ちょっと書き直そうとしたら間違えて消してしまったんで再投稿。
今回は雑感
マンガクロスなどで読める『瞳ちゃんは人見知り』と、やらわかスピリッツなどで読める『シャークな彼女の領域』ってのが表面上は似ている漫画なんだよね。
いわゆるヒロイン観察型マンガで、どちらのヒロインも威圧的な風貌のせいで周りから距離を置かれていて、学校では浮いている存在。それを語り手である男の子を通じて「第一印象はアレだけど、意外と魅力的な子だよ」ってのを描くわけ。
そんな感じでコンプセトや舞台設定は同じなわけだけれども、それぞれキャラの描き方(魅せ方)って点では全然違う漫画。
『瞳ちゃんは人見知り』は、まあタイトル通り瞳というキャラがメイン。
とはいえ人見知り気味ではあれど口下手ってわけでもなく、授業態度はいたってマジメ。
第一印象で相手を萎縮こそさせるものの、転校先の慣れない環境下でも上手くやっていきたいという彼女の健気さに周りがほだされていく感じ。
そして、『シャークな彼女の領域』のヒロインである鮫島も、高身長かつ怖い目つきで周りを遠ざけている。
ただ、こちらは人格もほぼ見た目どおりで、口調は荒く、制服は皆と違うデザインのものを着て、学校では授業中含めて堂々と居眠りをしてばっかりという不良。
ヒロイン観察役の男の子が「怖いとかじゃなくあいつ(鮫島)とは合わない」と言っている場面があるけれども、個人的には本作の象徴的なセリフだと思う。
彼女が周りから避けられているのは見た目が威圧的だとか以上に、そもそもレイヤーからして違うせいだと説明しているわけ。
けれども、タイトルにもなっている鮫島の“領域”を知ることで、彼女なりの価値観があり、魅力というものがあるってことを見出していく感じ。
表面上は似たような型でも、色々と魅せ方はあるんだなあと改めて認識した。
私としては作品って比較してナンボだと思うんだよね。個人の好き嫌いがあるとはいえ、それにしたって各々の中で“基準”はあるわけで。絶対的な評価ってのもそりゃあるだろうけれども、個人の価値観が出やすい話において相対的な評価ってのは基本だと思う。その評価スタイルだとヘイトを貯めやすい人がいて、その人たちと衝突するのが面倒だから、各々の物差しとなった作品を明言しないだけで。
「何が嫌いかより 何が好きかで 自分を語れよ」みたいな漫画のセリフがあるけれども、何が好きかで語ることが何が嫌いかで語ることより良いなんてことは絶対にないと思う。どちらの評価スタイルも同様に価値がある。
というか、あのセリフの元ネタとなった漫画ってワンピースの劣化と酷評され、すぐ打ち切りになった(いずれにしろ評価されなかった)作品であることは踏まえておくべきだし。あと、そういう時の反論に借りてきた言葉しか使えない人間に、とやかく言える理屈はないと思う。何が好きでも嫌いでも構わないけれども、せめて自分の言葉で語ってほしい。
そんなわけで、私は打ち切り作品の名台詞を気にせず比較していくわけだけれども、「比較されなければもう少し好意的な評価ができたかも」って作品があること自体は否定できないんだよね。
例えば最近だと、ガンガンオンラインとかで読める『我が驍勇にふるえよ天地 ―アレクシス帝国興隆記―』と、『織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました』という戦記モノ。
『アレクシス帝国興隆記』は割と骨太な戦記モノで、山賊すらそれなりに戦略を考えて立ち回っているところとか、ちょっと感心した。
そして『織田信長という謎の職業』は、まあタイトルの時点で“どういうタイプの作品か”ってのは分かりきってはいるんだけれども、同じサイトで同時期に公開されている戦記モノだからどうしても比較しちゃう。ファンタジーの世界で職業が「織田信長」って時点で馬鹿げているから、細かいこと突っ込むもんじゃないのは分かってはいるんだけれども。
主人公がその職業を初めて活用するのが『“単騎で戦うとすごく強くなる能力”を使ってピンチを脱する』というものだから「他にもっとあるだろ!」と思わざるを得なくて。その後も史実からつまんできただけのことをやって、それで万事上手くいったって展開は陳腐すぎる。織田信長って要素自体、これまでの創作で長年こすり倒されてきたわけで、そのご時世にこれってのはキツい。
『アレクシス帝国興隆記』が戦記モノとして特筆してすごいってわけではないけれども、少なくとも『織田信長という謎の職業』よりはマジメにやってると比較せざるを得ない。けれども私が『織田信長という謎の職業』だけ読んでいたらスナックを食べる感覚で楽しんでたと思うんだよね。「『アレクシス帝国興隆記』はマジメに戦記モノ書いているのに、こっちは織田信長の物語を翻案したものをファンタジーで塗りつぶしただけじゃないか」って思ってしまったが故の悲劇。比較しなければ楽しめるものさえ比較してしまうのは困りものだなあって点では、比較論を嫌う人の気持ちも分からんでもない。