2018-01-21

好きなアニメビジネスで関わった末路

吐き出させてくれ。

自分語りと戒め。

私はクリエイターになどなれない貧困想像力不器用な手先の、どこにでもいる事務職員だ。

好きなアニメキャラ誕生日を祝い、神回に大泣きし、休日ツイッター10時間張り付くザコオタクだ。

そんな私が某神作品出会ったのは数年前のことだ。この作品を仮に【T】とする。

私は【T】関連に100万円は使ったと思う。100万円なんて大したことがないと自分でも思うが、楽しんだ時間も莫大で、始めて声優イベントに行ったり、監督ファンレター送って返事に一喜一憂したり、グッズのために毎日ゲーセンに通ったり、ツイッター缶バッジを交換したり、私の人生は変わった。【T】に込められたメッセージを実行し、恥ずかしくないファンになるべく社交性を意識し、服を買い、美容院に通い、ダイエットをして、資格を取ったり転職したりした。

私はその過程で、単なるファンではなくクリエイターになりたいと思った。クリエイターとして【T】に関わりたいと思った。ツイッターでハマってはすぐ冷めるような奴らとも、【T】に込められたメッセージに感動したとツイートしながらいつまでも努力しないやつらとも違う、そんな存在になりたかった。

しかし私には小説も絵も、その他なんの才能もなさそうだった。熱意も湧かなかった。

そこで思いついたのは、とりあえず仕事上の付き合いがしたいというものだった。

とにかくビジネスで【T】と関わることができれば、ただのファンよりも上の存在になれると思っていた。

【T】に出会って4年目。私は転職先で新事業開拓可能部署に配置された。更に1年後には新事業開拓をしなければならない仕事担当になることができた。

新しい職場ではアニメゲームとのコラボ前例はなかったが、新人だろうとアルバイトだろうと意見を出せて、カネもあった。

そのタイミングで、【T】は私の職場と付き合いのある企業コラボを始めた。

私は、こんなに条件が整う奇跡なんて、今後無いであろうと思った。

さな映像仕事に【T】の声優ねじ込んだ。

さなイベントで【T】の社会貢献活動を紹介した。

私の職場でも【T】の知名度が上がった。

調子に乗った私は、社長室でいかに【T】が素晴らしい作品なのかを説明した。必死だった。自分仕事いくら増えようと、このチャンスを逃してはならないと思っていた。

社長課長係長、付き合いのある企業からOKを貰い、【T】に関係する4社に連絡し、企画を立ち上げ、予算を確保し、契約を結び、スタッフロール名前のある人やツイッターアニメ監督と絡んでいる業界人とも会議して、名刺を交換した。コラボ商品デザインを考え、あーでもないこーでもないと悩んだ。気付いたときには、そのまま世に出ることになっていた。夢は順調に叶ったのだ。

そうして全てが順調に進んだわけだが、私の心はボロボロになった。

なぜか。

【T】を作っている会社からメールだ。

「この企画来年◯月までに一度終了してください。あと◯ヶ月で【T】の主人公が変わるので」

ファンに向けた公式発表の、何ヶ月も前のことだった。

私には何の覚悟もなかった。

当然こんな話でショックを受けたことをツイッターに書くこともできないし、そんなことよりも◯月までに企画を終えられるように社内で調整する作業に追われた。

【T】の主人公の交代時期はこれまでも不定期的だったので有り得ないことではなかったが、私はそのとき主人公が一番好きだった。

ストーリーは、主人公交代を事前に知らないファンを想定して進む。当たり前だ。

ファンではなく、多少なりともビジネス関係者なのだから作品の展開における重要事項の説明があるのは当然だ。それを私は正直考えたことがなかった。

私はバカなので、「まさか部外者重要情報を教えることはないだろう」なんて甘く見ていた。

ツイッターでも掲示板でも、誰も情報を漏らしている人はいない。いるのかもしれないが、きっとツイッターの鍵アカ等くらいしか漏らさないのだろう。仕事をクビになりたくないのだから、誰から漏洩するわけがない。漏洩しないなら、当然重要事項はどんどん共有すべき事柄だ。

それに、契約を結ぶような関係なのだから、もう部外者じゃない。

みんな、きっと、どの作品も、どのコラボ商品関係者も、その作品がいつどうなるのか説明を受け、そして誰も秘密バラしたりしないのだ。

結局のところ、私は「関係者になる」という憧れのために「何も知らないファン」としての楽しみを失った。それは、想像よりも辛く、苦しいものだった。

【T】は間違いなく素晴らしい作品だ。私の短い人生では、【T】よりも信じられる作品出会うことはないだろう。今回の件で、【T】の多少の利益に貢献できた。私は今後、また何年も何年も【T】を楽しみながら生きていく。ただ、来年からまたビジネスとして関わっていくか、私は迷っている。

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