はてなキーワード: エコノミストとは
アフガニスタンの軍事基地や施設が米軍によって空爆され、タリバン政権が崩壊、アルカィーダはイェーメンからスーダンへ逃げた。2001年暮れのことである。
どうやらテロリストらは陸路、イランへ潜入し、イランのイスラム・コネクションを経由して次の拠点に向かったらしい。
それはスーダンだった。
昨年来、イスラエルはガザから打ち込まれるロケットの襲撃に悩まされた。
4月5日、北朝鮮が発射したミサイルは日本の上空を通過した。あれが日本にばんばん打ち込まれたらどうするか。実際にイスラエルは、毎日のようにガザからミサイルを撃ち込まれた。
報復にでたイスラエルが戦車を投入したのも主権行為として当然だろう。
ハマスが撃ち込んだミサイルは、エジプトから秘密のトンネルを通じて大量の武器はガザに持ちこまれていたものである。
イランからイェーメンを経由してスーダンの沿岸部ポート・オブ・スーダンに集荷され、そこからエジプトへ密輸されていた事実をイスラエル情報機関「モサッド」が把握した(英誌『エコノミスト』、09年4月4日号)。
一月下旬、ポート・オブ・スーダンを出航した23隻の小型船が、おそらくイスラエル空軍機によって爆撃され、沈没した。
イスラエル空軍機の練度の良さは世界がしっているように、81年にはイラクのオシラク原子炉を襲い破壊した。2007年にはシリアで建設途中だった原子炉(北朝鮮の技術)を破壊した。
この武器密輸船舶の沈没事件以後、ハマスのロケット砲攻撃は数週間、なりを潜めた。
ここで歴史を振り返る。
スーダンのバシル独裁政権は、背後にイランの策動があった。1989年、スーダンは、イランの革命防衛隊にクーデタの方法を学んだハッサン・アル・ツラビ師によって策定され、バシルは軍事権力を、ツラビ師はアヤトラ・ホメイニ師のスーダン版になる予定だった。
スーダンの革命成功後、当時のラフサンジャニ(イラン)大統領は157名の大型使節団を率いてハルツームを訪問した。1991年だった。
「テヘラン―ハルツーム枢軸」が形成された。
レバノンでヒズボラに軍事訓練を施してきたハッサン・アズダが、以後、ハルツームに送り込まれた。ハルツームの北側にはイランの肝いりで武器工場がつくられ、いまやスーダンはアフリカ第三位の武器大国ともなっている。
08年にはイランの国防相がハルツームを四日間にわたって訪問し軍事技術協力、軍事訓練などの協定に署名した。国連でイラン制裁に断固反対する側にスーダンがおり、スーダンのバシル大統領の国際法廷喚問にはイランが断固、反対票を投じるという両国の蜜月関係は密接に続いている。
7・5%成長から6・5%へ改定。中国の公式は「8%成長死守」だが。。。。
3月18日に発表された世界銀行「2009年経済予測」では、中国のことし通年の成長を「政府の4兆元もの景気刺激策」を高く評価しつつも、7・5%から6・5%へ下方修正した。
とくに世銀報告は二つの特色を持つ
第一は中国の73人のエコノミストが、「8%をすこし下回る」と、珍しく中央政府の目標数値を下回るであろう、と予測していること。従来、政府が8%成長を公的に掲げた場合、エコノミストたちの予測もびったり8%だったからめずらしいのである。
第二の特徴は、「不動産」セクターの落ち込みを特筆していることだ。
中国のインフラを支えたのは不動産開発、公的資金が注入された鉄道、ダム、高速道路、一般道路建設のほか、公的な建物(共産党委員会、市政府、公務員住宅、兵舎など)が大ブームを支えてきた。
これは地方政府の財源でもあり、地方政府の「計画」(ト称する恣意)により、土地の払い下げでデベロッパーと組み、それで地方政府は潤い、しかも不動産税、日本流の固定資産税が歳入の中心だった。
中国の景気刺激策4兆元(日本源換算で57兆円のパケッジ)で効果が出ると、日本のシンクタンクでも予測する向きがあるが、じつはこの財源は中央政府が30%、あとは地方政府負担なのだ。
すでに昨年の不動産税による歳入は20%減退、地方政府は、この財源でこれまでも健保、教育、社会福祉などの行政をカバーしてきた。
歳入減によりプロジェクトの停滞が明らかに予測される。このために中国は「地方政府債権の発行」を許可した。じつはこのことにこそ注目すべきであり、日本でいえば富山県や島根県が県債を発行するように、従来地方政府の許可が必要だった地方政府の「借金」も、投資家さえ買えば、円滑化する。
こうみると、世銀予測の6・5%成長という数字は不思議なインデックス。私見によれば、世銀の数字は甘すぎる。
▲中国国際航空が武漢のローカル・キャリア「東星航空」を吸収へ
中国は観光ブームが下火となり、乗客がガラガラ、航空業界も大不況に陥った。
フラッグキャリアの旗艦「中国国際航空」は、武漢を拠点とするローカル・キャリア「東星航空」を吸収合併することで最終合意に達した。
東星航空のラン・シリ(音訳不明)社長が、この交渉過程の大詰め段階で行方不明になったとウォールストリートジャーナル(3月18日付け)が伝えた。
同社はGEが株主で参加している。理由はGEがエンジン部門から、エンジニアを送り込んでいる関係からだ。
ほかに中国の「OKAY航空」が業務を中止、また大手の中国南方航空は44%の収益ダウン、中国国際航空は31%、東方航空は20%のダウンとなり、同東方航空は四億三千万ドルの救援を中国政府に要請した。
