はてなキーワード: 兼ヲタとは
現在の推しに対してだけでなく、多分ガチ恋しかできないヲタクなのだとおもう。
これまで、自分の中の一番だった異性に対しては、その度にガチで恋をしてきた、つもりだ。
つい半年ほど前まで、私はあるジャニーズタレントのガチ恋ヲタクだった。学生時代から9年ほど、ずっと彼と結婚したいと思ってたしどこかで出来るかもしれない、と思っていた。当然、お金を積んで良い席にも入ったし、ファンレターを書いたりしたけど、夜の仕事やそれに近いことをする勇気はなかったし、自分の出せる範囲ギリギリのお金と体力を使ってヲタクをしていた。
多分、どんな手段を使ってでも彼に覚えてほしい、とか、繋がりたい、とか思っていなかったのは、いつかタレントになって彼と同じ立場で恋に落ちたい。と思っていたからだとおもう。
でも、例に漏れずメンヘラの私はいつも病んでいて、最後のほうは彼のどこが好きなのか、彼をほんとに好きなのかわからないくらい、彼を憎いと思う感情が勝っていた。勝手に傷ついて、勝手に怒って勝手に嫌いになって、どれだけ理不尽で邪なファンであるかはわかっていた。だからこそファンとしていつも自信がなくて、「私なんかファンじゃないほうがいいよね。」とか病みツイートを1週間に一回は垂れ流していた。
出会ったというより、見つけてくれた、彼は。
一人のジャニタレに一途になるのはつらすぎて、兼ヲタをして気持ちを分散するという術を得た私は、その頃別分野のステージに夢中になっていた。大好きなキャラクターがいて(これは現在進行形だが)このキャラクターに対しても、ガチ恋のような感情を抱き、この子に構ってほしい。気づいてほしい。という気持ちで毎週通っていたし、手作りのグッズも作っていた。
ある公演で、いつも通りそのキャラクターの手作りグッズを抱きしめていた私を見つけてくれたのが彼だった。
わたしの好きなキャラクターと同じ括りで出演していた彼が、私を構ってくれたのは不思議なことではないとおもう。今までも、コンサートや舞台で、一番好きな彼以外に構われることはあったけれど、だからといって、「一番好き」が覆るような、尻軽な女ではないことは自負している。
なぜあの時が、私が彼に向かうきっかけになったのか。今考えるとそれは、ヲタクである私を認めてくれた、と思ったからだとおもう。
真っ直ぐな気持ちを、そのまま受け止めてくれる。そういう人だ。
だから、私を構ってくれたのかどうかはわからないけれど、私は、「この人は私が○○を好きな気持ちを認めてくれた。」と思ったのだろう。
その頃もジャニタレにガチ恋していた私は、他の異性タレントに夢中になることすら浮気心だと思っていたので、負い目を感じながらも明らかに彼に夢中になっていた。
彼に気づいてもらえるように、構ってもらえるように、出来ることは全てした。結局は、ファンサ厨であり認知厨であるわけだが、本心で、認知されたいわけではなかった。
ただ、彼が私を見てくれたり、私に笑顔を向けてくれればそれが嬉しい。そういうものが欲しくて必死になった。
けれど、彼は私が彼のファンになった途端に私を見なくなった。
彼のファンがいるあたりを見なかったのか、私がいるから見なかったのかはわからない。
けれど、わたしの浮き足立っていた心はスンッと冷えたことを覚えている。
じゃあどうしたら見てくれるのか、構ってくれるのかを必死で考えた。さらに必死になったりもしたり、彼の演じるキャラクターのグッズを手作りしたりもした。
彼は私の目を見てはくれなかったけれど、そのグッズへの視線を感じて、私がいることはわかってくれてるんだ、と思った。
そして、考えに考えた結果、彼は自分のファンが自分に必死になって、その作品を見ない事、感じない事に傷ついているんじゃないか、と思った。
彼は演じている間も、あからさまに辛そうな顔をしていた。他の人にわかる程度なのかはわからないけれど、ファンになったばかりの私が気付く位には傷ついていた。
だからこそ、私はちゃんと作品を見よう、愛そう。それが、私を見つけてくれた彼に対する誠意だ。と信じて、他のファンと小競り合ったり、ピリピリした空気を出したりせずに、純粋にその公演を楽しむことにした。
