2024-09-02

ふしぎ遊戯 玄武開伝』を最後まで読んだ

気づけば10年ぐらい前に完結していたのだが、途中で作者がサンデー少年漫画始めたり初のBL漫画に挑戦したりで中断があって心が離れていた

1995年アニメ化もした『ふしぎ遊戯』の過去編にあたる話

中国古代書物日本人学者が魅了されて憑かれたように和訳したところ、和訳自体が呪力を持ち、物語を完成させるために若い娘を本の世界に吸い込むようになった

物語中には朱雀白虎青龍玄武四神をそれぞれを信仰する大国が4つ登場し、それぞれの国に危機が訪れた際に神を召喚する異世界巫女必要とする

無印の『ふしぎ遊戯』は朱雀巫女青龍巫女になってしまった現在日本人の話で、今でいう異世界なろう小説のようなノリ

無印では、「大正時代にも一人の少女が本に吸い込まれて「玄武巫女」になり国を救ったが、巫女とは生贄であり、玄武に心身を捧げる儀式を経て死んだ」と語られている

玄武主人公である多喜子は最初から死ぬことが運命づけられており、どうなるんだろうと気になりながら読んだ

神獣召喚には巫女だけではなく七星士と呼ばれる、体に星の名が一文字まれまれてきた戦士をそろえることも必要

無印に登場する「朱雀戦士」は全員若いイケメンで、当時は女児大人の女性もハマり、「bisyounen」という語が英語圏にもアニメきっかけに広まったという

少年向け作品イケメンおこぼれで萌えるのではなく、女性向け作品イケメンカタログをやって萌えさせてくれる作品は斬新だったのだろう

主人公イケメン戦士の一人と恋に落ちるが、他のキャラも人気があり、全員を攻略できる乙女ゲーも発売された

一方で、イケメンにちやほやされる、可愛いけどおバカで、うっかりミスによってイケメンたちを死に追いやる主人公・美朱(みあか)は憎まれ

ネット黎明期海外掲示板で大規模なアニメキャラ人気投票が行われた際、嫌いなキャラランキングでは1位がエヴァシンジ、2位は美朱だった

美朱は国内ではまだ可愛げが評価されていたが、海外での不人気っぷりは凄まじく、アンチの凶暴性もあって昔は美朱アンチ外国人ネタがよく語られた

美朱はおバカだが、多喜子は一応落ち着きがあって真面目なキャラだった(ただ作者の限界があるのでたまに頭悪そうなムーブもする)

そして玄武七星士は朱雀七星士と違ってイケメンカタログではなく、太った真ん丸な男児や、40代ぐらいの中年女性、石人と称される人外などがいる

真ん丸男児は「アクセルワールド」の主人公みたいな風貌で、石人はもののけ姫コダマみたいで、どちらも可愛いマスコット

中年女性美魔女ではなく普通のおばさんに見える容姿

主人公パーティにあのような容姿中年女性がいるのはかなり珍しいだろう

残り4人はイケメンなのだ

イケメン4人のうち2人は無印にも登場する

現実世界と本の世界時間の流れが違い、現実世界玄武朱雀まで70年程度だが、本の世界では200年経っている

イケメン二人は戦いの中で死亡し、霊となった後も多喜子の残したアイテムを外敵から守るため200年現世に留まり、美朱とも会っている

戦いの中で若くして死ぬことが既に決定しているキャラとして玄武編でイケメン二人を見る

「神獣召喚して平和になった後は落ち着いた生活ができるだろうから地元に戻って妹の面倒見てあげなきゃな~」みたいな発言が出るたびに、戻れずにお前死ぬんだよな~と


どうも作者の渡瀬悠宇は「イケメンカタログで売れた」「いかにも少女漫画的な恋愛脳展開で売れた」という評価に不服であったらしい

戦士イケメンカタログは避けているし、無印登場人物恋愛なのは編集部指示によるところが大きいとフリースペースで釈明

恋愛展開よりもバトルを書いている方が楽しい、私ってつくづく女脳じゃないなあ」とも発言

戦士多様性があるのは良かったとは思うが、正直なところバトルは少女漫画としては描けてる方ではあるが特に面白い戦いではない

リリカル恋物語こそが上手く描ける人で、玄武編でも「あの戦闘熱かった」と印象に残る人はあまりおらず、「あの恋愛エモかった」という人の方が多いと思う

和月信宏はるろうに剣心京都編のイケメンカタログ評価されたことに反感を持ち、人誅編では非イケメンばかり出していたが(そしてキャラ人気はなかった)、渡瀬も同じ心境だったのか

「軽薄なイケメンカタログ恋愛中心じゃなくても硬派路線で人気出せるんだよ!」という読者への逆張り

渡瀬玄武編の途中でサンデー少年漫画を連載開始し、週刊連載と同時進行なので玄武編の休載が多くなった

玄武編も読んでみると、初期は丁寧だったが後半は絵の書き込みが減り、展開も詰め込みハイペースだと感じられた

「夢の週刊少年漫画」を優先して、「少女漫画」への優先度が下がり、玄武編を早く終わらせて少年漫画に集中したかったのかな

面白く読めはしたが、玄武編だけに専念してこちらを丁寧に描いてほしかった

得意なこととやりたいことが違う、そういう人っているよな

得意なものがあるだけ凡人からすればうらやましいことなのに、それが望んだものでなければ遠ざけたくなるという

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