2019-01-10

ゆるふわブラック企業体験記 〜愛は人を狂わす〜

半年前に入った会社が「ゆるふわブラック企業」だった。

貴重な体験をしたので、特定を恐れずに書いていこうと思う。

そこは社員が30名にも満たない小さな会社だった。

よく考えたら、入社時に雇用条件が明示されず、雇用契約書とかそういった類の書類を一切書かずに業務が始まった時点で変だった。

入社してから2日目、ロクな引き継ぎやレクチャーもなく、右も左も分からない状態現場へ投入された。

配属された課には、M先輩(30代、♀)とU課長(50代、♂)しかいなかった。自分を含めて3人だけの小さなチームだった。

2人は「わからないことがあれば聞いて」と言っていたが、いざ質問すれば「自分で考えろ」と突き放された。

仕方ないので自分なりに考えて努力したが、結局は先方にも迷惑をかけるような事態になった。

しかし、その場に及んでもM先輩もU課長も「自分の不始末は自分で処理しろ」というスタンスだったので俺の初プロジェクト大炎上した。

から知ったのだが、この時の仕事相手はM先輩とトラブルを起こしていた相手だった。

ざっくりと説明すれば、面倒な客をいきなり新人に与え、炎上を口実に関係を切る作戦だったようだ。

なんと、俺は汚れ役の大役を与えられたのだ。

その後も雑用を含めた業務ドンドンと転がり込み、知らない間に自分担当になっている案件も増えた。

気づけば入社1ヶ月も過ぎる頃には、終電帰りが当たり前となっていた。比較的、楽なタイミングでも朝7時に自宅を出て、帰宅は深夜1時。オフィス徹夜するのも当たり前になった。

そんな僕を尻目に、もっと忙しいはずのM先輩とU課長が定時上がりをしていたのが不思議だったが、この疑問は後に解消されることになる。

ある日、U課長が言ってきた。

最近、君は夜遅くまで会社にいるね。別に仕事はココでしなくてもいいんだよ」

『そうか、持ち帰りでみんな仕事をしていたのか!』と純朴な俺は考えた。

この日から俺は業務必要ファイルクラウドに保存し、自宅のパソコン個人スマホでも会社メールを受信できるようにした。

帰宅しても仕事がついてくる。終電を気にせずに仕事ができるようになった。

電車内でもメールのやり取りができるので、通勤中も仕事と向き合うようになった。

で、この頃に知ったのだが、残業代が固定制だった。

時間働いても給料は変わらない。毎月25日に決まった額が機械的銀行口座に振り込まれるだけ。

何も説明されていなかったので、給与明細でやっと気付いた。

また、次第に課内の人間関係ができてくると、U課長の遊びにも誘われるようなった。やったこともない釣りだ。

釣りの朝は早い。なぜか新人の俺がクルマ運転して週末は深夜3時にU課長の自宅まで迎えに行った。

俺は釣り竿すら持っていなかったので、上司に竿を借りる代わりにクルマを出す、という一方的に決められた謎の交換条件だった。

そして船に乗って釣りをし、上司を送り届けて帰宅。帰ったら仕事の続きを深夜までやって、翌朝はU課長よりも早く出社していた。

こんな週末が雨が降ろうと関係なく、ほぼ隔週で訪れるようなった。

昨年11月下旬のある夜、普段は使わない駅まで行けば、まだ動いている別路線で帰れそうだったので夜道を歩いていた。

すると、駅近くの繁華街車道の反対側をU課長女性と腕を組みながら向かってくるのが視界に入った。

相手女性はM先輩だった。

U課長結婚してるし、高校生中学生の子供がいたはず… 社内不倫

そうか、2人が同じようなタイミングで定時退社するのはデートのためだったのね。

お互い気付かずに素通りすればよかったものの、よりによって目が合ってしまった。

目線をそらし、慌てて腕を解く2人。

俺は何も見てないフリをして歩みを止めず逃げるように歩き続けた。

翌日、3人は何事もなかったかのように仕事をするが、課内では誰も言葉を発さなかった。

俺は急にこの会社がアホらしく思えてきて、試用期間が終わると同時に辞める決心をした。

それから数日後、辞めると伝えた。U課長は焦ったのか、体質の関係でまったく飲めない俺を飲みに連れ回した。

3軒目の居酒屋で、酒が回ったU課長は話し出した。

「いけないとは思いつつ、部下の女性を愛してしまった。数年間、2人だけで頑張ってきたんだ。そういう関係にもなる」

「Mがトラブルになった相手から助けたかった。新人の君には初っ端から辛い思いをさせてしまった」

新人が入ればMと過ごせる時間が増えると勘違いした。その結果、君に過大な業務を任せることになってしまった」

20年近くも一緒にいると、女房をオンナとして見れないんだよ。向こうも私をオトコとして見れくれない。だが、まだ私はオトコでいたい」

こうして、初プロジェクト担当させられた経緯や、部下との不倫関係、家庭不和などを告白された。

最後に、

「君が辞めるのは構わない。辞めた後には君はうちの会社とは赤の他人になるが、私やMは残る。だから、この話は社内の誰にも口外しないで欲しい」

ハイボールを片手に訴えてきた。

「あぁ、そうですか。じゃ、辞めるのを手伝ってください」

と俺は返し、ウーロン茶を飲み干した。

翌日、U課長は俺の退職に向けてとても積極的に動いてくれた。

午後には役員面談し、この日限りで退職扱いとなった。

でも、雇用契約書がなかったくせに、退職に関する書類だけは書かされた。

意味わからん

また、詳しい退職理由を社内でペラペラと話されると困るのか、U課長書類作成理由に俺を定時まで役員室に軟禁した。

今はニートをしながら「必ず支給する」と約束されたはずの6ヶ月分の定期券代が振り込まれるのを待っている。

本当は年末までに入る予定だったんだけどな。

年が明けてからメールしてもシカトされているので7割がた諦めている。

労基署かに行く労力すらもったいない。手切れ金みたいなもんだ。

とにかく、今回、半年間という短い期間で学べたことは、愛は人を狂わせる、ということだ。

くれぐれも盲目的な色恋に惑わされ、自分他人人生まで狂わせることなきように…

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん