元増田です。多少情報が増えたので、面倒臭いので逃げていた漏電遮断器の話を多少書いてみます。長いので読んでも特にためにはなりません
今回の事件で一部報道とかで『電気柵の電源部分に漏電遮断器を設置しておけば防げた事件だった』という言い方をする人がいるが、これはある意味では正しいが間違ってもいるし、今回の事件にとっては本質的な要素ではない。
電技解釈第4節「特殊施設」の第224条で[電気さくの施設]についての規定があり、
『田畑、牧場、その他これに類する場所のうち、人が容易に立ち入る場所に電気さくを施設する場合にあっては、電気さく用電源装置に電気を供給する電路には、電気用品安全法の摘要を受ける漏電遮断器(定格感度電流が15mA以下、動作時間が0.1秒以下の電流動作形の物に限る。)を施設すること』
下の方に書いてます。
http://anond.hatelabo.jp/20150724092101がよくまとまっているのでそれへの返事です。読んでも電気の知識のない人には意味不明です。
そもそも電流差で作動する漏電遮断機はこの例のように漏電させてナンボな用途には不適切じゃなかろうか。
2次端子A→(A)→電柵
2次端子B→(B)→アース
トランス2次端子A→漏電遮断器(の左側の端子)→(A)→電柵
トランス2次端子B→漏電遮断器(の右側の端子)→(B)→アース
という回路を作った場合、アースに繋いだ瞬間に漏電遮断器が落ちる可能性があるせいです。
例の、送電の勉強したときに出て来る静電容量の関係です。ちゃんと計算してはいませんが、それなりの長さで電線引っ張っていった場合、電線と地面の間をコンデンサが延々と繋いでる例の図っぽいものが再現されることになり、いきなり漏電判定される可能性があります、というかどっかの現場で似たようなことがあって原因に気付くまで大変でした(遠い目)。
保護回路いれるのなら、トランス2次側端子Aと電柵の間に電流制限する何か、
例えば mA で反応する高感度遮断機なりポリスイッチっぽい素子のような物を挟むのが正解なはず。
(それぞれ一般に売っているかは知らない)
これは現実的ではないでしょう。先述の静電容量による誤作動問題をクリアできていたとしても、別の問題、というかより本質的な問題があります。
つまり、電気さくは、人間が常時監視せずとも、ほったらかしでも動物を寄せ付けないのが最大のメリットです。高感度・高速型漏電遮断器を設置した場合、動物(や飛んできたゴミやら植物やら人間やら)が触る度に手動で再始動させてやる必要があります。
今回のような違法施工を行った設置主がそんな不便な装置に満足すると思いますか?
つまり、「漏電遮断器を設置していれば」というのは、「ちゃんとした電気柵用の電源装置を使っていれば」とか「専門の業者に施工を依頼していれば」とか「あんな高電圧を流してなければ」とか「あじさいぐらい鹿に食われてもええやん」と言ってるのと大差ないです。
ポリスイッチも、動作特性的に感電から人間を保護できるほど反応の速度の速い物があるかは疑問です。
「毎回の放電の度に、それこそ高速型漏電遮断器が動作した場合よりもさらに高速で電源を遮断している」
的な回路になっています。電流値を監視して一定値より大きかったら遮断しようとか何とか、そういうややこしい判断は挟まず、毎回毎回止める方が確実でしょう。
何にせよ2次側は2次側で閉じた系になるはずだから、1次側上流に漏電遮断機が入っていても反応し
ないんじゃなかろうか、ってのには同意。
この点はその通りです。と言いたいところですが、単巻トランス(一部ブコメで出ていたスライダックも単巻です)とか1次側2次側が非絶縁のトランスだと、縁切りできてないので、先ほど書いた「アースに接続した瞬間に静電容量のせいで漏電遮断器がトリップする」もあるんじゃないかと思います。まあよっぽど敏感でない限り作動しないとは思いますが、一応。
というわけで「漏電遮断器と電気さくの話はあまり関係ない」というのが結論になります。
電気解釈に書いてるとおりの場所に漏電遮断器を設置した場合の目的とは、
「電気さく用電源装置が故障して、装置から漏電していた場合の事故を防ぐ」
ということになると思われます(ここはちょっと自信なし。識者の解説希望)。
