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『ユニクロ: 潜入調査で明らかになった中国・下請け工場の過酷な労働環境』
http://bylines.news.yahoo.co.jp/itokazuko/20150113-00042192/
を読んで思ったことを書きます。
http://anond.hatelabo.jp/20121224144304
ちなみに自分はユニクロに在籍していたことがあって、2年くらい前にこれを書きました。
今回報道のあった工場のうち一箇所は自分も訪れたことがあります。
死体の歯型を見れば、その人が生前金銭的余裕があったかどうかわかるといいます。
要するに美的価値観にお金を使う余裕があったかどうかですが、僕は製造小売業でいうなら歯型は工場に当たると思います。
工場を見れば、その会社の美的感覚、ひいては社会的道徳観念がわかると思いますし、そこへお金を使うことができるのはある程度金銭的余裕のある企業だと思います。
ユニクロは今回の報道を受けて全面的に姿勢を改めるべきだと思います。
何も知らなかった柳井、知っていたけど問題だと思っていなかった生産部。
何故そんなことになるのか。
僕がいた頃の話をします。
協力工場ではありますが、自社工場ではありませんし、膨大な数の各国の工場を回る時間は無いのでしょう。
そもそもそれが間違いなのでしょうけども。
その代わり、柳井は年2回、「工場カンファレンス」というものを行っています。
中国で、アジア中の協力工場の総経理達とカンファレンスをするのです。
ここでもし工場側に不満があれば、柳井に直接直談判する機会が与えられています。
ここでは意見の封殺はなく、間にユニクロ側の生産部お偉方を挟むこともなく、非常にフェアな話し合いが行われているようです。
ですが、それはあくまでも工場の総経理と柳井の関係において、フェアなだけです。
総経理としては、もっとお金が欲しい→もっとオーダーが欲しい→あまり文句も言えない、となるのは当然のことですし、ビジネスにおいて発注する側とされる側が完璧にフェアな立場でいるなんてのは難しいことなのかもしれません。
柳井においても、細かい改善要請は担当者に回しといてよ、で終わりであろうことは想像に難くないです。
さて、では実際の工場担当である生産部ですが、当然工場の状況を100%把握はしていません。
なぜなら総経理や営業担当者以外の工員と話す機会なんてあるわけないからです。
自分も見たことが有りますが、工場行員の出勤簿やタイムカードの提出をさせていますし、残業も厳しく管理していました。
ですが、これは工場を経営している総経理、または営業担当者の手が入った数字です。
当然ながらもしここで問題があれば、ユニクロの生産担当者は工場へのオーダーをストップ、または減産させる必要があります。
でも工場からしたら、オーダーを減らされては困るので、目に見える数字は非常に健全に操作するのです。
これは工場が悪いとか、総経理が悪いとか言っているのではないです。
ユニクロのやり方が間違ってないと、やることはやってると言ってるわけでもないです。
そういうパワーバランスが悲劇だし、そこを改善しないと、結局どんだけ書類上きれいな数字を作っても、工員の過酷な労働条件は改善されないということです。
僕なんかはまさにそれでした。
先に断っておきますが、「まわりがしてるからいいだろ」と言う気はないです。
むしろユニクロから業界を変えていかなければならないと思い、上のような表題をつけました。
ユニクロに在籍していたころ、本当に沢山の工場に行きました。中国各地、ベトナム、バングラ等など。
これだけは言えますが、ユニクロが使ってる工場は一流です。中国の中でも群を抜いて設備が整っていて、環境の良い、そして縫製工賃の高い工場です。
ほんとに、みんなが目をしかめるような、ゴミ箱みたいな、ちょっとした九龍城みたいな工場が中国中にありますが、そういうのを散々見て、そのあとユニクロの工場を見ると、なんて綺麗な工場なんや!と思います。
これが日本だったら、ひどい工場だ、と思うはずなのに、中国だと「なんか他と比べるとずいぶんきれいな工場だなー」と思ってしまうんです。
自分は特にユニクロをやめてからも中国に何度か脚を運び、いろいろな工場を回りましたが、今までユニクロで使っていた工場がいかに恵まれた工場だったかを思い知らされました。
崩れかかった階段、ほこりまみれのサンプル室、ゴミの散乱した廊下、ドアの無いトイレは何週間も掃除された形跡がなく、そこら中に糞尿とタバコの吸殻が散乱し、窓は割れ、食堂は刑務所さながら。
そういうのに慣れてしまうんです。そういうのを一向に意に介さない中国人の国民性もあるかもしれませんが、平気な顔してる人達を見てるとそれがアベレージだと思ってしまうんです。
掃除なんてすればいいじゃん!て思うじゃないですか。金かかんないじゃん!て。慣れって怖い。
逆に言うと、「事態が改善されるまでユニクロで不買」は心情としてはわかりますが、それ以上に良い工場で縫製してるMade in Chinaは国内のブランドにはないと思います。
残念ながらアパレル業界全体が中国からの搾取の構図で成り立っているのです。
その中で一番まともだと、自他ともに思っていたのがユニクロであり、きっと彼らからしたら「これであかんのやったら他ねーぞ!」だとは思いますが、搾取は搾取です。
事態は改善されるべきであり、それを行う使命が、業界トップのユニクロにはあると思います。
くどいようですが、他がそうだからユニクロの搾取は許されるべき、という話ではないです。
まず根本から改善しようと思うと、莫大な資金が(工場に)必要になります。
そのリスクを避けるためにユニクロは「自社工場」という本来製造小売業が利益を出すために真っ先に考えるべき選択肢を放棄してきました。
逆に言うと、自社工場を作ったほうが簡単でコントロールしやすいのです。
柳井がどういう決断を出すにせよ、今回の報道をユニクロが真摯に受け止めるなら、抜本的な改革が必要です。
もしこのまま自社工場を持たない道を選ぶのなら、それは製造小売業の発注者と生産者のパワーバランスを根本から改める新たな発想が必要だということだと思います。
ユニクロには真摯に対応していただき、それがアパレル業界全体の指針となるような道を示して欲しいものです。
一気に書いたいので推敲する予定です。