2021-09-26

犬が宿題を食べちゃったの? って話

アスペルガー症候群(以下ASD)の者は定型発達者が繰り出すある種のコミュニケーションに反応できなくてバグることがある。

タイトルはもう大分昔に読んだ発達障害についての本で出てきたエピソードで、詳細は正直忘れたが

宿題を忘れたか出来なかったかしたASD児童教師に叱られる場面で皮肉でこう言われるのだが

ASDには教師意図が読めず、しか教師が本気でそう思っているわけではないということだけはかろうじて分かるた

自分宿題をやってきたがそれを犬に食われたわけではないということを説明すべきか否か」考え込んでしま

まさかそんなことで悩んでいるとは思わない教師に更に叱られる、というやつである

 

んで本題は棘のこれ https://togetter.com/li/1779562

いわゆる感動話だが、ASDである俺、客の立場だったらこのフリに反応できないなあと思ったのでつらつらと書く。

この話の「お客様が来る前娘さんが来て半額払った」というセリフにはASD者が死ぬ要素がこれでもかってくらい詰まっている。

 

まず第一ASD者は予想外の出来事に弱い。突然会計が半額になった時点でかなり焦る。

次に突然娘の名前が出る点だ。ここは多分定型のこのおっさんも戸惑っているし、ASD正味関係ない。

ASD者であっても平常時なら、突然娘の名前バーテンダーから出ても「あれ自分が漏らしてたかな」くらいの

推測は可能だが、定形であっても理解が遅れる処理量はASD者にも同じだけ負担となる。

 

そして問題セリフだが、もし俺がこのおっさんだったらと考えると、

まず名前の件から復帰するのにおっさんと同じかそれ以上。そして冗談ではなく

「本当に娘が来て払った」可能性を考慮するのに多分万全のコンディションでも最低0.5秒は使うと思う。

不意打ちで飲酒時でもあることを考慮するとここだけで10秒くらい止まっても不思議ではない。

もちろん孔明が走らせるアレからガチ心霊現象まで大真面目に脳内検証するのである

体調が良ければどこかで「そんな訳あるか」とぶった切ってプロセスをキルするのだが、この流れだと出来ないかもしれない。

定型発達者には多分理解できないと思うが、「なぜピッタリ半額だけ払った?」あたりで躓く可能性すらある。

(本当に生前来たとして、注文内容を予測してぴったり半額払うことは可能か?とかまで考慮し始めてしま可能性だが、

この辺はASDというか、俺の数少ないADHDっぽいところなのかもしれない。しらんけど)

 

で、紆余曲折を経て「実際には娘は来ていない」と結論を出せたとする。

次に来るのは「このサメはなんでそんな事を言いだしたのか」だが、どう考えても俺はこの場の手札で

「今俺は気を使われている」という結論を導くことが出来ない。

俺がこれに気がつけるとすれば、早くて翌日の昼くらいだと思う。

じゃあどう反応するかというと、まず「娘が来たはずがない」と反論を始めてしま可能性が50% これは空気が壊れる

1/2のガメオベラを乗り越えて反論を飲み込んだとすると、やはり押し黙ってしまうだろう。

 

心の理論が弱いASD者は、相手の心情を推し量るとき相手は何を考えてこの行動をしたか」ではなく

相手がこの言動により自分に望んでいることは何か」と考えがちである

あとから一人反省会して、いわば見下ろし視点で考えているときなら「この人が何を考えているか

という問いはすっと立てられるのだが、FPS視点だと相手の視界を想定しようという発想がなかなか出てこないのだ。

そもそも会計という定型コミュニケーションに突如割り込み処理が入ってストレスが掛かっている状況である

頭の中は「損害を出さずにこの場を切り抜ける」で一杯だろうし、ほぼ戦闘態勢と言っても過言ではない。

(余談だが「アスペの奴妙に喧嘩腰になることあるよな」なんて印象を持つことがないだろうか。だいたいこれである)

冷静になれば損害どころか割引を提示されているのだが「嘘をつかれた」「相手の狙いが不明」「自分の取るべき行動が不明

となると、果し合いの最中に急に相手武器を捨てて隙を晒したような不気味さすら感じる。

なので不用意なアクションは取れない。脳内相手意図推定するプロセスが延々グルッてるのを感じながら

困惑と警戒に満ちた沈黙を続けることを選ぶだろう。

自分宿題を忘れた理由に突然飼ってもない犬を持ち出してきた教師に対する反応と、おそらくは同じものである

 

漫画おっさんは「崩れ落ちるように泣き出した」とのことだが、これは国語的に読解すると

気遣いを察した→緊張の糸が切れた→抱えていた物が溢れてきた

ってことだと思う。バーテンダーが娘の名前を出したことに泣いた……とかは×になる筈だ。

俺の場合最初気遣いを察するでもうだめなわけだが、緊張の糸が切れる、も無理だろう。

前述のように、俺がこの対応をされたらまず第一めっちゃめちゃに構えるからだ。

だいぶ打ち解けて会話していたとはいえ初対面で不意を突かれたのに緊張を解いていた、というあたりも

おっさんと俺の違いを感じたし、このおっさんすげぇなと謎な感心をしたポイントでもある。

 

 

 

予防線

足が不自由車椅子を使う者がいたとして、その人が小説の中で登山の楽しみを語るセリフにまで文句をつけることは適切とは言えない。

風光明媚土地を称賛する表現物は視覚障害者への敵対ではないし、それを見られない者への配慮必要ない。

同様に元漫画についてASDへの配慮を欠くと言うような非難をする気はないし、そうした批判的外れと考える。

たこ文章発達障害について周知、啓蒙その他を意図したものでもない。

発達障害個人差が大きく、また俺はASDではあるがADHD傾向は弱いため発達障害全体においても多数派とは言い難い部類に入る。

本稿は「発達障害者はこういうふうに考える」という紹介ではなく、そのように受け取ると誤解を招く可能性が大きい。

(っちゅうか手帳もなければコンサータとかも効かんから通院はしとらんし、厳密に言うと俺DSM4のPDDからASDですらない可能性があるっつーか、なんというか

でもそれ言い出したら普通にセカンドオピニオン評価変わる可能性とかもあるわけだしなぁみたいな)

  • 心の理論が弱いASD者は、相手の心情を推し量るとき「相手は何を考えてこの行動をしたか」ではなく 「相手がこの言動により自分に望んでいることは何か」と考えがちである。 あと...

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