ケインズ学派から「構造改革」派が議論を横取り? 不況政局に利用
それが政府紙幣発行をめぐる賛否両論、とくに自民党内に議員研究会が設立されると、こんどは旧小泉スクールにも飛び火し、竹中ブレーンの一人と言われた高橋洋一(東洋大学教授)が、突如、政府紙幣発行の旗振り役を演じだした。
もともと丹羽理論を応用するかのようにノーベル経済学賞の二人が新政府発行論を揚言した。スティグリッツとクルーグマンだ。とくに後者は政局の変動にカメレオンのごとく説を曲げる、変える、豹変する。ところがクルーグマン信者が日本のエコノミストに多いから始末に負えないのだ。
日銀の08年末の資金供給量は101兆2610億円。3年ぶりに100兆円の大台を超えている。これは金融機関などの資金繰りを支える目的で、とくに年末資金を供給した。量的緩和政策である。
具体的には金融機関の日銀当座預金の残高と、紙幣や貨幣の残高の合計が通貨供給量。 日銀は2008年11月から当座預金の一部に0.1%の金利を付けている。当座預金に金利がつくというのは異常事態である。(或る意味で、この措置は政府紙幣発行が別のかたちの国債発行であるとすれば、同様な効果がある)
そもそもの政府紙幣発行とは、太政官札による幕末維新の藩札の統一が近代日本では嚆矢であり、江戸の金銀小判の流通がやんで、紙幣経済が日本に落ち着いた。日銀はまだ無かった。
丹羽説は総需要喚起、あまっている生産体制を稼働させ、実効需要を増やせとするケインズ理論の延長にあり、純粋に学問的仮説なのである。
ところが、これまで顧みられなかったこの議論、クルーグマンのインフレ目標値などの珍説とともに米国内の議論をみて、あわてて飛びついてきた経済学者、エコノミスト、ジャーナリストらの大合唱が巻き起こり、状況が激変したのだ。
政府紙幣発行議論は自民党内で白熱し、細田博之幹事長は記者会見で「そんなことができるなら毎年30兆円ずつ発行し、(国・地方の)800兆円の借金を全額返したらどうか。空理空論で意味がない」と否定的態度を表す(2月2日)。
一方、前向きなのは菅義偉・選挙対策副委員長ら。「これだけの危機の中、政治主導でいろんなことがあってもいい」と含みを持たせた。
こうした政府紙幣発行議論に対して日銀の白川方明総裁は否定的。
「通貨に対する信認が害される恐れがある」と強調したうえ、「政府の債務返済能力への疑念から「長期金利の上昇を招く」とむしろ副作用の危険性を指摘した。
▲日銀は当惑どころか明らかに反対
白川総裁は政府紙幣が市中で流通した後、日銀に戻ってきた紙幣を(1)政府が回収する場合、(2)そのまま日銀が引き受ける場合があり、それぞれ問題があるとした。
現在、10円、50円、100円、500円などの硬貨はまぎれもなく「政府紙幣」であり、日銀に還流してきた硬貨の一部は政府が日銀から回収している。
政府が日銀に回収分と同額の財源を渡しているが、政府紙幣も同じ仕組みになると、「(発行額に見合った)資金調達が必要になるという意味で国債の発行と実体的に変わらない」(白川総裁)
財務省の杉本和行次官は「政府紙幣は財政規律との関係から慎重な検討が必要。発行には法改正もいる」と官僚らしく面倒臭そう。また財政法に抵触する可能性があり、貨幣法の改正が必要だろうと手続きが輻輳する可能性にも言及した。
私見を述べれば、アカデミックな議論が、突如、政局に利用されている感じが否めない。もともと丹羽春樹教授の「政府貨幣発行による打ち出の小槌」は、学説であり、政治のレベルに降りるときは必ずしも学説通りに実行されない。与野党の妥協の結果、かえって中途半端な実行がなされると(まさに高橋洋一説は丹羽説の歪曲)、景気回復に繋がらない可能性も出る。
丹羽春喜教授の仮説は、そのまま実施される可能性がないゆえに、かえって危ない。
ちょうどドル円固定相場の復活論に似ている。つまり固定相場制というのは、理論的に正しく、しかし運用されると猛烈な投機がおこる。人民元相場がまさしく、その犠牲であり、固定の枠内で投機筋は通貨を商品と変える“商機”をそこに見いだすからである。
だからさ、ああもできるこうも考えられるといいつつ自分の都合のいい方に誘導して、外れてもああだこうだといいわけする。
官僚が賢人であるというのをハーベイロードの前提というらしいけど、経済学者やエコノミストが誠実であるという前提も疑わしい。
というより、基本姿勢として、格付け機関とか経済学者(あるいはエコノミスト(笑))を信じるという姿勢の方がどうにかしている。
基本姿勢としてこれらのものは、信じない。特例として実績が認められた場合のみ信じるという姿勢が正しいと思う。
個人的には、WBSにたまに出ているモルガンの外国人のオッチャンが話していることは、結果的に見ると中期的には当たってることが多いと思ってる。
それ以外は、当たっているのを余り見ない。
だから信用できない経済学者(あるいはエコノミスト(笑))が多すぎるんだって。見分けつかねーよ。
政府紙幣だって、円の暴落を引き起こさないとは言えないだろ?証明っつっても相当限定された状況下のマクロ経済モデルに基づいてるんじゃないの?知らないけど。
すまん、そういう当たり前のことはもちろん理解してるから、話の方向を逸らすのは申し訳ないがやめてほしい。
