2022-10-06

バイト日記

 女子フリーターアルバイトさんが遂にクビになった。彼女がクビになるほどの何をしたのかというと、今年の5月頃に急に沢山稼ぎたいと言い出してシフトを極限まで詰め込んでおいてその殆んどをドタキャンし、オーナーと揉めて今度は週に1回しかシフトに入りたくないと言い出したがそれをまたドタキャンし、8月頃にコロナにかかったと言ってドタキャンして以降音信不通になったくらい。

 コロナにかかって以来、女子フリーターアルバイトさんから一切オーナーに連絡を取らなかったという点は微妙だなあ。そこだけはオーナーが悪いような気がする。従業員全然連絡してこなかったら、シフト確認LINEくらいしない? でもまあ、オーナーはそれを機に女子フリーターアルバイトさんを切り捨てたかっただけなのだろう。去年の暮れくらいからずっと、女子フリーターアルバイトさんがシフトに入っている日は予備の人材が用意できるかどうか気が気ではないとぼやいていたし。

 オーナーのいない夜に当店に私物を引き取りがてらお買い物に来た女子フリーターアルバイトさんは、かなり怒っていた。「普通クビって言うなら1ヶ月前だろ!!」と。私に言われても困るー。オーナーは、9月14日にいきなりこんなLINEを送って来たという。

仕事をする意思がないと見なしましたので、15日付で退職手続きをさせていただきます。』

 触法LINE送るオーナーもすごいな……。勝手我が儘なシフトの入れ方をした女子フリーターアルバイトさんもヤバいけど。

 女子フリーターアルバイトさんだけでなく、彼女母親もまた当店の早朝に勤務し、かなりやらかしていたと聞く。辞める間際はオーナーLINE既読無視しまくり電話にも出なくて、娘経由で「辞めます」とやっと言ってきたらしい。

 女子フリーターアルバイトさんが急にシフトを減らしたいと言い出したりわざとドタキャンしたのは、「オーナーがお母さんをいじめた」と思い込んだからっていうのも理由の一つとしてあったらしい、と、女子フリーターアルバイトさんと仲のいいDさんがAさんに言って、それを私はAさんから聞かされた。女子フリーターアルバイトさんは自分母親こそが被害者という意識があるからオーナーに対して敵対的姿勢些細なことで反抗した。オーナーは何で女子フリーターアルバイトさんがそんなに怒っているのか分からなかったので(なにしろ女子フリーターアルバイトさんは自分が何で怒っているのかDさん以外には説明しなかったのだ)反抗される都度に頭に来て言い返していた。

 なんというか、まぁ……。

 コンビニバイトで最低限やらなきゃいけないのはみだりにシフトに穴を開けないってことなので、ドタキャンのしまくりは論外だから

 女子フリーターアルバイトさんは仕事はすごく出来るし、お客様からの人気もすごくて看板娘的な存在だったのだけど、それでオーナーに頼りにされた途端に図に乗ってしまったので仕方ない。若い女アルバイトあるあるだ。ちなみに、若い男性アルバイト場合ドタキャンもするけどそれよりは、遅刻ばかりするのと他人仕事押し付け自分は働かずに長々と事務所に居座るとか、接客態度が最悪で客とトラブルを起こしまくることが多い。

 女子フリーターアルバイトさんは辞める前にシフトリーダーに会いたいのだが、いつならばオーナー鉢合わせずにシフトリーダーに会えるか? というので、木曜の夕方なら大抵シフトリーダーが居るし、オーナーの出現率も低いと教えてやった。

 一昨日、出勤したらシフトリーダーがいたので、女子フリーターアルバイトさんがクビになったこととシフトリーダーに会いたいと言っていたという事を話した。シフトリーダーは実は女子フリーターアルバイトさんのLINEを知っていて、連絡しようと思えばいつでも連絡出来るのだがしなかったのだと言った。

「え、なんでー? 彼女シフトリーダーさんにめちゃめちゃ懐いてるじゃないですかー?」

だって、求められてもいないのにLINEなんかして、うっせーなこの糞ババアって思われたらやだもん。若い頃のあたしなら絶対そう思ったし、今でもそう思うし」

 そ、そうなのか……。まあでも、女子フリーターアルバイトさんがオーナーに食ってかかる所を一度でも目の当たりにしたら、そう思うのかな。私などは職場の人とLINEを交換するという発想自体がまずないので、わからないけど……(てっきりもっと仲良いのかなと。

 夕勤が減ったぶんの人材確保が難航しているようだが、取り敢えずメール一本で来てくれるタイプ派遣会社から助っ人補給出来ているので、オーナー夕方イライラしながら働いている日は少なくて済んでいる。ただ、派遣人達は激しくピンキリで、コンビニプロな人も入れば実はコンビニ労働初めてでしかもやる気も何もないひとまで、色んな人がいる。仕事している時間帯的に派遣の人と組まされがちなシフトリーダーとAさんと私は若干疲れているが、オーナーがめちゃめちゃ頭下げて来るので、まあ頑張るか……となけなしの義侠心を発動させて働いている。あまりいいことじゃないな。

