はてなキーワード: 歯科技工所とは
この春で夫が歯科技工士を辞めた。
歯科技工士は就職一年目での離職率が高い。6割だったか8割だったか。
夫の離職理由もこれに当たる。
(在職中にやれと言われるかもしれないけど、長時間労働だから平日に面接受けるなんて無理)
歯科技工士が低賃金なのは、歯科医師(歯科医院)を経由しないと注文を取れないから。
歯科医師に高額のマージンを取られるから歯科技工士の取り分が減るのだ。
外国には「デンチュリスト」という歯科技工士の資格を設けている国が多い。
「デンチュリスト」の資格を持った歯科技工士は患者を診察して直接患者から注文を取れる。
だから歯科医師にマージンを払わずに労働に見合った報酬を受け取ることができるらしい。
ないと注文が取れない。
「もっとマージンを下げて下さい」と歯科医師に頼めばいいと思う方もいるだろう。
しかし、歯科医師と歯科技工士は対等でないどころか、圧倒的な力の差が存在する。
週刊誌で読んだ話だが、ある歯科技工士が歯科医師に「報酬の取り分を歯科医師5:歯科技工士5にして下さい」(これは『厚生大臣公告』の内容。公告なので強制力はゼロ)と頼んだら、周囲の歯科医師全員から取引を断られた。
業界から干されてしまったその歯科技工士は妻子を残して自殺してしまった、という話だった。
歯科技工士は、取引先の歯科医師に適正な技工料を頼んだら干される。
そういう仕事。
技工料が低いため、歯科技工士は大量の注文を取る。
歯科技工士の平均年収は400万円らしいが、これは人口の多いベテラン歯科技工士の稼ぎが高いからだろう。
20代30代
夫も年収は多い時で(20代の時)300万円を越えた程度だった。
年収200万円台は、20代30代の歯科技工士には普通にあり得る。
本当かよと思うならネットで東京の歯科技工士の求人を調べてみて下さい。
15時間後なんて日もよくあった。
夫は体力と忍耐力があったから長く続いた方だと思う。
しかしそういう男性でも、働いているうちに疲れ目や頭痛を起こす。
夫はまだ大丈夫だけど、座り仕事だからいつ腰痛を発症するかも分か
らない。
歯科技工士以外の職業にも言えることだけど、長時間労働が続きろくに休息や休日も取れないと、いずれうつ病になる。
夫はうつ病になる前に辞めた。
しばらくは働かずに体調回復に専念して欲しい。
夫によれば総入れ歯の技工士の報酬は5000円、銀歯の報酬は1300円らしい。
「作るのに時間がかかるのにこの報酬じゃ割りに合わない」と夫が言っていたのは確か。
現職の歯科技工士の人口は減り続けている上、歯科技工士の養成所(専門学校や大学)に入学する学生数も減っているらしい。
無理もない。私は夫の過労を隣で見てきたから、未来ある若者に歯科技工士は勧められないもの。
実際には夫よりも更に長時間働かざるを得ない技工士もいるらしい。
「1日12時間労働なんてどうってことない」と言う人もいるだろうが、1日何時間働けるかは人による。
12時間でもOKという人もいれば8時間でも辛いという人もいる。
体力的には12時間労働OKでも家族と過ごす時間を持ちたいからという理由で、1日6時間労働で済ませたい人もいる。
10年後、20年後に日本から歯科技工士がいなくなっていてもおかしくない。
歯科技工士の得る技工料が安すぎる現状、
歯科医師との圧倒的な力の差、
歯科技工士は保育や介護同様、人材不足の職業であるにも関わらずマスコミが取り上げることすらない。
夫は、マスコミが過酷な労働実態を取り上げたりネットで話題になったりするぶん介護や保育の方がマシに見えると言っていた。
日本から歯科技工士がいなくなったら、入れ歯も銀歯も矯正ワイヤーも外国からの輸入に頼ることになる。
外国産が悪いとは言わないけど、日本の歯科技工士の技術力の高さは海外から高い評価を受けている。
ブラックな労働環境をこのまま放置すれば、世界から高い技術力が一つ失われることになる。
だから歯科医院は競争が激しい事、技工物から高いマージンを取らないと経営がやっていけない事は想像がつく。
しかし、低賃金で長時間労働というブラックな労働環境に耐えかねて他職種に転職する歯科技工士が相次ぐ現状、これが続けば歯科医院の経営も危うくなるだろう。
外国産の技工物で医療の質や患者の満足度を維持できればいいが、そうでなかったらどうなるか?
(しかし夫から最近聞いた話によると、歯科医師がCADや3Dプリンターを使って医院で銀歯や入れ歯を作れるようになるかもしれないらしい。
歯列矯正のワイヤーはそれではまだ作れないらしいけど。
機械で済むようになったら歯科技工士という職業は日本においては絶滅寸前になるかもしれない)
歯科技工士の労働問題は、立場の違いをこえて考えて欲しい事ですし、マスコミによってもっと全国に知らされるべきとも思っています。