現実、経済学ってのはその程度のもんだってのは十分理解してる。
(「エコノミスト(笑)が信用できないのは当然として」という文句にその辺の意味をすべてこめた)
だから、『その程度のもの』からいい加減脱却していいんじゃないかってことを言いたいんだ。
エコノミスト(笑)がほとんど全く信用できないのは当然として。
経済学って普通に間違ってるかあるいはほとんど間違ってる理論がそこらじゅうにあって、
それぞれケインジアンだかニューケインジアンだか新古典だかなんだか知らないが派閥を作ってる。
んで、それぞれの構成員が自分の理論が正しいことを立証するために無理やり現実を解釈してるように見える。
どいつが正しいのかさっぱり判断できないんだよ。
雑誌とか本とか読んでても、みんな自分の主張に合致するデータしか持ってきてない。
専門家じゃないんだから、どいつが正しいのか判断するために膨大な勉強時間割くほどの余裕はねーんだよ。
reconstructing macroeconomics
http://www.amazon.co.jp/dp/0521831067/
とか言ってさ、こんだけ歴史ある学問なのに"reconstructing"なんてタイトルの本が出る時点でおかしーよ。
(この本は"結構正しいこと言ってるんじゃね?"っていう気にさせてくれる。全部は読んでないけど)
やっぱ一回経済学者全員クビにして、一からやり直した方が(reconstruction)長期的に見て良いんじゃねーの?
旧正月が明けた。田舎から都会へ戻って、やっぱり予想通りだった。会社はつぶれていたのだ。
とりわけ沿岸部の輸出基地。
もう一つの悲惨な現場は建設現場のサブコントラクター(下請け、孫請け企業)に働く労働者の夥しい群れ。
不払い賃金を要求しようにも経営者はいない。典型的ケースでは、偽装倒産して、違う会社名に代わっていて「前の半分の給料なら雇ってやる」。
英誌『エコノミスト』(09年1月31日号)の数字でも新卒大学生の65万人(全体で550万)に就労チャンスがなく、「中国共産党は、今年は5月4日が五四運動90周年、6月4日は天安門事件20周年と『厳戒態勢』を強いて臨むが社会不安はおさまるまい」。
「君たちは心配だろうが、私はもっと心配しているのだ」
河北省石家庄は毒入り餃子で悪名をとどろかせたが、毛皮、皮革製品ならびに花火の生産でも有名。
石家庄の中小企業の多くは旧正月より貳ヶ月も早く従業員に休暇を取らせ、付近の農村に返した。
輸出の落ち込みで大不況を感得してきた従業の多くは旧正月が明けても戻っていない。
同様に、中国全土で都会に出稼ぎにでる農民の数は、およそ二億人と見積もられ、この内の少なく見積もっても10%は職がない。
たしかにSARS騒ぎのときも地方からの出稼ぎは故郷へ強制的に帰されたし、北京五輪のおりも同様な措置が執られたが、いずれも数週間の措置だった。
天安門事件以後、学生の反乱を取り締まり、法輪功など新興宗教ならびに民主諸派の同行を気にしてきた中国公安も、今度ばかりは勝手が違う。
第一は国有企業リストラ組には年金と住宅が保障されてきたため、取り立てて強い党への不満はなかった。それが国有企業が被買収の脅威に晒され、これまでの優遇措置がハズされそうな懸念の広がり。
第二に外国企業、とりわけ華僑資本のメーカーに働いてきたホワイトカラーという「中間層」は、その収入増によって余裕資金を株式投資と不動産投資にまわした。
不動産も株式も07年第三四半期から突然崩れ去り、雇用も喪われると、そこはことなく支持してきた共産党への不振が拡大する。
第三に散発的だったブルーカラーの反乱が本格化し、頻発し、大規模になり、この列に学生が加わると治安の維持が難しいばかりか、あまつさえ退職警官と退役軍人が、社会擾乱に加われば手がつけられなくなるだろう。
あくまでも中国共産党の関心事は独裁体制の維持、党の恒久的支配が目標であり、それ以外の関心度は薄い。
米国の中国観察で有力なシンクタンク「ジェイムズタウン財団」が発行する『チャイナブリーフ』(09年2月4日号)によれば、失業の実態は下記の通り。
~~~~~~ ~~~~~~~~~
輸出機軸企業 6・5%-9%
中小企業 5% -10%
=======================
合計 17-30%
この結果、中国の公式発表である『失業』は2000万人だが、実態は3000万人だろうと、前傾報告のピーターベテリエは言う。筆者はかねて推測してきたようにGDP13%(07年)から4・8%(09年第一四半期推定)で4100万の失業があると踏んでいる(根拠はGDP1%減ると、中国では500万人が失業する)。
大変な事態がすでに中国を襲っている。
経済モデルを作ってるんだろ。モデルって言っても数学的なやつね。
モデルから言えることは、素人目に見ても、経過時間無限大の極限でどういう状態が実現するか、ってことだけ。数ヶ月とか、時間的に近傍の出来事はほとんど扱えないだろう。
扱うとしても(実際やってるはずだけど)確率モデルを使うくらいしか方法は無くて、確率モデルを使うってことは、予測が点(GDP **%!みたいな)ではなくて分布(平均**%で分散が--くらいの正規分布)になるということ。平均値以外の値が実現することは十分にあり得る話なわけだ。
