持ち合わせていたが、その名に反して肝心のはてブ知識があまりなかった。はてブの使い方を説明すると言い、プロジェクターはてブトップページを表示させて500ユーザー超のライフハックエントリーを開き、

目からウロコのお役立ち情報。参考になります

スターをもらえそうにない互助会ブロガー文体ブックマークコメントを残した。そして、新規ブックマークを追加する方法についても説明した。新聞社Webページからスポーツ記事を探し、巨人が逆転負けしたというニュースはてブして、

前半リードしていただけに勝てると思ったけど残念です

という、これもまたスターのもらえそうにない残念なコメントをした。

新入社員はてブを知っている者はほとんどいない感じだった。はてなスター研修羽手部長説明した時も、「はてなってなんだ?」、「名前は聞いたことあるけど使ったことないな」というつぶやきがざわめきとともに聞こえたくらいだ。「ブックマークコメントはいくつしてもいいのですか?」、「アイコンは変更できるようですけど、変更してもいいですか?」などとあまり本質的ではない質問羽手部長にする者もいた。それに対して羽手部長は同一ページのブックマーク二つ目コメントを入れられないか試行錯誤していたが、近くに立っていた武隈課長が1ブクマにつき1コメントしかできない仕様だと説明した。その流れでアイコンの変更方法武隈課長説明した。

武隈課長はてブに対する知識はあるようだが、基本的に置物のように立っているだけで研修に関してはあまり実権がない感じだった。しゃべり方や所作覇気はなく、閑散部署名ばかり管理職といった風情だった。増村は羽手部長ではなく武隈課長に以下のようなはてなスター獲得方法についてのクリティカル質問をしようとしたが思いとどまった。

はてブ経験者だと感づかれたくなかったので、増村は何も質問しなかった。はてブをするものなら誰しも、はてなユーザーであることを隠匿するのは当然のことであろう。FC2発言小町ガールズちゃんねるふたば☆ちゃんねる爆サイなどの利用していることを公言しづらいWebサービスのユーザーでも、人と場所を選び酒の席で興が乗った時ならばカミングアウトが許されるだろう。しかし、はてなユーザー特に増田であることを公言することは冗談では済まされない。ネット上で誹謗中傷を交わすだけに飽き足らず、現実世界で凶行に及ぶ可能性を秘めた危険人物扱いされてしまうがオチだろう。増村はその日、言いたいことをこらえながら研修説明をじっと聞いていた。

ちなみに研修としては、スター獲得の最適解を追求するのが目的ではないと増村は感じた。どのようなコメントをすればネットユーザー好意的な反応がもらえるのかを新入社員同士が競い合いながら探っていき、広報能力を向上していくことを人事としては望んでいるようだった。そのような研修部署配属を決定するのもどうかと思ったが、研修する側も初めてのことを試行錯誤している感じだったので真意は測りかねた

増村はタブレット端末をじっと見ながら考えた。はてなユーザーであることは絶対に悟られてはならない。だからと言って、稼げるはてなスターを獲得しにいかないのもプライドが許さない。それに、配属はどうなるのだろうか。スターを大量に獲得してトップの成績を収めたら志望通りWebエンジニア部へ配属してくれるのだろうか。研修で優秀だったからと本人の志望を無視して、Webエンジニア部でなく広告事業関係部署へ配属するのではなかろうか。

――いったい、俺はどうすればいいんだ…。

記事への反応 -
  • 「みなさんおはようございます。人事部長の羽手生(はてぶ)です。昨日はここにいる三十名が入社式を無事終えたと聞いているので、細かい挨拶は抜きにして早速本題のはてなスター...

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