http://yuma-z.com/blog/2013/06/shinsho-10/ のまねをして、今度は新書の紹介をしてみる。(それにしても新書の紹介なのに、女性が手に持っているのが新書でないのが納得いかない)いままで紹介した本の紹介は以下のリンク先からどうぞ。以下のリンクはいままでに自分が読んで面白かった本の紹介です。
自分が紹介する新書のリストは以下の5冊。10冊並べようかと思ったけど、数学入門や理科系の作文技術、日本人の英語あたりは元のブログに取り上げられているし、それらを除くと以下の4冊が残ったので。
英語→日本語に限らず、様々な言語の翻訳家の人たちのエッセイ集。「なぜ翻訳家になったか」というテーマのエッセイが多い。翻訳家といっても文芸翻訳の話で、技術翻訳の人は登場していないはず。だいたいが学者系の人たちで、日本に紹介したい本があるからやっているという人が多い。(逆に外国に日本の本を紹介したいという人もいる)
日本の文学を海外に紹介する人の話が楽しかった。日本に限らず、世界各地にはその地に根ざした習慣や文化があるわけだが、そういう習慣や文化をどうやって翻訳するのか。知らない人にわかるように説明すると、地の文よりも訳注が長くなってしまうとか、そういう問題点がある。そういったことを配慮しつつ翻訳するのは並大抵のことではないようだ。
加えて、英語→日本語と翻訳する人と、日本語→英語と翻訳する人では、前者が日本人ならば圧倒的に楽なのだそうだ。該当する言葉のイメージを母語の中から探すというのはできるけれど、逆はとても難しいそうだ。
翻訳というとどちらもできそうな感じがあるけれど、他の人が読むに耐えるレベルの翻訳はどうやらそうではないらしい。
宮崎駿さんが著者。前半は岩波少年文庫の中で自分が読んだ本を挙げつつ、その本を紹介するという内容。後半は宮崎さんの思い出話だ。本の紹介が上手で、読んでみたくなる。
紹介する本は岩波少年文庫のものに限られるので、ほかの書店の本は一切載っていないのが残念だ。しかし後半は宮崎さんがなぜ児童書を読み始めたのかということや、映画作りに与えている影響にも話が及んでいて、とりたてて宮崎さんのファンではない自分のような人にも楽しめる。最近のジブリの映画はつまらない、と感じている人は、この本を読んで興味を持った児童書を読むと楽しい時間を過ごせると思う。
村山斉さんが著者。最新の研究成果を元にして、宇宙はどうなっているかについて説明した本。最新の宇宙論を大まかに説明する本だ。なので、「どうしてそうなっているのか」ということよりも「今こんなことがわかり始めている」という説明が多い。
村山斉さんは最近多くの本を出していて、ほかの本と似た内容になっている(=かぶっている)という指摘がAmazonにある。自分はほかの村山斉の本を読んだことがないので、判断できないが、最新の宇宙論に興味のある人が手に取ってみると楽しい一冊であると思う。
もともとこの本は村山斉さんの講演が元になっているようで、各章の終わりには講演での質問が載っていて、それに対して村山斉さんが答えるというところがある。この質問に対して答えるところが良い。質問の内容をくみ取って的確に答えるのは難しいことだが、村山斉さんはしっかり答えているし、まだよくわかっていないところはよくわかっていないと曖昧にしないで答えている。質問も基礎的な話から、宇宙論のかなり専門的な質問もあって、それぞれに解答している。
築山節さんが著者。生活習慣を改善することで、なんとなく調子がでない状態から脱却する方法を説明する。タイトルはありきたりだし、書いてある内容もそんなに真新しいものはないのだが、読むと納得する。
大事なことは寝る時間を削らないとか、運動する時間を設ける、などだ。大変なときにはこういう基礎的な習慣が崩れやすく、そういう点を疎かにすると、短期的にはうまくいく。かもしれないが、それが長引いて長期にわたるとだんだんといまいち調子が出ない…という状態にはまりがちだ。その状態になったり、ならないようにするためには習慣を見直すことが第一で、習慣を改善するだけでうまくいくことも多いというような話が載っている。
ときどきこの本を見直して、うまくいっているときのタイムスケジュールや生活習慣と今の状態を比べてみるということをすることが良いだろう。その具体的なチェックポイントを挙げてある点が本書の良いところ。
ここからは余談。
新書というカテゴリーは、文庫でもないしハードカバーでもないというちょっと特殊なジャンルだと思っている。
昔読んだ高村薫さんのインタビューにこんなことが書いてあった。かなり昔には、
というすみ分けがあった。しかしこれは何十年も前から崩壊してしまったようだ。文庫はハードカバーで出版された書籍が何年か経った後に、再び出版社が同じ書籍を売り出したいがための「文庫化」される本が多数を占めるようになったためだ。(そうではない本もあるが、全体の傾向としてそうなってきた)
くわえて、
というような区分けがあったように思う。新書は、上の新聞と雑誌の間を縫うような「新聞のような時事的な問題を、雑誌と同じくらい詳しく、かつできるだけわかりやすく」というニーズがあって発展してきたものだと思う。要するに、今の池上彰さん的な立場を新書は担っていた。
新書には、もう一方で「学問の初歩を紹介する」という役割もある。これらは新書が出はじめた当時は多かったが、最近はそんなに多くない。(元のブログでは数学入門はこの手の新書だ)○○学と呼べるような大きな学問領域を一手に扱えるほど権威のある書き手が少なくなってきて、各学問領域内でも細分化された結果、一概に「こうだ」と言えるようなことが難しくなりつつあるからだと思う。加えてそれらを説明しようとすると、新書では紙面が足りないからだと思う。
そのためなのかどうかは知らないが、最近は特に、何か一つのテーマをなんとなく紹介する新書が多くなってきた。こういう新書は読むとそのときは何となくわかったような気がするけれど、時が経つと忘れてしまったり、素人目にはその紹介にはつじつまが合わないような時事問題が現れたりする。で、その結果として、その時々で「今」をなんとなくわかりたいときには役に立つ。けれども、全体としてみると、(特に経済問題や時事的な社会問題系は)役に立たないものが多い。陳腐化する。
の方が良い気がする。というか普通大学生ならば、新入生の手引きとかにレポートの書き方の説明や参考文献が載っているのではないか?大学の講義にそういうものがあるはずだ。なので、「理科系の作文技術」は名著だけれど講義に出て練習を積めばいいように思う。もちろん一気に上手くなるわけではないけれど、ノウハウ本を一冊読むよりも、一度学んだも講義資料を読む方がはるかにわかりやすいと思うのだが。講義の教授が木下是雄氏で、「理科系の作文技術」が指定教科書ならばともかく。
http://anond.hatelabo.jp/20130529230131 の続きです。長くて途中で途切れるため分けました。 ピアノ調律師 http://www.amazon.co.jp/dp/4773812176/ 著者はM.B. ゴフスタインさん。翻訳は末盛千枝子さん...
http://yuma-z.com/blog/2013/05/student_books/ という人のエントリを見て、自分も(学生じゃないけど、)読んで楽しかった本をまとめてみたくなった。 この長い本の紹介を読んで、読んでくれる...
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