まして経済現象なんてのは正規分布みたいな正常な分布では表現できないはずで、コーシー分布とかレヴィ分布みたいに、発散的な性質を持つ分布に近いはずだ。こういう分布に従う現象については、平均という考え方が無意味になる。そんな状況下で四半期後のGDP成長率は**%と予測されます、なんてのたまうのは、そうすることで金を稼ごうと考えるエコノミスト(笑)だけだ。
私はマクロ経済問題、貿易、国際金融、産業政策、独禁政策、公共部門のスト権の問題等々、応用経済学の様々な分野に関心を持ってきた。器用貧乏と揶揄された事もある。
金融政策も私が長年にわたって関心を持ち続けた問題のひとつである。私は日銀のエコノミストたちと真っ向から対立して論争した事が何回かあった。
1回目は1960年代前半の吉野俊彦氏との論争である。当時の私はマクロ経済と国際金融関係は万事ケインズ的に考えていた。他方、吉野氏は金本位制主義だった。J・M・ケインズにとって、金本位制は「大嫌いなもの(bête norie)」だったが、吉野氏にとりケインズとケインズ経済学は”bête norie”だった。生意気な若造であった私を相手に議論に応じてくれた吉野氏に、私は深く感謝している。しかし、基本的な経済哲学が違っていた。
2回目は「73-74年の大インフレーションは日銀が起こした」と言う趣旨の76年の論文で金融政策を厳しく批判した。当時の日銀幹部が田中角栄首相の「日本列島改造論」に遠慮して金融引き締めが遅れ、マネーサプライが膨張して石油危機以前に大インフレが始まったと私は論じた。
3回目は77年以降の私に対する外山茂理事(当時)の厳しい批判と、私の反論である。「日銀派」を代表する外山氏は欧米の標準的な金融理論以前の古い考え方で、手品のように恒等式から様々な結論を導くが、私にはその論理がわからなかった。
80年代後半から90年代初めにかけての「バブル」現象についても、日米経済摩擦の下で日本の黒字をさらに増やす恐れのある金融引き締めを日銀がためらった事が一因であると私は考えた。
しかし政治・行政からの独立性を大幅に強化した新日銀法が98年に施行された後の日銀の金融政策は、「100点満点に近い」と私は述べた。
これに対し、今度はかなりの人数の経済学者が反発した。要するに「もっと早くゼロ金利にしろ」とか「為替介入の効果を『不胎化政策』で減殺するな」という主張だ。私が大学院で指導し共著もある岩田規久男さんや、かつての東大の同僚の浜田宏一さんが一番厳しかった。ゼミOBの山本幸三衆議院議員も日銀叩きで名を馳せてきた。
私はあまりにも「日銀バッシング」がひどいと感じ、白川方明さん(当時日銀企画室審議役)と相談して八代尚弘さん(同日本経済研究センター理事長)にお願いして、討論の場を設定してもらった。論争は「金融政策論議の争点」という本になった。同書には小宮ゼミ仲間が日銀批判と反論の両方に何人も登場した。
日銀の政策委員会や支店長会議の写真で、小宮OBの白川総裁と大学院で教え「現代国際金融論」の共著者でもある須田美矢子委員の二人のお姿並んでいるのを見ると、私は不思議な気持ちになる。
私はいつも始まりは「少数派」であり、今もその気持ちは変わらない。しかし、しばらく前にマル経の若い人に「小宮さんこそ多数派でしょう」と言われて驚いた。「多数派」と言われるという事は、もうあまり斬新な意見を述べる舞台には登場しないと言う事で、現役ではなくなったわけであろう。(日本学士院会員)
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/87c9f18f491b31cc06e697cba4d87073
デフレの状態で中央銀行がインフレ目標を掲げて「インフレにするぞ」と宣言し、通貨を過剰に供給すればデフレを脱却できるというクルーグマンの提案は、日本の経験では効果がなかった。クルーグマンも明示的に撤回し、バーナンキも実施しない。かつて人為的インフレを「世界標準だ」と称して日銀を罵倒した岩田規久男氏の一派は、過去の言説に責任をとれ。
付録:「あと0.1下げろ」などという批判は、金融実務を理解していない。政策金利は、かつての公定歩合と違って誘導目標なので、実際の金利は0.1%以下になっています。これはFRBが「0??0.25%」としたのと同じことで、要するに「存在する金利の最低限」です。金利が存在するのとしないのでは大きな違いがあり、ゼロ金利の期間にインターバンク市場が消滅したことが、日本の金融システムの機能をそこなった、と山口副総裁は総括しています。
付録:「金利は下がったが通貨供給は増やせる」などという批判も、金融理論を知らない。金利は通貨の価格だから、それがゼロに近づいたということは通貨供給が絶対的に需要を上回ったということであり、それ以上増やしても銀行の日銀口座に「ブタ積み」になるだけ。こういう政策は、金融政策の効果に疑問をもたせて弊害が大きかったというのが、白川総裁の反省です。
白川 方明 (著) ¥ 6,300
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/6ee8453127a32a36c7722e79bcc294f1