市販品の電気さく用電源装置は(ごくごく短時間動作の繰り返しとはいえ)、数千ボルトの高電圧を発生させています。こういう装置については、漏電遮断器を設置すべしと定めるのは、たしかに理に適っています。
電技解釈で漏電遮断器について書いてるのは第40条[地絡遮断装置等の施設]なんですが、これだけでは電気さく用電源装置が該当するかしないか分かりにくいので、第224条に明記しておくという方針は理解できます。
以上が本題です。以下は余談です。やる気がなくなったら書くの止めるし対象読者特に決めずに書き始めるので尻切れトンボになってたらお前ら察しろ
遮断器の一種です。漏電(electric leakage)が起きたときに、回路を遮断する機器(circuit breaker)です。一般的な略号はELB。
現場で「漏電ブレーカー」という言い方もしますが、大変紛らわしいことに「漏電警報付きブレーカー」というものも世界には存在しており、それもよく「漏電ブレーカー」と呼んでる人がいます。間違えると困る場面ではちゃんと確認しましょう(電気屋以外そんな場面に遭遇しねえよ)。
基本的に電源というのは端子が二つ(以上)ついており、一方の端子から送り出した電気がもう一方の端子から戻ってくる、という形で電気が流れます。
※嘘です。送り出し端子と戻り端子に同時に触ると普通は感電してとても危ないです。
で、送り出した電気が、そのまま戻ってこないで、どこか違う場所に流れるのが「漏電」です。
「どこか違う場所」と書きましたが、漏電の場合には実際流れる場所はほぼ決まっており、アース、つまり「地面」へと流れ出すのがほとんどです。
これを「地絡」と言います。
慣用的に「漏電」と呼んでるものは「地絡」、つまり本来の電気が通る道(電路)の途中で電気の一部が漏れて、地面に流れ出してしまうことです。
送り出しの電路と戻りの電路に同時に触った事による感電事故ももちろんたくさんあるのですが、今回の事故、そして日常的にもよく発生するのは、こっちの漏電による感電事故の方です。
さて、先ほど書いたとおり、電源というのは端子が2つ(以上)ついてて、送り出しと戻りとがあって、両方を繋ぐことで初めて電気が流れます。
ですので、電気が流れ出さない状態であれば、たとえば裸電線に素手で触っても電気は流れず、感電もしません。
「地面には無限に電気が流れ込むから漏電(地絡)が起きる」と考えている人がいるかも知れませんが、そういうものでもありません。
たとえば、バッテリーを用意して、一方の極だけを地面に繋いでやって、もう一方の極は何も繋がない状態にしても、電流はほぼ流れません。
じゃあどうして地絡が起きるのかというと、電源の一方の極が、実際には地面に繋がっているからです。
さて普通の交流電源は、極の一つが接地、つまり地面に接続した状態で供給されています。家庭で普通に使うコンセントに供給される電源も同じです。
電源プラグをコンセントに差し込むときに、左右の向きを気にする人はあまりいないと思いますが、実際には左右で電気的な意味は大きく違っていて、普通は一方が接地側極、もう一方は電圧側極と呼ばれる物になっています(左右どっちがどっちかは本当は規定があるんですが、間違って繋がれてることが割とあるのでここでは書きません。調べるとすぐに分かりますし)。
接地側極に素手で触っても、普通は感電しません。一方、電圧側極に素手で触ると…感電しないことも実はたまにはあるのですが、普通は感電します。
電源の電圧側極→電線→コンセントの電圧側極→人体→(家とか床とか何か地面まで繋がっているもの)→地面→電源の接地線→電源の接地側極
という経路で電気が流れます。途中の家とか床とかの絶縁が完璧であれば、たぶん感電しないで済みます。
逆に地面の上に直接立ってる状態だと激しくびりびりします。この事故を防ぐのが漏電遮断器の役目です。
電源の電圧側極→電線→ELB(慣習的には左側端子)→電線→コンセントの電圧側極→何かの電気器具→コンセントの接地側極→電線→ELB(の右側端子)→電線→電源の接地側極
という経路で電気が流れています。ELBを通って流れた電気は、ELBを通って電源に戻っています。このとき、ELBは何もしません。
