はてなキーワード: 水路とは
こんな記事を読んだ。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130307/dst13030708270005-n1.htm
形県酒田市で3日、住宅の一部が焼け、75歳の女性が4日に死亡した。山形県警酒田署が出火原因を調べたところ、女性は自宅の居間にある電気こたつを裏返して使用しており、その上にかぶせられていた布団に引火したとみられることが6日、分かった。女性は普段からこたつを裏返して直接、暖を取っていたほか、こたつのヒーター部分で調理をしていたという。
石山さんはこの家に1人暮らし。体調がすぐれず歩行が困難で、日常品の買い物などは、定期的に訪れる民生委員に依頼するなど、ほとんど外出することはなかった
これさあ、サンケイスポーツ案件だしおもしろおかしくキチガイ婆が自滅みたいに嗤われてるけど結構深い問題なんだぜ。現実的にどうにかしないといかんわけよ。いや、俺も実体験がなけりゃ笑ってたかもしらん。
一応守秘義務があるんで。そう言う事で聞いてくれ。
俺は地元で消防団なんてのを押しつけられてやってるわけ。消防団なんつっても、まぁ常備消防もあるし? 今時は体のいい便利屋なんだがさ。普段は道具の整備とか貯水池と消火栓の管理とか。そんな仕事の中に独居老人の見回りなんてのがあんの。家族や本人の要請があった独居老人の家を定期的に見回るってわけね。名目は一応火災起こさないでくださいねーっつってワケなんだけどようは何かあったときのために顔繋いどけ運動さ。これもまぁ一時独居老人宅の火災が問題になったから始まったんだけどさ。
で、ある日爺さんの家に言ったのよ。おいジジイ生きてるかー消防団様が来てやったぜツラぁ出せや。ついでにトマトがなんか病気っぽいんですけどどうしたらいいですか消毒ですか肥料とかやった方がいいんですかね相談に乗ってくださいみたいなつもりで言ったらジジイ出てこねえの。嫌な予感がしたね。玄関は開いてんのに。大声出したら奥からどんどんどんどん、ってかすかに物音が音がするわけよ。まぁ爺さんとはそれなりに付き合いもあったんで、勝手に上がらせてらったらなんと爺さん階段の下に倒れてんの。
救急車呼んだね。直ぐに名簿にあった民生委員に連絡してご近所の人に連絡して。民生委員は娘にも連絡したみたいだったがつくのに半日かかった。
階段から落ちて腰の骨が折れ、それが神経に触っていたため動けなかったらしい。聞いたら倒れてから1日動けずにずっとこのまんまだったとか。ずっと叫んでたらしく声も枯れててさ。
あーあ爺さんももう駄目かねえ……おいはたけとかどうするんだよ……とか思ったんだが、その後詰め所でうだうだしてたらお礼と称して娘さんが酒を持ってきてくれたワケよ。(消防団と言えば酒ってのやめてくれねえかなあ…まぁ料理に使えるからいいけどよ)で、話を聞いたら爺さん医者からは歩けなくなるかも知れないって言われたのに、娘さん家近くのリハビリ専門病院? だかに入院して、超リハビリがんばって歩行器つかえばなんとか歩けるようになったんだとよ。へえこりゃすげえあの爺さん根性あるな俺は無理。と思ったら驚いたのはその後。
また一人暮らしの家に帰ってくるからまた顔出してくださいとか言うんだぜ。マジでか。娘さんは施設に入ってくれって頼んだみたいなんだが、介護保険の等級が低くて保険は使えないし、介護サービス付き住宅とかそんなのは都会型で田舎には無い。するとフルサービスの民間介護施設か、あるいは地元を離れなきゃならないってんで、爺さん嫌がったんだそうだ。うーん、それは家族で決めたことなんだろうし、まぁ仕方が無いよなあ…。ええ、いいですよ戻っていらっしゃるなら今まで通り回りますよ、と言う事でその日は済んだ。
爺さん帰って来たんだが、やっぱり心配みたいで、娘は初めのうち結構な頻度で来てたようで、よく家の前に他県ナンバーの車がとまってた。要支援1がついて、住宅改修もされたようで、玄関先はこれ一体どこの手すりのショールームよってぐらい手すりだらけになってた。ただ、あんまり長い距離歩くことは出来ないみたいだったが。ただ歩行困難でも軽トラックは運転できるし、買い物が出来てるみたいだった。
一方、畑は維持出来なくなったようで、ほとんど近所の人に貸したようだった。古いながらも整備されてたトラクターはいつの間にやらいなくなってた。