確かに、彼のファンになったきっかけは構われたあの日。だけれど、彼のパフォーマンスに夢中になっていた。この時にはもう、だれよりも、彼のパフォーマンスを見ている時が幸せで、楽しかった。
そして、この公演の千秋楽。
彼は私がファンになってから初めて、目を見て手を振りかえし、頷いてくれた。
それからは転げ落ちるように彼のファンになっていき、いつの間にかジャニタレへの長年の恋愛感情も消えていた。
彼を見ているだけで楽しい。幸せと思えた時間は、どうして長く続かなかったのだろう。
彼が頷いてくれたあの日、わたしの頑張りを認めてくれたと思った。私が出した答えが、正解だって、示してくれたと思った。
彼はそういう人なんだ。彼にとって正しくないことをすれば、それ相応の態度を示される。その代わり、正しいことをすれば、些細な、大きな、ご褒美をくれる。
彼に見つけてもらえてから一年が過ぎて、彼は私がいるとほとんど必ず見つけてくれるようになった。
どんな場所だとしても、私が頑張らなくても、正しいことをしている私は彼が見つけてくれるし、ご褒美をくれる。
私は特別だと思った。
彼のことを特別わかってるし、彼もそれを知ってるから優しくしてくれる。
だって他のファンの人たちは視界に入っていなくても、私がいれば二度見してくれる。
私がいるのといないのじゃ違うの?私かどうかをそんなに確認したいの?
他のファンとは違うんだ。私は大事にされてるし、特別なんだって思った。
私が何をしても、彼の目の前にいけば彼は認めてくれる。
どこで傷ついたとしても、私がどれだけ人間としてクズだとしても、彼を好きなことは彼が認めてくれてるって思えた。
もちろん人それぞれだけれど、現実逃避のためにヲタクをする人は沢山いる。
彼の優しさに舞い上がって、私は特別だと決めつけて、半分ネタだけど友達には彼の妻だと名乗っていた。
それくらい、思いっきり舞い上がっていたし、それだけの自信があった。
恋人がいる、と言い切れるわけじゃないし、あらぬ疑いと言われたら何も言えない。
けれど、一度疑った気持ちは拭えない。
あれだけ信じていた彼が、突然わからなくなった。
今までなら、彼らしい。と流せていた言葉が、引っかかる。
どうしてファンを傷つけるようなことを言うんだろう。
にわかが、彼に目線をもらったとか、何かされたというツイートを見ても、優越感に浸りながら草を生やせたのに、今はもうよくわからない。
そこでやっと気づいた。
彼が、ファンと関係を持って身を滅ぼすような人じゃないことは最初から知ってる。
そういう、隙がないところも大好きだから。
自分に都合の良い解釈をして、それで現実逃避して、すごいなーアホみたいだなーと、急に客観的にガチ恋ヲタクであることを自虐的に見られるようになった。
自信がないから、すぐ疑う。
彼にとって特別じゃないことも、彼がくれた優しさも、言葉も、全部、100%で信じていたのに。今はよくわからない。
彼の周りにいる女の人たちさえ一人一人疑ってしまう。
彼にとっての正しさを守っていたいい子の私は、本当にいい子なわけじゃない。
彼に楽しくお仕事してほしくて、彼に好かれたくて、いい子と思われたくて、いい子をしていた。
もし、いい子でいたところで彼に選ばれないのなら、なんの意味もない。
最初からわたしは邪で、嫉妬深くて、歪んでいる、ガチ恋ヲタクだ。
彼は私のこんな気持ちに気付いているのだろうか。
気付いていたら私をどう思うのだろう。
嫌われたくないなあ。出来るなら、いい子と思われたい。
でも、いい子だから優しくしてあげよう、って思われてるなら、死ぬほど辛いなあ。
ジャニタレのガチ恋からやっと卒業できても、やっぱり、同じ運命なのかもしれない。
もし、これから辛い日が続くなら、このタイミングでやめてもいいとも思った。
けど、きっと、私がいなくなったら、彼は私を嫌いになると思う。
いなくなったらわかるくらいの存在でいられることはとてもありがたいとおもう。けど、あまたのガチ恋ヲタクが語るように、認知は辛いってことを、認知ヲタになって身に沁みてわかった。簡単に距離を置けないし、簡単に離れられない。
きっと、このままいい子でいられれば、彼はファンとして優しくしてくれるだろう。
わたしは彼を好きで居続けられるだろうか?
好きな人を嫌いになるのは、とても辛い。