ここで地絡事故が起きると(話を簡単にするために地面の上に立っていたとします)、
電源の電圧側極→電線→ELB(慣習的には左側端子)→電線→コンセントの電圧側極→人体→地面→電源の接地線→電源の接地側極
という経路で流れます。先ほどと違って、ELBの右側端子を通らずに電気が流れていますね。そうするとELBは
「あ、左側端子を通っている電気と右側端子を通っている電気の量が違う! これは漏電だ、ヤバい!」
と判断して電源を遮断します(これをトリップするとか飛ぶとか言います)。
当然、停電するので、懐中電灯を用意して漏電遮断器の設置してある分電盤まで出掛けて
「あ、やっぱりトリップしてる」
と言いながら手作業で復旧動作しないといけません(で、漏電原因が取り除けてなくてすぐにまたトリップする、というのもよくある話です)。
ざっくり言うと、普通の電気柵は「地絡事故を起こしてその時の電気ショックで動物を追い払う装置」です。
ですので、漏電遮断器を直接繋いだ場合に起きることとは普通は「電気は流れっぱなしで漏電遮断器は作動せず、保護の役を果たさない」か「動物が触ると毎回毎回停電して手動で復旧しないといけない」のいずれかになります。
※電気さくには稀に「裸電線aと裸電線bに同時に触れると感電事故が起きてその時の電気ショック以下同文」というものもあるらしいですが、とりあえず今回の話には関係しない、と思われます。
上の方に書いた
トランス2次端子A→漏電遮断器(の左側の端子)→(A)→電柵
トランス2次端子B→漏電遮断器(の右側の端子)→(B)→アース
と接続したとします。電柵に触ると、トランス2次端子Aから出た電気はアースを通ってトランス2次端子Bに戻ります。当然、漏電遮断器は「左側端子を通っている電気と右側端子を通っている電気の量が同じだ。これは漏電ではない」となります。役に立ちませんね。
さて、こう書きましたが、この漏電遮断器が実際には動作する可能性も少しはあります。なぜかというとアースに繋がれているのはトランスの2次側端子Bだけではなく、さらに上流の電源についても言えることです。この場合、
(略)→電柵→動物→地面→(略)トランス2次端子Bの経路以外に、
(略)→電柵→動物→地面→地面→大元の電源の接地線→大元の電源の接地側極、
という経路でも電気が流れる可能性があるためです。実際にどういう条件だとどうなるかは面倒で計算していませんが、そっちの別ルートで十分な量の電気が流れた場合、漏電遮断器はトリップして手動復旧する必要があります。
で、さっきまで書いたのは「電気さくに漏電遮断器を直接繋いだ場合」の話です。
次はツッコミ記事の時にも少し書いた「1次側の漏電遮断器」の話です。
といっても実際に起きることは9割方「動作しない場合」と同じです。
状況がはっきりしなので、現時点での報道、主に以下の二つのソースに依存。 http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20150720/CK2015072002000095.html http://www.47news.jp/CN/201507/CN2015072001001513.html 感電の状...
http://anond.hatelabo.jp/20150720190643の続編。 電気屋的にはNHKニュース、http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150722/k10010162021000.htmlでほぼ完結で特段疑問は残らないんだけど、ブコメ http://b.hatena.ne.jp/entry/www...
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>ですので、仮に報道の通り、100Vのコンセントに400Vに電圧上げるためのトランスが直結されていたとしても、本当なら30÷4や15÷4で7.5mAや3.75mAの漏電で作動する、はずです。 ここがそも...
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