「リフレ派の立場は、世界の学界レベルではすでに十分すぎるほどの合意を得られたものなのであって、完全に決着済みなのである」(野口旭)などと称して日銀総裁を罵倒するのは、目に余りました。経済学に「決着済み」の真理なんてない。そんなものがあると思っているのは、昔の学説を受け売りする学説史屋だけです。
補足:念のためいうと、インフレ(抑制)目標は正統的な金融政策です。しかし、これについても資産価格など他の政策目標も見るべきだという批判があり、「完全に決着済み」どころか、日銀もFRBもECBも採用していない。採用しているのは、変動相場制の中でペッグを守りたい小国が多い。
しかしクルーグマンのいうように人為的にインフレを起すのは非正統的な政策で、これは彼自身が認めたように、理論的にも経験的にも破綻した。こんなナンセンスな話をかつぎまわった自称エコノミスト、翻訳家、『経済セミナー』を初めとするB級経済誌は反省してほしいものです。
その1 http://anond.hatelabo.jp/20081223235800
その2 http://anond.hatelabo.jp/20081224002406
その3 http://anond.hatelabo.jp/20081224004222
その4 http://anond.hatelabo.jp/20081224013124
その5 http://anond.hatelabo.jp/20081224021305
(G-4面下)
「このひと月のような、急速な景気の落ち込みは、これまでに経験したことがない」
11月10日、ブラジル・サンパウロでは、中央銀行の総裁が集まってBIS(国際決済銀行)総裁会議が開かれた。日銀の白川、FRBからはバーナンキの代理でガイトナー(次期財務長官)が出席するなか、新興国の中央銀行の総裁たちは口々に不安を訴えた。
米国発の金融危機は欧米や日本を巻き込み、これまで比較的堅調だった新興国の経済にも深刻な影を落としている。世界同時不況の中、欧米の中央銀行は利下げを繰り返す。しかし、市中の金利はあまり下がらず、金融政策の効果は乏しくなっている。
不況を食い止めようと、世界各国では大規模な財政政策が発動されたり、検討されたりしている。
米国はすでに1680億ドル(15兆円)の所得税還付などを実施し、議会民主党は5000億ドル(45兆円)規模の景気対策を準備している。欧州各国も数兆円規模の景気対策を次々と決めた。各国で、大銀行への公的資金の注入も相次ぐ。
先進国の危機対応では、政府・議会と中央銀行の役割が、基本的には区別されている。政府・議会が景気対策や銀行への公的資金の注入などの「財政政策」を担い、中央銀行が「流動性の供給」を行なう分担だ。
「流動性の供給」とは、銀行などが資金繰りに困らないようマネーを供給することだ。国債、手形、社債などを担保とする金融機関への貸し付けが基本。税金を使う「財政政策」と違って、市場での取引であり、議会の承認という民主主義のチェックをくぐらなくてすむわけだ。
だが、金融危機が深まるにつれ、「財政」と「金融」の間の垣根は、崩れつつある。
FRBは先月末、住宅ローンなどを裏付けに発行した証券化商品を最大8000億ドル(71兆円)も買い取ると発表。個別企業の支援にあたる企業のCP(コマーシャルペーパー)の直接買い取りも始めた。CP買い取りは格付けが高いものに限るなど損失回避の措置を講じてはいるものの、万が一の場合は国民にツケがまわるため、「財政」に近い政策ともいえる。バーナンキは長期国債の購入を検討していく方針も明らかにした。
こうしたFRBの対策について、白川は「かつて日本銀行が採った対応と非常に似ている」という。
日銀も、日本の金融危機の1990年代末から2003年にかけ、ABS(資産担保証券)などを買い取ったり、長期国債を買い増ししたりした。銀行の保有株を買い取ったこともある。日銀が特別融資を行った山一證券は倒産し、最終的には、1110億円もの損失が発生した。これは、日銀の国庫納付金が減るという形で、国民の負担になった。
そして今、日本でも不況色が強まるなか、日銀は、CPの直接買い取りといった企業金融への支援策を打ち出した。支援の規模はFRBほどではないが、質は似ている。日銀は、「中央銀行としてなし得る最大限の貢献を行う」と表明した。
日銀は、どこまで財政の領域に足を踏み入れていくべきなのだろうか。
三つの視点が重要になるだろう。
まず、危機の深さである。日本の不況は深刻になってきているとはいえ、1990年代の日本の金融危機当時や、現在の米国ほどではない。しかし、今後、危機が深まっていくようなら、もっと踏み込んだ対策が求められる。
次に、政府がどの程度すばやく動くか。
金融危機のときには、銀行への資本注入が有効だ。株価下落などで銀行の自己資本がしぼむと、企業への貸し渋りや融資の回収による倒産が相次ぐ。資本注入をしやすくする改正金融機能強化法は今月になって成立したが、なお対策は不十分との見方も強い。政府や議会の動きが鈍い場合には、中央銀行が代わりに動かなければならないケースもある。
第三に、日銀が「財政」に踏み込んでも、後に、本来の道に戻れることが約束されているかどうか、だ。
危機が去ったあとも、政府が中央銀行を「便利な財布」として使い続ければ、やがてもっと大きな弊害を招きかねない。戦前、政府が日銀に国債を引き受けさせて戦費を調達したのは極端な例だとしても、紙幣をいくらでも印刷できる中央銀行が、政府の意のままになってはならない、というのが歴史の教訓だ。
