TVアニメの「久保さんは僕を許さない」という作品を見た。コロナの影響で第6話を区切りに続きは来期となるらしい。ここまでの流れ、恋愛もののアニメが好きな自分は、もうのたうち回るほど続きが見たいという状態。それであるから続きが見られないのがあまりにも辛かった。ので、3話位の段階でまとめ買いをしていた原作を、6話終了と同時に一気に読み進めた。
多少のネタバレをお許し願いたい。
これは間違いなく自分の中で恋愛もの作品の上位に入ってくる素晴らしい作品だった。そこかしこで出てくる「その感情に"恋"と名が付く2歩手前」という文句がまさにぴったりだ。自分の感情に自覚していない白石くんと久保さんの掛け合いが大変微笑ましく、もどかしい。お互いがお互いを知ることによって芽生える感情。感情に気付かぬまま、白石くんは優しさ、あたたかさ、無償の愛を久保さんに与え、久保さんはそれを受けて更に感情を震わせ、思いを昂らせる。そして優しさ、あたたかさ、無償の愛を与え返す。なんとあたたかい光景なのだろうか…。
そしてなにが良いって、周りのあたたかい目で見守ってひっぱって支えてくれる友達。葉月、たま、須藤。本当に素敵な友人だよ…。みんなが皆優しくて、白石久保ペアのことを支えていて。今まで「当たり前」の学生生活を送ることが出来なかった白石くんに初めてをたくさん経験させてあげる4人の構図は、目頭が熱くなる。林間学校の写真のシーンは泣いた。
他にも明菜さんや沙貴、白石母や誠太。みんなが優しい。このハートフルな人達に囲まれて、白石くんは幸せ者やな……。
この作品の目玉のひとつとして、表紙裏に隠れたポエムがある。私はなんだかんだでこういったものが好きなので毎巻の楽しみになっていた。刺さったものはいくつかあるが、その中で最も刺さったのは2巻の表紙裏……ではなく、目次にあったポエムである。
10年後の私へ
あなたは
誰のとなりで
笑っていますか
幸せですか
これを見て、30分くらい頭を抱えた。
これをみたどこかの誰か、本当に良い作品だから見て欲しい。何かのご縁でここに流れ着いた作品の関係者の方が見ていらっしゃったら、心からのお礼を伝えたい。素敵な作品に出会わせてくれてありがとうございました。心に残った、素晴らしい作品でした。
と、ここまでの感想を書くならば、わざわざ匿名にしない。私も匿名でない、こういった感想を綴るブログはある。
何故匿名にしたかというと、この作品を見たことによって、自分の心の中のモヤモヤをデトックスしておきたいと思ったからだ。回りくどい言い方を避けると誰にも言えてない自分語りをしてスッキリしたい。こういった作品を読むと、満足感と同時にどうしても思い悩んでしまう(もちろん、作品はなんにも悪くない)。それは過去のトラウマ、トラウマ、トラウマが蘇ってしまうからなのかもしれない。よく考えたら、断片的な話を友人に話してきたつもりかもしれないが、所々は私の脳内にしまったままになっているかもしれない。それを解放したい。そして、これを読み進めてくれた誰かに笑って欲しい。それだけで報われる気がする。
私は北関東に在住する20代前半のしがない会社員である。東京の親元を離れ2年ほど、東京とは打って変わったクソ田舎で過ごしている。
恋愛もの作品が好きだが、所謂オタクの私には恋愛のれの字もない。正直とっくに諦めている。というか、過去のトラウマでやろうと思ってもできない。だからこそ、恋愛ものの作品を見て、幸せそうな男女の関係を見て満たされるのが最近ハマっているのだろう。私は恋愛ができない。
小学生の時も中学生の時も、いっちょ前に好きな子はいた。その中でも一緒に帰ったり、一緒に勉強したり、遊びに行ったりした仲になった子もいた。しかし、それ以上の関係になることは無かったし、それ以上の関係があることも中学3年くらいまで知らなかった。知った時には遅かった。何をすれば良いか。告白ってなんなのか。伝えさきはどうすれば良いのか。わからなかった。そうして、何も伝えぬまま、中学を卒業して、都内の男子校に進学した。
Twitterでたまたま中学最後に好きになった子を見かけた。今思うとかなりの気持ち悪い行動だと思うが、フォローしてDMを送った。返ってきた。当時スマホを持っていなかったので、ガラケーのメアドを交換して、やり取りが続いた。そして、次第に疎遠になった。何をすれば良いのか、わからなかった。気付いたら、関係がなくなっていた。