それからも月に2回程度回っていたんだが、見ている限りは普通にやっているように見えた。ちょっと前よりもこう…覇気がねえなとは思ったが…。
ある日、火事の一報が入った。おい俺の部署の地域じゃねえかと職場からすっ飛んでいったらその爺さんの家だった。
小火で済んだ。常備消防が既に消してた。爺さんは家から逃げていて怪我は無かった。
ぼやとはいえ、消防の高圧大送水量のポンプで水をぶっかけられた室内はぐっちゃぐちゃで、そのままでは住めない。本当は消防団の本来業務ではないんだが習慣として火災が起きた地域の担当部署は片付けを手伝う見たいな事になっていていろいろとやったのだが、爺さん当然酷く落ち込んでいた。ただぽつぽつとその後聞いた話を総合すると、原因が分かった。
爺さんそれを引っ繰り返してうわむきにして使っていたらしい。転倒防止スイッチの所はガムテープで塞いでいた。そしてそれを電気ヒーター代わりにしていたという。
爺さん、後遺症で足にしびれが残っていたらしい。さらに冬寒くなるとしびれが強くなる。その状態で超時間立っているのがつらくて、台所仕事はほとんど出来なくなっていたようだった。また冬になると足のしびれから外出もだんだんおっくうになっていって、インスタント食品や、練り物のようなおつまみのような物ばかり食べていたらしい。そこで思いついたのがハロゲンヒーター。
爺さんにとってはストーブの上にヤカンを置くような感覚だったのかも知れないが、これが原因だったらしい。
爺さんは、そりゃあ一人暮らしだし、歳もそれなりに重ねてきているから多少は反応は鈍くなってきている。だが話をしていると特におかしいと言う感じもしないし受け答えはしっかりしてた。しかし一人で暮らしていると、これで大丈夫だ、これはいいアイデアだと思うと、誰にも突っ込まれないままに思い込んでしまって誰もそれを訂正しないと言う事が起きてしまうのだそうだ。
爺さん、周囲に大丈夫だ、大丈夫だと言い続けていた。俺にもそう言ってた。だけど娘さんに聞いた話だと、どうやら実態はそんなもんでは無くいろいろと無理をしていたらしい。また、ぽろりと爺さんが話したことによると、娘の家には娘の義理の両親が同居しており、いろいろと難しいのだがそれでも近くに家を借りるから来ないかと言う話があったりしたそうなのだ。しかし娘に心配をかけたくない、負担をかけたくない、周りに迷惑をかけたくないということでできる限り取り繕っていたという事らしかった。
爺さんはその後、流石に一人暮らしは無理だという事になって施設に入る事を考えたようだったが、要支援1程度の等級では優先度は低くく施設入居もままならないし、施設はどこも一杯だと言う事で難しいかったそうだ。結局どうなったかというと、貸していた畑を売り、その金で家を直して、地元の社協に貸しだした。そして爺さんの家は今は畑付きグループホームになっている。
爺さんはそのまんまグループホームの大家兼住人になり、住み続けている。
結果的にはいろいろと上手く言ったと思う。爺さんの家は立派な家だし、田舎だから無駄に広くて余裕を持った作りでほどよく中心部に近く、ほどよく住宅街ではない場所だったと言う立地もよかった。爺さんの畑は家の周りに集中していて、駐車場の確保や、菜園付きに出来ることも大きかったのだと思う。あと時期もよく、爺さんは地元の一貫水路管理組合で世話人をしていたなど、怪我をするまではそれなりに地域で知られた人だったことも関係しているのかな。
爺さんは畑付きグループホームと化した我が家で「畑の先生」などを言われてそれなりに楽しくやっているように思う。
これはキチガイ婆が自滅したって事ではなくて、社会構造的にぽこっと生まれた構造的問題の一つの結果だよ。
一見してそれなりにやっている人でも、ちょっと深いところまで入り込んだ支援…と言うほどのもんじゃない「これ危ないから辞めた方がいいよ」「今だったら卓上IHとかもっと便利なのあるよ」そう一言言うだけで多分回避できたかと。だけどプライバシーの問題とか、爺さんはわりと素直な話の分かる人だったからこんなもんで済んだが、そうじゃなければ余計なお世話だってんで、上手いこと支援が出来ない場合もある。
じゃあどうしろって言われても困るんだが…。ほんと、どうしたらいいんだろうな