いつだったか暇な時にAさんと雑談していたのだけど、何の流れか高校時代の掃除の時間についての話になった。私が、
「高校時代の掃除の時間といえば、男子が女子に対して見栄をはる時間で、それが私はすごく嫌だったんですよね。ゴミ箱持とうか? とか言ってこられても、こちとらそこまで非力じゃねーし」
と話したら、
「えぇ、俺の学校では掃除とか面倒臭ぇ事は全部女に押し付けてましたよ!」
とAさんが言うので、それは世代の違いなのか地域性の違いなのかと、ちょっと考えてしまった。私の高校時代に男子が中学までとは打ってかわって女子にやたらアピールしてきたのは、恋愛至上主義の最盛期だったからであり、別に優しいからというよりは下の欲求に忠実な男達ばかりだったというだけな気がする。かといって、小学校の頃みたいに掃除は女子しかしなくて男子は遊び呆けているという状態になりはしなかったのは、恋愛至上主義のせいで男子が必死過ぎたからなだけじゃなかったようにも思う。
一方、私達の今住んでる地域(私の故郷からは遠い)というのは、面倒臭い事は何でもかんでも女に押し付けるというのが昔からの価値観であり、成人女性は仕事も家事も子育ても介護も、生きるためにすべき事の全てを負って、男は酒と博打と女遊びばかりでぷらぷらしている、というのがつい最近まで常識としてまかり通ってきたような所だ。そういう文化に染まりきった男の子は高校生になったら学校でも面倒臭い事は全部女子に押し付けて平気なんだろうな。高校生男子の掃除サボりは小学生男子のそれとは似てるようで違うのではないか。
そんな事を考える暇があるほど、最近の当店は時々すごく暇なのだった。近所に同系列のコンビニが新規オープンしたことの打撃がエグ過ぎる。その新規店舗は、当店からほど近いがエリアが違う。同系列で容赦ない喰い合いになってしまったのって、本部のエリアごとの競争が関係してたりするのだろうか。巻き込まれる末端には迷惑でしかない。
昨日は前半は派遣の人と組み、後半はAさんとのシフトだった。Aさんに、
「火曜日は高専五年生とのシフトだったんですけど、彼は自信がないからといって米飯とパンの品出しを全然やりたがらなくなっちゃったんですよね」
と話したら、
「金曜日に高専五年生と組む男子高校生さんが増田さんと同じ事を言ってましたよ。男子高校生さんの場合、かなり怒っちゃってて、彼、根はいい子なのに高専五年生の事を『アイツ』って言ってかなり息巻いていて……」
えー、そんな事があったの!?
私はてっきり、高専五年生は私が母親とほぼ同世代(といっても、アラフォーの私とアラフィフの母親を一緒にされてもな)の女だからって甘えて仕事を押し付けて来たんかと思っていたので、まさか年下のしかもまだ子供の男子高校生さんにまで同じ事をしているとは思わなかった。
「でも高校生さんは本当優しい子だから、いくら語気を強めて『アイツのせいで15分も残業させられた』なんて言っても、口ほど怒っていないですって。彼、ほんとにいい子なんで」
とAさんは言った。一体それは何のフォローなんだ。
「いや、優しかろうがクズだろうが、それは怒るでしょうよ。高校生なんてまだ子供だから、自分が世界の中心だと素で思ってるのが普通だし、自分よりも年上の先輩や大人達は子供を守り庇うもんだと信じているものですよ。それがテメエのやりたくない事を新人の高校生に押し付ける大人なんて、衝撃だし信じらんないでしょう」
と私は答えた。
Aさんに詳細を聞いたところ、高校生は品出し作業を押し付けられたせいで上がりが22時を過ぎてしまったらしい。それ、帰宅途中に警察官から職質されたらそのまま補導されちゃうし、当店のオーナーにも警察からの指導が入ると思う。モラルがどうとかいう以前に、高校生を22時過ぎまで残業させてしまうのはルール違反なので、高専五年生には仕事の押し付けを止めさせなくてはならない。
それと、もう一つ重大な問題があって、それは米飯とパンの納品は、共配のトラックのルート変更によって二時間前後も動くということ。二年に一時期くらいは、納品の時間が22時以降にずれ込んでしまうのだが、そうなるのが来月からでないとは言い切れない。ルート変更はけっこう急なのだ。
もし、高専五年生がこのまま「品出しは上手く出来ないからやりたくないです」と言って夕勤に押し付けまくっていたら、自分の首を自分で絞める事になる。突然、納品が23時になったらどうするつもりなのか。それだけのために夕勤を長々と残業させるつもりか?
そもそもとして、夜勤は夕勤と労働時間帯が被るものの、職分が違う(そのため給料だって夜勤の方がずっと高いのだ)。夕勤は楽そうだから仕事を余分に押し付けてやれというのは間違っている。
という訳で、高専五年生には行動を改めててもらわなきゃいけないし、夕勤と夜勤の職分の違いも知ってもらわなきゃならない。勝手に高校生を夜遅くまで残業させてはならない事も知らせなきゃいけない。
こういう従業員同士のトラブルは、オーナーが解決して欲しいんだけど、オーナーは高専五年生をとても気に入っており、賢くていい子だと信用しきっているので、まさかあんなトラブルが起きているとは知らないだろうし、知ったとしても貴重な夜勤人材に辞めて貰いたくないからって日和るんだろうなあ。
ということだが、Aさんは高専五年生とは全然シフトが被らないので手出し口出しが出来ない。シフトが被ってて物を言えるのは私しかいないってことで、とりあえず次回の高専五年生とのシフトでは「自信がないから」という理由で品出しをやらないのはナシ! って言って、一緒に品出し作業をしようと思う。
肝心の、高校生を残業させてはいけない問題については、高校生さんがAさんに告げ口したことがバレたらまずいし、それこそオーナーが直接高専五年生に言うべき事なので、どうしようかな。