 すごく有能な派遣の人と組んだが、夕方は暇だったのに19時過ぎからやたら混んだので雑用が捗らず、派遣の人の上がり時間後までカフェマシン掃除仕事を積み残した。そこへ高専五年生が出勤してきたから堪らない。

 高専五年生は夕勤がカフェマシン掃除を始めるとそれにかかりきりになってしまい、じぶんがレジ接客を一人任されるのがかなり不満らしい。だから彼が出勤した時にまだカフェマシン掃除が終わっていない場合、何も言わないがあからさまに品出し作業をひとに押し付けて来る。おにぎりサンドイッチが納品されると自分作業の手を止めてただじっとレジに居るのだ。客がいてもいなくても。

 それが元で高専五年生は夕勤の高校生男子からとても軽蔑されているのだが、本人はどこ吹く風といった感じだ。高校生男子に品出しを押し付けて22時過ぎまで残業をさせてしまった時には、さすがに私も注意したが「ほんの15分ほどの事でそんなに長くじゃない」と言い訳して反省の色もなく、改めたかどうかも怪しい。未成年を22時過ぎまで働かせるのは条例違反で、本人は補導されるし店には警察から指導が入ると言ったけど、高専五年生はへらへら笑うのみだ。

 21時過ぎに当店に電話がかかって来た。その時私は丁度手が空いていなくて、高専五年生が電話を取ったのだが、

「はーい、もしもしー?」

 なんて言ってるので冷や汗が出た。レジ接客を終えて急いで高専五年生の元に走ったが、高専五年生は電話相手とずっとダルそうなタメ語で話しているので、イタ電の類いの相手をしているのかと思いきや、

「なんか、○○(フランチャイズ名)のどっか別の店のオーナーだとか言ってんですけど、スプーンいから貸してくれってとか、そんなことやっちゃっていいんすかね?」

 と言う。せめて保留ボタン押してから言ってくれ!!

「ではオーナー確認してから折り返し電話しますと言って、電話番号をお聞きしてください」

 と指示したら、

「えー、そんなの聞く必要なくないですか? このままほっといてオーナー電話すりゃいいじゃないですか?」

 と言い返して来たので、私が電話機奪って先方と話した方が良かったかもしれないが、そしたらコイツ電話が掛かって来たら全部私に対応させりゃいいと思いそうだなと思いつつ、

「当店は電話が一つしかないし、子機と親機で同時に別の番号にかける事は出来ないので。だからまずは先方に店名とお名前電話番号を聞いてから一旦電話を終えてください。そしたらすぐオーナー電話してください。オーナーには短縮1で繋がるので」

 と指示してその通りやらせた。幸い、オーナーはまだ起きていたらしくすぐに電話に出てくれたが、高専五年生は電話が繋がると藪から棒に

「あーあの、他の店の人がスプーンせとか言って来たんですけど」

 なんて切り出した。電話が終わった後、

オーナー相手でもまずは『夜分遅くにすみません』くらい言お」

 と高専五年生に言ったら、「なんで?」と言い返されて、なんかもう嫌になったが「まあ一応、礼儀として……」と答えた。

 で、オーナー在庫があるならどうぞ貸してやってと言ったそうなので、折り返しの電話高専五年生に掛けさせて先方に伝えてにらったところ、22時過ぎに取りに来るという事だったので、急いで在庫確認カトラリー仕舞ってある棚を確認したら、半分消費されたのが一袋と、未開封が一袋あった。レジ下の引き出しの補充もしてあるし、一袋なら貸せる。ちょうど共配が着いたところなので、納品の中にも何袋かあればもう一袋貸しても大丈夫かも。すると横で見てた高専五年生は、

「この空いてるやつ貸せばいいっしょ」

 と言うので、

「だめです。こっちの未開封のものを貸してください。丁度今共配さんが来て納品中だから荷物の中にスプーンが入ってるかどうか確認してきてください」

「え? 俺が?」

「もう10時回りましたから……ここから夜勤領分なんでやってください、お願いします……」

 なんか、頭痛なっちゃったな。

 共配さんが、納品完了したら取りに来るからお願いねと言って伝票を置いていった。別に誰がサインしてもいいんだが、私はもう本来なら上がってる時間だし、高専五年生も伝票の受け取りやった事がないというので、伝票にサインしてもらう。「何で俺が!?」って言われたけど、「もう10時過ぎてます夜勤仕事です。」と言って押し付けた。そんな押し問答をしているうちに他店のオーナー来店。当たり前だが制服ではなく私服で来店なされた……ので、高専五年生があからさま舐めくさった態度で応対しに行ったので流石によこから割って入り、スプーンを一袋渡した。

