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ネット投票なんて無理ですっていうツイートについたブコメを見て、エストニアへの言及はあるけどみんなあやふやな理解で議論してんなーって思ったので書いてみる(俺も専門家じゃないから詳しくは論文を読んでくれ。日本語で読めるやつがいくつかあるぞ)。
ネット投票は投票時の独立性の確保が難しいという話。リプのエストニアでは複数回投票できて最後だけ有効になる、が対策。/ 紙の投票での強要のやり方とかも見たことあるな。
ならば学校や公の場に置いた端末でのみネット投票できるようにしよう(そうじゃない)/妥協案としては、複数回可能にした上で投票所での投票が最優先になるとか?
ネットでも紙でも投票できるようにして、両方行った場合は紙での投票を優先にすれば強要対策できそうな気がした。(深くは考えてない)
エストニアの電子投票はそれやで。電子投票は基本的に期日前投票で、当日に投票所で紙を使って投票したら上書きされる。
仮に上司に「俺の目の前で○○党にネット投票しろ」と言われても、投票日に投票所に行って××党に投票すれば○○党への投票は無効。
ということは、選管は「誰がネット投票済みか」ってのを把握してないといけないわけだ。だってそうしないと上書きさせられないもんね。
これ、技術的には厄介で、「誰がネット投票済みか」は把握しないといけないけど、「その票がどの候補に投じられたか」は厳重に秘匿しないといけない。
だから、投票内容を示す極秘データ(あんこ)を、投票した人の個人ID(IDカードの保有はエストニア国民の義務な)を示すデータ(皮)でくるんだおまんじゅうにして、紙の投票で上書きされたらおまんじゅうごとゴミ箱に捨て、上書きされなかったら皮を剥ぎ取った上であんこを開票係にまわしてようやく中身が判明する、ってシステムになってるっぽい。
こういう事情があるから、電子投票の締め切りと実際の投票日までに数日間のタイムラグがあるんだってさ。中央政府から各選管に「誰が電子投票済みか」の情報を紙で送って各地の選管から投票所に届けるのにそのくらい必要とのこと(紙で送らないとシステムエラーとかがあったら簡単に二重投票になっちゃうからね)。
というか、まず期日前投票と投票日のタイムラグが先にあって、「このタイムラグがあれば電子投票やっても情報共有間に合うんじゃね?」っていうことになったからスムーズに導入できたらしい。
日本は投票日前日の夕方まで期日前投票できてめちゃくちゃ便利なんだけど、ネット投票で同じ締切は無理だよな~。ネット投票だけ投票日の4~5日前が締切ってことにしといた方がよさげ。
ちなみにエストニアの人口はおよそ130万で、日本だと奈良県とか青森県とかさいたま市とかそのくらいの規模な。つまりエストニアの国会=奈良県議会や青森県議会やさいたま市議会。
県民が全員IDカード(つまり色んなものと紐付けされた個人番号)持ってる前提で奈良県議会選挙するとだいたいエストニアの国会選挙と同じ条件になるんだけど、それでこのくらい時間がかかるってことは衆院選でネット投票導入したらどんくらいの手間がかかるんだろうね?
なお、エストニア国会は一院制で選挙方法も1種類(全国をいくつかのブロックに分けた比例代表制)。つまり有権者1人が国会選挙で投じる票は1種類。
一方、日本の国会は二院制で、衆院と参院でそれぞれ2種類の選挙をやるから、有権者1人が国会選挙で投じる票は計4種類(衆院小選挙区・衆院比例区・参院選挙区・参院比例)。
普通は衆院と参院の選挙は別々にやるけど、それでも2種類の票を管理する必要があって、さらに衆参同時選挙もありえるわけでしょ? 仮にエストニアと同じ人口だったとしても大混乱だと思うんですが。システム屋さんが大変そう(小並感)。
そういや、憲法15条で不可侵とされてる「投票の秘密」には、そもそも選挙に行ったかどうかという情報は含まれないんだっけ?
いや、上で説明したようなエストニアのネット投票では、投票の内容はともかく、投票に行ったか行ってないかっていう情報は選管に管理されてるわけだよね(そうじゃないと上書きできない)。つまり、選挙に行ったかどうかを秘密にすることは難しい。「こいつはネット投票したぞ」ってのは確実にバレる。どの党に入れたかまではわからんにせよ。
もちろん、そんなのはバレてもいい、守る必要のない秘密だ、という立場もありえるけど、一方では「投票したか棄権したか自体が秘密であるべき」という主張もあるだろう。「投票の秘密」がどこまでの範囲を指すのかハッキリさせとかないとネット投票はなかなか厳しいものがありそう(※)。
現在の日本の選挙なら、投票先はともかくとして投票したかそれとも棄権したかってのはたいした情報じゃないから、別にその秘密は保護されなくていいのかもしれないけど、ヨーロッパの国民投票だと、成立のために最低投票率を課してるところが結構あるよなぁ。
最低投票率ってのはどういうことかっていうと、「仮に賛成票の方が多くても、全体の投票率が有権者数の○○パーセント未満だったら無効で、国民投票は不成立」っていう規定のことね。
だからヨーロッパの国民投票では、賛成派が支持者に賛成投票を呼びかける一方で、反対派は支持者に棄権を呼びかける、という光景がよく見られる。
いくら賛成派が投票所に向かっても、投票自体が不成立なら反対派の勝ちだもんね。賛成派は無党派層にも投票に来てもらわないといけないけど、反対派からしてくれれば無党派層が家で寝ていてくれれば投票不成立(=自分たちの勝ち)になるわけだから。
ヨーロッパの国民投票で賛成派が90パーセント超えてるみたいなやつは、たいてい反対派が棄権戦術を採った結果として賛成派が圧勝してるように見えるだけってことが多い(こないだ台湾でやった高雄市長のリコールもそれ)。
で、話を戻すと、現代の日本では、日本国憲法の定める「投票の秘密」ってのはあくまで誰が誰に投票したかを秘密にするってことで、誰が選挙に行ったか行ってないかは別に秘密じゃねーぞ、ってことになってるっぽいのね。少なくとも判例はそんな感じ。
じゃあ仮に、日本でなにか重大な問題について国民投票をやることになり、その際に最低投票率の規定が盛り込まれ、反対派が棄権を呼びかけたという場合であっても、投票に行ったか行かなかったかは憲法の保障する「投票の秘密」に含まれないってこと?