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2020-10-08

ブロックチェーンとは何か。

ブロックチェーン暗号通貨、Web3.0、Dweb というのはここ数年、そしてこれからバズワードであるようだ。

ここ一週間ぐらいだろうか。マイナンバーブロックチェーンを導入しようとしている事業に関して色々な議論が発生しているようである。例によって議論に向かない Twitter 上で発生している。というか何が議論の中心になっているのかイマイチよく分からない。ただ雑然と荒れているという感覚がある。

私は技術歴史文化といった面からブロックチェーン暗号通貨に対して知識がなく、学び始めたのはここ一ヶ月と言ってもいいだろう。学ぶ、といっても転がっている日本語一般的メディア記事を気が向いたときに読み散らかすぐらいである。真に技術的なことは何一つ分からない。暗号通貨Bitcoin とEthereum しか知らないし所持しているのはたまたま貰った僅かな ETH しかない。金銭的に貧しい多摩川に転がっている石くらいどこにでもいる17歳JKである。と逃げの文言を置いておく。

発端

議論の発端はここらへんからだろうか。

加納裕三 (Yuzo Kano)(@YuzoKano

囲み取材で数十秒話したこと記事になっているので、正確に伝わって無さそうです。

マイナンバーカードをいずれカード不要にしてスマホインストールできるようにしたい

・(ただ法改正必要)

・その前にそもそも、普及のためマイナンバーカードの発行総数を増やす必要がある

という趣旨かと。

https://twitter.com/YuzoKano/status/1312245723048550401

加納氏のこの時期のタイムラインから現在に向けて遡れば様々な第三者感想や疑問を得ることができるだろう。これらに纏めて答えているのが以下の記事である

ブロックチェーンの優位性①疎結合加納裕三/Yuzo Kano

https://blog.blockchain.bitflyer.com/n/n4b45329e308c

ブロックチェーンの優位性②改ざん耐性|加納裕三/Yuzo Kano

ttps://blog.blockchain.bitflyer.com/n/naa0126a024d5

加納氏とは一体何者なのかは以下を参照。

東京大学大学院工学研究科修了。ゴールドマン・サックス証券会社入社し、エンジニアとして決済システムの開発、その後デリバティブ転換社債トレーディング業務従事

2014年1月株式会社bitFlyerを共同創業し、2019年5月株式会社bitFlyer BlockchainCEO就任

bitFlyer創業以降、法改正に関する提言自主規制ルール策定等に尽力し、仮想通貨交換業業界の発展に貢献。

日本ブロックチェーン協会代表理事ISO / TC307国内審議委員会委員、官民データ活用推進基本計画実行委員会委員

2018年G7雇用イノベーション大臣会合2019年V20 VASPサミットに出席。

ttps://finsum.jp/ja/2019/speakers/recQMoKK5nD9yb8Ht/profile/

ブロックチェーン定義

ブロックチェーンを語るうえで何が重要かというと、その言葉定義である議論に参加している人が同じ言葉を使っているのに、各人の言葉に対する定義が異なっていると、言葉理解できるが内容が理解できないといった状況に陥ってしまう。このことは実生活でも頻繁に起こっているように思えるが、Twitter という短文が好まれプラットフォームでは著しくないがしろにされ不毛な議論を生む原因になっている。

加納氏が代表JBA日本ブロックチェーン協会)に依ると、ブロックチェーン定義は以下の内容である

ブロックチェーン定義

1)「ビザンチン障害を含む不特定多数ノードを用い、時間の経過とともにその時点の合意が覆る確率が0へ収束するプロトコル、またはその実装ブロックチェーンと呼ぶ。」

2)「電子署名ハッシュポインタ使用改竄検出が容易なデータ構造を持ち、且つ、当該データネットワーク上に分散する多数のノードに保持させることで、高可用性及びデータ同一性等を実現する技術を広義のブロックチェーンと呼ぶ。」

定義策定アプローチ

まず、Satoshi Nakamoto論文およびその実装であるビットコインブロックチェーンオリジナルブロックチェーン(以下「オリジナル」)として強く意識しています

狭義のブロックチェーン(定義1)は、オリジナル意識し、それが備える本質的で不可分な特徴を捉え、言語化しました。

広義のブロックチェーン(定義2)は、昨今〜今後の技術の展開を鑑み、オリジナルが備える特徴であっても、別の実装方式や別の目的への展開などにおいて、置換や変化が行われていく広がりを許容しながらも、特徴を捉えられるよう、言語化しました。

http://jba-web.jp/archives/2011003blockchain_definition

総務省のページも見つけたが JBA定義するものを基礎としている。

ttps://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd133310.html

私が疑問と漠然としたモヤモヤ感を抱くのは、最近一般層で使われているブロックチェーン定義には「信頼できる第三者不要である」という点が抜け落ちているように思われることだ。非中央集権SNS暮らし脱中央集権を推進したい私にはこの点が"ブロックチェーン"の一番重要な点であると思うが、JBA第一定義にはこの点が記載されている。不特定多数へのインセンティブによって不特定多数による合意形成している。これによって「信頼できる第三者不要である」は満たされている。

では ISO定義を見てみる。

blockchain (3.6)

distributed ledger with confirmed blocks organized in an append-only, sequential chain using cryptographic links

Note: Blockchains are designed to be tamper resistant and to create final, definitive and immutable ledger records.

distributed ledger (3.22)

ledger that is shared across a set of DLT nodes and synchronized between the DLT nodes using a consensus mechanism

Note: A distributed ledger is designed to be tamper resistant, append-only and immutable containing confirmed and validated transactions.

