日本のネット界隈の嫌中国報道は痛ましく思っている。思っていた。
椅子が爆発するだとか、米がプラだとか、ビルが倒壊するだとか、そんなことはどうでもいい。
僕がこの国に住んでみて感じた事はそんなことじゃない。
なぜ、そんぜそことが起こるのか、本質はなんなのか、僕の見た中国。
それを書く。
この国は今、まさにバブルだ。
高度経済成長に乗っかって、金が乱れ飛び、バブル時代の象徴のようにデコラティブな超高層ビルが並び、地下鉄は縦横無尽に市内を走る。
カルチャーを伴うようなものでもなければ、買えないものなんてほとんどない。
国が先進国の仲間入りを果たさんがために、成長にじゃぶじゃぶ金を使っている。
だが、人は違う。
これが全く経済の成長に追いついてない。
列に並ぶ、降りる人に道を譲る、前の人を押さない、脚を投げ出さない、弱者に席を譲る
こんなことも、本気でわからない。
高層ビルで働くホワイトカラーは、そのエレベーターの開くボタンを後から来る人の為に押しておくことを知らない。
どこの街角にもファミマやセブン、ローソンがあるが、列に並ぶ、たったそれすらもわからない。
「なぜ?私いそいでるのよ?譲ってよ。当然でしょ?」
家の寝室のドアの立て付けが悪いと業者を呼べば、布団や家具にカバーをかける事も無くいきなり大理石に電ノコを入れ始める。
終わった後にはうずたかく積もった砂埃の山に頭を抱える。
レストランで注文をする。
運んで来ればまだましだ。3回に1回は必ず何か忘れる。
おもしろい話がある。
中国でオーダーしたものが出てこない時、「早くもってこい」といっても出てこない。
「もういらない」と言えばいい。5分で出てくる。
いちいちイライラさせる。
もっと世界を知れば、そんなこと気にならないのかもしれない。
清潔(に見える)な新しい地下鉄に並ぶ時、誰が後ろから突き飛ばされることを予想できる?
舗装されて交通量の多い交差点をわたる時、誰が信号無視の車両を予想できる?
誰がドアマンのいるレストランでコックが厨房でシャンプーしてると想像できる?
何もかも不釣り合いだ。
分不相応だ。
そう思ってる。
基本的に、他者を思いやる、想像する、ということができない。
そう感じる。
さて、釣りタイトルだが、今朝、例によって地下鉄に乗っていた。
上海の2号線は朝、ひどい混雑だ。乗車率で言えば東京の山手線以上、田園都市線以下といったところか。
いつもは上のような理由でイライラするのが嫌で、タクシーで出社している。
自宅から会社まで日本円で250円くらいだから、その方が精神衛生にいい。
だが、今朝は早く目が覚めた。
背中を押され、体をぶつけられ、眉をしかめながら電車に揺られていたわけだが、そのひどさといったら日本人には絶対理解できないだろう。
他人なんかどうでもいいんだ。自分の乗る場所を確保できればいい。そんな人間の集まりだ。
脚をふもうが、肩が女性のほほを擦ろうが、鞄が誰かの胸を圧迫してようが関係ない。
やっと車内のアナウンスが降車駅を告げた。
こっちの人間は、自分が降りるときは、列車がつく前にドアの前に移動しないと気が済まない。
日本人なら、どんなに混んでいても、並んで降りれば降りられないなんてことは無いと知っているのだけれど、そんなことは皆知らない。
これはマジだぞ?
もう少しも動くスペースがないのに、無理矢理肩をこじ入れてドアの前に行こうとする。
僕はその時目の前に数人の人がいたので、お行儀よく並んでいたのだが、後ろにいた中国人の目にはそれが「降りない」と映ったようだ。
僕を突き飛ばしながら肩をぶつけてきた。
すると、そいつ、「やんのかおい」と言わんばかりの顔で睨んできた。
笑える。
キレた。
振り返るや胸ぐら掴んで思いっきり殴ってやった。
嘘だ。そんなにうまくいかない。ただのサラリーマンだ。中学は卓球部で高校は美術部だ。
胸ぐらつかんで列車に押しもどしてやったら、後ろから誰かに後頭部を殴られた。
一瞬、中国人が日本人に対して集中攻撃を始めたのかと思ったが違った。
仲間だ。仲間がいた。向こうは2人だった。
後頭部をうしろからガンガン殴ってくる。それ自体は全然痛くない。拳なんかより頭蓋骨の方が固い。
知らない、そんなことはどうでもいい、それよりこいつ、この今胸ぐらつかんでるこいつ、こいつは許せん。
そこで殴ろうとしてとうとう止められた。
駅員に。
羽交い締めにされながら「てめーこっちこいこの野郎!」そんなことを喚いていた気がする。
内心ホッとしてたか?そこまでひ弱じゃない。
どんなにボコボコにされてもごめんなさいと言わせてやる電車に乗るマナーを教えてやる!
無理だった。
その後引き離されても挑発してくる。
上等だおい。
ジェットリーよろしく胸をはって薄ら笑いを浮かべて、手のひらを上に向けてクイクイっとしてやる。
こいよ。マジでぶっとばしてやる。
まぁ、そんなこんなで、僕は眼鏡を失った。
「秦八郎」という眼鏡職人の作ったお気に入りの眼鏡だった。レンズも含めたら4万円はするだろう。
この国で落とし物が見つかる事は無い。
先ほど吉祥寺の眼鏡屋に問い合わせたら秦八郎氏はもうその眼鏡を作ってはいないそうだ。
早起きは3文の得?
4万円の損失だ。
これから中国に旅行に行ったり、赴任したりする人がもしかしたらいるかもしれないので言っておく。
あいつらに他人は見えていない。
嫌中国多いに結構。思う存分やってくれ。おれも嫌いだ。
飯もうまいと思おうとしたし、うまい飯を探した。あるわけがない。
いい人も沢山いる。ホントに親切だ。
だが、そんな人ですら、「列に並ぶ」ことができない。ドアを支えておくことが出来ない。
これが文化の壁だ。
最後になったが、地震の被災者とその二次被害者に心からお悔やみを申し上げる。
救援物資を待つ長蛇の列をニュースで見ると、涙がでそうになる。