仕事の悩みや資格勉強のわかりにくい部分など、彼女がほぼ一方的に質問をしてきて、俺がそれに答えるというやり取りが2時間続いた。
彼女はいつも俺を褒める。どうやら本気で俺のことを頭がいいと思っているようだ。正気かよ。
彼女は実家が裕福だ。父親は誰でも知っている企業の支店長まで務めた人物。彼女の姉も極めて優秀。彼女はそんな家庭に反発して、芸術の道に入った。「才能なんてなかったけど、逃げ出したかったから」なんて言いながら、死ぬほど努力しても入れない人が多数いるような名門に入った。そこでは誰もが「我こそは」と思っている中、一人だけ「私は才能がない」といいながら、大変な評価を得ていたということだ。彼女の同級生に聞いたところによるとだが。
それに比べて俺の経歴は惨憺たるものだ。
完全に負けぐせがついて就職は失敗。
圧倒的なクソ企業でゴミのような毎日を過ごし、3年で退職という王道。
金がなくて生命保険もがん保険もあらゆる保険を解約。その後病気が発症。保険に入れない身と化す。
ティッシュペーパーが死ぬほど欲しくて献血した所、血液に異常が発覚。
病院の検査費用があと100円払えず、書類に拇印を押して家に帰り、12冊持っていた本をブックオフへ。10円*12冊で見事支払うことに成功。薬は買えなかった。
カードは未払で完全停止。債務整理をお願いした弁護士費用をも月2000円支払いで2年かけて払う。
カードの債務は20万円。それを毎月2000円ずつ支払う。常人なら20万はすぐに返せるが、俺はそうではない。弁護士費用と合わせて4000円。これは3週間の食費に相当する。
当然ながらクレジットカードは今後7年作れない。これはボディブローのように効く。クレジットカード前提のサービスは世の中意外と多い。「ほしいな、便利だな、安く上がるな」と思うものこそ信用が必要なものだからだ。
その他、友人からの借金もまた月数千円ずつ支払う。恐ろしいのは銀行振込の手数料だ。2日分の食費が飛んでいく。
ヨモギ、オオバコ、タンポポでビタミンを補い、小麦粉でエネルギーを得る。
その他の野草も大概食べた。
野菜が食べたくなって発狂して近所の家庭菜園に夜霧に紛れて侵入し、トマトを食べた。俺に妹などはいない。俺の、俺だけのために盗んだ。罪悪感で、3つもぎ取ったうちの一つは玄関において逃げた。
その後、なんとか潜り込んだ会社で月12万の給料で働きつつ現在に至る。
そう思いながらも、体面だけは保った。
ヨモギオオバコタンポポ法を再び使用し、食費を超圧縮してHSKとTOEICの試験を受けた。
HSKは4級、TOEICは780点を取った。給料は変わらない。
まずはスーツを買う金をヨモギ法で貯めて、なんとか転職をしなければ。
そこらの観光地の土産屋の販売員のほうが稼げるんじゃないかと考えたりもするが。
俺が夜毎公園に水を汲みに行き、オオバコとヨモギの新芽を摘んでいることなど見えない。
ただ俺が節約生活をし、"ちょっと変わったロハスな自炊"をし、家具も食器も自分で作り、独学で語学を身につけたというのが全てだ。
数年間は友達、ネット上で彼女から告白を受け、遠距離恋愛。童貞はテレフォンセックスで捨てた。
その後、実は同じ地域に住んでいることに気づき、お付き合いを始める。
服も靴も美容院代も何もかも持たざる者だった俺を、才能のない芸術家は高く評価したようだ。
そもそも5ヶ国語に堪能な人間がなんで3ヶ国語に不慣れな人間を褒めるのか。
俺は単にペットとして扱われているだけじゃないのか?
彼女の中の「ほかとはちがうだいじなもの」と書かれたおもちゃ箱に入っているだけなんじゃないのか?
わからねぇ。
日頃は堂々としているつもりだが、ふとした瞬間にどうしようもない惨めさで動けなくなる。
ブレイン フィジカル メンタル の中でフィジカルとメンタルはお前の方が勝ってるんだからそれでいいじゃん メンタルをステータスとして軽視しすぎだ
そこまで出来る人はそういないから、そういう部分を彼女は惹かれてるんじゃない。 そこまでしてるってのを知らないにしても。 全くの他人に好意を持たれるということはそう簡単に出...
大地震でインフラ崩壊したら増田みたいなやつが断然頼りになりそう
いや普通にすごいぞ
> 童貞はテレフォンセックスで捨てた。 俺の知ってるテレフォンセックスとは違うようだ
増田の時代は電話といえば音声をやり取りするものだったけど、いまや電話機は音声画像動画に加えて毒電波まで流せるようになってるからな。