中央銀行がリスクのある資産を買い取って財務が悪化すれば、その国の通貨の信頼が落ちる危険も増す。FRBの資産・負債は急膨張しており、ドル暴落の危険もささやかれる。危機脱出のためにやむをえないとはいえ、米国の政策運営は綱渡りである。
経済のグローバル化で相互依存が進んだことで、中央銀行の判断はさらに難しくなっている。日本の低金利政策は、世界的な低金利に連動していた。米国などが当面の危機脱出のために「何でもあり」の政策を取るのなら、日本も同様の手を打つほうがいい、という考え方もある。
ただ、ここ20年、世界各地でバブルが起き、崩壊するたびに、超低金利や大胆な財政政策が実施されてきた。そのことが経済のゆがみや膨大な財政赤字を招いている側面は否定できない。カンフル剤に依存すればするほど、いずれは別の種類のバブルやインフレ、大不況といった副作用をもたらしかねない。
「日銀は、学習し、実践する組織でなければならない」。そう語る白川は、過去の歴史から何を学びとり、どう行動していくのだろうか。■
注: 欧州中央銀行の金融政策を決める21人のメンバーの中に、ドイツ、フランス、イタリアの各総裁が入っている
中央銀行 | 総裁・議長 | 年齢 | 主な前職 |
米連邦準備制度理事会(FRB) | ベン・バーナンキ | 55 | プリンストン大教授、FRB理事 |
欧州中央銀行(ECB) | ジャン・クロード・トリシェ | 66 | 財務省国庫局長、フランス銀行総裁 |
・ドイツ連邦銀行 | アクセル・ウェーバー | 51 | ケルン大教授 |
・フランス銀行 | クリンチャン・ノワイエ | 58 | 財務省国庫局長、ECB副総裁 |
・イタリア銀行 | マリオ・ドラギ | 61 | 財務次官、ゴールドマン・サックス欧州拠点副会長 |
イングランド銀行(BOE) | マービン・キング | 60 | ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)教授、BOE副総裁 |
カナダ銀行 | マーク・カーニー | 43 | ゴールドマン・サックス・マネージメントディレクター、首席財務官 |
ブラジル中央銀行 | エンリケ・メイレレス | 63 | フリート・ボストン・フィナンシャル国際部門担当役員 |
ロシア中央銀行 | セルゲイ・イグナチエフ | 60 | 大統領補佐官、第1財務次官 |
インド準備銀行 | デュブリ・スバラオ | 59 | 世界銀行エコノミスト、財務次官 |
中国人民銀行 | 周小川 | 60 | 証券監督管理委員会主席 |
その1 http://anond.hatelabo.jp/20081223235800
その2 http://anond.hatelabo.jp/20081224002406
その3 http://anond.hatelabo.jp/20081224004222
その4 http://anond.hatelabo.jp/20081224013124
(G-4面上)
今年8月下旬、元日銀総裁の山口泰は、米ワイオミング州にある人口8500人の小さな町、ジャクソンホールにいた。カンザスシティー連邦準備銀行が主催する3日間の会議に出席するためだ。
この会議には毎年、世界の中央銀行の首脳や高名な学者らが集まり、論戦を繰り広げる。会議の夕食会で、山口はFRB議長のバーナンキとECB総裁のトリシェにはさまれた席でなごやかに談笑していた。
その2日後、シンポジウムのコメンテーターとして登場した山口は、米国が経験した二つのバブルについて触れ、「IT(情報技術)の株価バブルは信用膨張(銀行の貸し出しなどの急増)を伴っておらず、その崩壊で巨額の不良資産が積み上がったわけではない。信用膨張を伴う(住宅)バブルにこそ注意すべきだ」と警告した。
山口は、「金融政策でバブルは防げない」と、あたかもそれがプロの常識かのように主張してきたFRBに、疑問を投げかけたのだった。
FRB流の考え方は、アラン・グリーンスパンの発言で一躍有名になる。
FRB議長だったグリーンスパンは2002年、ジャクソンホールの会議で、「バブルは、崩壊して初めてわかる」「バブルを阻止するには急激な金利引き上げが必要だが、それは経済に深刻な打撃を与えてしまう」などと発言する。中央銀行の役目は、バブルが崩壊してから、大胆に金利を引き下げる「後始末」にあるとした。
その3年前、99年の会議では、大学教授だったバーナンキと山口が対立した。バーナンキが、日本のバブル期の金融政策について「政策金利を8〜10%に引き上げるべきだった」との見方を示したのに対し、山口は「(もう少し早めの金利引き上げが望ましかったが)政策金利をそれほどまで引き上げるのは非現実的」と反論した。
ただ、バーナンキは、金融政策による「バブル予防」を説いたわけではない。バブル崩壊後に、すばやく金利を引き下げてデフレを防ぐ大切さ。そこに主眼があった。グリーンスパンの「後始末論」は、バーナンキから影響を受けたとの見方もある。
しかし、「後始末論」のFRBは結局、大きな失敗を招き寄せることになる。
