2021-05-09

惣流・アスカ・ラングレーに送る、毒親持ち女子(23)からラブレター

※シンエヴァネタバレあり

これは毒親持ちのオタク女子(23)から惣流・アスカ・ラングレー(式波・アスカ・ラングレー)に送る、一方的ラブレターである



14歳の時に、DVDエヴァを見た。画面の中で、私と同じ年の少女が「エヴァパイロットではない自分には価値などない」と、心から真っ赤な血を流しながら叫んでいた。その姿を見て私は泣いた。彼女の機体にかけられた虹色の光に、そしてその身を裂くような苦痛に、私も一緒に襲われていた。


それが私と惣流・アスカ・ラングレー出会いだった。


アニメ版、旧劇場版でのアスカ母親存在否定されたという過去があり、自分自身の存在エヴァパイロットであることに依存している14歳少女だ。とても愛らしく美しい見た目をしており、自分の培ってきた能力他者を圧倒することを厭わない高飛車なその性格と内側に抱えた闇は、一瞬で私を虜にした。


アスカが私を虜にしたのは、私の状況が彼女酷似していたからだ。もちろん私はアスカのような美少女ではないし、大学飛び級出来るほど頭が良かったわけでもない。しかし一応、県のトップ高校に行ける程度には勉強はできた。父というモラハラ上司に四六時中監視され自尊心を根こそぎ奪われていた私にとって、勉強プライドの拠り所だったのだ。それだけが、私の誇りだった。


からエヴァパイロットであることを拠り所にしているアスカ気持ちは痛い程よく分かった。そしてそれを取り上げられる苦痛も、それがなければ他者と関わることができないという辛さも、何もかも。


それ故、高校から大学にかけて私は彼女を愛した。彼女出会う前は派手だと遠慮していた赤も、彼女の色だと思えば愛おしかった。私のような地味な女には似合わない赤の小物がいつしか部屋の中に増えていった。

ランダムラバーリストバンドの箱を開けて、彼女の機体をモチーフにしたカラーではないものが出てきた時は心底がっかりした。

あんバカァ?」という嘲りを含んだ声色も、その内側に抱えているものを知る私には愛らしく響いた。

『心よ原始に戻れ』を歌うときには、いつだって彼女のことを思い浮かべていた。


彼女高慢な態度も、その華奢な身体内包した闇の深さも、海風に髪がなびいたとききらめきも、心が壊れて廃墟バスタブに横たわっていたときの姿も、頑なに心を開かないところも、最後シンジ君に対して「気持ち悪い」と吐き捨てたところも、惣流・アスカ・ラングレー構成するすべてを、私は愛していた。




しか新劇場版では、アスカ母親因縁から解き放たれていた。加地リョウジを愛することもなかった。それどころか何のきっかけもなくシンジを愛し、レイに碇親子の会食を勧めるようお膳立てしさえした。

そんな彼女は私の目にはまるで安っぽいギャルゲーの物分かりの良いサブヒロインのように映った。アスカシンジを好きになるきっかけが埋まったエピソード(瞬間、心、重ねてとマグマダイバー)は、新劇では全てカットされていたからだ。

好きになる理由がないのにどうして?やっぱりシンジ君を上げたいだけの話なの?最近流行りの異世界転生のように?くだらない、くだらない、くだらない!


アスカの扱いの粗雑さに腹が立った。


私は新劇アスカを愛することはできなかった。私の愛するアスカは惣流の名を冠する彼女だけだ。胸を貫くような痛みを共有できる彼女けが、真のアスカラングレー。そう、思っていた。


が、シンエヴァ彼女が救済されたことを知ったとき、素直に涙が零れた。心の底から良かったと思えた。彼女首にはもう、DSSチョーカーはないのだ。置いて行かれたという気持ちがなかったわけではなかったが、いつか私もそうなれるのだというエールのようにも思えて、映画館で静かに泣いた。




私もいつか、父の呪縛から解き放たれ、自分自身の人生を生きることができるだろうか?

私にはエヴァはない。手を取り助けてくれるケンスケもいない。


遠くから、私を嘲笑う声が聞こえる。お前は必要ないと叫んでいる。お前など産まなければよかったと、感情的に叫ぶ声が聞こえる。女の癖にと嘲る声が聞こえる。雪の日に裸足で外を歩かされた記憶も、八歳の時に殺されかけて失禁した記憶も、寄生虫と呼ばれたことも、女のお前など中流公立高校で十分だと言われたことも、受験した大学が一つしかからず受からなかった分の受験料をどうするのだと土下座をさせられたことも、弟が父に刺されそうになり慌てて止めたことも、十八の時に父の頭をフライパンで殴ろうとするも喧嘩慣れしていなかったせいで肩に当ててしまい殺しきれなかったことも、成人式の時に着物代を一銭も出さなかった父に私の用意した貯金額があまりに少ないと文句をつけられたことも、なかなか消えはしない。それはどうしようもなく、私の一部だ。


でもそれもやがて遠い記憶の中に埋もれ消えていく。

私が、未来を見て歩き続けるのなら。

傷つくことを恐れず、他人と関わっていこうとするのなら。



父の呪縛を一気に解いてくれる何かなんて、ありはしない世界で私は生きている。でも私はそれでいいと思う。確かにそんなものがあったらいくら金を積んだっていいけれど、ありもしないものを求めたって仕方がない。


アスカ。私がいつか父の呪縛から解き放たれたら、一緒に日比谷無印カフェに行ってくれないか。そこでお茶をしよう。ケンスケくんの話をしよう。呪縛から解き放たれたきみと、一緒に笑いたい。

そんなことを言ったら、きっときみは「気持ち悪い」と言う。でも構わない。「気持ち悪い」と言われるのを恐れずにきみに話しかけられるようになること自体が、私が呪縛から解き放たれた証なのだから



アスカいつまでもきみを愛しているよ。ケンスケくんとお幸せに。


  • それでも女は下方婚しない

    • うわ・・こいつホント人の心ないな この人たぶん結婚そのものをしないで生きてきてるアラフォーやで 元増田は気の毒だけど下方婚増田は下方婚の呪文で結婚を遠ざけてる

  • アスカ無印カフェとかいくかな…なんかああいうのバカにしてそうな気がするな…

  • 僕はこの日記を書いてくれた人にありがとうと思った

  • サードチルドレンに好意を抱くようにプログラムされてるみたいなこと言ってなかったけ

  • あなたのこの投稿を読めて良かったです。わたしはエヴァを見たことがないので、薄っぺらく聞こえるかもしれませんが、アスカという女の子をとても愛おしく感じました。

  • 罪作りなアニメだったよなぁ 作者がウンザリするのも解らんでもない

  • 途中から突如陶酔し始めてなんらかの病気なんだろうなと思いました。お大事に。

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