https://www.iso.org/obp/ui/#iso:std:iso:22739

ISO定義によれば、ブロックチェーンは、暗号化リンク使用した一連の鎖で、追記のみで構成された確認済みブロックからなる分散台帳を指す。改ざんに強く、最終的で確定的で不変の台帳記録を作成するように設計されている。分散台帳は、一連の DTL(分散台帳技術ノードで共有され、合意メカニズム使用して DTL ノード間で同期される台帳である確認された有効トランザクションを含む全てが、改ざん耐性、追記のみの不変性を持つように設計されている。

比較

さて、加納氏の投稿やその他の加納氏に批判的/賛同的な人たちの反応を見ても、彼らの言っている内容がブロックチェーン定義を満たすものなのかいまいち分からなかった。

加納裕三 (Yuzo Kano)(@YuzoKano

ビザンチン耐性(BFT)

改ざん耐性

・高可用性(単一障害店の排除

アドレス(~=公開鍵)による疎結合の容易さ

エンタープライズ間でのデータ共有の容易さ

私はブロックチェーンの主な利点はこの5つ(ただし5つにだけではない)だと考えています。これをここでは5大利点と呼びます

なおかつ、この5大利点を概ね満たしているものブロックチェーンと呼んでいます(ただしブロックチェーンと呼んでいるものは、すべてこの定義だとは言ってない。かつ、ブロックチェーンの厳密な定義はこれではない。)

https://twitter.com/YuzoKano/status/1313247738503426048

ttps://twitter.com/YuzoKano/status/1313248174430019584

なぜ前提として厳密な定義加納氏の言葉説明せずに、勝手加納氏が定義した内容を”ブロックチェーンである”と語っているのか理解に苦しむが、加納氏の説明したい"プライベートブロックチェーン"を ISO定義を基に判断すると、


"パブリックブロックチェーン"で考えると


加納氏の上記の2つの投稿からは、"プライベートブロックチェーン"と"パブリックブロックチェーン"のどちらを指しているのか不鮮明ではあるが、note記事では"プライベートブロックチェーン"を想定している、と明記されており、議論の発端となったマイナンバーブロックチェーンに関しても"プライベートブロックチェーン"を指していると思われる。5大利点を満たす"プライベートブロックチェーン"は存在しないのでは…。

面白い記事

3つ面白い記事をみつけた。

"一方で、誤解と批判を恐れずに書けば、ブロックチェーンBitcoin論文に端を発するものであるとするならば、いわゆるプラベートブロックチェーンやコンソーシアムブロックチェーンと呼ばれているものは、ブロックチェーンと呼ぶのをやめて、「タイムスタンプ2.0」のような別の言葉を使うことも考えてはどうだろうか。それは、これらの技術が、リンクトークンタイムスタンプデータ構造の上に、決められたノードによる合意アルゴリズムを加え、記録した情報に対するビジネスロジックに応じた情報処理を加えたものであるからだ。根っこの技術は、同じHaberらによるタイムスタンプを元にしているものの、ブロックチェーンの発端となったBitcoin論文が目指した「信頼できる第三者機関を不要にする」という方向とは別の方向の進化をしているもので、その別の2つの方向のものを同一の枠で扱うことには無理があり、理解や発展を考える上で両方にとって弊害がある。"

タイムスタンプの再発見と「いわゆるブロックチェーン

https://link.medium.com/TgeOXv8Dlab

DLTブロックチェーン、DAGの違い

https://link.medium.com/4pz5oNlHpab

ビットコインじゃなくて、ブロックチェーンに興味がある」という人に教えたい「ブロックチェーン」の語源の話

https://www.coindeskjapan.com/10953/

これらの記事を読むと、そもそもブロックチェーンと呼ばれるものにおいてパブリックではないものは、なんびとも信用しない状況において根本的に非改ざん性を保障することができないのではないかと感じる。"パブリックブロックチェーン"こそがブロックチェーンであり、他のものブロックチェーンから発展してきた技術を使ったブロックチェーン定義を満たさな分散台帳なのではないか

終わりに

加納氏に関して覚えておきたいことは、彼は bitFlyerCEO であり bitFlyermiyabi という"コンソーシアム・プライベートブロックチェーン"を開発しているという点だ。当然行政に対して彼がブロックチェーン推しているのはこれを売り込むためなのであろう。これが厳密にブロックチェーンなのかは置いておいて、このプロダクト自体は素晴らしい取り組みだと私は感じる。デジタル化によって今までの煩雑手続き簡単になる可能性は大いにあるし、公的文書の保存にも役にたつ。黒塗り秘匿文書を撲滅しろ

ただ、ブロックチェーンをただの空虚バズワードとして扱うのではなく、厳密な定義の上で使うのは大事なことだ。今回の件は、果たして全てにおいて加納氏が良くない、と言えるのだろうか。言葉というのは多数が使うことによって定義が決まる。時代が変われば定義が変わってしまうこともある。ブロックチェーンという言葉を便利な魔法言葉にしてしまったのは誰だろう。本質を見極めない我々だ。AI 搭載!!といたるところで見る言葉だが、何をもって AI と呼んでいるのか不思議になる。実際のところ今まで"システム"と呼んでいたものなのに。日々の中で言葉をしっかりと見つめ直すのは大事だ。

編集後記

この記事は、そもそもブロックチェーンとは何か、という個人的な疑問をまとめたものであり、加納氏を批判する意図は無かったわけで、最後の締めはやんわりとしたかった。だが、加納氏は立場的には日本ブロックチェーン協会会長で、言葉定義する立場である言葉定義した側がこの有様というのは遺憾である日本行政デジタル化の推進は頑張って欲しい。

URL を貼りすぎたせいなのか投稿できなかったので一部表記を削った。

 
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