90年代のITバブルについて、グリーンスパンは当初の警戒心を封じ込めて「生産性が高まった結果」と肯定し、結果的にバブルを加速させた。ITバブル崩壊後は、急速に金利を引き下げる「後始末」を行った。さらにデフレを懸念して長期間にわたって低金利政策を維持した。
グリーンスパンやバーナンキが、最も警戒していたのは、日本の「二の舞」になることだった。米国のインフレ率は急速に低下していた。日本のようにいったんデフレになってしまうと、金利をゼロ以下にできないため、金融政策の発動が難しくなる。
その戦略は、いったんは成功したかにみえた。2001年の不況は短期間で終わり、米国は再び力強く成長する。05年のジャクソンホールの会議は、引退するグリーンスパンへの賛美に包まれた。
しかし、長すぎた金融緩和は結局、大規模な信用膨張や住宅バブルを引き起こす。住宅バブルが崩壊すると、深刻な金融危機に発展。米経済は不況に沈む。
11月の米国の物価上昇率は前月比で大幅なマイナスに転落。バーナンキがあれほど懸念したデフレに近づいた。FRBは今月16日、史上初めて政策金利をほぼゼロに引き下げるところまで追い込まれた。
FRBの何が問題だったのか。
山口は「FRBは日本から間違った教訓を引き出してしまった」とみる。「わずかな物価の下落を恐れて緩和しすぎると、問題が大きくなる」。信用膨張を抑えるには、政府や中央銀行による金融規制の強化と金利の引き上げをセットで行うべきだ、というのが山口の意見だ。
山口の考え方は、国際決済銀行(BIS、本部・スイス)で最近までチーフエコノミストを務めたウィリアム・ホワイトに近い。
白川は山口が副総裁のときに金融政策担当の理事を務めた。2人の考え方には共通点が多い。白川はホワイトとも個人的な親交を結ぶ。白川の著書「現代の金融政策」では、BIS流の考え方と、FRB流の手法の違いが整理され、白川自身はFRB流に批判的であることが読み取れる。
もっとも、実際には、経済が成長しているさなかに、どこまでが「生産性の向上」で、どこからが「バブル」なのか、見極めるのは難しい。効果的なバブル予防策を説く経済理論も確立されておらず、FRB流の「後始末論」には、依然として根強い支持がある。
だが、山口や白川に共通するのは、バブルの判定がなかなか難しいことは承知で「何かできることを模索すべき」という考え方だ。バブルが起きていると確信したら早めに金利を引き上げる、危険な兆候の段階でも記者会見などで世論に注意を促す、といったことも含まれる。
しかし、バブルが起こるのは、人々が過剰なまでの自信を持つからにほかならない。バブルの結末は悲惨でも、その渦中にある人はバブルを謳歌しがちだ。中央銀行が、世論に逆らってでも行動する覚悟がないと、結局、バブルは防げない。
「パーティーが盛り上がっている時に、パンチボールを片付けるのがFRBの仕事」と言ったのは、元FRB議長のウィリアム・マーチンだった。
その1 http://anond.hatelabo.jp/20081223235800
その2 http://anond.hatelabo.jp/20081224002406
その3 http://anond.hatelabo.jp/20081224004222
(G-3面左下)
11月下旬の3連休、白川は自宅にこもり、講演に使う原稿や資料に熱心に手を入れていた。
26日に予定されている東大での講演には、自分の年来の主張を存分に入れようと思っていたからだ。
「流動性と決済システム」と題したこの講演で、白川は「学界でもマスコミでも金融政策に対する関心が非常に高いが、それが金融市場や決済システムへの無関心の裏返しなら不幸なことだ」と力を込めた。
白川がこれまで、最もやりがいを覚えた仕事は、金利の上げ下げといった華やかな金融政策ではない。「決済システムの進化」という、地味な分野である。
世界では、毎日何百兆円という資金が動き、ある金融機関が倒産すれば、資金繰りに困った金融機関が次々に破綻する危険もある。
企業や銀行の間で日々行われている資金のやりとりは、日本銀行にある民間銀行の当座預金で最終的に決済される。この決済にかかる時間を「即時化」すれば、銀行が思わぬ損失を被ったり、連鎖倒産のリスクを減らしたりすることができる。
白川は、そうした決済システムを改善する仕事に、「モノづくり」にも似た達成感を覚えるという。
シカゴ大学留学時代、市場主義の権威ともいえるミルトン・フリードマンらの影響を受けた。今でも、「市場の機能は大切だと思う」と記者会見などで繰り返す。
ただ、決済システムの仕事を通じて、経済は「自由放任」だけではうまくいかず、「制度設計」は重要だという思いを強めた。
今回の世界金融危機でも、「決済」や「制度設計」の重要性が浮かび上がった。リーマン・ショックの後、各国の金融市場でドル資金が枯渇し、金融機関がドルを入手できなくなる事態が起きた。FRBは、日本など各国の中央銀行とお互いの通貨を交換する協定を結び、各国の金融機関にドルを供給する仕組みをつくった。日銀は、FRBの打診を受ける前から、協定について独自に検討を進めていた。
白川は総裁就任に先立って、日銀法を改めて読み返した。その第1条には、決済や金融システムの安定を意味する「信用秩序の維持」が記されている。
そもそも、世界の中央銀行の多くは、金融システムの危機管理を目的として誕生した。「金融システムの安定は、日銀の最も大切な業務」と白川は職員たちに説いている。■