高校で理系を選択した私は、理系単科大学に進学した。もはやもう恋愛なんてものは程遠い所に行ってしまった。と思っていた。大学1年も終わりの頃、旧友の女子に会った。3年間男子校に通い、オタクを加速させ、見た目も中身も向上させる意欲を失った自分の前に現れたのは、人違いか?と思うほどに変わった友人の姿だった。元々メンタルは強い人間ではなかったが、その日を境に完全にメンタルが弱ってしまった。
「変わらないね」
その何気ない一言には、私を地の底に叩きつけるには十分すぎる威力を孕んでいた。
不思議なもので、メンタルが死んでいるのにそこから何度も会うことになった。麻薬の様なものか、会っている時間だけそれを忘れ、それ以外の時間はもがき苦しんでいた。気付けば、体重は激減し、メンタルは底。なのに自分は人生で初めての告白をした。もちろんダメだった。
分かっていたことなのに、メンタルはやられた。アホ。二度と自分からは言わないと心に誓った。未だにトラウマになって、思い出すと体がビクッとして過呼吸になりかける。
すり減らすメンタルもなくなり、動機が不純過ぎるがカウンセリングを受けた。初回は人生でトップクラスに泣いた。自分が嫌だった。自分が許せなかった。でも、甘やかして勘違いをする自分がいた。それも許せなかった。気付けば、自分の最後の味方である自分を殺していた。
でも、カウンセリングを受けるうちに、自分が許せなくて目を向けていなかった、自分の良いところに気づけた。自分は自分が思う程に悪い人間では無いのかもしれない、と少し思った。それからは少し気が楽な状態で、恋愛のことも忘れ、自分の楽しいことを楽しむ余裕が出来た。恋愛なんてするもんかと思っていたし、する状況にないと思えばより軽くなった。大学3年はそれは楽しい一年だった。
4年になるとコロナ禍になった。部屋でアニメを見て、たまに研究をして、マイペースに過ごせた。オタクのイベントが無くなるのは辛かったが、バイトもなく、悠々な生活をしていた。
していたはずだった。メンタルも平和なはずだった。そんな矢先にバイトが復活した。
世のみんな、巣ごもり生活で人に飢えていたのだろう。ある人物に見つかってしまった。それはバイト先の人間で、今まではあまり話してこなかった同い年のやつだ。
誓は破られた。これが人生初めての「彼女」という存在になった。
ぎこちないながらも遅れた青春を味わっているつもりになっていた。色んなところに行った。しかし怖くて最初に自分から相手に触れることはなかった。
楽しんでいるつもりだった。ドキドキしているつもりだった。でも自分のメンタルは何故か過去最高に落ちていった。
望んでいたキラキラな青春を遅れながらも歩いていたつもりが、何故か自分にとっては茨の道になっていた。何故かわからなかった。それくらいからだろうか。大学に行く朝、自分は線路を見つめることが増えた。
2ヶ月後、漫画のような展開になっていることがわかった。所謂NTRてやつだ。取った本人から暴露されたが、さすがに足が震えた。でも分からない。笑いが止まらなかった。なんか安心感すら覚えた。やっぱりね、という感情か。自分には釣り合わない相手だと思っていたからか。わからない。でもすごく納得してしまった自分がいた。
半ばお前が悪いと言わんばかりに別れを告げられた。何か枷が取れた感覚になった。写真も消した。連絡先はブロックした。バイトは既に抜け出して辞めている。思い出の品は即捨てた。友人と乾杯をした。酒を笑って飲んだ。話をネタにした。涙は出なかった。ここ数年で1番メンタルが良好になった。自由になった。自分を慰めた。自分をもっと好きな自分になる為に、少しずつ努力した。
もっと早い段階で気付くべきだった。自分は誰かとそういう関係になることは出来なかったのだ。ここは漫画の世界では無い。
だからか、自分は恋愛ものの作品を好むのは。自分が好きになる作品には悪い人間は出てこない。皆優しい。主人公たちは幸せになる。
この世界は汚い。これだけ理性的な動物が思慮のひとつも無く本能に走るのが見ていてキレ散らかしそうになる。それが無いのだ、好きな作品には。動物的ではなく人間的な関係で話が進む。自己の本能よりも他人の心を大事にしている。現実もそんな世界であって欲しいのに。
恋愛もの作品の世界はいつまでもカレイドスコープのようなキラキラ世界でいて欲しい。私はそれのレンズを覗き続け、キラキラな世界を見たまま、周りの荒野を再び見ることなく、幸せな気持ちで死んでいきたい。
何を書いているんだかわからなくなった。