「もしよかったら、もう一袋貸していただけたりとか……」

 と他店オーナーが切り出して来た時、高専五年生が要らんこと言い出す気配がしたので、

申し訳ございません。ちょうど今、当店も持ち合わせがなく」

 とお断りした。納品の中にスプーンが一袋しかなかったので仕方ない。二袋だったらもう一袋貸しても大丈夫だったんだけど。

 他店オーナーが帰った直後、共配さんが伝票を取りに来て、

「今回は立ち会い納品なんだ。くじなんだけど。いつもは違うんだけどこれは特別なんで、ちょっと見て貰っていいかな?」

 と言う。高専五年生は自分仕事に戻ってしまいこっちには目もくれないので、まあいいか面倒くさくなってきちゃったし……と思い、納品に立ち合うことにした。いつもの一番くじではないくじで、全部で九箱で1セットになっていた。それが全部揃っているか、共配さんと確認して、伝票にチェックをつけるだけの簡単お仕事だった。

「立ち合い納品って私、初めてしました」

「そーね、滅多にないからね」

 と会話して終了。滅多にないなら高専五年生に教えなくてもいいか。もし次の機会があって、高専五年生が「嫌です俺今忙しいか

」とかいって拒否らない事を祈る。

 番重の片付けをしてから高専五年生に電話応対のしかたを教えた。

電話を取る時はメモの用意をして、取ったらまず『お電話ありがとうございます。○○(フランチャイズ名)××町店、▲▲がお受けします』って名乗りましょう」

 高専五年生は「何で?」と言ってへらへら笑っている。どうしてコンビニバイトときでそんな糞真面目に電話を取らなきゃいけないのか?w と言いたいらしいが、

「こっちはただのバイト風情のつもりでも、相手社会人です。丁重対応しましょう」

 と釘を刺し、一通り教えた。高専五年生はメモを取る訳でもなく、あーはいはいと聞き流すばかりだ。

「今覚えきれなかったら、電話応対のしかたはYouTubeとかで検索すれば出て来るので、それ見ておうちで練習してみてください。会社によりそれぞれ決まったカタはあるかもしれませんが、どこでも基本は同じです。学生のうちに覚えておいても損はしませんから

 とも言い添えておく。

 それからオーナー同士の横の繋がりについても話した。少なくとも同一エリア内の同一フランチャイズ他店同士は建前上はライバル関係ではなく仲間であり、オーナー同士が会議などで交流する機会があり、お互い様で助け合っている。今回みたいに消耗品の貸し借りというのはしばしばあり、勿論当店のオーナーが借りに行くことだってある。だから、他店のオーナーが何か貸してくれと頼んで来たら小馬鹿にするような態度であしらったりしないように。具体的には在庫確認してすぐ折り返し電話すると伝えて一旦電話を切り、在庫を数えてから当店オーナー電話して許可を貰ってから他店オーナー電話で貸せるか貸せないか伝える。当店のオーナー付き合いのある人相手なのだから、くれぐれも失礼のないように。

 あと、オーナー達同士は情報の共有もよくしているけど、その中には従業員のことも含まれているので注意。悪事を働いたり極端に使えない奴でエリア内の店舗転々渡り歩いてるようなのはバレている。働く側はコンビニなんてどこでも一緒だろw と思ってるけど、同系列で同一エリアの店をあちこち渡り歩くのは、オーナー達にとても嫌がられるので難しい。

 そう話したところ、高専五年生は最後の部分だけは真面目に聞いていたらしく、「へぇ、まじか!」と言った。こんな風に書くと読んだ人は高専五年生の見た目をチンピラホストみたいなチャラッチャラにチャラい奴を想像するかも知れないが逆だ。非常に真面目そうに見える。そう見えるだけだった。

 オーナー高専五年生の仕事ぶりが今はこうだなんて知らなくて、トレーニング間中の真面目に装っていた頃しか見ていないから、今でも彼の能力を高く買っている。まさか人生なめプをもはや私や高校生男子バイトの前では隠しもしないなど、思いもよらないだろう。

 オーナーが期待していたバイトのあてが外れた時の豹変ぶりはかなり恐い。でも、高専五年生は、

あなたオーナーからかなり期待されているかちゃんとした方がいいよ」

 と私が迂闊に言ったことの前半だけ聞いて図に乗ったっぽい。地味に後悔してるんだけど、調子に乗ると後が恐いぞという事は敢えて言わないでおく。どうせ旗色が悪くなったらオーナーLINEブロックしてとんずらこくんだろうし、その方が一緒に働かなきゃいけない私などにしてみれば楽。

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