世界の中央銀行のトップで近年、圧倒的な存在感を示したのが、米FRBのグリーンスパンである。
レーガン政権の1987年から現ブッシュ政権の2006年までFRB議長を18年半も務め、「カリスマ」「巨匠」などと呼ばれた。今でこそバブルをあおった戦犯のように批判を浴びているが、グリーンスパンの巧みな市場操縦術はつい最近まで、セントラルバンカーのお手本だとされていた。
グリーンスパン礼賛の世評があふれるなかで、早くから懐疑的な目を向けてきたのは、ソロモン・ブラザーズ出身のエコノミスト、ヘンリー・カウフマンだ。グリーンスパンの金融政策は、「緩和的すぎる」とカウフマンは見ていた。白川は、親しい知人らには、カウフマンへの賛意を漏らしていた。
白川の友人に、元FRB調査統計局長のマイケル・プレルがいる。まだ現役の局長だった1999年、スピーチでこう述べている。
「企業経営者や消費者、投資家は、FRBを過大に信認し、経済や金融市場のどんな衝撃でも吸収できると思っているため、本来ならとらないようなリスクまでをとっているのだろうか。だとすれば、金融システムは現時点で容易にわかる以上に不安定になる可能性がある」。FRB内部から「グリーンスパン神話」の危うさを指摘したものだったが、プレルは少数派だった。
グリーンスパンの強みは、その組織掌握力や政治力にもあった。異論が噴き出しそうな会議の前にはしっかり根回しをし、政治家にもこまめに接触してFRBへの支持を広げた。厳しい追及を受けそうな記者会見は行わず、有力紙の特定の記者とは懇談し、情報を流す手法を取った。
こうした老獪さで「グリーンスパン神話」と「資産バブル」は加速した。が、その反動もまた大きかった。
就任してまもない白川をグリーンスパンと単純には比較できない。
ただ、戦後初の賛否同数というきわどい決定で利下げが決まった10月31日の会議の後、市場関係者からは「総裁としてのリーダーシップが乏しいのでは」と不安視する声が出た。
今月19日の追加利下げも、政治家や市場の催促を受ける形で「追い込まれた印象」がぬぐえない。市場関係者からは日銀の対応が遅れ気味との指摘が多い。「早めに大胆な企業金融の支援策を効果的に打ち出しておけば、追加の利下げには追い込まれなかったかもしれない」との見方もある。■
参考
■[知識][経済]2008年11月17日 朝日新聞 クルーグマンの記事 全文
http://anond.hatelabo.jp/20081118194540
金融政策が影響力を失い財政政策しか残っていないと言うのは、「不思議の国のアリス」の世界だ。この世界では貯蓄を高めるのが悪い事で、健全な財政も悪い事。逆に完全にムダな政府支出が善いこと。「あべこべの世界」だ。ここには長くいたくない。
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/1030466313fe91ad865d0bfa2b9c9f1a
彼(クルーグマン)は、1998年に"It's Baaack!"と題する論文で、
伝統的な見方では、流動性トラップに置いて金融政策は無力で、財政支出の拡大だけが唯一の出口、ということになるけれど、これは考え直すべきだ。もし中央銀行が、自分たちは無責任になり、将来はもっと高い物価水準を目指します、ということを信用できる形で約束できれば、金融政策もやっぱり有効になる。
と主張した。これに日本の「リフレ派」と称するエコノミストが唱和して、日銀が異常な金融緩和を行ない、それが円キャリーを誘発してアメリカのバブルの一因となった。それなのに今回は同じ状況でインフレ目標を提案しないで、かつて「やけくその政策」とバカにした財政政策を推奨するのはどういうわけか。彼の議論が機会主義的で一貫性を欠くのは今に始まったことではないが、学者ならかつての自分の提案が間違っていたことを認め、それが日米の経済に少なからぬ悪影響を与えたことを謝罪してほしいものだ。
補足 (池田信夫)
2008-11-18 13:36:26
TBにも書かれているが、クルーグマンがこの記事の質問に答えています(日本語が読めるわけないが)。
http://krugman.blogs.nytimes.com/2008/11/15/macro-policy-in-a-liquidity-trap-wonkish/
This misses a key point that I and others tried to make for Japan in the 90s and are trying to make again now: creating inflation is easy if you’re an irresponsible country. It may not be easy at all if you aren’t.
要するに、日本では(アメリカでも)無理だということを認めたわけです。しかし、それに代わって彼が提言する財政支出は、もっと無責任な政策です。こういうとき国際的な影響を考えないのは、政治家も経済学者も同じ。かつての「インタゲ」論議が日本国内のことばかり考えて、結果的にグローバルな過剰流動性を作り出した愚を繰り返してはならない。